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神に選ばれし英雄の異世界物語  作者: 甘味神宝
異世界での冒険
6/86

英雄という名の称号の重み

前回のあらすじ

昔話に出てくる五大英雄の1人に会うことができたレイたち。

彼の話から不安を覚えるが、修行を続けていく。

そして、事態は思いがけない展開がされていく。


****


 修行を始め、2週間がたった。

 レイは完璧に球を緑に染めることができていた。


「どう、もうできたよ」

「2週間か、普通は1ヵ月ぐらいかかるのにな」

「エルのときはどれくらいでできた?」

「2日でできた」


 レイも普通の魔術師よりは早くできていたが、エルはそれを上回る速さで終えていた。


「なんか、落ち込む。ならさ、次の修行は?」

「次の修行は簡単だぞ。レイ殿なら、今日中に魔術を使えるようになるはずだ。第2段階目は魔力の流れをつかむ練習だ。第3段階は魔力とマナを自力で混ぜる。最終段階が混ぜたマナを元に魔術を使う」

「魔力って、どうすれば操れるの?今までは魔具で強制的に吸収してもらっていたから、できていたけど」

「今から、余がレイ殿に魔力を流し込む。それで体内の魔力を感じとり、感覚を掴む。それで体内の魔力を操る。マナを取り込むことができるレイ殿なら、簡単にできるはずだ」


 エルはレイの後ろの立ちに肩を掴む。肩を掴んだエルの手から、何か流し込まれる感覚があった。レイはそれを魔力だと感じ、手のほうに集めてみた。そうすると魔力が手のほうに集まった。


「魔力の感覚を掴めたか」

「うん、大体掴めた」

「それなら、今度はこの球をもってくれ」

 エルが取り出した球は今まで修行に使っていた球によく似ていた。

「それはさっきの球と何が違うの?」

「この球は魔力を強制的に吸収しない。つまり、すべて自分の手で行う必要がある。魔力を操り、マナを取り込むことができているから、すぐできるはず。これはちゃんと自分の手でできるのかという確認作業に近いぞ」

「なら、すぐクリアしてやる」


 レイは球を持ち、魔力を手に集めた。それと同時に風のマナを取り込んでいく。体内で魔力とマナを混ぜ、球に送り込んだ。そうすると徐々にだが、緑に染まっていき、最終的には完全に緑に染めることができた。


「染まるのが遅かったな、なんでだろう?」

「やり始めたばかりだからだ。こればかりは数をこなしていく必要がある。回数をこなすことで使用できる魔力や取り込むマナを増やすことができ、より強力な魔術が使えるようになる。最後だ、魔術を使う」

「どう使えばいいんだ?」

「魔術はイメージだ。風を吹かせたいなら、そのイメージをする必要がある。このイメージは魔力とマナを取り込み、混ぜながら、行う。やってみるのが一番」


 そう言われ、レイはマナを取り込み、魔力に混ぜながら、イメージした。そのイメージは強い風を吹かせるようなイメージだった。風を起こすには手を振ったら、良いと考え、手を振った。すると予想以上に強い風を起こすことができた。しかし、その風はエルとミラのスカートを捲り上げた。エルのパンツは赤色で、ミラは薄い水色だった。


「あー、うん。そんなイメージしていたのか。教えてくれと言えば、教えていたぞ」

「レイ、何やっている」

「わざとじゃないって」


 ミラはレイを追いかけた。レイはミラから捕まらないように逃げた。エルは追いかけず、2人を見守っていた。こうして、レイは魔術を使えるようになり、フォルテにはできないことをできるようになった。


****


 レイたちが修行していたころ、アスラとリアマはシュガーに会っていた。現状の報告をするためだった。


「だめだ、まったく分からん」

「この2週間、学園内を探していたが、手掛かり1つねえー。魔術が使われている可能性があるぜ」

「しかし、ゆがみは日に連れて、大きくなっている。何かが行われているのは確かだ」


 アスラとリアマは2週間学園を探索していたが、手掛かりを見つけられていなかった。アスラは魔術を使い、ばれないようにしていると考えていた。


「俺が何かするなら、結界などを張って外部から孤立させ、邪魔が入らないようにする。結界を張るのは魔具を使ってな。魔術を同時に使うのは難しく、できたとしても普段より魔力を多く使うことになり、効率が悪い。ゆがみを利用しようとしているなら、なおさらだ」

