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XIV:秘密

今回は眠気と戦いながらの投稿ですね(オイ。

まーた、しっくりきません。場面的にいいところなのに。


ではでは。

 成人式の日。


「……――ノエル様、成人式をお迎えになられたこと、お祝い申し上げます」


 大臣の三十分に渡る長々しい挨拶が終わり、手を叩く音があちらこちらで高々と鳴り始めた。今から成人式兼パーティーである。拍手の音が鳴り止んだのを見計らい、白のスーツに身を包んだノエルは壇上に上がり、シャンパンを手に取った。

 それを口にゆっくりと流し入れる。これは成人だから酒が飲めるようになったぞ! の意で成人式では誰もが壇上に上がり酒を口にする。

 下でアランが羨ましそうに眺めていた。


「美味しかったですか? ノエル様」


 壇を下りると悠璃が嬉しそうに笑っている。その隣では今朝、漸く目を覚ましたリオも微笑んでいた。


「うーん、まぁまぁかな。会議とかパーティー以外では飲まないことにしとくよ」


 ノエルは会場の端にいるアランに目を留めた。

 アランもノエルに気がつき沢山いる客の間を早足ですり抜けてやってきた。


「ノエル! さっき悠璃に聞いたがまた……」


「大丈夫、リオが何とかしてくれたよ」


 そう告げるとアランはとても信じられない様子でリオを見た。大方、あのチビが!? と思っているのだろう。


「ノエル」


 後ろから名前を呼ばれたノエルは、首を横にして尻目でその姿を確認する。そこにいたのはノエルの最も近い従兄であるチェスターだった。

 その両隣には見知った顔が二つ。両方とも昨日、初めて会った顔だがノエルは何だかもう何年も知り合いだったような気がしてしまう。

 昨日はシエルが帰宅する直前まで入り浸り、いつの間にか城から姿を消していた二人。


「チェスターさん……っとシリル!? トレイシー!?」


 その二人とは、いつもより優しそうなシリル。それからいつもと変わらないトレイシー。二人はチェスターより一歩後ろに下がり、姿勢を正して立っていた。


「何だ、知り合いか? コイツ等は学生だが俺の執事で……」


「……」


 ノエルは思わず絶句した。学生ということは昼間はいない執事ということになる。いつもいないエミリアよりは良いかもしれないが……


「チェスター様、お口がご馳走で汚れております」


 シリルは真っ白なタオルを出し、チェスターの口周りを吹いた。チェスターはたまに餓鬼だと思ってしまう程子供っぽいことをやらかすのだ。

 それ以前にあのシリルが敬語で世話を焼いている、という事にノエルは驚きを隠せない。学院では執事じゃないので一般生徒の服を着ているから分からなかった。多分、知っているのは同じグリフィス国の生徒か学院の教師くらいだろう。まさか口も悪く、態度も悪いシリルが執事なんて考えもしないことだろう。


「失礼な」


 シリルはノエルの心を読んだかのように静かに呟いた。


「ノエル? 何してんだ?」


 横からアランが沢山の料理を皿に盛り、近づいてくる。


「うわっ!」


 その時、テーブルの椅子に足を引っ掛けて皿を放り投げた。海老やサラダ等、多彩な料理が空中に身を躍らせた。それら全てはこの国の皇子にして今現在のパーティーの主役、ノエルに降りかろうとしている。


「あ」


 ガシャン

 ギリギリセーフと言うところだろうか。悠璃が身代わりになってくれたお陰である。

 ノエルは悠璃に押され、悠璃は皿を頭から被った。

 汁物も少しあったので服は濡れている。スーツの中に着ている純白のシャツに汁物が染み込み、薄茶色のような気持ちの悪い色へと変色しつつある。


「あ、ありがと悠璃。大丈夫?」


 悠璃は頭に乗った指ほどの大きさの海老を取り、テーブルの上にある一つの皿におく。掃除係の数人の使用人が面倒臭そうに駆けつけてきた。


「大丈夫です、それより後でアランの心配をしてあげてくださいね」


 悠璃の微笑みは天使の微笑みのようだが、良く見ると何かが違う。言葉の意味が瞬時に分かるとそれだけで、悪魔の嘲笑に見えてしまう。そう考えるとノエルは悠璃の纏う深く底のない闇のような濁ったドス黒いオーラが見えなくも無い気がするのだ。

