テオス 英雄に集いし究極心剣 ‐エンテレケイア・アニムス‐
天体の歪みによる停滞
竜人の英雄リアマが使うエインヘリヤル。
能力は自分自身にかけた重力とは反対の重力をかけることである。リアマは自分自身には重力を軽くし、相手に重くすることが多い。
作りだした重力の差は時間のズレを生み、そのことを利用し相手より早く動き圧倒する。
欠点は世界を変化させ、重力をかけるため、仲間まで巻き込んでしまうことである。これはリアマだけの欠点ではなく、世界を変化させるエインヘリヤル全般に言えることである。
シュテルネンリヒト・メテオールはその欠点を補うためにあえて劣化させた能力である。
世界ではなく、対象を1つにすることで効果の範囲は狭くなったが、そのおかげで仲間がいる場でも使用可能になった。
前回のあらすじ
真のエインヘリヤルでぺドラを倒したリアマ。
ついに最深部へとたどり着き、レイとルキスだったが、時はすでに遅し、封印は解かれてしまっていた。
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化け物が復活したことは否応にも世界には分かっていた。
地上では朝にも関わらず、空が黒く染まり、禍々しい気配も流れている。その気配は前英雄たちにも肌で感じていた。
それぞれの国民は混乱に落ちていたが、英雄たちが何とか納めている状況であった。それもいつまで持つのかが分からない。
「英雄の勝利を祈りましょう。せめて、今の私たちにできることをしましょう」
シュテルは国民にそう言い聞かせた。
その祈りは風に運ばれていく。
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「妾の名前はメトゥス」
「メトゥスよ、目の前にいる英雄を始末しろ!」
メトゥスと名乗った声は女性らしい響くような高い声であった。
ウェルスから封印を解いた者の言うことを聞くということを伝えられていたボスはメトゥスにそう命じた。
しかし……。
「断る」
ボスの言うことを拒否し、彼に黒い雷を落とすことで黒焦げにした。
「何故……だ……」
「それにしてもよくやった、インブ。ほめて遣わす」
「有難きお言葉」
「こうして、復活できた。今こそ、世界を無に帰し、新たな世界を創造する」
メトゥスはボスの疑問を完全に無視し、自身の目的を高々に挙げた。
「なぜ、そんなことをするんですか?」
「元々、妾は死んだ者や滅んでいた種族の無念などから集合し、作りだされた存在」
「無念から……」
「それは仕方ないことじゃないかな。生きるものがいれば、目的半場に死んでしまう人もいる」
「ふざけるな!」
ルキスの言い分にメトゥスは怒りを震わせ、声を大きく上げる。
「それは妾たちに生きる資格がないということか!」
「そんな風に言ったわけではないんだけど」
「生きたかった! お主らのように友と手を組み、友情を築きたかった! そして、世界のために役に立ちたかった!」
メトゥスの積もりに積もった思いが英雄にぶつけられていく。
「そのために世界を創造する。今の世界に受け入れてもらえないなら、滅ぼそう。そして、私たちの世界を創造しよう」
「それがあなたの正義なら、僕たちの正義に従ってあなたを倒します」
「面白いな。1000年前の英雄たちは妾を悪と認定していたが、正義と呼ぶとはな。どうだ、仲間にならんか?」
「断ります!」
「なら、仕方ない。滅ぼそう」
レイはメトゥスの誘いを力強く断った。
彼には1つの疑点があった。それはアモルをどのようにして助けるかの方法だった。メトゥスはアモルの体に憑依している。メトゥスを倒すことはアモルを倒すことに繋がる。
レイはメトゥスを倒すことを決心していたが、仲間であるアモルを倒すことまでは良しとしていなかった。
それでも、レイとルキスは全力で戦う準備をした。
「さーて、最終決戦だ!」
火照る宇宙の至高の走路に音立てて進む轟き。
上天の閃光の至極の輝きを煌めかせろ。
浄福至極の者たちの御座を神的な雷光で揺るがせ。
与えたまえ、瑕疵なき健康と神的な平和と富の瑕疵なき栄光を。
「英霊 煌く閃光の雷霆」
ルキスの体が雷と変わっていき、バチバチと雷鳴を響かせる。
レイはリトスである銀色の鍵をルキスの心剣であるアルモニアへと変化させる。剣を逆手に持ち、胸へと向けた。
「フトールム・ルキス」
我が内に眠りし思いよ。
今こそ力を解き放ってくれ。
さあ呼び覚ましてくれ、引き起こしてくれ。
戦いを招く恐ろしい神魂を。
あらゆる勇敢な英雄の魂よ、僕に誓ってほしい。
共に勝利を掴むことを。
この無限の輝きこそが先駆けの光。
栄光と栄誉が我が身に降り注いでいることを今証明する。
「英霊 我が身に刻む英雄の証」
