神輿の主役は一人でいい
12345678これで2小節 12345678これで4小節
12345678 12345678これで8小節
12345678 12345678
12345678 12345678ここまでで16小節
16小節=1バース
基本的なヒップホップの曲は3バースと3サビなので実際に文字を起こすと結構長くなる。
今回は16小節=1バースで起承転結が完結するように考えるものとする。
そのためにまず”テーマ”を決める。
また、起承転結を分かりやすくするために4444小節で分けるものとする。
でもこれぎっちぎちにルールを考えたらかなり頭が痛くなるんだよな…丈は思い当たる節があって苦笑した。
丈はいつまでにこの詞を書くと〆切を決めて韻を踏めてようが踏めてなかろうがよし、テーマからそれずに思うことを書き出していってとにかく期日、時間を意識して続けるようにしている。
そうして時間を決めて数をこなすことも意味があって質いわゆる技術は自分の書いたものに数字を振ったり検証することで自然と身に付くものだと信じている。
韻の踏み方は慣れない内は8のところに韻を持ってくるとやりやすいと思う。
また韻を踏むことに囚われると一番大事な”何を伝えたいのか”から逸れていってしまうと丈は思う。
”ラッパーとはこういうもの”という概念が”思いを表現する”本来の目的を邪魔しているんじゃないかと。
だから俺はひとまず”ラッパー”じゃなくて”表現者”でいい。
丈はそう結論付けたのだった。
これは今までと数字の使い方が違うんだけど…わかりやすく”あいうえお”に数字を振ってみるって方法もやったことがある。
まず”あいうえお”は”12345”だと決める。”やゆよ”と”ゃゅょ”は”135”、”わをん”は”153”、”スタート”は”3115”、”ゴール”は”553”だと決めてしまう。
そうすると例えば”丈”は”253”で”今日”も253””昨日”もラーメン屋”二郎”も”利口”も同じ”253”
そうして”253”の響きをもつ”単語”を演繹法の要領でどんどんアイディア出ししていく…
アイディア出しした言葉を2小節目の文末や4小節目の文末に当てはめたり、253253253253253の様にリズムを変えてそのパンチラインを強調する…
っていうのがひとつの方法。
演繹法の弱点は結局メッセージ性に欠けるというのが丈の悩みなのだ。
例えば二郎と丈のように名詞と名詞を組み合わせただけではなんの意味も示されない。
神輿の上で騒ぐ主役は一人いればいい、主役が複数いて神輿が重くなると担ぐ役割の連中に負担がかかって神輿を担げない、そいつらを活かす為に事前にコースを決めたり、警察や商店街に許可申請するなどの根回しをするやつも必要だ。
バースの主張はひとつでいい、主張が複数で言葉数が増えると1小節1小節に負担がかかって主張を通せない、主張や1小節1小節を活かす為にアウトラインを決めたり、韻の準備をすることも必要だ。
「韻は2文字とか3文字より4文字以上の長さだとうまく聴こえる件」丈はここでも悩む。文字数が長い言葉はなかなかないのだ。ないなら作ればいい。どうやって…
韻を踏むことを狙ってないような何でもない文章の中から”偶然のような必然”で韻を踏むとかっこいい。”~を掘り進む”(552333)”~のように”(5532)”袋小路から”(335532)”~に大通り”(255532)こんな感じで一見するとどこで踏んでんのかわからないように繋いだりして文章に味をつけると川を流れる清流のようにさらさらーっと聴こえる。
ちなみにこの川とか虫の声というのはポリネシア人と日本人以外の外国人には聞こえないと丈はようつべで見て驚いたことがある。
日本人には川の流れをさらさらと流れると表現したりちんちろりんと鳴くこおろぎやみーんみんみんみんみんみんみーんと鳴く蝉の”声”を文字として表現する文化があるが欧米や南米にはそういった習慣がないのだそうだ。
脳は左脳と右脳に別れていて左脳は言語、右脳は音を処理するそうで音を言語化しない習慣があると脳が川や虫の声を雑音と認識することから川や虫の声が聞こえないというバグが起こるらしい。
ちなみに意識して聞く習慣をつけると聞こえない文化圏の人でも聞こえるようになるらしい。
丈はこの先、世界中の多くの人に伝わる意味を持つ言葉をチョイスするか日本人に親しまれている擬音を表す言葉を選ぶかこの時はまだはっきりとした意思を持っていなかった。
それが元でこの先悩むことになるのだがそれはまだ先の話…