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第5話 特性変化を使ってみた

「な、何いいいぃぃぃっ!?」


 水晶にできたヒビから猛然と黒煙が立ち昇るのを見て……試験官は、目玉が飛び出しそうな勢いで驚いていた。



 ……大丈夫か、これ?

 普通に試験を受けていただけなのに、弁償する必要が出てきたりはしないよな……。


「あの、これもしかして、弁償しなくちゃいけなかったりするんですかね……?」


「魔法の才能、測定上限越えだと……」


 俺は心配になって試験官に質問したのだが、試験官は心ここにあらずといった様子で会話がかみ合わなかった。


「あ……あんな事ってあるの……?」

「一体何をどうやったら、あんな結果が出るんでしょう……」


 後ろでは少女二人が、この世の終わりでも見たかのような表情でそんな会話をしていた。

 どちらかといえば、おかしいのは魔道具の設計の方だと思うんだがな……。



 試験官が我に返るまでには、しばらくの時間を要した。

 ようやく試験官が「いかんいかん。結果を記録せねば……」とペンを走らせだしてから、俺は再度試験官にさっきの質問をした。


「この水晶、弁償しないといけない感じなんですかね?」


 すると試験官は首を横に振り、こう答えた。


「いや、その必要は無い。この水晶は、測定上限越え以外の理由で、黒煙を上げながら故障することはないからな。もっとも、そんな故障の仕方はかつて前例が無いのだが……。君が真っ当に試験を受けようとした結果こうなったのは分かっているから、心配は要らないよ」


 ということで、俺の不安は杞憂のようだった。

 どうやら、真っ当に結果を出そうとした結果ギルドの備品が壊れた場合は、問題にはならないみたいだ。


 良かった。

 いきなり借金とか、そんなスタートは勘弁願いたかったからな。


「と、とりあえず……次の試験に移ろうか。次は、実際に魔法を放つ試験だ。準備をするから、ちょっと待っていてくれ」


 試験官はそう言うと、奥の倉庫に何かを取りに行った。

 試験官が持ってきたのは……魔物の革で作られた、一体の人形だった。


「これは魔法に強い魔物の革を原料に、更に魔法耐性を付与して作られた試験用標的人形だ。受験者一同には、これに向けて魔法を撃ってもらう」


 試験官は、そう次の試験内容を説明した。


「まずは試験番号001番の……」


 そしてさっきと同じ順番で、まずは少女たちから試験を行うこととなった。

 せっかくなので「チャクラサーチ」を発動し、俺は二人が魔法を放つ様子を観察することにした。


 二人とも……チャクラの回転速度を一切調節せずに魔法を放っていた。


 この二人の場合はちょっと特殊なケースで、自然状態のチャクラの回転速度が若干火属性魔法に適していたため、辛うじて火球を放つことができていた。

 だが……やはり変換効率がガタ落ちしているのはフランソワの回復魔法の時と同じで、その威力は貧弱なものだった。


 あれが、冒険者登録試験を受けようとする者の魔法にはとても見えない。

 だが二人の様子は、いたって真剣なものだ。

 やはり……この時代では、チャクラの回転速度を調整して魔法を放つのは一般的ではないのか?


 疑問が確信に変わりつつあった時。


「次、試験番号003番、レイン。お前はこれを受けなくていい気しかしないが……規則なので、やってくれ」


 余計な一言と共に、俺の番がやってきた。



 これ以上近づいてはいけないことを示すラインの前に立ち、人形を見据える。


 原料となった魔物は……風属性か。


「特性変化。対風属性——極ダメージ」


 それを確認した俺は、チャクラの回転速度を、風属性を相手にする際最適な速度に調整した。



 チャクラは魔法の制御に関わる器官で、魔法を適切に放つにはその回転速度の調整が重要。

 それは間違いのない事実だ。

 だが実は、この表現はあまり厳密ではない。


 厳密には、俺たちはチャクラの回転速度を調整することで「自身の体の性質を特定の魔法を放つのに適した状態にし」、魔法を放っているのだ。

 チャクラとは、身体の状態を変化させる魔法器官。

 それが結果的に、魔法の発動に重要な役割を果たしている、ということなのである。


 そして、チャクラはこの意味で、もう一つ大きな役割を持っている。

 それは、自身の『特性』を決定するというものだ。

 俺たちはチャクラの回転速度を調整することで、特定の属性に対して「打たれ強く(被ダメージ激減)」なったり、「めっぽう強く(被ダメージ微減・与ダメージ微増)」なったり、「極ダメージ(与ダメージ激増)」を与えられるようになったりするのである。



 ちゃんと訓練した者なら、特性変化と魔法発動への回転最適化は同時に行うことができる。

 相手はただの人形であり、自分が攻撃を食らうことは考慮しなくていいので、特性は与ダメージ特化の「極ダメージ」にするのがベストだ。


 その調整をしたら、後は魔法を放つだけ——。


MK(マナカラシニコフ)-47」


 俺は無属性の銃弾魔法を、人形に向けて放った。

 特性変化で本来の4倍近くのダメージを与えられる魔力弾は、あっさり人形を貫通し……そして、人形を粉々にしてしまった。



「な……」


 ふと試験官の方を向くと……試験官は口をあんぐりと開け、記録を取ろうと身構えたまま完全に硬直してしまっていた。


「どうなってんのあの人……」

「あの人形って、Sランク冒険者でも壊せるのはほんの一握りだったはずじゃ……?」


 二人の少女からは、そんな会話が聞こえてきた。



 試験までの待ち時間、俺は暇だったのでギルドが無料で提供しているパンフレットを読んでいたのだが……確かそこに、Sランクは最高のランクって書いてたよな。

 そのレベルの人たちが、今の人形を壊すのでやっとだというのか……?


 これは……もう、確定だな。

 俺は今まで抱いていた疑念を、完全に確信へと変えた。



 そんな中、試験官は水晶の時よりも長い時間かけて我に返り、俺の試験結果を記録した。


「では次、剣術試験に移る。人形を倉庫の戻す手間が省けちまったからな、早速始めるぞ」


 試験官はそう言って、腰に提げてあった剣を抜いた。


 この試験も今まで同様、二人の少女から先に行われた。

 剣術の方は二人とも、駆け出しの冒険者としてはまあ十分だろうってくらいの腕前だった。


 二人の試験が終わり、俺の番が来る。


「次、試験番号003番レイン」


 試験官はそう言って、訓練場の真ん中に来るよう俺に合図した。


「暴風剣」は無差別全方位攻撃だから……二人の受験者まで吹っ飛ばしてしまうので、ここでは使えないな。

 エレメンタルソードは使うにしても、今回はまともに剣で戦わなければならさそうだ。


 そんなことを考えつつ、俺は試験官に呼ばれた方に歩いていった。


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