「外からの侵入はできるのか?」

「相手の技量にもよるが、基本難しい。結界とは外部から切断するのが目的だからな。だが、時間をかけていいなら、よほどのことがない限りはやれると思う」

「結界の内部はもちろんのこと、外で何かを行うことも考えられる。私、アスラ、レイ、ミラの4人がなるべく学園内に残るようにする。結界を張ったときに中にいられるようにするために。シュガー、アモル、ルキスの3人は外で何かを起きてないことを確認してから侵入だ」

「よくわからないけど、それがいいと思うぜ」

「起こるとしたら、1週間以内に何かが起こると思う。相手のことは何もわかっていない。気を引き締めてくれ。このことはリア、お前からレイとミラに伝えてくれ。アモルとルキスには俺が伝える」


 リアマとアスラはシュガーに別れの挨拶をし、席を立った。レイとミラに伝えに行った。


****


 レイたちはいつも通り授業を受け、昼休みにご飯を食べていた。シュガーが考えていることを伝え、それと同時にレイたちの修行の成果も伝えた。


「魔術もできるようになったし、戦力アップだ」

「なら、頼りにしよう」

「余はどうしよう」

「避難をしたほうがいいと思うが」


 ミラはそう言った。エルは四大貴族のアーク家当主だった。エルの身に何かあれば、何が起こるのか想像できなかった。


「しかし、余も戦えるぞ」

「これは英雄の仕事だ。アークに万が一のことがあったら、いけない」

「イグニスがそう言うなら、戦うのはお主たちに任せるか。まあ、お主たちが危なくなったら、余も戦うがな。結界などの解除などの補助に回ろう」

「魔術のことは頼りまくるぜ」

「もっと、余を頼り、称えるがよい!」


 エルはアスラに対して、大きな声でそう言った。そして、昼休みが終わり、放課後を迎えた。

 放課後になり、人が少なくなった時にそれは起きた。

 学園内はいきなり、外は薄暗くなり、空は赤くなっていった。その時、学園内ではレイはリアマ、エルと、ミラはアスラとおり、外ではシュガー、アモル、ルキスと全員一緒にいた。

 シュガーは学園の変異に気付いた。それをアモルとルキスに伝えた。


「学園のほうで何かが起きた」

「さっそく、向かおう」


 3人は学園に向けて、走り出した。しばらく、走った後、学園の門に着いたが何かおかしかった。学園には何も変化がなかった。


「何も変化はありませんが」

「中に入れば、分かるよ」


 ルキスが門から学園の広場に走っていった。しかし、門を通った瞬間、ルキスの姿が見えなくなった。そして、ルキスが門から出てきた。


「あれ?」

「どうして、戻ってきたんですか」

「いや、校舎に向かって走ったら、いつの間にかここについていた」

「もう一度頼む」

「分かった」


 ルキスが再び、門から入っていった。またもや、ルキスの姿が見えなくなり、門から戻ってきた。


「ただいま」

「お帰りなさい」

「わかったよ、ボク。これたぶん異空間につながっているよ。門を異空間の入り口にしている。こういう異空間に入るためには何かしらの合図や鍵などが必要だけど、ここは必要していない」

「しかも、誰もが入ってきて、邪魔されないようにするために何かしらの方法で正しい道を歩む必要があるようにされている。おそらく、校舎に着くまでの道の方角はめちゃくちゃになっているだろう。魔力や竜力などの力が感知できない」

「どうしますか?」

「別のものを感知しよう。リアの縁を感知する」

「縁?」

「縁とは人と人を繋ぐものだ。縁の感知を使い、リアと最も繋がりを感じるところから侵入すれば、行けると思う。時間をかかるが、それしかない。その間、外で何か起こっていないか確認を頼む」

