エインヘリヤル同士のぶつかり合い
英雄について・エインヘリヤル
英雄の第3段階に当たる。
英雄が最初に得た力がフィデスであれば、どのようなルートをたどったとしてもこのエインヘリヤルにたどり着くと考えられる。
英雄同士の戦いで段階は高ければ、力を使いこなせているため、段階が高いほうが有利である。ただし、第2段階であるノードゥスで使える神装、第1段階であるフィデスでもエインヘリヤル級の威力を持つことがあるため、絶対的な格差とは言えない。
前回のあらすじ
時空の穴から突如現れたエインヘリヤル級の実力者たち。彼らは各地に飛ばされてしまった。
シュガーは彼らを元の世界へと戻すために英雄たちに協力を求めた。
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時空の穴から現れた人が飛ばされたとき、そのことを感知した英雄がいた。その英雄はトルトニスの金色の髪を持った少女であり、かつてレイと会ったことがあった。
「これは計画外ですね。なぜか、仲間の力を感じますので行ってみましょう」
時空の穴から現れた中に彼女の仲間と思しき者がいたため、現場に向かうことにした。
レイたちは未来ルキス共に行動しながら、シュガーを探していた。アイランは厄介ごとに巻き込まれたくないのか彼らに別れを告げ、別行動をとった。
その道すがら、ルキスはファンティーから感染したウィルスのことを未来の自分に聞いていた。
「そのウィルスは神が人類を全滅させるために作ったんだけど、ファンティーみたいに生き残る人もいた。生き残った人たちはそのウィルスによって、新たなステージに上がり進化を遂げた」
「どういう意味?」
「ウィルスによって、本来長い時間をかけて行う進化を急速にさせたことで新たな能力を得ることにできたんだよ」
「そういえば、ファンティーと戦った時、彼は腕に変化を起こしていたけど、それか」
レイはリアマと共にファンティーと戦ったことを思い出していた。
「たぶん、そうだね」
「まだ、ボクはその能力に目覚めていないよ」
「こっちのボクはボクとちがって、ウィルスが活動的になっていないからだね」
「ウィルスって、活動するの?」
「活動しないと人類の全滅させることができないから。このウィルスは毒みたいなもので耐性があっても侵されていく。それを防ぐために作り出されたのがこれだよ」
未来ルキスの手にはガンナイフと黒い柄のないペディナイフがあった。それらはっルキスが持っているものと全く同じものだった。
「このガンナイフはアスファレスと言ってウィルスの浸食を抑え、ペディナイフはゾイロスと言って自らの体内に取り込むことで一時的にウィルスを活発させることができ、能力の真髄を発揮させることができる」
「つまり、このガンナイフを持っていたから、ウィルスの影響をあまり受けていなかったんだね」
「そうだね。まあ、でも、これらを使わないで能力が使えるということはウィルスに侵されているということだから、死に近づいていたということになるね。それに簡単な能力が使えると言うだけで本格的に発揮させるには道具を必要だから、使ったほうがいいよ」
未来の自分からウィルスのことを聞いたルキスはあることが疑問に浮かび、それを尋ねた。
「ウィルスの耐性を持っている人と持っていない人の違いって、なに?」
「ボクの考えだと神力に対する耐性かな」
「神力の耐性?」
未来ルキスの口からレイたちが聞いたことがない単語が飛び出てきた。
「人には神力の耐性というのがあって、言葉の通りどれぐらい神の力に耐性があるという意味なんだ。この耐性が高く、適合した者だけが神力の抗体が作り出されるんじゃないかな、たぶん」
「それが低かったら?」
「死ぬよ。神力は耐性がない人にとって毒だからね。英雄に選ばれる人もたちは比較的に高い傾向があるよ」
神力の耐性と英雄の関係性を聞いたレイはその関係性に関することが頭に浮かび、それを口にした。
「もしかして、リトスが神の魂で出来ているから?」
「たぶん、そうじゃない? そこから発している神力でフィデスを目覚めさせていると思うから、耐性がないと死んじゃうからね」
ウィルスの説明を一通り終えると未来ルキスがガンナイフをリング状に変化させ、それは右腕に装着させていた。
「オプロ・オフ。これが待機状態だよ。やってみよう」
「オプロ・オフ」
ルキスは言われた通りにすると彼のガンナイフもリング状に変化し、右腕に装着された。
「オプロ・オフって言うとガンナイフに戻るから」
「説明してくれて、ありがとう。ところで君は英雄の段階はどれぐらいなの?」
「ボクはエインヘリヤルだね」
2人のルキスが話していると目の前に金髪の女性が現れた。その女性の見た目は20代ぐらいであり、金色の髪は肩にかかるかどうかの長さであった。
ルキスはその女性に会ったことはなかったが、どこかで見たことがあるような気がした。
「英雄ですよね? 揺れ動くもの」
女性の手に槍が具現化されていく。その槍は槍先が柄より大きく、読めない文字が刻まれていた。
グングニルを見たレイたちは散り、戦闘準備に入った。そして、彼女の正体が分かった。
「その槍、神装だ! 彼女は英雄だ!」
レイはフィデスを使用せずにリトスから心剣を抜き、白の仮面と黒の剣を身に着けた。
女性はレイに向かって、槍を薙ぎ払い、レイは剣で受け止める。しかし、力負けし、吹き飛ばされてしまった。
アモルとルキスが後ろから襲い掛かるが、ルキスは後ろ蹴りで飛ばされてしまう。アモルの剣は体をひねることで回避し、そのまま腹へと蹴りが加えられた。
未来ルキスと女性が対峙するが、互いに動かなかった。
