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全てを視る賢者の塔

安息されし英雄の楽園レクエイム・へロス・エレサイム

獣人の英雄シュガーが使用するエインヘリヤル。

エインヘリヤルである承継する英雄の眩耀レクエイム・へロス・ルークス承継する神々の象徴レクエイム・へロス・へーパイトスの2つを融合させて、作られた能力である。


その能力はあらゆるフィデスと神装を修得し、自由に使いこなせることである。ただし、修得する条件として、シュガーの眼で見たことがあるものであることと能力を把握していることなどである。また、フィデスと神装は1つずつしか使用することができず、一斉に使うことはできない


この能力でも使用できない、または劣化する能力がある。

例としてはイディナの神装ミョルニルである。ミョルニルはメギンギョルズとヤールングレイプルの2つの神装を使用する前提になっているため、どうしても劣化してしまう。

もう1つはレイの神装である仮面と黒い剣は使用することすらできない。この神装は彼の異能力である心剣が必要であるため、再現することができない。

また、認識できない能力は本人に説明されても見ることができないため、使用することが難しい。


シュガーが複数のエインヘリヤルを使いこなせるのはルークスとへーパイトスの神魂を使い分けているからである。本来の英雄は神魂を1つしか持てないが、ヘタイロスという存在がそれを可能にしている。



前回のあらすじ

キング型機人ラムダと戮機人を討伐したリアマたち。

一行はルキスとルリの2人に合流し、レイたちが待つデネブラエへと向かう。


****


 ルキス達がイグニスに向かっているとき、レイたちは船で闇の国デネブラエの南部へとたどり着いていた。そこはレイにとって、色々と因縁があった場所でもある。


「やあ、レイ君」


 港へとたどり着くと長い金髪をポニーテールにしている森人のフラースがいた。彼女のそばには赤髪の少女がおり、レイにはどこかで見たことがあるような錯覚を覚えた。


「なんで、フランさんがここに?」

「この子に頼まれてねー」

「初めまして、英雄様。ボクはシュガー様のヘタイロスで吸血人のエリザと言います。シュガー様から預かりものがあって、遣わされました」


 エリザの口から出たシュガーという名前にレイは反応し、彼の状況を聞いた。


「シュガーはどうしているの?」

「ある程度の目途が立ったので、こっちに戻る準備を始めています。ボクのほかにもジルニトラという竜人も戻って来ています。ジルともう2人はシュガー様が戻るための準備を、ボクは英雄様のサポートをするために来ました」

「もう2人って、誰?」

「それはシュガー様のエインヘリヤルに関することなのでお話しすることはできません。ただ、1つ言えることはシュガー様のフィデスやエインヘリヤルのようにレイさんのエインヘリヤル、ミラさんのフィデスも進化するということです」

「どういうこと!?」

「そのためにボクが派遣されました。これをどうぞ」


 エリザからレイに3つの封筒と手に収まる人形が渡された。

封筒には用途が書かれており、1つ目には分からないことがあるときに、2つ目は強くなりたいときに、3つ目は人形を使用したときにと書かれていた。

 レイはまず、強くなりたいときにと書かれている封筒を開けた。

 その内容は要約すると2つのことだった。1つはレイのエインヘリヤルはまだ進化する可能性が含まれること、もう1つはどうしても強くなりたいなら人形を使用することが書かれていた。


