勇者、英雄、覇王の襲撃
種族について・雲人
白い雲に乗っている種族。
ほかの種族と比べて、肉体が貧弱で体重がはるかに軽いため、肉体戦がかなり苦手である。肉体を動かす必要あるときは雲そのものを使い、自分の体ではあまり行わない。
優れた雲人であれば、雨、雪、雷などの現象を行うことができる。また、雲を広げることで他の種族も乗せることができるようになる。
前回のあらすじ
集められたトゥーレのメンバーが互いに顔を合わせる。
異世界の進出が目的であるトゥーレはそれが夢物語でないことを証明するためにシュガーが異世界に移動するための究極魔法を発動させた。
すると開いた空間から勇者が現れ、シュガーとぶつかることになる。
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勇者と戦ったシュガーだったが、不利と判断するとトゥーレのメンバーに加え、メロディにも加勢するように求めた。1対10で戦うが、結果は英雄側の惨敗に終わった。
惨敗にもかかわらず、彼らが生き残ったのは時空の穴から更なる人が現れたからであった。それらはこの世界に現れるとどこかへと飛ばされ、その現象に便乗するかのように勇者も飛ばされたからであった。
かろうじて、立っていたのはシュガー、エル、メロディ、デッドボディの4人だった。
「今のは勇者だな?」
「そうだ、メロディ。相変わらず、でたらめな強さで特性は厄介だ」
「あれに勝てる生物はおそらくいないだろうな」
シュガーとメロディは勇者に会ったことがあることに加えて、彼のレアタイプの知識により、勇者の強さと厄介さを把握していた。
その会話を聞いていたデッドボディはその強さに疑問を抱いた。
「それほどの強さなのか? それにしてもシュガーはなぜエインヘリヤルにならなかった?」
「時空の穴を維持するためだ。この穴でなければ、彼らはおそらく帰れないだろう。偶然、事故で開いた穴だからな。勇者は厄介だ」
歴代の勇者のことを思い出しながら、語った。
「勇者は殺しても蘇えることがある。それに不老不死、あまつさえは死という概念がない生物でも殺すことができる攻撃力だ」
「訳が分からない生物だな。これからどうする?」
「この現象を見る限り、奴らはウェントゥスから出れないだろう。同じような現象を経験したことがある。レアタイプに対抗するにはレアタイプだ。お前たちには英雄たちを呼んできてもらう。そして、彼らをここに連れてきてもらい、元の世界へと戻す」
「シュガーは?」
「俺はエルに魔具を持ってきてもらい、この状態を維持する。そうでなければ、俺は維持のために動けないからな」
アルキュオネの治療を受けた者から立ち上がり、シュガーから指示を受けていく。
「一瞬しか力を感じ取れなかったが、間違いないだろう。英雄たちにはこう伝えてくれ。相手は全員エインヘリヤル級だと」
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勇者の襲撃から3日後。
トゥーレのメンバーは英雄を探していると同時にレイたちは雲の国オーブラコから地上に戻ってくる日だった。
「出れないし、どうしようか」
地上にはピンク髪の英雄がいた。時空の穴から現れた1人であり、英雄はとりあえずウェントゥスから出ようとしていたが、出れずに困っていた。
「ここはウェントゥスだし、知っている顔がいればいいけど」
知り合いを探すために魔力の感知を始める。すると面白い魔力反応を見つけた。
「この魔力は……ボクのだね。この世界にもきちんといるんだね。なら、これだ」
英雄は掌の平を魔力が感じた方向に向けた。
レイたちは筋斗雲に乗り、地上に戻っていた。その時、ルキスは引っ張られるような感覚を感じた。
(なんだろう、この感覚)
その感覚に覚えがあり、それはどんどん強くなっていき、ついに体ごとが引っ張られそうになった。
「何しているの? ルキス」
「誰かが地上から磁力でボクを引き寄せようとしているんだ」
「なら……そっちに行こう……」
雲は方向転換し、ルキスが引っ張られている方向へと飛んで行く。やがて、地面が見えるとそこには英雄が立っていた。レイたちはその英雄に見覚えがあった。