 つまりはこの後、アランの身に何かが起こるということだ。

 悠璃はその場を後にし、自室に戻っていった。



 ノエルは悠璃の様子が気にかかり、悠璃の自室の前にいた。リオは会場に置いてきぼり。

 ノエルは腕を組んで部屋の前をくるくると時計回りで回っていた。未だ悠璃の部屋に入ったことがないのだ。


「何で主が執事の部屋入るのに悩むんだ?」


 そんなことを考えていると何だか自分達の主従関係に不安を抱き始めたノエル。ノエルは意を決して扉のドアノブを回した。半ばやけくそに。


「あ」


 扉を開けると部屋から悠璃がいつも身に纏う爽やかな空気があふれ出してきた。一見、悠璃の部屋は白一色で家具が少なく物寂しい。

 悠璃は着替えるためにシャツを脱ぐところだった。細いお腹が丸見えで胸の辺りには何か白い布が……


「うわっー! ノっノエル様!?」


 珍しく慌てた様子で汚れたシャツを着直す悠璃。ノエルは完全にフリーズ状態。何かをブツブツと唱えて今にも気絶してしまいそうな……


「も、もしかして見ました? 下……着……」


 悠璃はシャツを下に引っ張りながら何かをブツブツと唱えるノエルの顔を覗いた。


「悠璃……お前、む……胸に……今、ブ、ブラ……」


 半ば顔を赤らめながらノエルは言った。ノエルの視線は完全に言葉に出てきたそこだ。

 部屋に逃げたくなる程の沈黙が流れた。


「お前……」


 実際は二分くらいの沈黙がノエルにとっては十分に感じ、矢張り耐えられないので声を出した。


「そういう趣味が……」


 その瞬間、悠璃は倒れる勢いで脱力した。思いっきり主に対して最大の呆れため息。

 それもそのはずである。彼……いや、彼女は見た目完全に男なのだ。僅かな人間には女の子に見える事もあるようだが、胸も無ければ女らしさもない。可愛いというより格好いい方なので殆どの人は悠璃が男の子だと信じてしまう。それでも正真正銘の女の子。


「違います! この際、白状しちゃいますが、俺はこうみえても生別学的上、女! なんです!」


 悠璃が少々荒っぽく、語尾を強めてノエルに言い寄った。しばらく、ノエルは固まって動かなかったが、段々、悠璃が女だと理解したのか顔を物凄い勢いで赤らめていく。


「……すいません。言っていなくて……でも、言いにくいじゃないですか!」


「だけど……っ!」


 執事には隠し事されたくなかった! と言い掛けてノエルは口を押さえる。怒ってはいない。悠璃が女だって事に驚きはしているが、怒ってはいない。ノエルは何かやりきれない気持ちに顔を顰めた。どうして悠璃は女なのに執事をしているのか、と聞きそうになったがそれも言わない。きっと理由があるからだった。


「……男として小さい頃から育てられたからですよ」


 ノエルの心の中だけの疑問に対して悠璃は静かに答える。

 その時、ノエルはとある本について思い出した。この間、日本の成人式の話をした際に初めて日本について興味を持ち、図書室で密かに調べていた。日本の文化と貴族について。その中には武道を主としている貴族家、如月があった。その家の掟の中に女児は男児として育てるとの事が書いてあったのをノエルは思い出したのだった。


「……でも、何で黙ってたんだよ!」


 ノエルは少女と知った悠璃に大声で言った。怒鳴るとまではいかないが何時もより強く。


「ご、ごめんなさいっ」


 いつも冷静沈着な悠璃の面影はどこへやら。そうして肩を竦めている姿は女に見えなくもない。しかし矢張り、どちらかと言えば叱責を受ける少年である。

 その何時もと違うギャップに負けたのか、しょうがないなぁ、とノエルは溜息を吐いて言った。


「別に、知ったからどうこうって話じゃないよな。辞めさせるわけにも公表するわけにもいかないし。魂守ってもらわなくちゃいけないし」


 ノエルは呆れた笑みを見せながら、背中を向けた。

文法で何かを沢山間違えている。そう思えて仕方ありません。

間違えている気はするのに眠くて何を間違えているのやら……

自分の存在ですかね……


では。

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