ボースハップン①
第2世界とはマルという種族が住む世界であった。マルは様々な成長をするように創造神ユグドラシルにより作成された。その結果、環境、自分の思いなどにより、マルは魚や鳥、人型などに成長し、それぞれで集まり、生活するようになる。
しかし、寿命がなかったため、生きている限り無限に成長するようになってしまっていた。ある個体は生まれた時から神の力を持ち、長年の時を生きたため、六源神に並ぶ力を持つようになり、さらに次元を移動する方法を手に入れ、第1世界に侵攻した。
結果は仲間割れにより、ある個体が仲間の手により殺されてしまった。ユグドラシルはこのことを生かし、人に制限を付けるようにした。また、次の世界からはフレースヴェルグに作らせるようにした。
前回のあらすじ
レイたちはゲームの開催日を迎え、参加する。参加するゲーム名は『ボースハップン』というゲームだった。それぞれが優勝を目指すことになり、4組に分かれ、新たな冒険が始まる。
****
ゲーム開催日、前日を迎えた。
レイたちはソルムのある場所に向かって、移動していた。その場所でゲームの説明があり、参加同意書をもらうためであった。このゲームに参加するためには同意書を読み、サインしたものを渡す必要がある。
歩き出して、目的の場所に着き、アモルが確認して言った後、ルキスが感想を言った。
「この建物ですね」
「ずいぶんとでかいねー」
「それだけ、参加人数が多いということだろう」
シュガーがそう言い、建物の中に入っていった。
そこには見渡す限りに人がいた。その中には見知った顔があり、こちらに近づき、声をかけてきた。
「やあ、レイ君にシュガーちゃんじゃん。やっぱり、参加するんだね」
「うん、フラースさんは勝てる自信はあるの?」
「ゲーム内容によるね。最後まで生き残れば、勝ちっていうゲームなら、自信ありまくりだよ」
「その条件で魔術師の中でフランに勝てる奴は少ないだろう」
そんな話をしていると司会が出てきて、挨拶を始め、ゲームの説明を始めた。
「今日はゲームに参加するために集まっていただきありがとうございます。さっそく、説明といきたいところですが、その前に我が国の王による簡単な挨拶をさせていただきます」
ステージの端から、ソルムの王が出てきて、司会からマイクを受け取った。ソルムの王の外見は20代の青年で金髪青眼だった。
「今日はゲームに参加するために我が国に来ていただきありがとうございます。ぜひ、ゲームを楽しんでいってください。負けたとしても、ソルムにはいろんなお店があるので観光を楽しんでいってください」
「ありがとうございました。それではゲームの説明をさせていただきます。今回、行われるゲーム名はボースハップンでテーマは『スタンプラリー』です」
テーマが発表され、会場がざわついたが、司会は気にすることなく、説明を続けた。
「まず、会場が2つに分かれます。町の中と外で行われ、町の中で行われるゲームは一般の人向けで安全は保障されています。しかし、町の外で行われるゲームは魔物などの危険性があり、安全は保障していませんが、その分賞品が豪華になっています。では、大会の勝利条件を言わせてもらいます。勝利条件は設置されている7つのチェックポイントに行き、そこで中に数字が刻んでいる結晶をもらい、それをすべて揃えて、ゴールにたどり着くことです」
内容が同じゲームが2つ行われるが、開催される場所がちがう。そして、開催する場所により、危険性が違う。
「次は反則行為について、発表させていただきます。共通事項として、瞬間移動や馬、空を飛ぶなどの移動手段は禁止です。この大会では自分の足で制覇してください。次は町の中での戦闘行為は禁止です。物は壊さないでください。最後に自分の身は自分で守ってください。細かい注意事項や反則行為は参加同意書で各自確認してください。これで説明が終わりますので、参加同意書を忘れず貰っていってください」
司会が閉会の言葉を言うとスタッフに参加同意書をもらい、帰る人の姿が見られた。レイたちも参加同意書を受け取り、外に出た。そこにセルバ・ストロムがいて、シュガーに話しかけた。
「シュガーさんじゃないですか。やっぱり、シュガーさんもゲームに参加するんですね」
「その予定だ。みんなに紹介するよ。こいつは森人のセルバ。俺の友人だ」
「みなさん、初めまして。僕は森人のセルバと言います。よろしくお願いします」
セルバの自己紹介を終え、レイたちも自己紹介をした。お互いのことを知り、セルバがあることを興味深そうに聞き、それに対しレイが答えた。
「ここにいる皆さんって、昔話で出てくる選ばれし英雄なんですよね?」
「フラースさんを除いたら、そうだよ」
