冒険家の英雄 イスト
種族について・蝶人
再生と不死を司るレア種族。
頭に2対の触覚を持ち、蝶の羽を背に持つ。鱗粉を使うことで相手を操ったり、感情を知るなどのことができる。
自分が死んだとき、体は糸に包まれ蛹になる。それが孵ったとき、新たな自分へと転生する。転生といっても大抵の記憶は失い、性別も変わることがある。
前回のあらすじ
ついに英雄の第3段階であるエインヘリヤルにたどり着いたルキス。
ベアトスの先祖が残したと言われる財宝を探しにある小島へと向かう。
しかし、船が難破し、バラバラになってしまった。
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船が難破し、遭難生活13日目。
この小島に行くという計画を立てたベアトスにその船に乗っていた船員、レイとミラがある浜辺で過ごしていた。そこはもはや1つの村として成り立っていた。
食べ物などは自給自足の生活を強いられていた。逃げ出そうとしても逃げられる場所がなかった。幸い、魔術が使える者がいたため、それを利用していた。
「助けが来んなー」
浜辺で座りながら、石を海に向かって投げていたベアトスがそう呟いた。
それもそのはず。遭難したのだから。
レイとミラは時間を見つけては行方不明となっているアモル、ルキス、ルリを探していたが、見つかる気配がなかった。
「これだけ、探してもダメならもう……」
「時間ならまだあるよ、ミラ。諦めないで探そう」
ミラは諦めの言葉を吐いたが、それをなんとかレイは激励する。レイには彼女の気持ちは痛いほどわかっていた。
そんな時……。
「船が来たぞ!」
海辺にいたベアトスの叫び声が聞こえた。2人はその声がする方へと走り、小島に近づいている船を目で捉えた。
「船がやってくるって。奇跡だよ、ミラ」
「そうだな、レイ」
その船はこの島に全員が乗れるほどの大きさであり、黒い旗にはドクロマークが書かれていた。
「あれが海賊船でなければ、完璧だったな」
3人の船員が降りてきて、レイ、ミラ、ベアトスの前に立つ。
「ヒャッハー! 略奪だぜ!」
「2人は下がっていて」
船員が襲ってくるが、レイは神装を発動させ、剣だけを取り出した。
彼らは幾たびの戦いを乗り超えたレイの前では敵ではなかった。
「ちくしょう!」
「お前程度じゃあ、うちの副船長は倒せねーよ。なんだって、英雄なんだからよぉ」
「副船長、やってください!」
彼らがそう叫ぶとその英雄は降りてきた。その姿は黒いコートにミニスカートを履いていたため、少女に見えた。
しかし、レイとミラには少年だということが分かった。なぜなら、知り合いだったからであった。そして、隣にいた少女も知っていた顔であった。
「ルキス副船長! ルリの姉御!」
「やあ、レイにミラ。無事だったんだね。迎えに来たよ」
「レイの知り合いだったのか。これは都合がいい」
「ベアトスさん、取引をしましょう」
ルキスはベアトスに取引を持ち掛ける。それは彼らを助ける内容であった。
「助けてくれるなら、何でもいうことを聞こう」
「あなたの先祖が残した財宝をくれるなら、それと引き換えに無事にあなたたちを大陸まで送り届けます」
「分かった、それでいい」
「レイとミラ、それにベアトスさんで財宝を探しに行こう。君たちはアモルという女性の天人を探しておいて」
「分かりました、副船長」
船員にそう指示し、話が済むとルキス達は財宝を探すために島の奥へと向かって行く。
島の奥へと行く途中、レイはルキスに副船長にまで出世した話を聞いていた。
「レイたちと違って、ボクとルリは船に拾われたのは良かったんだけど、海賊船だったんだよ」
「それからそれから?」
「船が壊れているだろうと思って、この船で迎えに行くことにしたんだよ」
「ルキスのおかげで帰ることができそうで良かったよ」
「それにしてもこの道で合っているのか」
ルキスとレイが話しているとミラが進んでいる道を正しいのかを聞いて来た。
「これで合っているよ」
「なぜ、そう言い切れる?」
「何か、力を感じるんだよね。ルリに相談したら、球の気配じゃないかと指摘されたんだよ。何も手掛かりないし、これを当てにするのがいいと思うんだ」
「そうだな。お前たちが集めているという球と財宝はどっちを優先的に探すんだ?」
