エインヘリヤル 贖いの焦熱地獄
英雄について・ノードゥス
フィデスを修得し、神の対話をすることでノードゥスに入る。
この段階に入ると神の象徴である神装を具現化できるようになる。なお、具現化できる数は英雄によっても違うが、1つか2つであり、それ以上の数を持つ者はあまりいない。
同じ神のリトスでも英雄によって、具現化できる神装が違うこともあれば、同じこともある。
前回のあらすじ
レイ一行は英雄の女性と会い、戦うことになる。
女性、未来ルキス、レイのエインヘリヤルの領域に入り、ぶつかり合う。
そんな時、静観していた英雄がやって来て、女性が魔人のリリィだと分かる。もう1人の英雄はかつて、トルトニスでレイを助けた人のラーパだった。
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ラーパの出現により、英雄たちは戦いの手を止めた。
レイは頭に浮かび上がる疑問を彼女にぶつけた。
「なぜ、ラーパさんが?」
「実は私もレイ君たちとほぼ同じ時期に選ばれた英雄なんですよ」
「今回、英雄に選ばれたのは僕にシュガー、ルキス、アスラ、アモル、リアマ、ミラ、ルリの8人じゃあ……」
「この世界だとそうですね」
「この世界?」
彼女の言っていることがレイには分からなかった。
「私、リリィ、フォルテはこの第5世界の住人であって、この世界の住人ではありません」
「どういう意味?」
「私たちは異世界から来たのではなく、並行世界から来ました」
ラーパたちがこの世界に来た理由がレイには分かった。
「……未来を変えるためにですか?」
「ある程度はフォルテから話を聞いていたみたいですね。どこまでをお話ししましょうか。とりあえず、目的でも話しますね」
今度は彼女がレイに質問を始める。
「フォルテからはどこまで話を聞きましたか?」
「シュガーが世界を滅ぼすほど危ないとだけです。それ以外は何も」
「英雄とシュガーの間に擦れ違いが起き、彼と争うことになり、それが悲劇の始まりでした。英雄を滅ぼそうとするシュガーはやがて世界をも滅ぼそうとしました。その戦いは激しく、世界に深い傷を残しました。それは英雄が魔王と呼ばれるほどでした」
ラーパは振り返るように思い出し、口に出していく。
「そこで私は考えました。平和な世界があってもいいのではと。時間跳躍の究極魔法を開発し、私とフォルテは過去に飛びました。フォルテはリトスとなり、英雄を導き、私はシュガーの抑止力として」
「それが本当ならその究極魔法を見せてよ」
時間を行き来する究極魔法の存在が信じられないルキスはラーパにそう言うが、芳しくない答えが返って来た。
「私たちが開発した究極魔法は不完全で過去の一方的にしか行けず、目的点が必要なんです。過ぎた過去には行けるんですが、定まっていない未来には行きようがないんです」
「どうやって、開発したの? そんな魔術を」
「シュガーが残した資料から開発しました。それは異世界に渡るための魔術だったので、どうやら、彼は異世界をも支配下に置くつもりだったんでしょう。今回の事件の原因です」
ラーパの口から出た事件の原因という言葉にアモルが反応した。
「今回のことはシュガーが起こしたんですか?」
「見ていないので断言はできませんが、現時点でこんなことをできるのはシュガーしかいません。私たちがやるべきことはほかの平行世界から人を保護し、彼の元に連れていくことです。彼なら対策を編み出しているでしょうし、そんな人でした」
レイはエインヘリヤルを解除しようとするが、それをリリィが制止する。
「保護の必要がする必要があるなら、別れましょう。私はレイ君と一緒に行動します。私の神装スレイプニルで移動しましょう」
(スレイプニルと言えば、8本の足があると言われている馬だ)
彼女は神装を具現化していき、レイはそう想像したが、現実は違った。目の前に現れたのは緑色に輝く2輪の大型バイクだった。
「さあ、後ろに乗ってください」
「……これがスレイプニル?」
「なにか、おかしなところでも?」
「いや、なんにもないです」
彼は後ろに乗り、リリィはバイクを走らせる。
残った英雄たちもそれぞれに別れ、英雄を探す。
****
レイたちがリリィと戦っているとき、別の場所でも戦いが起こっていた。
英雄のアリス、セレネと覇王のアルティが激突していた。
アリスはミカエルと融合しており、その姿は天使であった。背には2対の白い羽に右手には白い剣、右手には白い盾を持っていた。
アルティの手には赤色の剣と緑色の剣の双剣が握られていた。
英雄2人が戦っているにも関わらず、覇王の方が若干優位に戦っていた。
「危ない! アリス」
セレネの言葉に反応して、アリスは体を地面に近づけて、後ろから投げられる赤い剣を避ける。
アルティが優位に戦えていたのは2人が予想もつかない、型に外れた戦い方をしているためだった。
戦いながらもアリスはアルティが持つ双剣にある物と既知感がした。
(あの双剣。シュガーが持つ刀と似た力を感じる)
アリスはシュガーの刀である焔と双剣に同じような気配を感じていた。
「このまま、ジリ貧だし、一気に勝負をつけます。セレネ、離れて」
太陽のように清らかな彼は大事であるはずの私との間を剣で分け隔てた。
彼ほど真剣に誓いを立て、誠実に契りを守り、純粋に人を愛した人はいない。
だが、あらゆる誓い、あらゆる契り、誠実な愛を裏切ったものもまたいない。
その意味をあなたたちに理解できる?