心剣が胸に入り込み、体全体に融合していく。両腕に鎌のような湾曲した刃が生えていき、ルキスと同じようにスパークを鳴らしていた。
「行きますな」
インブは竜力を高め、巨大なドラゴンへと変化していく。鱗は緑で背には4枚の翼があり、太く長い尻尾が伸びていた。
竜の爪が2人の英雄を襲うが、当たらなかった。2人は雷へと姿を変え、竜の回りを駆け回る。レイは腕の刃で、ルキスはその剣で斬りつけていく。
「レイはメトゥスの方を頼んだよ。君のことだから、何か策があるんでしょう?」
「できるかは分からないけど。これは頼んだ」
ドラゴンから離れ、メトゥスの前へと立つ。彼女は少しも慌てていなかった。
「さて、どうする? この体を傷つけられるのか。それとも正義のためには仲間を犠牲にするのか」
「あなたを倒し、アモルも救う。感じるんです。地上では僕たちのことを祈っている人たちがいることを」
「それが何になる?」
「絶風弊絶」
レイはフィデスであるアネモイを発動させた。その風は手のひらに集まっていく。
彼のフィデスは風を操るだけの能力ではない。自然界にある風を操り、吸収させることができる。今の大陸中にはあるものが風と共に流れた。
それは人々の祈りであり、この瞬間レイのフィデスにより、純白の風として集まっていた。
「この風は人々の願い……」
エインヘリヤルを解き、その風へと手をかざした。風は剣の形へと変えていくが、途中で弾けてしまった。
「今のお主の力では無理のようだな」
「今の自分には無理……」
メトゥスの言葉であることに気付き、レイはエインヘリヤルを解いた。
「どうした、諦めたのか?」
「この銀色の鍵は僕のリトスであり、フォルテそのものと言える。自分を超えます」
レイは銀色の鍵を胸に刺した。その動作はかつてフォルテを呼ぶための儀式みたいものだったが、今回は違った。
「フトールム・フォルテ!」
何も知らなかった僕の憧れよ。
黒い雲のような敵がいま君を悲しませ、僕の哀れな心を凍らせる。
その残酷な手は君を奪い取り、僕から掠め取る。
君に僕は呼びかける。
僕のもとへ今すぐ飛んできてくれ!
僕のもとへ「愛している」と言いに戻ってくれ!
わが魂よ、誓おう。
力ずくで君が奪われるなら、君のために死を受け入れよう。
その時、僕にとって死はありがたきものとなるだろう。
君には心から感謝の気持ちを捧げる!
「神格 英雄に集いし究極心剣」
リトスそのものを取り込んだことでエインヘリヤルを超え、ついにテオスの領域へとレイはたどり着いた。その姿は今までのと比べるとあまり変化が見られなかった。それでも、身から溢れるほどの力を手にしていた。
再び、純白の風に手をかざした。今度は剣の形となっていき、その剣は美しいほどに白く、刀身には黒い十字架が刻まれていた。
それを右手で持ち、左腕には鎌のような湾曲した刃が生えていた。
エネルゲイア・アニムス・アカペーは1つの心剣との融合だった。エンテレケイア・アニムスはさらに進化し、複数の心剣との融合もしくは統一できる能力である。
それでも、メトゥスの余裕は崩れていなかった。
「いくら進化したところでこの体は傷つけることはできない」
「はあああ!」
メトゥスが余裕ぶっているとレイは白い剣で斬りつけた。その剣は左腕から右腕へと移動させ、斬りつける。
斬ったにしては様子がおかしかった。
「傷がない。何をした?」
白い剣で斬ったにも関わらず、斬った後はなく血の一滴も流れていなかった。
「斬りたいものだけを斬る。それが僕の心剣の能力です」
レイが能力を種ばらしするとメトゥスが憑依しているアモルの体から黒い煙が溢れ出る。
「うおおおおおお!」
「アモルの中にいるあなただけを斬りました」
メトゥスは必死に本体である煙を中に戻そうとしていたが、予想を超えた攻撃方法で直接斬られたため、それが致命傷になっていた。
「メトゥス様!」
「戦いの最中によそ見はダメだよ」
ルキスの両手の平には雷の槍が作られており、それをインブに向かって投げた。
「ヴァサヴィ・シャクティ!」
雷の槍はよそに気を取られていたインブに命中し、爆音を鳴らし黒焦げへと変えた。
「これで終わりです」
「確かにお主の言う通りだ。しかし、妾は思いからできた存在。また、蘇る。その時にお主はいるのかな?」
レイの言葉にメトゥスはそう言い、滅んでいった。その場に残されたのはアモルだった。
「レイ、ありがとうございます」
「助けられて、本当に良かったよ」
正気に戻ったアモルはレイにレイを言う。そう言っているとシュガーたちがやって来た。
「やったな、レイ」
「本当にやり遂げたよ」
英雄たちは互いに喜び合う。
こうして、8人の英雄による使命は終わり、物語は終わりを告げようとしていた。
次回、最終回です。




