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サキ

 「あっ丈くんおはよー」


 「…おはようございます」


 サキは今年で35になる。


 小学生の娘2人を育てパートタイムでコンビニに勤め、生活費を稼いでいる。


 娘の行事がある時は仕事を休んで参加することになるため時間的に融通の利くこの仕事を始めた。


 もっとお給料のもらえるところに勤めたいのは山々だった。


 サキは元々それほど学歴が高いわけでもなく、将来についてもなんとなく考え就活はしたけど、結局OL時代に出会ったサラリーマンの彼といい感じになって付き合うことになって子供を授かり、育休を取ることに会社がいい反応をしなかったのでやめさせてもらうことにした。


 妊娠中は彼が仕事をして働いて得たお金でやりくりをしていた。


 母や父には彼のことを始め妊娠中であるということも話した。


 当時はお腹が重く思うように動けないし急な貧血で立ちくらみも頻繁にあったので外出もままならなかった。


 そうすると家にいる時間が増えたので家事をやったり妊娠中の心構えなんかをネットで検索したりして勉強していた。


 子供が産まれた時にはその痛みに死ぬかと思った。


 でもおぎゃーおぎゃーと泣く娘の顔を見ると笑えた。


 言うまでもなく子育ては大変で自分の体調もそうだし子供の体調にも気を付ける必要があった。


 最初のうちはわからないことだらけでもらえる支援金の手続きなどもネットで調べた。


 そうこうしているうちに第2子を妊娠して育児と自分の体調管理に忙しくなりながらも夫の支えで無事出産することができた。


 2人の娘を育てながら家事をこなし、下の娘が眠ったら私も眠れる時に眠るようにしてるので、合わせて眠った。


 夜泣きに起こされミルクを与え、着替えやおむつの換えを用意したり大変だった。


 大変大変と思いつつも過ぎていく毎日は充実とも不満があるとも言えるもので、付き合いがあるからと夫が遅くまで帰ってこないことや帰ってきても疲れているからと育児を手伝ってくれないことも不満の一つの要因だった。


 夫とのデートらしいものは皆無で家族で出掛けるなんてことはそうそうなかった。


 出掛けても市役所や近所のスーパーなどの代わり映えのない日常と何ら変わりなく夫と妻の役割にずいぶん慣れてしまった。


 無邪気な夫は私と手を繋いで喜んでいたそれをみて思った”私がしっかりしないと”。


 あれは長女が3歳、次女が1歳になる年の冬だった。


 夫が鬱になってしまったのだ。


 なんでも会社にいくと考えると動けなくなるそうだ。


 「困ったことになったな…。」


 もう少し娘たちが成長して落ち着いたら共働きで…と考えてはいたが仕方ない。


 家のことは夫に任せ私が働きに出ることに。


 妊娠してからおよそ5年ぶりの社会生活に期待と不安の入り交じった感情を抱いた。


 やっていけるだろうか?いややっていかなければならないのだ。私と娘達の将来のために。


 そう考えてまずは仕事探しから始めた。


 ハローワークで仕事を探すのはもちろんのこと今はインターネットの求人広告などもあるので調べてみた。


 仕事はありふれていることがわかったが肝心の自分達の生活にとって何が目的なのかわからない。


 お金と、ひとくくりに言えばそれまでだが娘が急な発熱で動けなくなったときに融通が利く職場であることや、社会に対して顔向けできるような仕事であることも必要だ。


 夫にこれ以上心配をかけるような仕事は避けなくてはならないし、賄いで食費が浮いたりするような仕事もお金に含まれるだろう。


 そう考えるとこれまで勤めていたようなOLでは賄いもないし、託児所の類いは便利だが会社まで子供を連れていくのが大変なこと、もし万が一迎えに行けなかったときに夫が来れるかと考えた。


 これから幼稚園や保育園、小中高と成長するのだからまずは子供の急な体調変化に対応できるような職場にしようということで決めたのが現在勤めるコンビニだ。




 あの大変だった時から2年が経ち、娘は3歳と5歳、上は幼稚園に通う歳になった。


 もちろん生活は楽ではないが幼稚園に預けられることで余裕が少しできて仕事に回す時間を増やしてもいいかな?と思い始めシフトに多目に入れてもらうように店長に頼んだ。


 サキの家庭の事情を知っている店長は廃棄予定の弁当を夕方の仕事終わりによく持たせてくれた。


 夫は相変わらずうつで家にいるが娘の世話はしてくれるので助かっている。


 今後の生活や娘の教育費を考えると働いて少しでもお金を入れてほしいところだがあまり無理は言えない。治るのを待とう。




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