エインヘリヤル 我が身に刻む英雄の証 ‐エネルゲイア・アニムス・アガペー-
英雄について・神装
第2段階であるノードゥスにたどり着いた英雄が扱える神の象徴。
神が持っている伝承であり、同じ神装でも英雄によって、形状が違うことがある。
作中では神装が壊れたりしているが、これは修理が可能である。自動で治っていくが、力を注げば、より早く治せるようになる。その注いだ力の分、フィデスやエインヘリヤルの威力が下がることにはなる。
前回のあらすじ
ついに基地へと殴り込んだ英雄たち。
レイは因縁がある邪竜人ウェルスと戦うことになる。
アスラとルキスは機械に乗ったズロンに加え、1000年前の英雄である鋼人のアシエと対決する。
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ルキスはズロンと、アスラがアシエと戦っていた。
彼はエインヘリヤルであるアストロフェギャにより、自身の体を雷に変換させていた。そのため、雷速移動し、攻撃を避けつつ、攻撃を加えることができていた。
「うーん。あまり良くないなー」
ズロンが乗っている機械に対し、彼はダメージをそんなに与えられていなかった。
ルキスとズロンは一度、戦っており、そのことから雷に対しては対策されていた。剣は相手が金属であるため、そんなに意味を成していなかった。
「やっぱり、これかな」
ルキスは4つの鉄球を手に取った。
一方、アスラはアシエと肉弾戦をしていた。
「うおお!」
アスラは黒い拳で殴り掛かるが、鈍く光る銀色の皮膚を纏った左腕で受け止められる。アシエは空いている右手を剣に変化させ、攻撃するが、掌で受け止められ、叩き折られる。
砕けた剣の中から出てきたのは負傷していない右手だった。
アシエの種族である鋼人は体を金属に変えることができる種族だった。それを応用し、体から外側に金属を出すことで剣などを作ることを可能にしていた。
「埒が明かねえ。一気に決めさせてもらう!」
羽を1枚消費し、闘気を爆発させた。それを推進力とすることで拳の威力を上げた。
「ぐうう」
アシエはそれでも耐えていた。
「なら、もういっちょだ!」
もう1枚消費し、さらに拳の威力を増していく。そして、ついにアシエを殴り飛ばし、壁へと叩きつけた。
羽を消費し、闘気を爆発させることは威力をかなり高めることができた。しかし、その拳を放つアスラの体には弾を放つ砲身のように猛烈な負担をかけることにつながるのだった。
1000年前の英雄はそれでは倒れず、当然立ち上がった。
「本気で行く」
爪だけを研ぐがいい。
捕らえた獲物を罰せよ。
はらわたから心臓をえぐり出せ。
そして満たせ、怒りを。
ただ死だけがつらい苦痛を忘れさせてくれよう。
英雄よ!
ただ爪だけを研ぐがいい。
「英霊 鋼を纏う殺戮の暴獣」
アシエの体が鋼を纏わせていく。手は鋼の爪を、皮膚も鋼となり、獣のように鋼の尻尾が出来ていく。
それは間違いなく、見る者に鋼の獣を思わせる変貌を遂げた。
ミラとリアマがその様子を見ていた。
「相手がエインヘリヤルなら、こっちもエインヘリヤルだ」
「いや、アスラはエインヘリヤルが使えない」
「なんだって!?」
リアマの言葉にミラが衝撃を受けた。
「なら、せめて神装をだな……」
「いや、神装も使えない。あいつはフィデスしか身に着けていない」
英雄アスラ、その拳だけで鋼の獣へと立ちむかう。
****
レイはウェルスに押されていた。
人と竜の身体能力の差が出始めてきたのであった。そもそも、レイは英雄の中では低くもなければ、高くもないぐらいだった。
相手の攻撃に合わせ、マントを前に出し、目くらましをする。
レイは考えていた。どうすれば、勝てるのかを。
(現実的なのはエインヘリヤルの強化……。けど、どうすればいい?)
レイは心剣と融合し、黄金に輝く右手を見つめる。
(これなら、いけるかな?)