「分かりました」


 シュガーは学園の方に手をかざし、縁の感知を始めた。ルキスとアモルは周りで何か起きていないかを調べに行った。


****


 学園ではレイとリアマ、アークと一緒にいた。いきなり、外が薄暗くなり、空が赤くなったことで驚きを隠しきれていなかった。


「いきなり、何が起こった」

「冷静になれ、慌てていたのでは見えるものも見えなくなる」

「これはおそらく異空間だな。そして、元々作ってあった空間に引きずり込まれたんだろう。ゆがみも急に異空間を大きく作ったことで発生したに違いない」

「何のために」

「おそらく、ばれないように大規模の魔術を発動させるためだ。余ならそうする」

「不可解なことが1つある。なぜ、異空間は急に大きくしたら、ゆがみが大きくなる?」

「異空間は急に大きくした場合、空間そのものが安定していない。安定していないのがゆがみとなり、周りに感知できるようになる」

「やはり、おかしい。ばれないようにするために異空間を作ったんだろう。なぜ、急に異空間を大きくする。ゆがみが発生して、ばれやすくなる。行動が矛盾している」


 相手はおそらく魔術を使うのをばれないようにするために異空間を作った。しかし、異空間を急に大きくしたことでゆがみが発生し、シュガーに感知された。魔術の発動を隠すための行動なら、明らかに矛盾していた。


「そういえば、そうだな」

「確かに相手の考えは分からん。しかし、異空間を壊せば問題ない」


 エルは事前の打ち合わせ通り、異空間を壊しに行くために走り出して、どこかに行った。エルの走った方向を見ていると反対の方向から、足音が聞こえてきた。その足音に反応して、リアマはどこかしらか出したのか、槍を持っていた。レイは手にリトスを持った。足音を発していた者は目の前に現れた。腰には小さいナイフとガンナイフを腰につけていた。


「俺の名前はファンティー。少し話を聞いてもらえないか」

「寝言は寝て言え」


 リアマは話を聞こうとせず、戦闘態勢に入り、相手を襲おうとした。しかし、レイがリアマを止めた。


「話を聞いてからでも、遅くないと思う」

「そちらの方は話が分かるようだな。もう1組には話を聞いてもらえず、相棒が戦っているよ」


 レイはもう1組とはアスラとミラの事だと思った。ミラはともかく、アスラは話を聞くはずがないと思った。


「俺は他の世界から来た」

「俺以外にも異世界人がいたのか」

「なら、君もか。俺の世界は破滅を迎えようとしている。この実験は俺の世界の住民を救うためものだ。見逃してほしい」

「その魔術でどうするつもりだ」

「世界の滅びは免れないだろう。その前に住民をこちらに移動させる」

「ふざけるな。そんなことをすれば、今度はこの世界で争いが起きる」


 ファンティーの世界の住民がこちらの世界に移動すれば、争いは確実に起きる。世界同士の住む領地の争いが起こるだろう。争いを起こさないようにするには拒否するしかなかった。

 もし、受け入れたとしても、もともとこの世界にいなかった者たちなのだ。住む領地の不足、食料不足、種族の違いによる差別などの何かしらの問題がそう遠くない未来で起こり、それが原因になり、争いになる。

 いざとなれば、この世界の者たちを皆殺しにし、何もかも奪いされば良い。生きるためにはそうするしかなかったと言い聞かせて。

 リアマはこうなると簡単に想像でき、この世界の者を守るために拒否した。ファンティーはこれに黙っていなかった。


「自分たちさえ良ければ、それでいいのか。助け合うのが人じゃないのか」

「そう言うお前たちはどうだ。受け入れれば、確実に争いが起こるだろう。自分の事しか考えず、こちらで起きることを無視しているではないか。このことは貴様が言う『自分たちさえ良ければ、それでいいのか。』ではないのか。もちろん、貴様たちのことは助けたいと思っている。しかし、優先すべきなのはこの世界の住民だ。私たちはそのために英雄に選ばれた。たとえ、鬼悪魔と呼ばれようが民を守ろう。それがイグニスの王女としての義務だ」