「こっちの世界かは分からないですが、ルキスが生きている世界もあるんですね」
「君の世界でも、ボクは選ばれていたんだね」
「それにしても英雄たちと戦うんなんて、めったにないことですね。シュガー様のことを思い出しますね」
「シュガー!?」
彼女の口から意外な人物の名が出てきた。
「シュガー様を知っていらっしゃるの? 私たちが倒したんですよね。本気で来ないと死にますよ」
女性は槍を持ち直し、投げる姿勢に入った。
「貫け! グングニル!」
グングニルはルキスとアモルに向かって、力の限り投げられる。
それに対し、ルキスは手を前に出し、神装を具現化した。
「魔を払う純白の楯」
ルキスの前には雲が連想されそうなほどの純白の盾が具現化され、グングニルを受け止める。
「アイギス……世界すら、壊すとされる雷を防ぐ盾。しかし……」
槍は盾にめり込み、それはひび割れていく。
「神装はあくまでも神の象徴を英雄の手によって再現されたものに過ぎない。英雄としてのレベルが違いすぎる」
グングニルはアイギスが砕き、ルキスとアモルに直撃した。女性の手にグングニルが戻ってくる。
「あら、生きていたんですね。やはり、アイギスとの衝突で威力が下がっていましたか」
絶対命中の槍を受け、なおルキス達はなんとか生きていた。女性は彼らに近づこうとしたが、回りにシャボン玉が大量に襲い掛かる。
「これは?」
相手が意味ないことをしないと読み、うかつに触ることはしなかった。しかし、それは素手という意味であり、槍で薙ぎ払う。特に何も起こらなかった。
「何の意味が?」
「意味ならあるよ」
女性が声をした方向に向くとそこには未来ルキスとルリがいた。未来ルキスの胸には信じられないほどの神雷が穂先となり、出ていた。
「これが一撃確殺。英霊 帝釈天が下した裁き」
胸の先を女性に捉え、雷の槍が目に映らないほどの速さで射出された。それを見ると反射的にグングニルを投げていた。グングニルは絶対命中の特性を持つがゆえに多少、適当に投げたとしても雷の槍に的中した。
雷の槍と絶対命中の槍がぶつかり合う。エインヘリヤルと神装の対決。女性はルキス達に投げたことで力が下がっていたため、不利と見ていた。
「私もやりますか」
私はあなたに問いかけたい。
この選択は本当に正しかったのか、過ちではないのかと。
その問いに答える者はいない。
もう、見つめることさえできない。
「英霊 焔の眼をせるもの」
女性の左目は血のような赤から自然を思わせるような緑へと変わっていく。その眼にはルーン文字が浮かび上がっていた。
未来のルキスから放たれた雷の矢はグングニルを焼き消され、女性に直撃し、土煙を上げる。
「やりましたか!?」
ルリがそう叫んだが、煙が止むとそこには多少ダメージを負っていたものの無事な女性の姿があった。
「相性が良かったからいいものの、そうでなければ消し炭になっていましたね」
「相性が悪かったか……」
「もう一発放ちましょう」
「ごめん、それ無理」
未来ルキスのエインヘリヤルである帝釈天が下した裁きはあまりの強力なゆえに1度しか放てなかった。当たりさえすれば、自分より格上であろうが確実に倒せるリスキーな能力だった。
女性とルキス達が戦っているとき、レイは考えていた。
「あれがエインヘリヤル……」
自分のエインヘリヤルについて。これ以上強くなれるには第3段階である真のエインヘリヤルになる必要があった。
レイの神装はエインヘリヤルになることで自分の力を吸収することができるようになった。その能力を利用して、風を吸収させ、体に巻き付けることで詠唱などの動作をなしに発動できるようにしていた。
彼の神装と心剣は対極であった。神装は自分の中に取り込み、心剣は相手の外へと出す。
エインヘリヤル同士の戦いを見たことでレイの中で何かが目覚めようとしていた。
「この2つを融合させることができれば……」
我が内に眠りし思いよ。
今こそ力を解き放ってくれ。
さあ呼び覚ましてくれ、引き起こしてくれ。
戦いを招く恐ろしい心剣を。
あらゆる勇敢な英雄の魂よ、僕に誓ってほしい。
共に勝利を掴むことを。
「英霊 胸に眠りし心剣の理解」
レイの右腕は黄金に染まっていき、黒い剣も黄金に染まっていく。その剣はアモルの心剣であるアストライアであった。
その能力はレイと心剣の融合だった。
彼は女性に近づき、不意打ち気味に攻撃を仕掛ける。しかし、彼女の体に水が張ってあったため、剣は届かなかった。
「なら、これだ」
左腕を前に出し、光を集めていき、それを放った。
「天撃!」
天撃は女性に見事直撃したが、大したダメージになっていなかった。
「今度は当てることができた。ということはあなたのエインヘリヤルは無敵になるような能力ではない。未来ルキスと僕の攻撃を個別に防いだことから、それぞれの攻撃には対応できるが、同時には防ぐことができない」
「なかなかの洞察力ですね、レイ君。いや……フォルテ」
「なんで、その名前を……」
「そうですね。レイ君は私たちの計画に必要な人物でしたから。でも、フォルテではなく、レイ君がいるということは貴方は信頼に値ずる人ですね。そして、シュガー様を信じ、世界を救った」
レイには全く話が分からなかった。ただ、分かったのがこの女性はフォルテの知り合いというだけであった。
そして、今までの戦いを静観していた英雄が現れた。
「私たちはこの世界を救うべく、この計画を実行し、成就した。なぜ、リリィさんがここにいるんですか?」
「リリィ? リリィ・シャルロット!? どおりでどこかで見たことがあると思ったわけだ」
「君が英雄だったんですか? ラーパさん」
その英雄とはかつてレイをトルトニスで助けたラーパであった。