「レイ君ってば、私を仲間外れにするなんて、ひどいよー。それにしても、セルバちゃんは私と同じ森人なんだね。仲よくしようね。仲を深めるためにお互いのことをもっと知らなくちゃね。苗字はなんていうの?」
「ストロムと言います」
「私たち、別れましょう」
「付き合ってもいないのに別れようと言われてしまいました。何が原因なんですか?」
「おそらく、セルの姉が原因だろう。俺も会ったことはないが、生真面目で頭が固く、融通が利かない性格だと噂で聞いている」
セルバには一人の姉がいた。姉は弟思いで真面目だった。同時にセルバも姉思いだった。
フラースはセルバの苗字を聞いたことでセルバの姉のことを思い浮かんだ。それで自分とセルバは合わないと思い、別れを告げたのであった。
シュガーはこのことを不憫だと思い、セルバに対しサポートした。
「フラン、セルと姉は関係ないだろ。自身の目でセルを見るべきだ」
「確かにシュガーちゃんの言う通り、セルバちゃんとお姉さんは関係ないね。ごめんね、セルバちゃん。君の事をろくに見てないのに決めつけちゃって。改めて、私と友達になってくれるかな」
「はい、こちらこそお願いします。あと、姉さんはいい人ですよ。ちょっと、頭が固いところがありますけど、僕の自慢の姉です」
「なら、セルバちゃんからも私の事を良い風に伝えておいてくれるかな」
こうして、セルバとフラースは友達になった。セルバに聞いたところ、レイたちと同じ宿屋に泊まっていたので、一緒に帰ることにし、それにフラースもついてきた。
****
宿屋に戻ったレイたちは参加同意書の内容を読んでいた。アモルは内容について、声に出して、確認した。
「大まかに要約すると外のゲームに参加した場合、死んでも責任が取れないので、自己責任ということですね。そして、中の優勝賞品が10万リラで外の優勝賞品が100万リラか聖印という物みたいですね」
「無責任だな」
「外で行われているし、仕方ないね。そのために外に出ない方のゲームもあるんだしね」
内容を読んだミラの感想にフラースはそれが当然かように答えた。
そして、シュガーがゲームについて、みんなに尋ねた。
「みんな、どうする」
「どうするって?」
「外と内、どちらのゲームに参加するのか。そして、どのように行動するのか。この2つだ。まずはゲームの参加について、確認しよう。俺は外のゲームに参加するつもりだ」
「俺も外のゲームだ」
「私も外のゲームだな」
アスラとリアマは外のゲームに参加することに決めた。アモルはシュガーに言ったことに疑問を感じ、その意図を尋ねた。
「どのように行動するのかとはどういうことでしょうか?」
「ゲームに参加し、優勝を目指すということはお互いライバルになるということだろう。争っているのに全員で行動するわけにはいかないが、1人で行動するのが不安に思う奴もいるだろう。特にミラとかな。それでどのように行動するのかを決める必要がある」
「2人組で行動することにしましょう。それで細かいことはペアと決めてもらうことにしましょう。レイ、どうやって、組を決めたらいいと思いますか?」
「くじとかどうかな」
「それで決定だ」
アモルの提案により、2人組で行動することになり、組み合わせはレイの発言により、くじで決めることになった。しかし、この方法だとある問題が残り、その問題にミラが気づいた。
「でも、私たちって、7人だよね。その方法だと1人余るんじゃあ」
「それなら、私が余った人と組むよ。楽しそうだしね」
ミラが気づいた問題にフラースは自分が参加するという解決策を出し、その策をレイたちは受けて入れた。
くじの先が赤、青、緑になっている物を2本ずつ作り、白になっている物を1本、合計7本を用意し、あとは引くだけだった。
「誰と組むことになっても仲良くしてくださいよ」
「そうだね。これは仲を深めるチャンスだよね」
ルキスがそう言い、全員くじを引いた。
「俺は赤だな。アモルは?」
「私は青です。もう1本の青を引いた方はどなたですか?」
「私だ」
「赤を引いたから、私はレイを組むのか」
「俺は緑だ。」
「ボクも緑だよ。アスラと組むんだね」
「俺は白だ」
くじの結果、レイはミラと、アモルはリアマと、アスラはルキスと、シュガーはフラースと組むことになった。
「そういえば、セルバちゃんはどうするの?私たちと行動する?」
「僕は中の方に参加して、自分のペースでやっていきます」
「そうか、頑張れよ。セル」
「ならさ、今からパートナーと作戦会議だな」
レイがパートナーと話し合うことを提案し、それぞれのパートナーと話し合うことになった。レイとミラはレイが泊まっている部屋に行き、アモルとリアマは自分たちが泊まっている部屋に行き、ルキスとアスラもルキスの部屋で話し合うことになり、シュガーとフラースはその場に残って、話し合うことになった。