「君たちの世界はどうなっている?」


 レイはファンティーの言っていることもリアマの言っていることも理解できた。どちらも間違っておらず、どちらも正しいのだ。ただ、世界がそれを許していなかった。

 この世界を救った五大英雄が思ったであろう『世界を救いたい』という思いとファンティーの思いに何の違いがあるのだろうか。レイはファンティーの世界を聞き、何かしらの打開策が思いつかないか考えた。


「俺の世界では人口が増え過ぎていた。それが原因で争いが起きていた。だが、人々は突然次々と死に絶えていった。最初は何が原因か分からなかった。しかし、それは神の手で起きていた。神は世界を滅ぼし、再生させるために殺人ウィルスをばらまいたのだ。神は争っていた俺たちに見切りをつけたのだ。しかし、誤算が1つあった。そのウィルスに抗体を持つものがいたのだ。俺もその一人だ。そのおかげで生き延びた。しかし、地獄が始まった。神は完璧に滅ぼすためにほかの世界から、世界を守るために存在するという組織ロイヤルガードを世界に呼び寄せた。奴らは世界と神が守れればいい。神と世界があれば、再生ができるからな。仲間が一人一人と殺されていった。それから、生き延びるための方法を探している」

「そんなひどい」

「世界自体が滅びないようにするためだと奴らは言っていた」

「貴様たちの事情は分かった。やはり、倒すとしよう。貴様が持つウィルスのせいでこの世界まで滅びかねない」

「やはり、分かり合えないか」


 ファンティーとリアマは戦闘態勢を取った。ファンティーの体に異変が起こった。筋肉が膨らみ、腕が伸び始めた。


「ウィルスのせいで死んだが、生き残った者には進化を促し、いままでに持ってない力を得ることができた」


 ファンティーは伸びた腕で薙ぎ払った。リアマは飛び、レイはしゃがんで避けた。リアマはそのまま右の肩に向けて、槍を突いた。しかし、貫くことができず、少しだけ刺さっただけだった。頭を持たれて、壁に向かって、たたきつけられた。

 レイは決意し、胸にリトスを差し込んだ。


「この世界を守るために、仲間たちを守るためにお前を倒す。フトールム・フォルテ」

「いい覚悟だ。後は俺に任せろ」


 レイの体が光り、フォルテに変身した。しかし、アニムスは出さなかった。


「姿が変わった。要注意だな」


 フォルテはファンティーに向かい、走り出した。それに対し、また腕で薙ぎ払うが避けられてしまう。フォルテはファンティーの顔に拳を振り下ろした。しかし、顔といっても右目に向けて、振り下ろしていた。結果、右目から出血し、のぞけった。その隙を見逃さずに体を一回転させて、腹に向けて、蹴りを加えた。するとファンティーは倒れ、右目を抑えていた。

 その隙にリアマの様子を見に行った。そして、リアマに声をかける。


「大丈夫か」

「大丈夫だ」


 リアマは立ち上がりながら、そういった。額から少し血が流れていた。

 フォルテはリアマの胸に手をかざし、アニムスを取り出した。リアマから取り出したアニムスは巨大な黒い大剣だった。しかし、学園の廊下では振り回すことが難しそうなほどの大きさだった。それはファンティーも理解し、立ち上がり、大剣に対し、それほど警戒していなかった。右目は再生が終わっていた。

 大剣を生かすには広い場所に出る必要があった。フォルテは広場に出る作戦を思いつき、リアマに話しかけた。


「後ろに下がりながら、足止めを頼む」

「私の攻撃では倒せない。お前に任せよう」


 フォルテは敵に背を向け、走り出した。

 リアマは前に出て、ファンティーと対峙する。腕を薙ぎ払い、それに対し、リアマはよけた。そして、槍で顔に向け、攻撃する。それを額で受け止め、攻撃し返した。後ろに下がりながら、避けていった。2人はこのような攻防を繰り返していった。そして、ある場所に着いた。そこは階段の前にある広場だった。


「リアマ、避けろ」


 フォルテの声に反応し、思い切り後ろに跳んだ。フォルテは剣を構えており、ファンティーの腹に向けて、力の限り振り回した。ファンティーは大剣ごと壁に叩きつけられ、壁を破り、外に押し出された。外で転がっているファンティーが態勢を直している間にフォルテとリアマは外に出ていた。