「ボクの考えだとこの2つは同じ場所にある」
ルキスから帰って来た返事は意外なものであった。
「どういう考えだ?」
「ベアトスさんの先祖はお宝を集めていたんでしょう。球もこの島にあるよね。この2つが偶然とは思えない。ご先祖様は球をお宝として、回収したと思うんだよね」
「なるほど、そういう考えもできるな」
ミラはルキスの考えに感心していると彼はレイに話しかけた。
「それとさ、レイ。君のエインヘリヤルは心剣に関することだし、ルリから抜いたら、どう?」
「そうですね。わたし、先輩に抜いたもらったことがありません。遠慮なく、どうぞ」
「じゃあ、行くよ」
ルリに言われたレイは彼女の胸に手をかざす。すると心剣が出てきた。その剣の青い刀身であり、一見すると普通の剣に見えた。彼にはその心剣の使い方が分かった。
「これがルリの心剣か。散れ」
レイがそう呟くと青い刀身は何枚にも分かれ、小さく散っていく。それは花弁のようであった。彼の手に残ったのは刀身のない剣であった。
その風景を見たルキスが一言呟いた。
「綺麗だね、レイ」
「これはいいよ。ルキスの心剣と同じく、遠距離で攻撃できる」
「喜んでもらえて何よりです」
「この剣の名前はブラッサムだ」
「そう言えば、ボクの心剣にも名前は決めたの?」
「ルキスの剣はアルモニアだよ」
ルキスはレイの異能力である心剣のある弱点に気付いた。
「でも、レイの心剣って、誰かがそばにいないと意味がないよね」
「そうだったんだけど、エインヘリヤルに入ったことで心剣を自由に出せるようになったよ」
レイの心剣はエインヘリヤルである胸に眠りし心剣の理解を発動できるようになってから、神装である黒い剣を特定の心剣へと変化させることが可能にしていた。
そんなことを話していると洞窟の入り口に着いた。
「ルキス、この中か?」
「そうだよ」
ミラがルキスに確認すると中へと入っていく。
最初の内は壁も床も岩しかなかったが、ある程度中へと進んでいくと川が流れていた。
そこにアモルがいた。
「アモル、こんなところにいたんだね」
「……レイですか」
アモルに声をかけたレイだったが、その声はどこか重かった。
「球の在処が分かったから、一緒に行こう」
「そうですね。こちらでも分かったことがありますので、お話ししますね」
道すがら、ウェルスから得た情報をアモルは話していく。
「この球はピースって、言うんだ。そして、地下にあるのは財宝ではなく、化け物が眠っていると。尚更、僕たちが集めないといけないね」
アモルの話を聞いたレイはそう決心していた。それは仲間たちも同じ思いだった。
奥へと進んでいくと大きな扉があり、それを開けた。すると奥には湖が広がっており、海賊船があった。しかし、その船と海賊旗はボロボロであり、形を保っていることが不思議なぐらいであった。
そのほかには岩に座っている白骨死体があった。その骨は黒いコートを着ていた。
「ここにあるのかなー」
「調べればわかることだ」
ルキスとミラがそんな会話を交わし、海賊船に近づくと白骨死体が立ち上がった。
「何だ!? 死体が動いた!?」
ミラは驚愕しており、白骨はしゃべりかけてきた。
「俺の名前はイスト。帰れ、財宝は誰にも渡さない。俺だけのものだ」
勇猛果敢な冒険家はいつも自由であり、立場に縛られず、真実だけを語りたい。
孤独で偉大な人生に憧れて、それを目指し、その姿を間近で見つめた。
そして、諦めろって、自分に言い聞かせたくなる。
貧しくなれば、知恵だけじゃなく悩みが湧いてくる。
勇ましければ、名声だけじゃなく苦難がやってくる。
たとえ、どんな姿になろうとしても身の程をわきまえる必要がある。
これで、どうすれば幸せになれるか、自ずと分かるだろう?
結局、お金がなくちゃ、幸せに暮らしていけないのさ!
「英霊 荒れ狂う大海原」
海の嵩が増えていくが、ルキス達は海に落ちることなく、水の表面に浮かんだままであった。
エインヘリヤルが発動されると同時にアモルはその場から離れた。普通なら逃げたと思うが、レイは違った。彼女がそんなことをする人ではないと分かっていた。
「ルキス、僕とルリはアモルを追うから任せるよ」
「任せといて」
レイとルリはアモルを追いかけて、ルキスとミラは白骨と戦うことにした。