****
「まず、どっちに参加するかだね」
「外でいいんじゃないか。私たちなら、魔物ぐらい対処できるだろ」
「ならさ、外でいいな。いざという時はフォルテがいるし」
「いざという時は頑張るが、相棒も頑張れよ」
「分かった」
「何、独り言を言っているんだ」
「ああ、フォルテと会話していた」
フィデスを使っていない限り、フォルテの声はレイにしか聞こえなかった。レイがフォルテと会話している時は周りから見れば、変な人に見られてしまうため、気を付ける必要がある。
「会話する場所に気を付けた方がいいぞ。変な奴に見えるから」
「分かった。気を付けるよ。あと、事前にお互いの能力を把握したいから、教えてもらってもいいかな」
「分かった」
ミラはレイに能力を見せるために自分のフィデスである七力理解を発動し、眼の色が青から金に変わった。
そして、右手に鎖を具現化させた。鎖は右指の指輪に付いており、鎖の先はリトスであるブレスレットに付いていた。人差し指の鎖の先をブレスレットから外し、左手で摘まんだ。
「私の七力理解は種族の独自の力を使うことができるフィデスだ。天力で鎖を具現化させ、それぞれの鎖に能力を付けている。人差し指の鎖はアイス・チェーンって言って、鎖に触れたものを凍らせる能力がある。この鎖を出している間は魔術を使うことができなくなる。親指の鎖はボンド・リンクと呼んでいる。この鎖は触れたものを強化させる能力だ。ほかの鎖はまだ能力がない」
ミラはフィデスを使うことで魔力、天力、竜力、翼力の4つの力を使うことができた。翼力だけはまだ迷っていたため、鎖に能力を付けていなかった。
「その2つの鎖はどの力を使っているの?」
「アイス・チェーンが魔力でボンド・リンクが竜力だ。ボンド・リンクは傷を回復させることを目的で作った」
「何か制限とかある?」
「今のところだが、鎖は3~5mぐらい伸ばせる。それ以上伸ばすこともできるけど、伸ばせば伸ばすほど鎖が脆くなる。使える鎖は1本ずつで同時使うことはできない。今はこの2つ。ほかにある?」
レイはミラのフィデスに疑問を浮かび上がり、それを聞いてみた。
「関係ないんだけど、今フィデスで使える独自の力は7つだよね?」
「そうだけど」
「もし、知らない種族がいて、その種族が独自の力を持っていたら、どうなるの?」
「正直に言うと分からないけど、多分使えるようになると思う。でも、その力がどの様な力かをちゃんと知ることが前提だと思う」
「そしたら、七力理解じゃあなくて、八力理解になるね。」
「そうだな。ほかに聞くことがないなら、レイの力を教えてもらいたいんだけど」
「分かった。今、使えるのはフィデスとアニムスと風の魔術の3つだ。魔術は風の弾を作って、撃つぐらいしかできない。あと、ミラのアニムスを確かめたいけどいい?」
「分かった。抜いてくれ」
レイはミラの胸に手をかざした。すると胸から武器がでて、それを抜き取った。抜き取った3つの棒は青く輝いており、それぞれの棒は鎖で繋がっており、それは三節棍だった。
「これがミラのアニムスだよ」
「アモルのアニムスは剣だったのに私のは三節棍か」
「このアニムスを持って、気づいたことがある」
「なんだ、何かしら能力があるのか」
レイはアニムスである三節崑を折りたたみ、片手で持った。
「すごく持ち運びがしやすい。携帯性がいいよ、このアニムス」
「関係ないだろ、それは。どうせ、それを使う時は私がそばにいないといけないし、持ち運ばないだろ。それより、何か能力はないのか」
「さあ、手に取ったばかりだから、それは分からない」
アニムスを抜かれたことがあるのはミラを除いて、アモル、リアマ、レイの3人だった。その中で能力が確認されているのはレイのアニムスだけだった。
「あと、アモルからフォルテになったときに自分からアニムスを抜いたって、聞いているけど、レイは自分から抜けないのか?」
「試してみる」
レイは自分の胸に手をかざした。しかし、何も起こらなかった。
「無理みたいだ」
「なんでだ」
「分からない。そもそも、フォルテは成長した未来の俺自身だから、アニムスを俺より使いこなしているからだと思う。使いこなせるようになれば、自分からも抜けるようになって、能力も使えるようになると思う」
「私のフィデスと似たような感じか。これぐらいの共有でいいか」
「そうだね。明日に備えて、早く寝よう」
ミラは別れの言葉を交わし、部屋から出ていった。ミラが出て、少しするとアスラが部屋に戻ってきた。
「よう、レイ。話し合いは終わったのか?」