「ここなら、剣が全力で振れる。お前を斬ってやる」


****


 一方、アスラとミラはある男と2階で戦っていた。

男の名前はピリオ・キーン。最初はファンティーと共にいた。しかし、この実験について、話をしようとしたが、アスラが話を聞かず殴りかかってきたので、話を聞いてもらえず、戦闘に入ってしまった。


「死ねや、こら」


 アスラが殴り当てるが、当たっても効いていなかった。ミラは鎖を具現化した。鎖は右手に具現化した指輪についており、その先はミラのリトスである金色のブレスレットに繋がっていた。ミラは中指の鎖をブレスレットから外し、ピリオに向かって、伸ばした。ピリオは邪魔だと思い、鎖を掴んだ。


「よし、凍れ」


 掴んだ鎖が氷始め、腕と鎖を凍らせ、一体化させた。ミラは相手のバランスを崩すために鎖を引き戻した。ピリオは体勢を崩れ、アスラはそれを見逃さなかった。手を背中に回し、相手の腹に膝で勢いよくぶつけた。


「良し」

「無駄だ。アニクト状態になった俺を傷つけることはできない」


 しかし、まったく堪えておらず、効いていなかった。アスラから距離を取るとなぜか凍っていた腕が解け始め、氷による拘束を解いた。


「なんだ、あれはまったく効いてねー」

「私の攻撃は効いた。アスラ、試したいことがある。殴り続けてくれ」

「分かった。お前を頼るぜ」


 再び、アスラはピリオを殴り始めた。拳、蹴りで殴りつけた。しかし、先ほどと同様効いている様子はなかった。

 ミラは鎖を伸ばした。鎖の先に氷の刃を付けていた。しかし、鎖はある程度の距離を進んだら、動きを止めた。アスラが相手を殴りつけようとしたとき再び鎖を伸ばし、攻撃した。結果、拳と鎖の攻撃は同時に当てることができた。拳の攻撃は効いてなかったが、氷の刃による攻撃で体に傷がつき、血が流れていた。


「くっ」

「分かった。お前の能力が。お前の能力は個人を対象にし、無敵になることだ。だから、アスラの攻撃は効いてなかった。氷が解けたのは私を対象にしたからだ」

「だから、なんなんだ。俺は時間稼ぎが目的だ。君の攻撃に集中すればいいだけだ。彼の攻撃は効かないんだからな」

「それなら、いいことを思いついた。鎖であいつを拘束してくれ」


 そういうとアスラは殴り始めた。ミラは相手の隙をつき、拘束するタイミングを待っていた。アスラはピリオの顔に向けて、手の平をぶつけた。ピリオは反射的に目を瞑ってしまった。目を瞑った時を見逃さず、鎖を伸ばした。鎖を体に巻き付けて拘束し、さらに凍らせた。

 アスラはピリオの背に壁が来るように動いた。ミラはアスラのやろうとしていることが分かり、鎖を手元で伸ばしていた。ミラの具現化した鎖は伸ばせば、伸ばすほど脆くなる。


「おらぁー!」


 アスラはピリオを壁に向かって、殴りつけた。そうすると鎖がちぎれ、壁が砕け、外に放り出された。アスラも跳び、ピリオに乗りかかった。


「何する気だ」

「俺の攻撃は効かないんだろう。それなら、落下による衝撃は俺の攻撃じゃねー。試す価値はあると思ってな」

「や、やめろ」


 制止の言葉を聞かず、地面に叩きつけるために拳を振り下ろした。


****


 フォルテとリアマは広場でファンティーと戦っていた。リアマの攻撃は通じていなかった。フォルテは相手の攻撃をさばき、相手の腕に向かって、大剣を振り下ろした。ファンティーの左腕はちぎれ飛んだ。痛みによる悲鳴をあげていた。


