第6話 光学迷彩の応用版
「エレメンタルソード」
「暴風剣」は使わないにせよ、剣そのものは召喚しないと持ってないので……俺はそう唱え、剣を召喚した。
「……は?」
それを目にした試験官の目が点になる。
「……その剣は、どこから?」
「魔法で召喚しただけですよ」
「そんな伝説の魔法を、軽々と……」
試験官は、何だか父みたいなことを言い出した。
まあ、エレメンタルソードに限らず召喚魔法はチャクラの回転速度に僅かな誤差も許されないので、今となっては本当に伝説扱いされてても違和感が無い気がしているが。
とりあえず、試験官が固まっていては試験にならないので、俺は「始め」の合図をしてもらうよう試験官に促した。
「は……始め!」
そう言って、試験官は剣を冗談に構えて俺に斬りかかってくる。
その瞬間……俺は「光学迷彩」の応用版の魔法を発動しながら、自身の位置を半歩ずらした。
「そこまでだ!」
試験官はそう言って、半歩ズレる前俺の首があった位置に、剣先を突きつける。
「魔術の方は規格外だったが、剣術はさっぱりのようだな……」
などと試験官が喋っている間に……俺は歩いて試験官の後ろに回り込み、後ろからその首に剣先を突きつけた。
と同時に、俺は使用していた魔法を解除する。
すると……試験官が剣先を突きつけている先にいた俺が、徐々に薄くなって、しまいには完全に消え去った。
「それ、残像ですよ」
そう。
俺は、光学迷彩を応用した「残像」という魔法を使っていたのだ。
光学迷彩とは、自分に当たる軌道を通る光を迂回させることで、自分を視覚的に透明にすること。
とどのつまり、光学迷彩魔法は光の進路を操作する魔法だ。
である以上……その魔法をちょっと応用すれば、逆に何もない位置にあたかも自分がいるかのように見せる光の操作もできる。
それが、「残像」なのである。
試験官は俺の「残像」に切っ先を突きつけ、勝負を決めた気になっていた。
だが実際は、そこにはいない本物の俺が、試験官に気づかれることなく後ろに回り込み、逆に試験官を追い詰めていた。
この勝負は、そういうカラクリだったのだ。
「……え?」
試験官は何が起こったのか理解できていないらしく、しきりに目を白黒させた。
「俺は……負けたのか?」
試験官は膝をつき、しばらく呆然としていた。
彼が我に返り、試験結果を記録しだすまでには数分の時間を要したのだった。
◇
そして……試験官が、記録を付け終わった時。
「じゃあこれで、試験は終了だな」
試験官はそう言って、試験を終えようとした。
だが……俺はそこで試験官を引き留め、こう頼んでみることにした。
「待ってください。あの……追加点欲しいんで、使い魔試験も受けさせてもらえないでしょうか?」
すると試験官は怪訝な表情になり、俺にこう質問してきた。
「ダメとは言わないが……そもそも君、使い魔なんて用意してないだろ? この試験、使い魔がいないと話にならないんだが……」
そして試験官は、こう続けた。
「もっとも、『今すぐ使い魔を用意できる』とでも言うのなら、話は変わってくるがね」
……使い魔、今すぐ用意すればいいのか。
だったら、問題なくいけるな。
試験官の話を聞き、俺はそう確信した。
別に俺だって、何の根拠もなしに使い魔試験を受けたいと言ったわけではない。
たまたま上空に、臨時の使い魔候補の魔物が飛んでいたので、ならば追加試験を受けようと決意しただけなのである。
このタイミングでそういう魔物が上空にいるかどうかは、完全に運次第だったのだが……どうやら、天は俺に味方したみたいだ。
「MK-47」
俺は威力を調整した銃弾魔法で目当ての鳥型の魔物の顎を狙い、気絶させて地面に落とした。
「な……空から鳥が?」
「しかも古代種……あの災厄を、たった一撃で?」
「でも、使い魔試験のために撃ち落としたんですよね……。てことは、まだ生きてる?」
この場にいる俺以外の三人は三者三様、様々なことを口走りだした。
俺はそれらには構わず、撃ち落とした鳥に近づく。
そして……回復魔法をかけ、目を覚まさせた。
さあ、じゃあこれからしばしの間、コイツには俺の言う事を聞いてもらおうか。