「うん、終わったよ。俺たちは外のゲームに出るつもりだけど、そっちは?」
「もちろん、外のゲームに参加するぜ。ただ、ルキスがキルトって奴を探して、一緒に回りたいと言っていたから、そいつを探しながら回ることになる」
レイはルキスが興味を持ったキルトという興味を持ち、アスラに聞いた。
「ルキスが回りたいキルトって、どんな人なの?」
「俺も聞いてみたけど、なんか球を回す人でその回し方を学びたいらしいんだ」
「その説明だけだと何も分からないよ」
「明日になれば、分かる。今日はもう寝るぞ」
そう言い、アスラとレイは眠りについた。
****
朝を迎え、レイが起きるとアスラはもう起きており、部屋の中で体を動かしていた。
「おはよう、アスラ。今日もやっているんだね」
「これは毎日の日課だぜ。いつでも、体を動かせるようにしておかないと戦えないからな」
アスラは戦闘になったときに備え、目が覚め、起きると体を動かす習慣があった。
「下に行こうか。みんな、集まってきていると思うし」
「分かったぜ」
アスラは体を動かすことを辞め、レイと共に部屋を後にし、食事にするために食堂に向かった。
食堂にはルキス、シュガー、フラースの姿があった。レイとアスラは3人と挨拶を交わし、食事を注文した。食事が運ばれてきて、それを食べているとアモル、リアマ、ミラの3人が姿を現した。
「おはようございます」
「よう、遅かったな」
「男と違って、女にはいろいろあるんだよ」
アスラの言葉にミラは言い返し、席に着いた。
ルキスが口を開き、みんなにどちらのゲームに出るのかを聞いた。
「ねえ、みんなはどちらのゲームに出るの?ボクたちは外のゲームに参加するつもりだよ」
「私とアモルも外のゲームに参加する予定だ」
「私たちも外のゲームに参加するよー」
「俺とミラもだよ」
こうして、レイたちは全員外のゲームに参加することに決めた。
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食事を取り終わったレイたちは昨日説明を受けた会場に向かっていた。そして、会場に着いた。
会場の入り口ではゲームのスタッフがおり、レイたちは話しかけられた。
「選手の方ですか」
「そうです」
「サインをされた参加同意書を持参されていますよね?それと引き換えに渡すものがあります」
レイたちはスタッフに参加同意書を渡し、7つの穴が開いたアームバンド、番号の書き込んである地図の2つを受け取った。
「それでは説明がありますので、中でお待ちください」
レイたちは会場の中に入り、しばらく経った後、司会が前に立ち、ゲームの説明を始めた。
「みなさん、集まっていただきありがとうございます。まずは参加同意書と引き換えに受け取った穴の開いたアームバンドをどちらかの手首に着けてください」
会場に集まった選手たちは司会に指示された通り、手首に着けた。
「着けていただきましたね。アームバンドはゲームにゴールした時にこちらで外させていただきます。それ以外の方法で外した場合、失格になります。たとえ、それが不慮の事故でも失格になります。例外はありません」
バンドを守る必要があると同時にバンドの横取りを防ぐためのルールだとレイは思った。
「次に、この地図に書き込まれている番号の場所が結晶を受け取れるポイントになります。そこまでに行くのには自分の足で目指してください。ただし、自分の身は自分でお守りください。大会は責任を取りません。最後に勝利条件を確認させていただきます。自分のバンドに7つの結晶を揃え、ここに持っていただくことです。10分後に外でスタートしますので、準備をお願いします」
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外のゲームに参加する選手たちは会場の外に集まっていた。レイたちはバラバラに集まっており、一緒に回るパートナーといた。
ミラはどこからか回るかをレイに相談した。
「レイ、1から7のどこのチェックポイントから回る?」
「地図を見た限りでは1と7の間に川があって、4と5の間に湖があるみたいだ。湖は回りこればいいけど、俺たちじゃあ、川を渡る手段がない。だから、1から順番に行った方がいいと思うんだ」
1と7のチェックポイントは北の方にあり、チェックポイントは右回りに順番に並んでいた。
「大会のほうで川を渡る方法を提供している可能性があると思うけど」
「俺もあるとは思うけど、渡る手段がないやつはその方法を使うから、使うまでに時間がかかると考えられるんだ」
「それなら、最初からあてにしないほうがいいな」
「そうだ。それとポイントに向かう前にやることがある」
レイがそう言った瞬間、笛の音が鳴り響いた。それはゲームの始まりの合図だった。
