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VIII:いきなり狂った執事

……なんか今更な小説になりました。

あぁ、この回を読んで下さっている方の気持ちが伝わって来そうです……

とりあえず、ごめんなさい(笑

 夏の暑さを少し残した太陽の日差しがディーリアスを照らしている。数日前の天気予報で今日は大雨と出ていたが、予報は大きく外れて雲ひとつない晴天となった。

 アランは広いリムジンに興奮しながら、向かいに座るノエルに話しかけた。


「マジで良かったのか? ノエル……」

「何が?」


 本当ならば今日、エヴァレット国はガーネット国に跪かなければならなかった。


「か、金だよ! 一千万ドルって……」

「あー、あんなはした金で動くって案外貪欲だよね、ガーネットも」


 ノエルは右手をヒラヒラさせて笑った。

 ノエルにとってはお小遣い十ヵ月分だけで国が救えたし、買えた。一年分にも満たない高校生のお小遣いで。


「いや、あんなの……はした金じゃないだろ!」


 そして今日、ノエルが買収した国を視察しにいく。

 今、ノエル達を乗せているリムジンはディーリアス城から向かって北西にあるエヴァレットに向かう最中だった。


「国の皆にもノエルの事を話したんだ。皆喜んでたよ……金がないから満足にお持て成し出来ないが」

「大丈夫、承知の上だ」


 前座席に座っていた悠璃が振り返って満面の笑みで……違う、周りに暗黒のオーラが見えてきそうな笑みで言った。


「傷つく……」

「心配すんなって! 俺、本気だからな! そのために俺の私財は出来る限りエヴァレットに費やすから!」


 柄にもなくしゅんと落ち込むアランを励ますかのようにノエルは言った。

 ノエルの私財は有り余るほどあった。一つの国が一千万ドルだとすれば最低でも百国以上は買える。最近では自分の私財が多すぎて正確には覚えられない。というのが悩み。変な悩みである。





「ノエル様だ!」

「我が国の救世主様!」


 言いすぎだ。ノエルはそう呟いてリムジンから降りた。

 港が直ぐ近くにある所為か何となく潮臭い町。現代とは思えない古びた町だった。


「ふーん……難住民が多いんだな、ここ」


 見回さなくても家が無く、着の身着のままで生活している者はそこかしこにいた。それに比例して街も矢張り薄汚い。

 店も道を行き交う人も少なく、しっかりと建っている家も少ない。

 エヴァレットの王城も薄汚かった。敷地はそれなりにあったが、城壁のヒビが酷く、城門には蔓が絡まっている所もあった。そこら中の地面に小さな雑草が生い茂っている。とてもじゃないが一王族の城とは言えない。それでもまだ酒と靴を買うくらいの余裕はあるだろうに。


「あっ、ノエル! 雑草だからって踏むなよ! こんなんでも食べれる草とか食べれる実が生る事があるし」


 アランはしゃがみこんで一つの雑草に触れた。何の変哲もないただの雑草。どこにでも生えている雑草で、それくらいならノエルも目にしたことがあった。

 春になると頂辺にピンク色の可愛らしい花を咲かせ、今の時期には紫色の細長い実を生す。

 ディーリアスの王城にも三つ四つ咲いているのをノエルは見たことがあった。


「春になるとコイツは実を生すだろ? あれ、食えるんだぜ! よく食堂行くとデザートにのってるよな」


 ノエルは口をあんぐり開けて驚いた。


「(そんなものを出していたのか、特学院)」





 エヴァレット城で昼食を済ませ、アランとノエルと二人の執事は城が見渡せる灯台に登った。ウィルはイアンに呼ばれて今はいない。


「まずは城を綺麗にしよう」

「でも人手が足りねー」


 この城には使用人が五十人しかいない。ディーリアスの王城の約十分の一程度。しかしエヴァレット城は敷地だけ無駄に広い。


「ふふん! 俺を誰だと思ってる? 召し使いくらい雇えるぞ!」


 ノエルはリオに持たせている大きなスーツケースを指差した。恐らくあの中には晩餐会の時と同じような額の札束があるのだろう、とアランは思った。


「それに壁とか塗り替えるお金もねーし……」


 数百年前の、まだエヴァレットが上級国だった頃の写真には空のように透き通る青い城が写っていた。草木も無造作に生えているのではなく、ちゃんと庭師によって整えられている。