「やっと、斬れたな」

「右目みたいにおそらく再生するぞ。畳みかけるなら今だ」


 再び、襲い掛かろうとした。その瞬間、リアマたちとファンティーの間に上から何かが降ってきた。


「ピリオ、やられてしまったのか」

「すまない」

「アスラか」

「おうよ。あとは止めを刺すだけだ」


 ミラが飛んできて、リアマたちがいるところに着地した。


「これじゃあ、もう無理だな」

「じゃあ、死ぬがよい」


 声が聞こえると突如攻撃が飛んできた。その攻撃はファンティーに体を貫いた。リアマたちにも攻撃が放されていたが、横から炎を飛んできて、相殺された。


「すまない。遅くなった」


 そこにはシュガー、アモル、ルキスの姿があった。彼らはリアマのもとに駆け寄った。


「いきなり、攻撃しやがって、誰だてめーは」

「それはすまない。私はロイヤルガードのスカイ・フライハイトという。この世界でいう翼人になる。そこの2人の異世界人を処理しに来た」


 スカイ・フライハイトと名乗った翼人は空を浮かんでいた。白髪青眼であり、その身には白い鎧を着ており、手には槍が握られていた。なにより、目立つのが背中に生えている2枚の白い翼だった。


「なぜ、処理する必要があるのですか?」

「彼らは異世界から来た者でこの世界に争いを持ち込もうとしているからだ」

「彼らにも生きる権利があると思うんだけど」


 アモルたちがそう言うとリアマが口を出した。


「彼らの事情は聞いたが、やろうとしたことはこの世界に害をなすことだ。そのスカイとやらの意見は正しい」

「そうかな。彼らもボクたちと同じ人に見えるけど」


 そう言い、ファンティーとピリオを見るためか、ルキスは近づいた。しかし、止めを刺されると勘違いしたのか、ピリオはルキスに光を放ち、腹に穴をあけた。


「ピリオ、お前、何している!」

「これでも、助けようというのか。お前たちの仲間を傷つけたものを」

「もういい。奴が来た以上終わりだ。俺は助かる可能性がある選択をする。この空間は非常に不安定だ。外とは別の世界と言えるほどにな。これを利用して、魔術を発動させる。異世界に移動する魔術を」


 ピリオは魔術を発動させた。ピリオを周りに黒い穴ができ、その穴はどんどん広がっていった。ここにいる全員、黒い穴の上にいた。広がった後はその穴に吸い込まれていった。ここにいた者たちはこの世界から姿を消した。


****


 レイは目を覚ました。そこには青い空が広がっていた。周りが9人の姿があり、そこにはスカイ・フライハイトの姿はなかった。

 レイのほかにはアスラとアモルが目を覚ましておらず、シュガーとミラはルキスの近くに座っていた。リアマはファンティーが何かしてこないか警戒していた。ルキスの腹の傷に対し、シュガーは札を当てており、ミラが小指から伸ばした鎖を当てていた。傷は治っていたが、ルキスはまだ苦しんでいた。


「なぜ。傷を治したのに」

「ウィルスのせいだろう。ピリオの攻撃によって、感染したに違いない」

「なぜ、ルキスだけが感染した?私も貴様から攻撃を受けたぞ」

「それは分からない。しかし、俺なら彼女を救える」

「そんなこと、信用できるか。そもそも、貴様たちのせいでこうなったのだぞ」

「ピリオが死んだ今これしか、救う方法はない。信じられないだろうが、信じてくれ」


 ファンティーはリアマの目を見つめ、言った。ファンティーの目は覚悟を決めている目だった。


「わかった。どうする気だ」

「その前に彼女に近づかせてくれ」


 ファンティーがルキスに近づき、胸の前に手をかざした。リアマはファンティーの首に槍を突きつける。


「変なことをするな。したら、殺す」

「分かっている。始めるぞ」


 ファンティーの手の平に黒い光が集まった。集まった黒い光はルキスに吸収されていく。


「何をしている」

「俺の中にあるウィルス抗体をルキスに送っている。これがあれば、ウィルスによって死ぬことはなくなる」


 黒い光は手の平から放出されなくなった。ルキスは今まで苦しんでいたのがウソのように体を起こした。それと同時にファンティーは横に倒れた。


「どうしたの?」

「俺はもうじき死ぬ。俺の中に抗体がなくなったからな」

「どうして、そこまでして、助けたの?君の人生は君だけのものだったのに。ボクはやりたいと思ったから、やった。それで死ぬなら、悔いはなかった」

「元々、傷が深すぎた。ウィルスと関係なく、死んだだろう。その前にお前が救えてよかった。俺たちの世界のせいで犠牲になってもらいたくなかった。これをやる。そのウィルスを制御するのに必要だ。使い方はいずれ分かる」


