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XIII:空を飛ぶ

今回はリオの能力が十二分の一ほど露に(少なっ!

あとトレイシーですかね。

シリルもいいできです(笑

 図書室の出入り口には人ではない気を放つ者が足をふらつかせながら立っていた。手には鋭く光る細長い鎌が握られ、獲物を今か今かと待ち構えているようだった。


「あれってもしや……」


 ノエルが汗を掻きながら化け物のような者を指差した。


「はい、組織の者かと」


 悠璃は構えもせず、ノエルの腕を引いて一歩下がる。今回は紅の光に包まれない。悠璃とノエルが下がったのを見てシリルとトレイシーも一歩どころか数歩下がった。動いていないのは体の小さなリオだけだ。


六伎りくぎ……」


 リオが小さく呟くように言霊を唱える。その瞬間、悠璃の時と同じ紅の光が弾ける様に広がる。血の色が辺りを覆い尽くし、図書室の面影など無くなってしまった。


「……消滅」


 瞬間、化け物の体が弾け、肉片が飛び散った。ノエルの頬に本物の赤い血が飛びつくほどに。

 しかし、ノエルが自分の頬についた血を確かめる前にその血は跡形もなく消える。飛び散っていた肉片も気がつけば無くなっていて、あっという間にただの図書室へと戻っていた。人ではない人が死んだ跡は何処にも無い。


「あれ?」


 ノエルは自分の目を疑った。たった数秒だ。瞬き一回した位で死体が、肉片が消えるはずが無い。そうノエルは思い辺りを見回し、自分の頬を確かめる。やはり、ない。

 ドサッ

 ノエルが状況を飲み込めないでいると、リオが力尽きたように倒れた。間一髪、悠璃がリオの肩を掴み引き上げるがリオに反応はない。息はしている。


「ノエル様、心配ありません。リオの能力は一発で殺せる、消せると便利なのですが体力と精神力を激しく消耗させますので、いつもこんな感じです」


 悠璃はリオを背負う。リオの顔色はあまり宜しくない。早く帰って休ませた方がいいだろうと考え、ノエルは机に置いた鞄を持った。


「(あれ? こんなに重かったっけ?)」


 いつも鞄をリオに持ってもらっているノエルは久々の鞄に腕が下がる。それを見かねたシリルがノエルの鞄を奪うようにして持った。


「でも、リオがそれじゃ目立つよね。空飛んでく?」


 トレイシーが窓を全快に開け、青い髪を爽やかに揺らして振り向いた。


「それは有難いんだが、トレイシー」


「図書室の窓から飛ぶ方が目立つぞ」


 悠璃に続いてシリルがノエルの鞄を軽々と肩にかけて言った。


「あ、そうだよねぇ」



 図書館の屋上。

 十五階の屋上はそれなりの高さで風も強くて冷たかった。下を見ると人間は蟻とまではいかないが、小さいのには変わりない。ここから飛ぶのだとしてもまだ目立つ。


「飛ぶってお前等、飛べんの?」


「いえ、十人の中で飛べるのは風使いのトレイシーだけですが、彼は物を浮かせたりも出来る……いわゆる超能力者みたいな者なので、それの応用として俺達も」


 超能力者に空を飛べる奴など存在しただろうか、とノエルは思わず思ってしまう。


「最初は怖いかもしれないよ、皇子様は大丈夫かな?」


「最初じゃなくてもアレは怖い」


 シリルの独り言に悠璃が隣で二回、首を縦に振った。悠璃が怖いと思うなら確かに怖いのかもしれないと思うノエル。


「トレイシー。ノエル様を落としたら貴様、どうなるか……」


「え? 普通に死刑だよね、だって皇子様だし」


 悠璃は多分、そっちの意味で言ったんじゃない、とノエルは心で呟いた。その隣のシリルもまたそうだった。


「じゃぁ、はい。皇子様は僕と手、繋ごうか! そしたら安全だし」


 トレイシーは手をノエルに差し出した。意外と大きくて白くて綺麗な手だ。指は細くて長いし、爪も綺麗に研がれている。

 ノエルはしぶしぶ、自分の手も出す。

 その瞬間、浮遊感がノエルを襲い口を左手で押さえた。ノエルの足は地についていない。そこから二十センチ程の高さでフヨフヨと浮いていた。その後ろでは悠璃もシリルも浮いている。