 今では薄汚れ、輝きを失い、廃墟のような城になっている。


「それって百万ドルくらいあれば足りるかなぁ?」

「……うん」


 金銭感覚の間違っているノエルにアランは何も言えず返事だけした。


「あとさ、悠璃……難住民達の数を数えてきてくれる?」


 ノエルは用意してもらった銀色のカウンターを悠璃に手渡した。

 ノエルの考えていることが早々と分かった悠璃は笑みを漏らす。


「かしこまりました」

「んで、リオは街の様子を調べてきてって……臆病のリオには酷だな、俺も行こ」





「八十七、八十八、……八十九っと」

「あ! 悠ちゃんだぁ!」


 悠璃が真面目に暗くて狭い路地で難住民の数を数えていると、建物の上から男の子の声がした。その声は明らかに“この間”の集まりにいた声。


「……流石、ちゃんと執事やってるねぇ!」

「そういうお前は仕事してるのか?」


 顔は黒いフードに邪魔されて見えないが、明らかに身長は百二十を超えているか否か。声からしても絶対に小学校低学年だ。


「んー? 悠ちゃん程はしてないけど、してるよぉ?」

「だが、何でここにいる」

「しーらないっ! 新しい気配を追ってきたんだけど、消えちゃってさ! そしたら悠ちゃんがいたの!」


 男の子は小さな細い足で立ち上がり、数十メートルある高さから飛び降りる。普通の人間ならば運が良くて重傷だが、下手すれば死んでしまう。しかし、男の子は何も感じないのか表情を変えない。


「新しい気配? この国にか?」

「うん、でも消えたよ……」





「それにしても凄いな……街の状態が」


 道はいつ舗装されたのか分からない程ヒビの入ったコンクリートで、畑と見える土地はいつから畑としての機能を失ったのか分からない程雑草で荒れていた。


「まずは土地だよな……」

「いや、ちげーよ。国民の方が……」


 ノエルの言葉に反応してアランがそこら中に倒れている難住民を指差した。


「だから土地を直し住めるようにしなきゃじゃん」

「そ、そうか」


 幼き政治家達の話し合いの最中、


 ピシッ


「……?」


 地面に皹が入る音を聞いたリオは異変を感じて後ろを向いた。


「……っ!」


 恐怖で言葉が出ない。

 そこには人であって人ではない者、人の形をしていて人の気ではないものを放つ者がいた。





「……!」

「……またぁ!」


 遠くで話していた悠璃とその子供も感じた異変。

 悠璃は血相を変えて走り出す。ノエルの近くに“あの気配”。


「やっぱり執事だよねぇー……悠ちゃんは。僕の出る幕ないかな」


 取り残された子供はフードを深く被って、悠璃とは反対方面に歩き出した。





「ノノッノエル様……!」


 怯えた声でリオは前にいるノエルを呼ぶ。しかしノエルはアランとの政治話の真っ最中で全く気がつかない。


「逃げてください、ノノエル様!」


 やっと声を張り上げることのできたリオに気がつくノエル。


「は?逃げるって何から?」

「あ、ウィル!」


 アランがリオの視線の先にいる人物を見て嬉しそうな声を上げた。

 リオを怯えさせた者とはウィルだった。ウィルからはとてつもない殺気が溢れている。しかしその場でそれに気がついたのはリオだけでノエルもアランも気がつかない。

 当たり前のようにウィルに近づく二人。リオには二人が飢えたライオンに近づくようにしか見えない。


「駄目です! ノ、ノエル様、コイツに近づいては……」


『邪魔だ、執事よ……そこをどけぇぇ!』


 狂ったように怒鳴り散らすウィル。そこで漸くウィルの様子がおかしいことに気づく二人。

 ウィルは猛スピードでノエル達に向かってくる。その速さはもう人のものではない。充血した目はもう直ぐで飛び出しそうで、額には青筋が何本も見える。いや、青と言うとりは赤のような……


『殺す殺す殺す……コロス殺す殺すころっ……』


 リオは腕を広げて主を守る。

 目の前まで迫ってきた化け物のようなウィルは右腕を天高く振り上げた。その手には鋭く光る大きな斧が握られている。少しでも刃に触れただけで皮膚を裂いてしまいそうな切っ先。一回で綺麗に首が切れそうな鋭い刃。

 それがリオに向かって振り下ろされる。


「リオっ!」


 ノエルの無力な声が辺りに響いた時、その光はやってきた。


君臨者くんりんしゃ紅血与交力こうけつよこうりょく紅赤べにあか


 突然、紅の光が上から降り注ぎノエルとアラン、リオを包み込む。


前書きでの蒼空がおかしかった理由、わかりましたよね?

今更、マジなファンタジーに……

この小説っていろいろと裏切る(読者様方を)ことが多いと思います。

それを承知でお願いしますよ……(汗


で、では(逃

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