 黒い柄のないペティナイフとガンナイフをルキスに渡された。


「大切なものじゃないの?」

「確かに親友の形見で使う気になれず、お守り代わりに持っていた。だが、腐らせるよりかはいい。あと、そこの赤髪ツインテール」

「リアマだ。なんだ?」

「リアマか。お前が俺に言ったことはけっして間違っていない。だが、俺も自分の世界の人を救いたかった。お前たちの世界に迷惑をかけて、すまなかった。お前は間違っていない。だから、自分の正義を貫き通せ」

「分かった。死ぬまで貫き通そう。自分の民を守るということを」

「その意気だ。あぁ、眠くなってきた」


 ファンティーは目を閉じ、その生涯を終えた。世界を守りたかった男は世界を守れずに死んだ。しかし、その顔をどこか満足そうな顔をしていた。


「いろいろあったんだな」

「ああ、ファンティー。世界を守ろうとした英雄よ。その名は私の心に永遠に刻もう」

「ありがとう。まだ、したかったこともあったよね。君も分まで生きるよ、絶対に」

「彼は俺たちの世界にとっては悪だった。しかし、自分たちの世界にとっては正義だった。英雄と呼ばれるほどの」

「形はどうあれ、彼はルキスの恩人だ。墓を建てよう。安らぎを与えたいから」


****


 ファンティーとピリオの墓を建てた。墓を建てている時にアスラとアモルが起き、今までの事情を説明した。

 墓の前に座り、アモルは目を閉じ、祈っていた。アスラは彼らの墓の前に立ち、声を出した。


「ルキスを救ったことについては感謝するぜ。しかし、俺たちの世界を危ない目に合わせやがって、一生許さねえからな」

「アスラ、気持ちは分かりますが、過ぎたことを言っても仕方ありません。せめて、死後は幸せであるように祈ります」

「そもそもどこなんだ」

「おそらく、異世界だ。帰る手段がないな」


 シュガーがそう言うといきなり大きな黒い影ができた。空を見上げるとそこにはドラゴンが飛んでいた。


「ドラゴンだ。僕たちの世界では伝説になっているのに」

「人を見つけた」


 リアマがそう言い、指を指した方向を見た。確かに人はいたが、人というには大きすぎた。身長4~5mはありそうな巨人がいた。その巨人は飛んでいたドラゴンに対し、岩を投げた。するとドラゴンは巨人のほうに襲い掛かり、巨人とドラゴンの戦いが始まった。


「俺も人を見つけたぞ」


 今度はアスラがそう言った。その方向を見ると自分たちと同じ大きさをしていた。ドラゴンの前に立つと人は人の形でなくなり、大きなタコみたいな姿になり、襲い掛かった。ドラゴンは触手を一本千切ったが、それを介していないのか、ドラゴンに巻き付いた。触手がドラゴンの皮膚を切り裂く。ドラゴンも負けじとタコに噛みついた。


「私も見つけましたが、喰われてしまいました」


 レイはこの世界にはまともな人はどこにもいないだろうと思いつつ、その方向を見た。そこにはドラゴンがいたが、暴れていた。するといきなり、横に倒れた。ドラゴンの腹の中から食い破って、人が外に出てきた。人は自分たちと同じ大きさだったが、ドラゴンの死体を食べ始めた。


