英雄イディナVS聖王ジャンヌ
英雄について・エインヘリヤル
英雄が神魂を取り込んだ第3段階。
体内に取り込んだ神魂を外へと展開することで能力を発動させることができる。いわゆる、英雄を象徴する必殺技であり、切り札でもある。
エインヘリヤルを発動させる際に詠唱する必要があり、これは神に対する鎮魂歌であり、祈りであり、能力を具現化させるためのものでもある。
ただし、必ずしも必要であるとは限らず、英雄の力が高まっているなどの要因があれば、無詠唱もしくは省略されることがある。
詠唱の内容は英雄が考えているわけではなく、自然に頭に浮かんでくる。そのため、忘れることや唱えられないという事態はほとんどない。
発現する能力はフィデスや神装、思いなどが影響されることになり、フィデスと同様に様々なタイプがある。
前回のあらすじ
賢者ソニアからのアドバイスにより、ついに6つ目のピースを見つけたレイ。
しかし、持っていた歪人のクルンは一筋縄とはいかない人物であり、ピースを譲ってもらうべき、ドッジボールで勝負を決めることになった。
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あと少しで勝負が始まろうとしていた。
英雄チームであるレイは神装を、ルキスはエインヘリヤルを発動していた。前英雄であるイディナは赤い帯をしたメギンギョルズ、赤い鉄製の篭手ヤールングレイプルの2つの神装をしており、アスラはフィデスを発動しており、手足が黒い装甲に構築されていた。
それに対し、ケイオス・リングチームは英雄と比較して、特に変わった様子もなく、特別な武器もつけていなかった。
そして、試合が始まった。
「俺が行くか」
「それなら、私が行こうかしら」
最初のボールを取り合うのはアスラとマーテルだった。
外野にはシータとルリの1人ずつ出ていた。
審判のドルチェによって、ボールが真上に高く投げられ、2人はジャンプし、ボールを弾く姿勢に入る。アスラが弾き、最初にボールを手にしたのはイディナだった。
「これが我流ミョルニル投法だ!」
どこからか、雷が降り、ボールに直撃する。大振りに手で雷を纏ったボールが投げられた。
投げられた先にいたのはルプスだった。
「受け止め……」
受け止めてやるという言葉が彼女の口から出てくる前にボールが直撃し、外野まで吹き飛ばされてしまった。
気絶していたものの直撃したにも関わらず、ルプスの肉体はどこも欠損していなかった。その様子をマリクは見ていた。
「あの角人はメロディと同じタイプか。それなら、お前の出番だ。ジャンヌ」
「はい」
「あと、シータ。ルプスの回復を頼んだぜ」
「分かったわ」
外野からルリがボールを投げるが、マリクに取られてしまう。彼が投げるが、今度はリアマに受け止められる。
「今度は私の番だ」
無駄だ。
世界中逃げ隠れしても、姿を偽っても貴様は逃れられない。
延焼する憎悪と復讐への渇望が貴様の居場所を教えてくれる。
私たちを引き離すことは決してできぬ。
我が恥辱は貴様の血だけが洗い流すことができるのだ。
私の誇りを汚した恥辱を撒き散らしてやる。
お前の運命は決まっている、死だ。
「英霊 暁天から降り注ぐ天体」
シュテルのエインヘリヤルであるシュテルネンリヒト・メテオールは重力を操る能力である。以前、ラムダにぶつけた隕石は重力を操り、引き寄せたのであった。
今回の対象はボールであった。
「貫かせてやる」
リアマは走り出し、ジャンプすると投擲の姿勢に入った。ボールを離すと同時に投げる方向に重力をかける。結果、ボールは予想を超えた速さで進み、マリクは受け止めることができなかった。彼は吹き飛ばされたが、球そのものは外野に行くことなく、マーテルに拾われた。
「今のがエインヘリヤルか」
クルンの感想を口にしているとマーテルがボールを投げる。
イディナに向けて、飛んで行き、彼女は左に避ける。だが、ボールは右に曲がり、そこにいたレイとリアマが慌てて避ける。
2人とも体には当たらなかったが、外野に行ったボールをマリクがダイレクトキャッチし、すぐさまリアマを目掛け、投げられる。
さすがの彼女も避けられなかった。
「これでアウトか」
