XVI:現れた者
なんかまた……意味不明なことになってる気がします。
今回もまた方向性間違ってますし。
しかしリオが……リオがかっこよく見えたのです!(←
では。
成人式から一週間が経ったある日。
学院の第四保健室にてノエルはリオから傷の手当てをしてもらっていた。二十一階から一番近い保健室は第四保健室だ。他の保健室はエレベーターを使っても五分は歩かなければならない。
ノエルは階段で足を挫き、二、三段転がって膝を擦りむいただけだが、出血が意外にも止まらないために近くの保健室へ入った。
生憎、先生は会議で保健室を開けていて中は誰もいない。会議ということは他の保健室にもきっと誰もいないだろう。ならばここでリオに手当てをしてもらった方が早い。執事にとって擦り傷程度の怪我の手当ては朝飯前だ。
悠璃はまたまた所用でどこかへ消え、一学年上のシリルとトレイシーはもう授業に入っているだろう。
「いっつ……」
リオは消毒液のついた綿を挟んだピンセットをノエルの膝に軽く当てる。
ノエルの膝の傷口からジワリと小さな痛みが広がった。
「す、すいません」
「大丈夫、大丈夫」
ガラッ
保健室の扉が静かに開き、人の気配が流れ込んできた。
「皇子はここかしら」
甘く美しい女生徒の声が人の少ない広い保健室に響き渡る。
女生徒は小さな足音を響かせて中へ入ってきた。保健室の一角にある白いカーテンが開かれ、ノエルの瞳に自分と同じくらいの少女の姿が映る。少女はシリルよりももっと白に近いクリーム色の髪を揺らし、ノエルを見つめた。
「いた」
しばらく女生徒を見つめていたリオは突然、何かを感じ取ったのか持っていたピンセットを床へ落とした。カラン、と虚しい音が響き、女生徒はふとリオを目にした。
にぃと口角を上げて笑う。
「執事ね、初めまして」
瞬間、見慣れた紅の光が保健室中に広がった。
光源はノエルの隣にいるリオだ。
「四伎……紅弾」
リオが両手を前に広げて言霊を唱えると、保健室を覆い尽くしていた紅の光が集まって光の弾を作り出す。それは神々しく輝き、凄まじい速さで少女目掛けて飛んでいった。
少女の腹に辿り着くと光の弾は弾けて消え失せる。
紅の光に少し濁った違う紅の体液が飛び散った。真っ赤というより少し黒ずんでいて、赤よりも絶望感がある赤黒い液体だ。
終わった……かと思われたが、今度はリオ目掛けて黒い光が飛んできた。
「七伎……結界」
リオは直ぐ様、紅の光を集めて盾を作る。黒の光は結界にへばりつき、グイグイと結界に力を叩きつけた。リオは更に力を込めて結界を支える。力は容赦なくリオの体力を奪っていき、リオの額からは大量の汗が噴出し、顔色がどんどん悪くなっていた。
なんとか結界は持ち堪え、黒の光を跳ね返す。しかしそれでは終わらない。
リオは次に念のため、再び紅弾を飛ばした。
二度、保健室に紅の光が爆発する。
爆発音の次に何かが潰れる音がした。骨が潰れた音だ。
今度こそ仕留めた……そんな気がした。
「甘い」
いつの間にか後ろへ回り込んだ少女はリオを勢い良く蹴り飛ばした。リオはその場から数メートル弾かれ、床に転がる。
少女は確かに血だらけだった。黒に近い血を流し、手足の骨が折れている。それでもリオを数メートルも蹴り飛ばす力が……
「リオっ」
ノエルの声に反応してリオは閉じかけた瞼を思いっきり上げた。そして力を振り絞って立ち上がり、ノエルに手を伸ばす少女目掛けて走り出す。
「三伎……紅槍」
紅の光が三度、収束して細長い槍を数本作る。それがリオの言霊と同時に少女に突き刺さった。突き刺さった瞬間はノエルも見た。一番近くで……
四本中四本の槍が少女に突き刺さり、黒に近い血を噴出して少女は倒れた。それと同時にリオの背中に何かが突き刺さる。
「うっ……」
一拍置いて、リオの背中から床へ大量の血が滴り落ちる。
「リオっ!」
また一拍置いて、リオが床に崩れた。
その後ろにいたのは先程までの少女とは違い、悠璃と同じ黒の髪を腰まで伸ばした少女。
「リオ!」
ノエルの呼びかけにリオはピクリとも動かない。リオの周りに紅の光よりも濃い真っ赤な血が広がっていく。
黒髪の少女はにぃと口角を上げて笑い、数秒していきなりノエル目掛けて走り出した。ノエルが逃げる隙さえ与えず、一秒でノエルの目と鼻の先だ。
ガツッ
思いっきり腹を殴られ、ノエルは意識を失った。
どうでしょう、リオ!
なんか凄くありません?
まだまだあるんですよ、リオの力は!
それにしても悠璃が一回も出てこない話なんて初めてじゃないですか?
ではでは。