そして、あることを思いついた。
「ここか」
ウェルスの瞳がレイを捉え、爪で攻撃する。彼は何とか弾き、風の刃を放つことで距離を空ける。
何を考えたのか、エインヘリヤルを解除した。残っているのは手に持っている心剣だけだった。
「これが次への進化へとつながるはず。雷音を鳴らし剣アルモニア」
黄金の心剣から紫色のギターの形をした心剣へと変えた。それを逆手に持ち、胸に向けた。
「フトールム・ルキス!」
その心剣は胸へと入り込んでいく。
それを見ていたウェルスは本能が危ないと告げており、それを止めに入る。
「やらせるか!」
彼がレイに近づき、攻撃しようとした瞬間、雷が音を鳴らしながら放たれる。その雷はレイを守っていた。
そして、ついにエインヘリヤルを発動するために詠唱が始まった。
「これがルキスの英雄の力……」
我が内に眠りし思いよ。
今こそ力を解き放ってくれ。
さあ呼び覚ましてくれ、引き起こしてくれ。
戦いを招く恐ろしい神魂を。
あらゆる勇敢な英雄の魂よ、僕に誓ってほしい。
共に勝利を掴むことを。
この無限の輝きこそが先駆けの光。
栄光と栄誉が我が身に降り注いでいることを今証明する。
「英霊 我が身に刻む英雄の証」
心剣は右腕だけではなく、体全体、レイと完全融合していく。その姿は紫を主体にして染まっており、両腕には鎌のような湾曲した刃が生えていた。それは命を刈り取る形をしており、体にはパチパチとスパークが鳴らしていた。
「行くよ」
レイは体を雷へと変え、ウェルスに近づき、腕の刃で攻撃しようとする。間一髪のところで防がれた。
レイのエインヘリヤル、我が身に刻む英雄の証は心剣をエインヘリヤルの流域まで高めることである。
エインヘリヤルは憧れ、贖罪、願い、渇望などの思いから能力が発現される。心剣はその思いから具現化されたものである。それを体全体に取り込むことで力を高めることに成功したのであった。
「俺も奥の手を使わせ貰おう」
ウェルスの回りが冷たい空気が流れ、凍り始める。それを見たレイが彼から離れる。
「なにこれ?」
「これは俺たちが持つドラゴルスと呼ばれている力。英雄の力に対抗するためのものだ」
ウェルスの中心に凍っていき、氷の世界が形成されていく。
レイは巻き込まれないように逃げていくが、ウェルスは氷の棘を作り、レイに向けて発射する。
それでも、何とか逃げていくが、ついに左腕の指が凍り、徐々に凍っていく。
「終わりだ」
氷の棘が放たれる。レイは左腕を雷化させて、肘から先を切り離すことでその攻撃を避けた。
ウェルスはレイの片腕を失くしたことが好機と思い、左腕とレイの間に入り、氷で強化された爪で攻撃し、レイは左腕の刃で対応する。2本の腕に対し、1本の腕では対応が遅れていき、劣勢になっていく。
レイは左腕の先を雷化させ音を鳴らすが、それを見たウェルスは慌てていなかった。
「何しようが遅い。俺の勝ちだ」
青い竜の腕がレイの心臓を貫こうとした瞬間。
「えっ?」
ウェルスの首が地面へと落ちた。レイの左腕は元に戻っていた。
先ほどの雷で左手と左腕の間に雷の道を作り、雷速移動したのであった。ただし、移動したのはレイではなく、左腕である。
結果、ウェルスに不意打ちができ、腕に生えた刃で首を切断したのであった。
「……不意打ちでごめんね。でも、勝たなきゃいけないから」
レイが尻をつくとある放送が流れた。
****
アモルを追いかけたシュガーだったが、邪竜人に妨害されていた。邪竜人はすでに竜化しており、紫を主体とした人竜だった。
(瞬間移動ができないな)
シュガーは無視して追いかけたいところだったが、瞬間移動を使用することができなかった。できない理由については大体察しがついていた。
(魔具か何かで空間を固定しているのだろう。なら……)
シュガーはリトスからヘタイロスである竜人のジルと吸血人のエルザを出現させた。
「エリザは俺が隙を作るから先へ、ジルは俺と融合だ」
「はい、分かりました」
シュガーは融合を解くと金色の光が漂い、リトスへと収納されていく。ジルの頭に手を置く。
「行くぞ、ジル」
「オーケー」
ジルは黄金の粒子となり、シュガーの体に取り込まれると炎に包まれていった。
炎から出てきた彼は竜人に近づいていた。以前とは違い、獣耳が残っておらず、より完璧な状態で融合が出来ていた。
左手には金色の、右手には赤色の銃が握られていた。
「手加減はしない」
気負い猛にして、大いなる力を揮う、倦むことなき火の神よ
耳傾けたまえ、浄福なるかたよ。
御身を供犠にかなえる献酒祭に勧請せん。
倦むことなき火の怒りの狂気を止めよ。
「英霊 承継する神々の象徴」
赤色の銃が光りながら、赤い雷へと形状変化していく。
「神装ケラウノス」
神雷を纏ったシュガーが速さを活かし、相手に膝蹴りをかますことで壁へと蹴り飛ばした。
「今だ!」
エリザは走り出し、奥へと向かう。
邪竜人は立ち上がり、シュガーと再び戦う。
…………
……
5分ほど、2人は戦い続けた。
邪竜人は戦いの手を止める。
「ここまでだ。ではな」
「名前はなんだ?」
「俺は邪竜人のトラヴァだ」
「俺の名前はシュガー・グランツ・シャルロット。お前を倒す名前だ、覚えとけ」
「ああ、覚えとくよ。お前がここを出られたらな」
トラヴァの姿はその場から一瞬で消えた。
「瞬間移動か」
シュガーは自分には瞬間移動が使えず、トラヴァが使えた理由を考えているとある放送が流れた。
「あと、10分で爆発します。残っているものは至急避難を」
「何か、脱出する手段を考えなければ……」
神装タロスは壊れており、修理する必要がある。瞬間移動は距離があるため、現実的ではない。
その時、エリザの声が頭に届く。
「シュガー様、変な機械がありました」
「それに賭けるか」
基地爆発まで残り10分。




