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ステータスオープン! ザシュ! (pcで読まれる方向け)

魔狩りし者達(ハンターズ)シリーズ最新作の『神々黄昏ラグナレク』と『審判の刻(アポカリプス)』。


 天下のヘルシング社の打ち出した最高峰のVRMMOゲームだ。


 しかし俺は学生の身、そう簡単に高い物に手を出せない。


 一年近く経って価格が落ち着いたころ、近くのスーパーへ買いに行った。


 友達と一緒に遊び始めて一週間、ものすごく楽しい。


 学校の部活をすっぽかして家に帰る途中、車通りの多い交差点で俺の意識は途切れた。


 死は、こっちが見ていなくても常に覗いてくるのだ。




 ……俺が、信号が青だからって安全確認もせずに渡るから。


 お父さん、お母さん、運転手さんを責めないでくれ。


 きっと疲れていたりしたのだろう。


 きっと、猫か何かを避けた後だったのだろう……。




-2-




 草原で兎を追いかける小人ゴブリン達、空を舞う龍、そしてトラックに跳ねられたと言う記憶。


それは俺が異世界に来てしまったことを如実に物語っていた。


「……えっと、とりあえず、ステータスオープン」


ウィン


 機械的な音と共に目の前に二次元的な黒い窓が表示される。


「 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|

窓寺(まどでら) てん(拳法家)Lv7                |

|体:53                        |

|魔:15                        |

|力:24                        |

|守:20                        |

|速:19                        |

|                          |

|スキル:未所持                    | 

|__________________________」


……まさか本当に出るとは思わなかった。


しかし見たことのある画面だ。


いや、間違いない。


これは『神々黄昏ラグナレク』におけるステータスウィンドウ!


……しかしなんでまた買ったばかりのゲーム世界に……。


正直、こんなステータスと始めたばかりの知識では無双できるヴィジョンがこれっぽっちも見えない。


 ふと気づいたが、この異常事態に一切動じない自分がいた。


それについて考えようとすると霧がかかったように思考が止まってしまう。


今考えるべきことはそれじゃないと言う神様いるとすればだがのメッセージかも知れない。


 遠くに見えた町まで歩き始める。




 目に入った妖物は今の所序盤で倒しなれた奴等だけだが、死んでも復活できる確証の無い今は一応距離を置きながら移動するのが得策だろう。


 ……あれに気づかれると厄介かもしれない。


さっきまで水浴びをしていた小人ゴブリン達が、何者かの食べ残しだろうか、ぐちゃりと濡れた肉塊に集まり始める。


遠くに行くのを待ってからゆっくりと町に向かうとしよう。


いや、困ったものだ。


太陽の位置からして夜までに町に着く予定だったが、あいつらが食事に時間をかけるなら微妙かもしれない。


 ……。


 数分観察すると小人ゴブリン達は肉を食べ終え、ギャギャガギャと彼らの言語で話しながら町とは違う方向へ歩いて行った。


やはり野生に生きる者達だからか、食事は手短に済ませた様だ。


 ……そう言えばこの世界では日本語は通じるのだろうか?


ゲームの設定では日本語圏の国が多く、英語と日本語が良く話されている……だったと思うが。


 考えながら歩く俺の足元が急に盛り上がった。


「何だk……!? 」


 視界が黒に染まる。


視力を奪う魔法!? 違う、飲み込まれたんだ!


確か初心者殺しのモンスターに土虫じむしと言うのがいた。


自分の再生する器官をちぎって地面に放置し、それを食べに来た動物を地下から襲う巨大な虫。


 ……小人ゴブリン達が水浴びを(臭いを消)してから肉を食べていた所で気付くべきだったか……。


ミミズの様なフォルムに十字に裂けた口が女性プレイヤーに嫌われている……ニタニタ動画で実況プレイを見た知識があって良かった。


 だが分かった所で状況を打破出来た訳ではない。


クソ、とりあえずはダメージ状況を確認しないと……。


「ふへーはふほーふん! 」


 言えては無いが、ステータスオープンと言おうと思ったことが大事だ。


言えなくともウィンドウは表示される。


……えっと、大丈夫だ、怪我ダメージはない。


しかしどうしたものか……。


〈ぐぎしゃああああああああああああああああ!!! 〉


……ッ!?


何だ!?


「おわっ!? 」


 吐き出された俺の目に映ったのは分断された土虫の体と。




体液に濡れたステータスウィンドウだった。




 ……………………え? ステータスウィンドウ、当たり判定あるの?


滅茶苦茶切れ味良いじゃん。


これ、もしかしてチート能力?


「ステータスオープン! 」


 ゲームシステムたるステータスウィンドウを使って倒したからか、経験値は入らない様だ。


使い勝手悪っる!


恐らく使い方は斬撃と防御……って所か。


pcのウィンドウみたいに端の部分をスワイプすれば大きさを変えられるからそれを利用して大型の盾にしたり広げた先の物を切ったり……。


でも俺の強さが分かってしまうデメリットを考えないと。


応用は効きそうだが、慣れるまでに時間が掛かりそうだ。


 そういえばステータスウィンドウ以外にもこんなのがあった。


「テキストチャット」


俺の右上に半透明の吹き出しが表示される。


ステータスウィンドウが武器になるのならこれも使えるかもしれない。


使えたとしても俺の正面に出るステータスウィンドウよりは不便そうだが。


 試しに〈ああああ〉と文字を打ち込むイメージをしてみる。


うん、ちゃんと表示された。


手で触ってみると文字には触れられ、吹き出し自体には触れられない。


空白をイメージしてみる。


〈ああああ  ああああ〉


空白の部分はちゃんとすり抜ける。


使い勝手は悪いが、窓より応用の範囲が広そうだ。


ううん……。




「そこの人間の少年、失礼ながら先程から拝見させてもらっていたのだが、何をやっているのかとんと見当がつかぬ」


 頭を悩ませる俺に話しかけるものがあった。


『人間』と俺を呼んだ通り、彼女の体には人間にはない特徴がある。


茶髪の上に生える猫の耳、地獄の炎の描かれた着物のすそから覗く尻尾しっぽ


 そして何よりも俺を驚かせたのは、胸部にある二つの大きな膨らみだ。


あんなものはファンタジー世界でしかあり得ない。




……世界に慣れたからか、はたまた俺の中に巣食う男の性なのか。


それは分からないが、そんな事にしか目が行かない自分に少し幻滅した。

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