I:不思議な執事さん
この小説は割と明るい小説です。
そして超長編と予定しておりますので、
気を長くしてお読み頂けると幸いです。
そして知っている方がいたら嬉しいのですが、元出水悠弥です。
グロ小説ばかり書いていた自分が、新たなPNと共に新しい道を……
「ノエル様、この間お話した新しい執事が参りました」
◇
時は二十六世紀。
人類に戦争はない。
地球はディーリアス、ダーウィン、ケアードの三つの王国によって治められている。
◇
「新しい執事って……日本のだろ? 英語話せんのかよ」
太陽の光のように輝く金髪に、鋭く赤い瞳の男の子は黒のスーツに身を包み、首をスカーフで緩く絞めた。
「もちろんでございます。話すことが出来なければノエル様の執事など務まりません」
それもそうだ、とノエルは飲みかけの紅茶を手にする。夕日のような赤い紅茶はゆらゆらとノエルの顔を映す。
「どんな奴?」
「成績は優秀だそうですよ……とても良いと執事学園も絶賛で……」
世話人のベティはノエルの寝巻きを丁寧に畳んで手にかけた。これで数週間、彼女が任されていた世話人としての仕事が終わり、“ノエルの世話係”という重役から外されて使用人に戻る。これからは日本から来るという二人の新しい執事の仕事となるのだ。
「もう一人は?」
「もう一人の方は……まだ見習い執事だそうで、ご無礼を承知で接してあげてくださいませ」
最近の奴はろくなのがいない、とノエルは呟く。しかし、これでまた自由になれる。そう思うと無礼だろうがなんだろうが良い気がする、とノエルは笑った。
「さぁ、広間に待たせています。参りましょう。クレイグ様もお待ちですので」
ベティは服を持ってノエルの部屋の扉を開けた。
普通は執事がこちらに赴くものだ。しかしまだ二人の執事の部屋は整えられておらず、出入り出来ない。
多分、兄貴に足止めされているな、とノエルは考える。
廊下は眩しくて目が一瞬霞むほど輝いていた。床はラメ入りのレッドカーペット。付属品のように飾られる絵画や花が活けてある花瓶は全て最低でも一万ドルは超える。天井にはシャンデリアが三メートル間隔でぶら下げられ、それが廊下の果て……数百メートル続いている。防犯用監視カメラは何故か金箔で包まれている。
階段の手すりも金に光り、下はレッドカーペット。滑りにくくて大好評。
階段の近くにある扉を開けると廊下とは比べ物にならないほど光が溢れている。眩しすぎてしばらくは真っ白な世界。目が慣れると段々黄色になってくる。
「お、ノエル! やっと来たか!」
目がやっと慣れる頃、ノエルの前に現れたのはエメラルドグリーンと少し金の入った髪をした青年だった。
「兄貴!」
ノエルが兄貴と呼ぶ青年は自分の後ろを指差して……
「ご機嫌麗しゅう、いえ……おはよう御座いますでしょうか? ノエル様」
案の定。クレイグに足止めされていた執事がいた。
日本人特有の黒くて長い髪を前の方に垂らして結び、それまた特有の黒い瞳が眼鏡越しに見えた。一瞬、女の子に見えたがノエルは首を振って、そんな筈ない、と言い聞かせた。
「ご、ご機嫌麗しゅう? ぼ、僕は……」
語尾と笑顔が引きつり、肩を震わせながら挨拶をする少年。明らかに見習いだ。
ブラウンの髪はとても日本人には思えない。染めているのだろうか?? 瞳だけは黒いが。
「背筋を伸ばす、言葉ははっきり、堂々と!」
隣にいた黒髪の男の子がビシッと茶髪の少年を叩く。
「私は悠璃、如月悠璃。こっちは見習い執事のリオ。まだまだ教育が足りないのでノエル様にはご迷惑をお掛け致しますが、どうぞ温かい目で見て頂けますようお願い致します」
悠璃はニコリと笑って頭を下げた。笑顔にとても可愛げがあり、ノエルは再び悠璃が女の子に見えてしまう。
今までの執事とは全然違う。見た感じノエルと同年代で、悩み相談にも乗ってくれるかもしれない。同い年くらいだからスパルタではないだろう。学校でだって彼等はきっと生徒としてノエルについてくる。彼等と初めて会ったときから毎日が楽しくなりそうな予感がノエルから離れない。
「ノエル、ノエル!」
兄貴である青年が小さくノエルを手招きした。ノエルは少し上機嫌にスキップしながらその場へ向かう。青年は心配そうな顔をしながらノエルの耳に口を近づけて言った。
「気をつけろ」
と。何に気をつけるのかは言わなかった。
「ちょっと待って兄貴。気をつけるって? 誘拐の話?」
「違う。それもそうだが……あの執事達は……」
そう青年が言いかけた時、一人のメイドが一礼して入ってきた。彼女は青年の専属メイドながら滅多に城にいない謎のメイド。
都合が悪くなったのか、青年はノエルに答えず部屋を出て行ってしまった。次期国王のノエルよりいつも忙しそうにしていた。
「さて……私はこの王都に初めて足を踏み入れました。少し見て回ってきても宜しいでしょうか?」
悠璃がにこりと笑って首を傾げた。
「俺も行く!」
ノエルは即座に手を上げて飛び上がった。半月ぶりなのだ、ノエルにとって城を出て街に行くのは。いつも執事がいないと城を出てはいけないから。
「はい。では参りましょう」
ノエルは知らなかった。
彼等が何者なのか、何の為に王宮へ上がってきたのか……
小説らしく書くのは少し読みにくいとの事で、
スペースを取りました(取り過ぎ。
誤字脱字等がありましたらビシバシと指摘してください。
蒼空も出来る限り読み返し、見直しを行っております(授業中など)が、
蒼空は馬鹿かつ鈍いので直ぐには気づきません……
ではでは、二話も是非お読みください。