笛を鳴り響き、選手たちがそれぞれのポイントに向かい始めていった。それを見て、ミラが焦る。
「急がないと先を取られる」
「落ち着いて。1のチェックポイントに向かう前に町の中で食料を買わないと」
「ごめん。1のチェックポイントなら、2~3日で着くと思う。3のチェックポイントなら買わないでもいけるかもしれない。けど、何が起こるかは分からないから、そんな奴はいれば、よほどの馬鹿だな」
レイとミラは4日分の食料を町中で買ってから、1のチェックポイントに向かうことにした。
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ルキスとアスラはキルトを探していた。
「おい、ルキス。キルトの特徴は何だよ?」
「キルトの特徴は帽子を被っていて、髪の色が紫で長さが腰ぐらいまで伸びている」
「それだけで見つかるのかよ」
話していると笛が鳴り響いた。選手が散らばっていく。その中に帽子を被った紫髪の選手がおり、それをアスラが見つけた。
「ルキス、それっぽい奴はいたぞ」
「それを追いかけよう」
帽子を被った人は走っており、食料を買う様子は無く、町の外を目指していた。
「行先は3のチェックポイントだ。何も買わず、突っ走るつもりだな。どうする?」
「このまま、追いかけるよ。近いし、大丈夫だよ、多分。それに」
「それに?」
「冒険者なら、あらゆる事態に対応できるようにしないとね」
ルキス達も何も買わずに帽子の男を追いかけ、3のチェックポイントに向かう。
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アモルとリアマはどこから行くのかを相談していた。
「どこから行きましょうか」
「4のチェックポイントなんて、どうだ?」
アモルは中途半端なところを提案したリアマの考えを疑問に持ち、理由を聞いた。
「理由を聞いてもよろしいでしょうか」
「最初に誰も行かなそうだからだ」
「そんな理由で行くんですか」
「ああ、今回はゲームを楽しみたいと思っている。将来、国を継ぐものとして、ほかの国をもっと知りたいのだ。もちろん、負ける気はさらさらないがな」
「私はこのゲームを通じて、リアマのことをもっと知りたいと思っています」
「アモル、私もこの機会にお前のことを知ることにしよう」
笛が鳴り響き、4のチェックポイントに向かった。
****
シュガーはフラースに行先を提案していた
「7のチェックポイントに行く」
「なんでー?」
「マナの属性は全部でいくつある?」
「火、水、風、土、雷、光、闇の7つだね。もしかして、この数字から?」
「そうだ」
フラースが言った通り、魔術を使われる属性は全部で7つだった。シュガーは属性の数で行先を決めた。
「それだけの理由だけで?」
「いや、7という数字はいいだろ。この数字はいろんなことに使われている。1週間は7日だし、7つの大罪やある話では7つの門が出てきたりする。そして、ラッキーセブンって言われている幸運の数字であり、身近に感じやすい数字だ」
「言われてみれば、そうだね。なら、7のチェックポイントに向かおう」
「町で必要なものを揃えて、出発する」
シュガーたちはゲームに必要なものを準備するために7のチェックポイントに近い町中に向かった。しかし、その背にはシュガーたちを追いかける白い猫の獣人の姿があった。
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レイたちは町で準備をし、出発してから、1日が過ぎていた。夜は1人が休み、もう1人が見張りをすることにし、これを交代しながら行うことになった。
レイとミラは会話しながら、1のチェックポイントを目指していた。
「ミラって、魔術の勉強をしていたんだよね。どこで学んでいたの?」
「ルークスにある魔術師連盟マーティスで学んでいたよ」
「どんなことを学ぶの?」
「それは基礎とかだな。レイがやっていたマナと自分の中にある魔力を把握する特訓して、それがクリアしたら、簡単な魔術から学んでいく」
レイはミラが学んでいる魔術師連盟マーティスの名を聞いて、ある疑問を浮かび、それを口に出した。
「そういえば、シュガーって、魔術師連盟マーティスからロッホという称号をもらっている指導者なんでしょう。なら、かなり偉い立場になるんじゃないか」
「そういうことになるな」
「ならさ、そこで学んでいるミラはシュガーに憧れていたりするの?」
「いや、別に。私が魔術を学んでいるのは魔力があるからで、学んでおけば、将来の選択肢が広がるからな」
