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III:国立特学院

やっと第三話……ですね。

お待たせして申し訳ございません!!

待っていて下さった方がいれば本当に!!

今回は学院でのノエルです!!

「お早うございます、ノエル様」


「うわっ!」


 朝の五時丁度にベットから転げ落ちたノエル。


「大丈夫ですか?」


 布団を引っ張り上げ、主を転げ落としたのは執事服に身を包んだ悠璃であった。

 悠璃は主人に対する無礼を働いたのにも関わらずニコニコと笑っている。


「どうせ、今日もお昼まで寝るおつもりだったんでしょう」


「そんなわけねぇ! だって今日は学校だぞ?」


「では、お早くお着替えください」


 悠璃は手にしておいた男子用の白いブレザーを椅子にかけた。その横にカバンを添える。


「只今、あのクソバカを呼んで参ります。リオにお着替えを手伝わせると良いでしょう」


「何で? お前でいいじゃん」


「……」


 悠璃は笑顔のまま一瞬止まる。


「いえ、俺は厨房の方でメイド達に呼ばれていますので……申し訳ございません」


 そう言って彼は出て行ってしまった。

 きっとメイド達の中でもハーレム状態なんだろうなぁ、とノエルは淡い桃色に浸り始めた。



「ああああっあの! 」


 連続であを言い過ぎて何を言っているのか聞き取れないが、分かるのは一つ。この声はヘタレ執事のリオだ。

 リオはノエルの部屋に入るでもなく、廊下からノエルに向かって声を掛けていた。待つのも面倒くさいので着替えを一人でも始めようと上半身を露にしていたノエルは肩を震わせて驚いた。


「ばっばか! 早く入って閉めろ!」


 ここで新米メイドなんかが通ってしまえば、慣れないから叫ぶかもしれない。

 ノエルは急いでリオを引っ張り込んだ。


「す、すいません!」


 体が折れ曲がるのではないかと思うほど、リオは腰を曲げて謝った。もう直ぐで頭が地面につきそうだ。


「いーよ、それより……シャツ持って来てくれたんだろ??」


 あろうことか悠璃が忘れ物をし、シャツだけが用意されていなかった。

 しかし今、白いシャツは綺麗に畳まれてリオの手にある。


「は、はい」


 冷静になれ、とでも言い聞かせているようにリオは真剣な顔になった。だが、手はまだ震えている。


「皺が消えてる……」


 昨日、新たな執事を迎えるためにクローゼットの服を自ら掘り返し、シャツをぐちゃぐちゃに置いていたのに皺が消えている。確か昨日の夜もそれをノエルは見たが、気に留めず放っておいた。


「は、はい。お皺が酷かったので着心地が悪いのではと思い、勝手ながら皺を直させていただきました……、それと小さなシミに気がついたので特殊な洗剤でシミ抜きもさせていただきました……」


 自信無さげにリオはそう言った。

 やっぱりコイツは執事でヘタレ執事だ、とノエルは思う。


「さーんきゅっ! どうりで最初、温かいと思った!」

「わっ」


 ノエルはぐしゃぐしゃと恐れるリオの頭を撫でた。

 少年は髪をぐしゃぐしゃにされながらも「ありがとうございます」とやっと笑顔を作った。





「お待たせしてしまい、申し訳ありません」


 五時半頃、ノエルの部屋に入ってくる少年二人。

 彼等は国立特学院の特階級執事用の黒い制服を纏っている。ちなみにノエルはもちろん学院ないで一人しか着れないという幻のファースト一階級生徒用の白い制服。


「これを」


 リオが渡して来たのは学生鞄だった。


「今日の授業を予め調べ、教科書をご用意いたしました」

「ありがとう」


 久しぶりの学校に鞄が重かろうと動じないノエル。それもそのはず。荷物もちは執事の仕事でもある。


「はい、リオ。ノエル様の鞄をお持ちしなさい」


 悠璃は手下のようにコキ使っているリオに持たせた。ノエルから見て体力は絶対に悠璃の方がある。





 車での登校、約一時間。

 やっと三人は車から降りることが出来た。

 目の前に聳え立つビルの学校。ここはどこかの都市みたいな所だ、とノエルはいつもいつも思う。

 敷地が広く、保育園が三つ、幼稚園が二つ、小学校が五つ、中学校が八つ、高校が三つ、大学が四つある。

 東西南北と四方の対角に合わせて八つ門がある。

 リムジンを停められる数は五十。

 高く五十階を越えると思われるビルは全て大学。ここの大学は全ての学部が揃っている。

 三十階を超えるのは高校。二十階を超えるのが中学と小学校。十階建ての建物は保育園と幼稚園。

 そしてビルに比べたら小さいが、普通の家より大きい家がここには二万戸ぐらいある。それは全て学院の教職員達の家である。殆どの生徒が寮生活を強制させられている為に教師も学院で暮らしている。自宅通学が許されているのは本当にお金持ちの家のみ。

