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石鱗人の英雄 ピエドラ

英雄について・平行世界について

英雄が最初に得るフィデスは英雄によって、違う。しかし、平行世界で同じ英雄だからといって、同じフィデスに目覚めるとは限らない。

また、同じ英雄といってもリトスに宿っている神も違えば、エインヘリヤルも違う。

例としてはルキスと未来ルキスは同じフィデスであるが、宿っている神は違う。ルキスはゼウスであり、未来ルキスはインドラである。



前回のあらすじ

ついに平行世界から来た覇王と英雄を倒したアリスとシュガー。

しかし、シュガーのところに勇者が現れ、その正体が彼の知り合いであり、シアという竜人であったことが分かった。

和解し、力を貸してもらおうとしたとき、勇者の期限が切れ、彼女は勇者の力を失ってしまった。


****


 シュガーを向かっている時空の穴は黒い月のように開いており、中は黒い海が波のようにざわめいていた。その四方には時空の穴を囲むように棒が刺されてあった。

 その近くにはメロディ、スノウに加えて、シュガーの神装である女性型機人がいた。名をスラヴァーと呼ばれていた。

 彼女たちがこの場にいたのは時空の穴に対する護衛だった。メロディはその場にいながら、ある力を感じていた。


「覇王の気配が消えたな。倒されたようだな」

「私には何も感じませんが、メロディ様がそうおっしゃるのならそうなのでしょう」


 メロディとスラヴァーが会話を交わしていると大きな影ができた。空を見上げるとそこには巨人の機人である神装タロスが飛んでいた。

 タロスはゆっくりと地面に足をつけ、機人が液体状になると中にいたシュガーたちが現れ、彼のリトスに液体が収納されていった。


「これから、プロキオン、シアを戻す」

「では、シュガー。今回みたいなことは起こさないようにな」


 プロキオンが彼に対し、それだけ言うとさっさと穴に入り、元の世界に戻った。


「じゃあ、シュガー。あちらのシュガーが同じことをしないように締めてくるから」

「あっちの俺は何もやっていないのだから、責めないでくれ」

「分かった、はい」


 シアの手が前に出され、シュガーはそれに応え、握手を交わす。手を離すと彼女も穴に入り、元の世界へと戻る。

 2人が元の世界に戻ると次はアリスたちがやって来た。

 黒餅、紅葉、羅刹の3人はシュガーを見ると彼の前で跪つく。シュガーは彼らが発している力を感じ取り、その正体が分かった。


「火霊産様、ずっと探しておりました。ご帰還をお願いします」

「この妖気は……黒餅に紅葉か。やはり、来ていたのか……。やっと、帰れるときが来たのか。今は誰が父上の後を継いでいる?」

「貴方の妹君に当たる天照大神様が継いでおられています」

「そうか。だが、帰るわけにはいかない。レイとアモルたちが連れてくる英雄を元の世界に戻すまでは」


 シュガーはレイとアモルたちが分かれていたことを感じ取っていた。それと同時にレイが会うであろう英雄の力は少しおかしいことも感じ取っていた。


****


 草原が広がっており、地面には小石などが落ちていた。パラパラと咲いている花は見る人に心の安定をもたらすだろう。

 レイと別れたアモルたちは英雄を探しながら、ルキスはラーパに彼女がいた世界について、聞いていた。


「ラ-パさんがいた世界にはどれだけの英雄がいたの?」

「最初に選ばれたのは7人ですが、追加で3人いたので、合計10人ですね」

「そうなんだ。ラーパさんのフィデスって、どんな能力?」

「私のフィデスは能力無効化です。この能力はあまり使いたくありません。エインヘリヤルなら尚更です」

「そのエインヘリヤルって、どんな能力なの?」

「例え話ですが、エインヘリヤルを使えば、シュガーさんを5秒で520回は軽く殺せます。ただし、無差別なので仲間すらも巻き込んでしまいますが」


 ルキスとラーパがそんなことを話していると1人の青年が現れた。

 その男は両目を黒い布で覆っており、腰からは暗い緑色の鱗がついた尻尾が生えていた。軽そうな声でアモルたちに話しかけてきた。


「やあー、君たちが英雄かい? 戦ってみたいなー」

「貴方の名前を聞かせてもらませんか?」

「ぼくの名前は石鱗人のピエドラ。戦ってみたいなー」


 ピエドラと名乗った石鱗人にアモルたちは名前を名乗っていき、アモルは彼に戦いたがる理由を聞いた。