この世界はレイの世界と比べ、機械の発展が遅れていた。しかし、それでも快適な生活が送れているのは魔術が発展しているからである。
例えば、この世界の冷蔵庫は電気の代わりに魔力を使い、冷蔵庫を動かしている。この際、動力源として、魔昌が使用される。
魔昌とは魔力を蓄える技術を使い、結晶に魔力を蓄えた物をいう。これはレイの世界にある電池みたいなものである。この魔昌を冷蔵庫に取り付けることで魔力を流し、動かしている。
この魔昌を作成するには魔術師が持つ技術と魔力が必要不可欠である。そのため、生活と魔術は切り離せない関係になっていた。
「ミラは将来のことまでちゃんと考えているんだな」
「魔力を持っている奴なら、魔術を学んでいることが多いから、私もその一人だよ」
2人が他愛のない雑談をしていたら、村が見えてきた。
「1のチェックポイントがある村が見えてきたぞ。レイ」
レイたちは村に入ったら、村の人から歓迎された。
「なぜか、歓迎されているね、俺たち」
「そうだな。1の結晶をもらったら、今日はこの村に泊まろう」
1の結晶を受け取る場所を探し、見つけた。そこでスタッフにベルトを見せて、1の結晶を受け取りつつ、自分たちが歓迎されている理由を聞いた。
「選手の方ですね。確認のためにベルトをお見せください」
「分かりました」
「はい、ありがとうございました。確認できましたので、1の結晶をお受け取りください」
「1つ、聞いてもいいでしょうか。俺たち、ここに着いたら、村の人から歓迎されたんですが、その理由を知っていますか」
「選手の方ですからね。ゲームが開催されると村に観光客や選手の方が来て、村が活性化するので、歓迎されるんです」
歓迎される理由を聞き終わり、その場から離れ、宿屋に向かった。
「すいません。2人部屋しか残っていません」
無事に宿屋に着き、部屋が空いているのかを尋ねた。最初はレイとミラは1人部屋を2人分頼もうとした。しかし、部屋は店主が言った通り、2人部屋しか残っていなかった。残っていない理由をミラが訪ねた。
「なんで、2人部屋しか残っていないんだ」
「すいません。今はゲームが開催されていますので、選手の方々が借りていらっしゃるからです。そのおかげで儲かっています」
「そんなことはどうでもいいよ」
2人部屋しか、残っていない以上、やれることは2つに限られていた。それをレイがミラに提案した。
「実際、どうするの?騒いだところで部屋は増えたりしないし。俺とミラが一緒の部屋に泊まるかこの村では泊まらずに出発して、野宿するかの2つだよ」
「うーん」
ミラは悩んだ。悩み悩んだ。そして、決心し、レイに言った。
「泊まろう」
「分かった」
「ただし、変なことはするなよ。分かったな」
ミラは注意を促し、レイは了承した。
レイとミラは泊まる部屋に入り、ベッドに腰を掛けた。
「1日ぶりだけど、ゆっくり休める」
「交代交代で休むと休む時間がどうしても減るからな」
「ミラ、この後はどうするの」
「必要なものを買い揃えて、ゆっくり休む。そして、明日は順番に2のチェックポイントにあるところに向かう」
レイたちは必要なものを買い揃えて、食事をとった後、柔らかいベッドでゆっくり眠りについた。
****
シュガーとフランたちは7のチェックポイントに向かうため、ソルムに出発してから、半日が経っていた。
「この調子なら、明日の昼頃に着くねー」
「そうだな。だが、気になることがある」
「何、気になっていることって」
「後ろからつけられている」
シュガーがつけられているということを言った後、シュガーとフラースは足を止めた。
「サインを貰いたいのかな。サインの練習していないよー」
「絶対違う。この反応は魔力だな。おそらく魔術師だな」
シュガーは感知することでつけられているのが分かった。そして、魔力が感知できたことから、相手は魔術師であると判断した。
「誰だろうねー」
「正直、俺とフランは魔術師から恨みを買っていることが多いからな。ゲームに紛れて、復讐に来たかもしれない」
「えー、私はそんなことないよ」
「まずは説得だ。木に隠れている奴、何もせずに出てこい。抵抗すれば、命の保証はしない」
木に隠れていた人はおとなしく出てきた。それは女性の獣人であった。その姿は小さく、年は12~14といったところで髪は長く、白髪黄眼であった。頭には獣人の証拠である猫耳があった。
シュガーは白猫の獣人に質問した。
「何が目的で俺たちに近づいてきた?」
「あなたがシュガー・ロッホ・シャルロットですか?」
「質問しているのは俺だ。質問を質問で返すな」
「そうだよ。君が言っていたシュガーちゃんだよ」
「おい」
白猫の獣人はシュガーの名前を聞いて、安心したような顔をした。そして、思いを決意したような表情になり、シュガーに向かって、お願いした。