「レイ、リアマ。アウト」
審判であるドルチェの言葉が響く。
「服もアウトか……」
レイの神装である白いマントがボールによって、引き裂かされていた。
英雄チームの残りはルキス、アスラ、イディナの3人。それに対し、ケイオス・リングチームの残りはマーテル、ジャンヌ、マリク、クルンの4人。
…………
……
ゲームは続いていき、雷そのものとなったルキスがイディナを抱え避け続け、彼女がミョルニル投法で1人1人当て続けていった。
残りはルキスとイディナ、ジャンヌが中に残っていた。ルキスも力を使い果て、エインヘリヤルが解けていた。
英雄チームはジャンヌにボールを当てようとしていたが、彼女は避ける動作は見せず、イディナのミョルニル投法で投げたボールさえ受け止めていた。
「さすが、聖王ジャンヌだ」
「ジャンヌの鎧はウチら以外には破れない」
その様子を見ていたマリクとルプスがそう呟いた。
聖王は守りに特化している鎧と呼ばれる力が与えられる。鎧とは体に身に纏っている結界のことを指し、その王は結界の扱いに長けている。その常に纏っている鎧は砕けることはなく、自分自身の体が最大の武器である。
その鎧こそがジャンヌの防御力の高さの秘密だった。
「なら、我がその鎧を破って見せよう」
「どうやって?」
「我のエインヘリヤルでだ」
ルキスに聞かれたイディナはそう答えた。
彼女はミョルニルを具現化する。
「見るがいい! これが英雄だ!」
海よ!
強大な怪物よ!
お前は緑の大蛇のように世界のまわりにとぐろを巻く!
物思う目にはお前は荘厳に見えよう。
お前が怒り狂い、不運な船の周りに巻き付き、頑丈な船体を粉々にする時!
その時は海よ、お前は本当に恐ろしいのだ。
暗闇の中、大波の白い泡が飛び散る。
そして、砕ける波の不機嫌な襲来は我の耳には希望を弔う鐘のように聞こえる。
「英霊 打壊し電磁加速砲」
イディナの右手に装着されているヤールングレイプルが詠唱とともに形状変化していく。手だけではなく、腕までも巻き込んでいく。右腕には手の甲と肘を超え伸びている2本のレールに右肘側には弾丸に変化したミョルニルが装填されていた。
その弾丸をさらに変化させることでボールをくっ付けるような形にし、レールの先をジャンヌに向ける。
「これで終わりだ!」
2本のレールに電気が流していく。すると弾丸と化したミョルニルは2本のレールの間を通り、どんどん加速していく。先へとたどり着くと発射され、ジャンヌを狙い撃つ。
それでも、彼女は避ける動作を見せなかった。
「うぐっ!」
発射したイディナ、受け止めるジャンヌの2人は足に力を入れ、踏ん張る。だが、少し少しずつ後退っていった。
イディナは何とか耐えるが、ジャンヌはミョルニルに押され負け、吹き飛ばされてしまう。
これにより、ケイオス・リングチームは全員当てたことになり、英雄チームの勝利となった。
「これが英雄の力か。個人的には君の実力が見たかったかな」
「すいません、活躍できなくて」
「まあ、いいか。はい、これ」
レイはクルンからピースを受け取った。そこにはイディナの攻撃によって、吹き飛ばされたにも関わらず、ピンピンしているジャンヌの姿もあった。
彼は懐から地図を取り出すと次のピースの居場所が分かった。その場所は英雄たちの予想をはるかに超えた場所にあった。
「ここって?」
「月だよね……」
浮かび上がった場所は雲の国オーブラコより、さらに上にある黄色く丸い月にマークが浮かんでいた。
英雄たちは月に無事にたどり着けるのだろうか。
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ボスはズロンとウェルスの報告を聞いていた。
「ピースは奪われたか。まあいい、計画通りだ」
「どういう意味ですか?」
ズロンからそう聞かれたボスは懐から銀色に光るピースを取り出した。
「すでにピースの1つは確保している。これを求め、やってくる英雄たちを返り討ちにするだけだ」
「さすが、ボスです」
「……ここまで来れるんですか?」
「大丈夫だろう。何とかしなくては仲間が危ないのだから」
ウェルスの疑問をボスはさらっと流した。
彼らの基地は月にあった。