「僕のエインヘリヤルはまだ進化することができるのか。アモルを助けるためにも人形を使用しよう!」


 彼は3つ目の手紙を読んでいくと落胆の表情へと変わっていく。


「レイ、なんて書かれているんだ?」

「この人形はエインヘリヤルにたどり着くための物らしい。これじゃあ、僕には使えない」

「なら、1つ目の手紙も読んでみよう」

「この手紙には英雄や勇者と同じ存在である賢者がいると書かれている。シュガーが1つだけ、聞けるようにしてくれているらしいよ」


 すべての手紙を読み、レイたちはこれからの予定を立てていく。


「僕は賢者に探しに行くけど、ミラはどうする?」

「私はこの人形で修行してみようかな」

「私はレイ君についていこうかな」

「フランさん、よろしく」


 レイはフランと共に賢者を探しに、ミラはエリザと共に人形を使い、エインヘリヤルに至るための修行を始めた。

 ミラは手紙を読み、人形の詳しい使い方を熟読していく。


「なるほど、大体わかった」


 人形に彼女のリトスである黄金に輝くブレスレットをくっ付ける。すると人形は輝きだし、等身大の人へと大きくなっていき、3つに分かれていく。

 3人はミラの前へと立つ。黒髪を持つ神フレイヤ、腰に刀を差している天蓋、銀色の髪を持つアリスだった。


「無理やり呼ぶとは……」

「我がやる」


 フレイヤが呟くと天蓋が刀を抜きながら、前に出る。ミラは彼に問いかけた。


「何をすればいい?」

「我らを倒せばいい」


 天蓋は影も映らぬ速さでミラに近づき、刀を振り下ろす。なんとか、彼女は避け、その場を逃げる。


「武器もないのに戦えるわけがない!」

「どうにかしろ」

「それは無理があるでしょう」


 ミラの泣き言に天蓋が一刀両断するが、アリスはそんなことを言った。彼女の手から金色の光がにじみ出て、それはミラの方へと向かって行く。体が光りに包み込まれるとミラの青から金へと変わり、右腕に鎖が具現化されていく。


「これは!」


 人差し指の鎖を伸ばし、それに氷を纏わせることで刀と対抗する。


「やっと、フィデスが使えるようになった」

「アリスに感謝することだ」

「どういう意味だ?」

「お前が使っていたフィデスは神人が使う力をフィデスと呼んでいたにすぎない。今のそれはアリスが今までの力をフィデスとして、目覚めさせた」

「そっか。ありがとう、アリス」

「お前のフィデスは鎖を具現化し、我たちの力を宿らせる能力だ。それはフィデスであり、神装だ。そして、これは能力を与えるための試練だ」


 神3柱によるミラの特訓が始まった。


****


 レイとフランは賢者を探すために海沿いを歩いていると浜辺に打ち上げられていたルプスの姿があった。2人は急いで彼女に駆け寄る。


「ルプスさん、大丈夫ですか?」

「なんとか……」

「何をやったんですか?」

「難破した後、ここまで泳いできた」


 どうやら、ルプスは船が難破した際、レイ達のように島にたどり着かず、ルキス達のようにほかの船に拾われずに大陸まで泳いできたようであった。


「それは……ご苦労様です」

「ところでレイたちは何をしているんだ?」

「今は賢者と呼ばれる人を探している途中です」


 レイの口から出た賢者という言葉にルプスが反応した。


「おっ、賢者か」

「知っているんですか?」

「会ったことはある。だけど、あいつらはひねくれているからな。まともに会ってもらえるとは思えないが」

「どんなところに住んでいるんですか?」

「まあ、とりあえず、歩きながら教える」


 ルプスたちは賢者が住む場所に向けて、歩み出した。


「賢者が住んでいる場所は賢者の塔というなんのひねりもないネーミングセンスがついた塔に存在している」

「シュガーという獣人から賢者は英雄と同じ存在と聞いたんですが……」

「英雄や賢者、勇者などはレアタイプと呼ばれている存在だ。詳しいことは知らないが、あいつらのほとんどが選ばれたものであるということだ」

「そんな区分があるんですね」


 レアタイプという言葉は初めて聞いたレイだったが、勇者という英雄に似た存在があったため、そんなには驚くことではなかった。


「賢者はすべてを知る者らしい。賢者の塔はどこにでも存在し、そして存在しない」

「どういうことですか?」

「あいつらの塔は蜃気楼のように現れるようにすることができるから、必要に応じて、出現させることができるんだ」

「それじゃあ、探せないのでは……」

「シュガーが約束しているなら、大丈夫だろ。ほら……」


 レイたちが歩いていると塔が見えてきた。その建物は全体が白く、彼らが探していた賢者の塔だった。

 塔の扉を開けると直接壁から生えているような形で螺旋階段があった。


「これを上っていくんですね」


 階段を上っているときにレイはルプスに気になったことを聞いた。


「ルプスさんは先ほどの口ぶりから、シュガーと知り合いなんですか?」

「あいつとはアース大陸で一緒に冒険した仲だ」

「どんなことがあったんですか?」

「冒険の中、賢者の知恵を借りようとした。それがきっかけで神に会ったぐらいしか話せないな」

「神に会ったんですか……」

「そうだ。シュガーとウチを含めた6人で会った」


 ルプスがそう告げると長い沈黙が支配する。そして、賢者がいる最上階へと到達した。

 そこには椅子に座っている賢者がおり、その姿は全裸の女性だった。近くにはウェーブがかかった金色の髪を持つ女性がいた。


「懐かしい顔があるね。今日は珍しいお客さんが来る日だ」


 賢者はルプスの顔を見るなり、そう言った。

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