限りなく純粋な彼は私を裏切らねばならなかった……。
燃え上がる彼の苦悩に目を向け、永遠に消えない自分の罪を自覚しろ!
我が身を燃やし、焦がす炎が体に深く刻まれた罪を浄化してくれることを祈ろう。
「英霊 贖いの焦熱地獄 」
世界は漆黒の闇に犯されていく。地響きが起き、あらゆるところがひび割れ、赤き光が漏れる。そこから業炎が踊り狂う。そして、アリスの体は業炎に包まれていき、白い羽根は黒く焦げ落ち、服すらも黒く焦げていく。
彼女は一気に勝負に出ようとしていた。
****
時空の穴を固定化したシュガーはスノウと共に平行世界から来た英雄を探していた。
そして、出会えた。その英雄はかつてアリスの下に集まった1人、天人のプロキオンだった。
「お前とは1度戦いかった。それから話を聞こう」
「やるしかないか」
シュガーとプロキオンの戦いが始まる。
互いにエインヘリヤルを使わず、シュガーは魔術と刀で、プロキオンは天装とフィデスを使い、戦っていた。
「力試しもここまでだ。英雄の本気をみせてやろう」
妖精たちよ。
夏の爽やかなそよ風の中をすばやく飛び回れ。
木々の枝の間には銀色の光が月から照らし出す。
月の下を飛び歩き、花から花へと渡れ。
どの花たちもその幸せを祝福してくれるだろう。
妖精は花の呪文を持っている。
月の光の下で敵を狩れ。
「英霊 魔除けの妖精の森」
プロキオンを中心に周りの風景は変わっていき、緑深い森へと変わっていく。心地よい冷たい風が優しく吹いていた。妖精たちが飛び回り、空には銀の月が昇っており、銀色の光が降り注ぐ。
森の木は普通ではなく、緑暗い金属で出来ている金属樹であった。それは彼の天装でもあった。
「自分自身を変えるのではなく、世界を変えるタイプのエインヘリヤルか。とりあえず、木を焼き払うか」
火の魔術で金属樹を焼き払おうとしたが、火を出すことができなかった。その姿を妖精たちは笑っていた。
その様子を見て、この世界のルールを理解し始めた。
「妖精たちがマナを阻害しているな。それだけなら、変換なら関係ないはずだ。このことから、魔術そのものが使えないと考えた方がいいな。本体を叩いたほうが速い」
月から照らされる銀の光は魔を払っていた。
シュガーはプロキオンへと距離を詰める。その間、妖精たちが呪文で妨害してくるが、避けながら、接近していく。
刀を振り下ろすが、彼には届かなかった。その理由は金属樹の蔓が刀を防いでいたからであった。
「この世界は私のフィールド。そう易々と突破はできない」
金属の蔓は次から次へとシュガーに襲い掛かっていく。刀で斬り伏せていくが、多数に無勢であり、彼の体に蔓が絡まっていった。
「業火の結界!」
シュガーは自分自身に業火を纏い、蔓を焼き焦がしていく。
「神術だと発動できるか」
「やはり、こちらのシュガーも炎の変換を持っているか」
「エインヘリヤルにはエインヘリヤルで対抗しよう」
天使が英雄を楽園へと導きますように。
楽園についた英雄を聖なる都へと導きますように。
天使たちの合唱が英雄を出迎え、永遠の安息を得られますように。
「英霊 安息されし英雄の楽園」
シュガーの体はリトスから出た赤と金の光に包まれていく。すると髪は金、瞳は紫に染まり、獣の姿から竜の姿へと変わっていく。頭には2対の竜角、瞳は竜眼、背には羽が生え、竜の尻尾が生えていた。手には金色の槍、腰には神刀 焔があった。
「憧れは姿となり、意思は強さとなる」
シュガーとプロキオンがぶつかり合う。