「シュガーさん。私を魔術師の弟子にしてください」
「断る。フラン、行こう」
断った後、2人は再び歩き出した。白猫の獣人は走り出し、前に出てきた。
「理由を聞かせてください」
「弟子は取らないことにしているからだ。そもそも、なんで、俺から学びたいんだ?」
「同じ獣人だからです。そして、シュガーさんみたいに魔術を悪用している人を懲らしめたいんです」
獣人は魔力の適性は低いため、魔術師は少なかった。そして、シュガーは自分がしたいと思っている仕事をしていた。このことから、シュガーは彼女からすれば、憧れの存在だったかもしれない。しかし、シュガーは自分がやっている仕事の危険性を彼女に教えた。
「俺のしている仕事は恨みを買うことが多く、死ぬ確率も高い。だから、人に勧めることはしない」
「それでも、やりたいんです。」
「そもそも、俺には弟子を取る暇はない」
「なんでですか?」
「俺は昔話で出てくる英雄に選ばれている。この世界は平和に導く仕事がある。だから、教えている暇がない。たまに時間があるときにしか、教えることができない」
「それでもいいですのでお願いします」
シュガーは彼女の熱意に押されてしまったのか、彼女の名前を聞いた。
「名前はなんて言う?」
「スノウ・ニクスと言います。ということは弟子にしてもらえるんですね。師匠、これから、よろしくお願いします」
「いや、勘違いするな。まずは俺たちと共についてこい。その間に弟子にするかを決める。しかし、自分の身は自分で守ってもらう。それでもいいならついてこい」
「分かりました。絶対に師匠に認めてもらいますから」
シュガーとフラースはスノウを加えて、7のチェックポイントに向かうことになった。
****
そのころ、ルキスとアスラは帽子の男を追いかけていた。
さすがにしつこいと感じたのか、足を止め、ルキス達に話しかけてきた。
「おたくら、俺になんか用があるのか」
帽子を被った男はルキスが捜していたキルト・クイスだった。ルキスは自分の思っていたことを伝えた。
「君が持つ技術を教えて」
「もしかして、そのためだけに?」
「そうだよ。教えてくれるまで追いかけるからね」
「仕方ねーな。おたくらの熱意に免じて、教えてもいいが、条件がある」
「条件って何?」
「俺が勝つために全力で協力することだ。それでいいなら、教えてやってもいい」
この条件を呑む場合はルキスとアスラは優勝を諦めなくてはいけなかった。ルキスは教えてもらえるなら諦めてもいいと思っていたが、アスラがどう思っているかを知るために聞いてみた。
「アスラ、条件呑んでもいい?」
「待ってくれ」
アスラは前に会った戦人のレゴリウス・グリオスが言った言葉を思い出していた。『もっと強くなれる』という言葉を。アスラには師匠と呼べる人がいなかった。すべて、独力で学んでいた。
もし、学ぶ時が来るとしたら、それはおそらく技術を教わることになるだろう。その時になにかしらの参考になると思い、了承した。
「分かった。これも最強になるためだ」
「おたく、それを本気で言っているのかよ」
「本気だ」
「そうか、馬鹿にして、悪かったな」
キルトはアスラに対し、謝り、自己紹介した。
「俺は戦人のアスラ・グロスヤ」
「俺の名は人のキルト・クイスだ。キルトと呼んでくれ」
自己紹介が終わり、キルトは腰のバッグから、ホルダーとは別の球を取り出し、アスラとルキスに渡した。
「最初にやることは回転の制御だ。手の平で回転させて、その場で維持する」
ルキス達は手の平で回転させ、維持させながら、3のチェックポイントに向かった。
****
前日に必要なものを買い揃えたレイたちは朝を迎えるとすぐに村を出て、2のポイントに向け、歩き出していた。
「昨日は宿が繁盛していたね」
「そうだな。この状態だと1と7のチェックポイントの間にある川は通らなくてよかったな」
レイとミラが雑談していたが、魔物に襲われていた人を見つけた。
「大変だ、ミラ。襲われている人がいるぞ」
「仕方ないな。死なれても後味が悪いし、助けてやるか」
レイは風の魔術で風の弾を作り、魔物を足元に放った。すると魔物はこちらを見、襲い掛かってきた。
レイは剣を持ち、風の弾を準備していた。それに対し、ミラはフィデスである七力理解を発動させ、鎖を具現化させた。人差し指の鎖であるアイス・チェーンを伸ばし、魔物の足元を払うとバランスを崩し、倒れた。倒れている隙にレイは風の弾を、ミラは氷の刃を鎖の先で作り、魔物に攻撃した。すると攻撃を受けて、動いてはいたが、立てずにそのまま息絶えた。
魔物に襲われていた人は立ち上がり、こちらに近づいてきた。その人は男であり、頭には二対の角が生えていた。