 ノエルは論外で、城にいなくてはいけないから何も言わずとも自宅通学。

 車の通るコンクリートの道路際に街と同じ緑の小さな木が植えられた花壇がある。中央には金でできた噴水があり、ディーリアス王国の初代国王の像が飾られている。もちろん金である。


「いつも思うんだよ、王国の城はあんな西洋の昔の城って感じなのに、どうして学校とかこんな今時なのか」

「それは、ディーリアス王国の王城が古代古くからあるからでしょう。流石世界一古い城ですよね」


 ノエルはちゃんと知っていた。しかし納得がいかない。自分の城より高い建物なんか。

 高いビルが沢山並ぶ中の銀の建物。隣にあるアルヴィン大学より一回り小さいビル。

 そこは三つある高校の中でファースト一階級生徒を含む黄金階級の生徒だけが通うボリス高等学院。学費は年間二十億。生徒数は僅か二百人。


「そういえばさ、リオって高校生なのか?」


 ノエルは気がついて後ろにいるリオを見た。

 どうみても中学生……大きな小学生にしか見えない。でも着ている制服は悠璃と何一つ変わらない高等の執事黄金階級生用のものだ。


「えと、あの……僕は……」

「……ノエル様、リオは現在十二歳ですが飛び級制度を使いましてノエル様や俺と同じ高校生なのです」


 有り得ない。ノエルはそう思った。次期国王のノエルも飛び級できる学力を有していた。しかしノエルの場合は二学年先まで。つまり高校三年生になれるにはなれる。リオの場合は小学六年生から中学を飛び越えて高校一年生になっているのだ。


「恐れ多くも俺とリオはノエル様と机を並ばせて頂きます」


 どこぞの会社玄関のような自動ドアを通り、広いロビーを歩く。ノエルが歩くたびに回りにいた生徒、教師、校長までが頭を下げていく。それを見て悲しそうな溜息を吐いたノエル。

 登校確認をする際に寄るフロントではノエルに手間を掛けないように事務員が……


「生徒手帳をお翳し頂かなくても大丈夫です」

「私どもが処理をしておきますので」


 そう言ってノエルだけフロントをスルーさせる。

 いつもノエルだけが特別扱い。当たり前のことだと分かっているが矢張りノエルは気が乗らない。学校を行くのも二十歳を過ぎるまで義務化としたのは国だ。それなのに王族は通わなくて良いだとか言う奴がいるのもノエルは気に食わなかった。

 義務としたのは国、ならば王族は模範となるべきではないのか……





「ノエル様だ」

「ノエル皇子よ」

「王太子」


 ノエルが教室に足を踏み込んだ瞬間に始まる<ノエルコール>。女子も男子も先生も声をそろえる。ノエルに頭を下げた後に目をやるのは新しい執事として同じクラスに通うことになる悠璃とリオの姿。

 悠璃とリオは執事、本来はそこら辺にいる生徒達より立場は物凄く下。それでも頭を下げられる。


「それにしても……案内はないのですか?」


 皇子が教室へ行くには普通校長か、良くて教師がついてくる。そして皇子の機嫌をとりながら談笑するのだった。

 しかしノエルにそれはない。


「ああ、断っているからな」

「何故です?」

「そういうの面倒だから」


 ノエルは入学してすぐについてくる教師に自分で行けると言い、断った。特別扱いもやめて欲しいと頼んだ。学校側は極力特別扱いをやめてくれたが……


「ありえなくね? 食堂とか俺だけ無料だし、トイレなんか特別に俺専用の個室を作ろうとしたんだぜ? 並ばないように」

「ぷっ……」


 それを聞いて悠璃は初めて吹いた。すぐに無礼だと気づき、口を押さえて下を向いた。


「……、それに授業中絶対に俺を指さないし」


 それはしたくても出来ないだろう、と悠璃は吹き出しそうな笑いを抑える。そして思うのだった……自分と似ていると。

 三人は並んで席についた。

 教室は妙な雰囲気に包まれる。

 久しぶりに皇子が来たという緊張と、新しくノエルの横にいる爽やか美少年と可愛い少年は誰と聞きたいが聞けない女子達……ノエルの前に座っていた男子は皇子の前なんて耐えられず小説を持って席を立ち、窓辺で携帯電話を弄っていた女子の集団は慌てて携帯を閉じる。教室の後ろにある巨大画面で映画を見ていた集団も慌てて電源を消す。


「本当にやめて欲しいよな……普通にしてくれたらいいのに」

「……無理ですよ、でもノエル様は幸せな方です」

「え?」


 悠璃の微妙な表情に気がつき、リオは目を逸らした。


「よぉ! お前って何者?」


 突然、ノエルの目の前に現れたのは制服を着崩し過ぎの男の子だった。


一、二話と比べて少々長くなったかと思いますが、

読んで頂けると幸いです。

またまた誤字脱字等が御座いましたら、

お知らせください!!


ブログをやっております!!

よろしければお立ち寄りください!!



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