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XIX:炎の中の暗闇

オーストラリアから今さっき帰ってきました。


お久しぶりです。蒼空悠雅です。

一週間と空いてしまいましたが、飽きないでください。

執事さんを。

「やっぱり……また俺なんだな」


 アリシアは地に開いた大きな穴を覗き込んで落胆した。

 穴の中からは熱い風が吹き出し、下手に覗けば顔を焼いてしまいそうだった。

 ここは火山の火口である。あちこちに溶岩があり、人を寄せ付けない。人は必ずごつごつとした地面で躓いて落ちていく。登ろう者がいようなら容赦なく邪魔をするのだ、ここの溶岩達は。


「当たり前だろう、アリシア。お前は炎の術者でもある」


 アリシアは剣士であり、炎を操る術を得意とする。アリシアの炎は太陽の温度に近い。触れた瞬間、普通の人間ならば悲鳴を上げることもなく、一瞬で消えるだろう。骨すらも残さない。


「アリシアの炎の結界ならば、火山のマグマくらい防げるだろう」


 アリシアは渋々、悠璃に言われる通り炎の結界を作り出した。

 五人を包んだ炎の結界はマグマの中へと入り込む。



「あちー……」


 結界に力を注ぎ、強度を保たせているアリシアは片手で汗を拭いながら呟いた。

 周りは火の海……マグマの海だ。結界で守ってはいるがマグマの熱気は入ってくる。結界もまた密閉状態の丸い球体の中に五人の人がいるのだ。吐き出された息は行き場を失いその場で留まる。


「トレイシー、もう少し風を強くして」


 汗を掻きながら掌で小さな竜巻を起こすトレイシーにアリシアは言った。


「無理だよ。熱くて風が上手くコントロール出来ないし……これ以上大きくしたら僕の手に収まらない」


 シリルは幼馴染ののんきな発言に呆れを混ぜた溜息を吐いた。


「ルイスがいれば……少しは増しかもしれないが」


 ルイスは氷の術者だ。アリシアとは真逆だが、その威力は同格である。触れた者は一瞬にして凍りつく。組織の一族は別だが、それ以外が凍りついたのならば永遠に解かれることはない。


「……ほら。文句を垂れている間に、見ろ」


 アリシアは右手の人差し指で下のマグマを指差した。

 そこだけ大きく周りを吸い込むように渦が出来ている。渦の中心部は黒く、中は漆黒の闇が限りなく続いていた。



「あら? 噂をすれば……」


 守護者の侵入に気づいたイザベラは嬉しそうに声を上げた。


「はぁ、でも面倒だわ。まったく先祖もさっさとアシュレイを殺してしまえば良かったのに! そしたら私達、こんな面倒なことしなくて済んだのよ!」


 イザベラは子供が駄々を捏ねるように頬を膨らませた。


「殺していたら俺達は存在しないぞ」


 ロイドが静かにイザベラに言った。


「それにしても……五人の守護者を相手にするのは辛いな。引くべきだろう」


 ロイドの言葉にイザベラがますます頬を膨らます。しかし、しばらく兄を見つめて諦めたのか悔しそうに溜息を吐いた。


「まぁいっか。お兄ちゃんが言ってるのはディーリアスの子も連れて、でしょ?」


 イザベラの問いにロイドは口端を上げた。

 そして一礼してロイドがノエルの前に立つ。


「失礼」


ドスッ


 ノエルの腹に衝撃が走る。喉に何かが込み上げてくる感じがしたが、ノエルは気を失ってしまったのでこみ上げてきたものは吐き出されず、下がっていく。


「行きましょ」


 ロイドがノエルを抱えた。――その時。


パァンパァンッ


 銃弾が二発。後ろから放たれた。

 放たれる前にロイドは気配を感じたので頬を掠るだけだった。


「なっ……」


 ロイドの髪が上へと舞い上がり、ノエルは体が浮きそうな感じを認めた。図書館の屋上から宙に舞うあの感覚を思い出す。

 何の前触れもなく床から風が吹き上がり、大きな渦を作る。それは段々大きくなって巨大な竜巻と化した。


「きゃぁ、髪が……」


 流石のイザベラもこれには困っているようだ。ロイドもまた顔を顰めながら吸い込まれないように両足に力を入れて立っていた。


「おい、ノエル様がいることを忘れるなよ、トレイシー」


 竜巻を起こしたトレイシーは、はっ、として竜巻を消した。


「動くなよ」


 トレイシーの竜巻に気を取られていたイザベラとロイドの背後にはいつのまにかアリシアが迫っていた。ジュリーに防御の結界と気配を消す結界を張ってもらい、アリシアは息を殺して近づいていたのだ。

 二本の黒い長剣に炎を宿し、二人の首元に据える。少しでも触れたらあの世行きだ。

 

「いつのまに……っ!」


 ロイドは自分より背の低いアリシアを睨みつけた。

 その様子を見て、アリシアは面白そうに笑みを零す。彼女は人が驚いたり憎しみに満ちた顔を見るのが好きなのだ。


「きゃぁぁあ、気持ち悪い!」


 イザベラが悲鳴を上げる。

 二人の手足に絡まる触手。紫色でそれぞれが意思を持っているのかグネグネと自由に動いている。

 それはシリルの幻覚。実際にはそんなものはない。


「……君臨者くんりんしゃ血変攻針ちへんこうしん、紅赤」


 悠璃は自分の掌の皮膚を裂き、血を出した。それが細長い針へと姿を変える。

 尖った先端が二人の方向を向き、一斉に刺しかかる。

 針は両手、両腕、両腿、両足に刺さり、二人を壁に押し付けた。

 近くにいたアリシアがノエルの腕を引き、自分の元へ寄せる。


「リオがいれば……」


 悔しそうに悠璃が呟いた。

 組織の連中を死なせるのは骨が折れる。彼等は生命力が自慢であるからだ。

 心臓を抉っても死なない。炎で身を焼いても、どんなに重いものに潰されようが死なない。だが、彼等は決して不死ではないのだ。


「そんなのがいても無理よ」


 壁に押さえつけられているイザベラが高々に声を張り上げた。

 彼女の髪から一本の細長い白煙が立っている。それは暗闇の部屋に充満して視界を霞ませた。

 突如、何かが弾ける凄まじい爆音が轟いた。


「……っ。偽者?」


 五人は覚束無い足で必死に体勢を維持し、イザベラとロイドのいる方へ目を凝らした。

 遠くから見る限り、彼等はもう息をしていないようだった。肌の色は二人とも紙のように白く、瞳からは完全に色が失われている。


「……逃げたか」


 悠璃はポツリと呟き、唇を咬んだ。

今回は一応、可愛そうなのでノエルを奪還……

それと同時にアリシアが物凄く書けて嬉しいです。

アリシアの個性……なんだろう(オイ。


アリシアをもう少し詳しく書きたい……一話丸々アリシアの話を書きたいなぁ。

蒼空はアリシア大好きなので。

どのキャラも好きですが!

きっとアリシアは絵で見ると可愛いし格好いいのです!

そして凛々しく頼もしく強くて可憐で……憧れだ。

すいません。妄想に浸りました。


では。

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