「危ないところをありがとうございます。私は角人のコルヌと言います」
「怪我がなくて、よかったです。俺はレイ・シルバって言います。こちらがミラ・ピランです」
「勘違いでしたら、申し訳ないのですが、英雄に選ばれたレイさんですか?」
「そうです」
「でしたら、図々しいお願いになるんですが、あなたが持っているリトスを見せてはくれませんか」
「それぐらいでしたら、構いません」
レイはコルヌにリトスを渡した。リトスを見つめて、コルヌが呟いた。
「これが英雄の証。そして、奇跡の源」
コルヌはいきなり、レイを掴み、ミラと離そうとした。
「おい、何をやるんだ」
ミラはコルヌに引き留めるために手を伸ばした。しかし、それはできなかった。コルヌから、黒い影が出てきたからである。黒い影は人の形をしており、全身が黒かったが、口や鼻などの人に見られる器官はなかった。黒い人影がミラの前に出てきて、邪魔をしてきた。
レイとミラをある程度引き離し、コルヌはレイに語りかけた。
「すいません。助けてもらったのに。まあ、あれぐらいなら、自分でもどうにかできましたけど」
「理由を聞いてもいいかな」
「世の中にはあなたのことをよく思わない方がいるということです。本当にひどいですよね」
「他人事みたいに言わないでほしいね」
「すいません。でも、俺は万全なあなたに勝てない。しかし、フィデスも異能力も使えない状態なら、俺でも勝てます」
レイは剣を抜き、コルヌが殴りかかってきた。
ミラはレイを助けるために鎖を伸ばした。しかし、黒い影に鎖を掴まれ、鎖を砕かれた。レイとは5m以上離れており、そのため鎖が脆くなっており、砕かれてしまった。
「ちくしょう」
それでも、ミラは壊されたところを再び具現化し、鎖を伸ばした。再び、黒い影に掴まれてしまったが、掴んでいた手を凍らせた。そして、鎖を右に引っ張り、バランスを崩し、黒い影を転ばした。その隙にミラが走り出したが、黒い影も鎖を手前に引っ張り、転ばし、レイの方向に行かせないようにした。
「やはり、俺が有利ですね。すいません」
レイは魔術で風をコルヌの目に当て、隙を作ったときに一太刀入れたり、風の弾を当てたが、相手を仕留めるまでには至らなかった。コルヌは容赦なくレイの体に拳を入れていく。
実力の差は種族の違いによるものもあったが、レイには対人戦闘経験が圧倒的に足りてなかった。レイは魔物とは戦ったことはあったが、対人戦闘は初めてであった。
ミラは殴られているレイをどうにかしたかったが、魔術を唱えようにも鎖をしまう必要があると同時に魔術を唱えている時は無防備になるため、唱えることができなかった。
「ここまでか」
ミラの心が絶望に満ちかけた時、リトスが黄金に輝き、新たな力に目覚めた。鎖が消え、左の手の甲に模様が現れた。その模様は青く、青い丸に青い縦線が引かれていた。そして、左手の爪にまるで付け爪のように氷の爪が生えてきた。使い方は何となくだがミラには分かった。
ミラは自分の左手の爪先をコルヌのリトスを握っている左手に狙いを定めた。そして、氷の爪を飛ばした。それにコルヌは反応した。
「何かが飛んできたぞ」
コルヌは避けることができず、痛みで手を開いてしまい、リトスを落とした。すぐさまに拾おうとし、顔を下に向けたことで隙ができてしまい、レイの剣を持っている右手でアッパーを入れられてしまった。コルヌはよろけてしまい、レイが先にリトスを拾った。そして、レイはフィデスを使用した。
「未来召喚」
レイの体は光に包まれ、フォルテに変身した。
「よくもやってくれたな」
フォルテはコルヌを掴み、拳で殴った。手加減なしで容赦なく、何回も何回も殴り続けた。
「オラァー」
最後の1発はコルヌを殴り飛ばした。殴り飛ばされたコルヌは空を舞い、地面に落ち、気絶していた。コルヌが気絶したせいか、黒い影が消えていった。
「すっきりした」
そう言うとフォルテからレイに戻った。コルヌに傷つけられたキズはそのままであり、ミラがレイに駆け寄ってきた。
「ありがとう、ミラ。ミラがいなかったら、やられていた」
「仲間だろ。気にするな」
「それにしてもコルヌは何で襲い掛かってきたんだろう」
「起こして、聞いてみるか」
「いや、仲間が近くにいるかもしれない。すぐに離れた方がいいと思う」
「分かった」
レイとミラはその場を離れ、2のチェックポイントに向かった。
魔物ではなく、人に襲われたレイとミラだったが、返り討ちにした。まだまだ、ゲームは始まったばかりだが、彼らはこの冒険を無事に迎えることができるのだろうか。
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