「何故、貴方はそんなに私たちと戦いたがるのですか?」

「見たこともない大陸に来たし、新しい玩具で遊びたいんだよ」

「大人しく戻ってくれませんか? 戦う理由がありません」

「なら、戦う理由があればいいんだね」


 ピエドラは黒い布の眼帯を取り、アモルたちを見つめようとした。その行動は彼女の本能が危ないと叫んでいた。


「目を背けてください!」


 何とかアモル、ルリ、ラーパは目を背けたが、ルキスと未来ルキスは間に合わなかった。


「なに、これ!?」


 結果、彼ら2人は足から石化していき、やがて体が石へと変わっていった。

 ピエドラは眼帯を再び装着した。


「これで戦う理由ができたね。石化は優れた魔術師か薬師がいないと無理だね。確実なのはぼくが解くことだね」

「私が戦います。ルリはサポートをお願いします」


 アモルは剣を抜き、距離を詰めた。それに対し、ピエドラは素手で対応した。素手と言っても彼の腕には鱗がついている。そのため、通常の皮膚よりは頑丈であった。

 何度か、剣と素手が交わるとピエドラの視線がアモルを捉えた。


目からビーム ラディウス


 彼の眼から光線が放たれる。それがピエドラのフィデスだった。

 アモルは上半身を逸らすことで避け、態勢を整えていると彼は息を大きく吸いこんでいた。それを吐くと毒の息となり、アモルを襲う。

 彼女は毒を吸わないようにするために息を止める。そして、距離を取り、遠距離攻撃をするためにフィデスを発動させた。


極光(アウローラ)


 アモルの体からピンクの極光が溢れ輝く。それと同時に黒のロザリオも色が変わり、ピンクに染まる。

 左手に極光を集め、技の準備をする。


「極光撃」


 収束された極光は天撃のように放たれ、それを見たピエドラは眼から光線を放つが、簡単に弾き消される。

 その輝きは彼に直撃した。


「やりましたか?」


 ルリはそう言い、ピエドラはボロボロになっていた。それでも、彼の声の調子は軽いままだった。


「どうしよう? これは使いたくないけど、どうしよう? まあ、いいか。君たちならどうにかしてくれるよね」


 草原の宝石である花は昨日生まれたばかりなのに今日死に絶えていく。

 それはまるで不実な人の心の誓いみたいだ。

 死んでしまう君に愛憐し、最初で最後のくちづけをあげよう。

 それは甘くて激しい、死のくちづけを、愛のくちづけを。

 君と過ごした日々も犯した過ちも恥辱さえも死に二度と戻らない。

 すべては死に絶える。


英霊(エインヘリヤル) 蛇王が蹂躙する暴虐 バシレウス・バジリスク


 エインヘリヤルを発動させたピエドラの姿はバジリスクへと変わっていく。その姿は大きな蜥蜴であるが、8本の足があり、体全体には毒々しい紫色の煙を纏い、口から吐き続けていた。


「があああああああ!」


 ピエドラは言葉にならない咆哮を叫び、その姿には知性の欠片があるようには見えなかった。アモルに尻尾を叩きつけ、それをかろうじて避ける。

 彼の眼はアモルを捉える。すると彼女の体は重くなり、足からどんどん石化していく。さらに大きく息を吸い込み、毒の息が吐かれ、絶対絶命の危機へと落ちる。

 しかし、アモルは慌てていなかった。


「煌け、神装 極光に燃える虹の橋 ビフレスト


 彼女が纏っている極光は燃え、桃色の炎へと変わっていく。その炎を剣に収束させていく。

 アモルを襲う毒の息が通った道は草木おろか、石や岩までもが砕かれていき、不毛の大地へと変え、進行していた。


「フルゲオ・アウローラ!」


 剣から放たれる煌く炎の極光は光線となり、ピエドラを襲う。

 彼の体は燃えていき、暴れ、毒をまき散らす。しかし、それは極光の炎によって、浄化されていく。

 彼がバジリスクの姿から人の姿へと戻ると同時にアモルたちの石化も解かれていく。


「これで後はシュガーのところに連れていくだけですね。もし、あなたが本気で戦えば、こちらが負けていたでしょう」


 ピエドラのフィデスである目からビーム ラディウスは石鱗人が持つ邪視と組み合わせることで真価を発揮する。それをしなかったのは新しい玩具を壊す目的で遊ぶ者はいないということである。

 アモルはルリにピエドラの治療を頼み、シュガーのところへと向かう準備をした。

次回予告

エインヘリヤルを超え、テオスの英雄が出ます。

※予告なしに変更することがあります。


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