「行くよー」


 その掛け声でトレイシーは強い風を起こし、リオを含めて五人の身体を空へと飛ばした。ノエルは絶え間ない吐き気に襲われ、しかし下は王都。吐くことは決して許されない。

 地上何メートルかは定かではないが、雲すれすれの高さだ。



「大丈夫ですか? ノエル様」


 トイレから出てきたノエルを悠璃は心配した目で見た。トレイシーの風によって城まで帰った後、ノエルはトイレに駆け込んだ。


「ごめんねー、あれ少しきついよね」


 トレイシーがノエルの部屋のソファーで紅茶を片手に寛いでいる。その後ろでシリルが腕を組んで壁に寄りかかっていた。リオは自室で寝かせている。

 そんな時、部屋の扉が二回ノックされた。部屋には入城許可されていない人物が二人。ノエルは慌てて二人を部屋の隅へと追いやった。そこは扉から丁度死角になっている。


「入るぞ、ノエル」


 その声はクレイグのものだった。


「あ、兄貴! あんま入んないで」


 ノエルは自ら扉に近づき、クレイグが侵入してくるのを止めた。使用人にシリル達が見つかるのならともかく、クレイグに見つかるのは少し危ない。何故かといえばノエルが彼等の説明をし難いからである。


「? まぁいいや。ノエル、地方から大臣や国王が来てるぞ、挨拶しとけ」



「おおっ! ノエル!」


 王城の敷地内に設けられた来客用のホテル。それは南門のすぐ近くにあり、出入りも楽な場所だった。南だから日当たりも格別。来客として訪れるのは大体が偉い地位なので娯楽施設も沢山ある。

 ノエルはその中でも特別な部屋、一等室の第五部屋に顔を出した。

 中は流石、一等室と言った感じで、床全面がレッドカーペット。天井にある電気は全てシャンデリアで、ソファーは吸い込まれそうな程、フカフカである。壁に埋め込まれた石は全て宝石でその額は一部屋につき十万ドルを超えるだろう。


「やっぱり、チェスターさんが自ら赴いて下さるとは!」


 一等室の第五部屋にいたのはエメラルドグリーンの髪色をしたノエルより十センチほど背の高い青年だった。髪に少し金が入っていればクレイグと見間違えそうなほどである。

 彼は第十の属国であるグリフィス王国現国王。ノエルの父方の従兄で、僅か十九歳という若さで王位についた。現在はクレイグと同じ二十三歳である。


「あたりまえだ、今は一国の王だ!」


 若いと言うのもあり、気さくで国民想いな国王であるチェスター・グリフィスは従弟の肩をバシバシと叩く。しかし、しばらくしてその手を止め、胸に手を当てノエルの前で傅いた。


「我等の王となるノエル様の成人を心よりお喜び申し上げます」



 そうだ、とノエルは歩を進めながら思った。

 あの後、チェスターと少し話をして部屋を出たノエルは一直線に伸びる廊下を足早に進んだ。

 明日でノエルは成人となる。つまりは大人の仲間入り。

 ――次期国王としてちゃんとしなければならない。本当は分かっている。学校なんか通っている場合じゃない。学生なんかやっている場合じゃない。父が死ぬか引退すれば自分は世界で最も大きな国、ディーリアスの国主なのだ。慣れなきゃいけない。敬われることに――


トレイシーはどんな性格か分かりました?

シリルも。あの二人の間には何かありそうですよねー(ェ...


では。

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