「食物連鎖が盛んだな」

「ぜったい、何か違う」

「血が騒ぐぜ」

「レイ、この馬鹿を抑えてくれ。絶対に戦わせるなよ」


 そう言いあっているとまた空に大きな影ができた。その影はレイたちの前でどんどん小さくなっていき、ドラゴンが飛び降りてきた。


「まともな人がどこにもいない」

「どうする」

「勝てるのか」

「やろうぜ」

「絶対に先にやるなよ。せめて、相手が手を出してからやれよ」

「話してみましょう」

「そもそも、ドラゴンって話すことができるの?」

「話せるぞ」


 ドラゴンが口を開き、言葉を話した。どうやら、こちらを観察していたようである。


「お主たちは何のためにこの世界に来た。観光か」

「いいえ、相手が発動した魔術に巻き込まれ、ここに来ました。この世界をどうしようとかの意思はありません」


 アモルはそう言い、ドラゴンに敵対や侵略のために来たわけではなく、さらに事故によって、来たということを伝えた。


「それならいい」

「あなたの名前と目的を聞かせてください」

「我の名前はロスト・フォール。ドラゴンの最強の王だ。この世界にはたまに異世界から来るものがいる。あのタコみたいな奴がな。しかし、今回、異世界に来た者は姿が違っており、めったに見ない形をしていたから、気になったから来たのだ」

「実は元の世界に帰る方法がなく、困っているんです」

「……嘘は言っていないな。しかし、ほかの者と話をするぞ。そこの赤髪ツインテール」


 シュガーが事情を話したが、なぜかロストはリアマと話すことにした。


「私の名前はリアマ・フォン・イグニスです。リアマとお呼びください」

「イグニスか。それは神の名前か?それと神の名前を言え」

「はい、そうです。私が知っている神はイグニス、アクア、ウェントゥス、ソルム、トルトニス、デネブラエ、ルークスの7つの神です」

「うむ、お前たちが住んでいた世界を特定できたぞ。我が送るとしよう」

「異世界を移動する術があるのですか?」

「この技術を持つ物はこの第3世界でも少ない」

「それがあるなら、私に伝授してもらえないでしょうか」


 シュガーはロストに異世界を渡る技術を教えてもらえないか頼んだ。しかし、ロストはこの頼みを拒否した。


「それは無理だ」

「そうですか。分かりました」


 それでも、体験することで目的に近づくことはできるとシュガーは思った。


「なら、お主らの世界、第5世界に送るぞ」


 ロストはレイたちを元の世界に戻すための準備をした。ロストの周りにはとつてもない量の力が集まっていた。レイたちの周りに光の輪が現れた。


「最後に1つ、リアマよ。竜の本能に従え。そうすれば、強くなれるぞ」

「竜化のことですよね。分かりました。そのことを意識してみます」


 光の輪の光り方が強くなっていく。強く光り、その光が収まったときにはもうレイたちはこの世界にはなくなっていた。


****


 レイたちは学園の広場に移動していた。空はすっかり暗くなっており、学園には巨大な穴が開いていた。


「元の世界に戻れたな」

「いろんなことがあったね。一生に一度あるかないかの体験だった」


 ルキスはそう言った。今日はリアマとファンティーの正義のぶつかり合い、ルキスに至っては謎のウィルスにより、死にかけた。そして、異世界に移動し、伝説の生き物ドラゴンを目にした。さらに巨人、大きなタコもどきのドラゴンとの戦い。ドラゴンの王による元の世界の帰還。


「今日のことは忘れないよ。ボクをたすけてくれたファンティーのことを」

「私も忘れることができないだろう。別の世界を救おうとした英雄を」

「俺も忘れることができない。考えなきゃいけないことがいっぱいあった」

「今日はとりあえず、皆さん、私の家で休みましょう」


 アモルがそう言い、全員歩き出した。

 レイは英雄の重みを知った。リアマが言ったこともファンティーが言ったことも正しかった。しかし、見方を変えれば、リアマにとって、ファンティーはこの世界を侵攻する悪であり、ファンティーにとって、リアマは自分の世界を見捨てた悪だった。

 英雄といえども、すべてを救えるわけではない。必ず犠牲が出てしまう。その犠牲はどうするのか。英雄は見方によっては正義にもなり、悪にもなる。そのことをレイは英雄の使命の重みとして、知った。

 こうして、彼らの異世界を跨ぐ大冒険物語は終わりを迎えた。

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