「あの人って……。アモル」
「似ていますね、彼と」
「似ているどころか、瓜二つですよ。先輩」
「ルキスの兄弟なのかな?」
その英雄の姿はアモルとルリが認めるほど、ルキスに似ていた。彼と違うところは髪が腰まで伸びているところと少し身長が伸びていることだった。
「やっぱり、ボクがいたよ」
「ボクなのかな?」
端から聞いてみると意味が分からない会話がルキスと英雄が交わした。
英雄が自分に起こっていることを説明し始めた。
「ボクは人のルキス・ペリペティア。たぶん、こことは違うところから来たよ」
「違うところって?」
「分かりやすく言うと未来のキミかな。選ばれている英雄とかが違うから正確に言うと違うと思うけど」
「作戦タイム、取っていいかな?」
「認めるよ」
ルキスは未来ルキスに話し合う時間をもらい、レイたちと話し合う。
「どう思う? レイ」
「ルキスの兄弟とかじゃないの?」
「ボクは一人っ子だよ」
「とりあえず、来た理由などを聞けば、解決の糸口が見つかるのでは?」
「それだ、アモル」
作戦タイムは終了し、再び未来ルキスに話しかける。
「なんで、未来のボクはこの世界に来たの?」
「自分で来たというより、事故で来たんだよ。おそらく、獣人のシュガー・オーロ・グランツが発動した魔術によってね」
「知り合いにシュガーという獣人はいるけど、そんな名前じゃないよ」
「世界が違うから、立場も違うんだよ。現に君たちの中で共に選ばれた英雄はルリしかいないしね。あっ……」
未来ルキスはルキスの腰にあるものを見つけた。
「えっ、何?」
「その銃って、ファンティーの?」
「そうだけど、なんで知っているの?」
「こちらでも来ていたのか。よし、決めた。その銃の使い方をキミに教えてあげよう」
「なんで、使いこなせていないと分かったの?」
「その携帯の仕方で分かる。君たちと一緒にこっちのシュガーを探そうか」
レイたちは未来ルキスに巻き込まれ、シュガーを探すことになった。
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風の国ウェントゥスに住んでいる五大英雄の1人セレネ、前英雄のアリスにそのヘタトロイであるミカエルの3人をデッドボディは事情を説明し、共に行動していた。
「また、シュガーが変なことをしたんですね」
「またって、シュガーはしょっちゅうこんなことをしているの?」
「前はティアと共にどこかの王族と冒険をしたことがありましたね」
アリスはセレネに昔のことを聞いているとあることを思い出した。
「セレネのところにシュガーって来た?」
「来ましたね。今更、フィデスや神装のことを聞かれましたが」
「私の所にも来てね、知り合いの英雄にフィデスや神装を確認しているようね」
「何がしたいんでしょうね?」
「考え着いたことをいきなりすることもあったし、考えるだけ無駄じゃない?」
「そうですね」
そんなことを話していると目の前に竜人の女性に会った。その姿は女性という少女に近く、どことなく高貴さを感じさせた。金色の髪に反し、竜の尻尾は翡翠のごとく輝く緑だった。
竜人の少女は英雄に話しかける。
「すいません。ここはどこですか?」
「ここはウェントゥスです」
「ウェントゥス……? 3人の出身国はどこですか?」
「私がルークスで彼女がウェントゥスです」
少女の猜疑にアリスは答えるが、彼女の顔は険しいものへと変わっていく。
「ついにルークスとウェントゥスの残党と手を組みましたか。ここで排除します。死にゆく者に名を残そう。わが名は竜人のアルティ。覇王に選ばれしアルティ・フォン・イグニス」
覇王と英雄がぶつかり合う。
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アルトは異空間にあるチクスを利用して、英雄の1人がいるルークスへと移動していた。
その英雄は魔術師連盟マーティスにおり、彼女に事情を説明した。
「事情は分かりたくないけど、分かった」
その英雄とは人のミラ・ピランであった。
「だが、今の私は役に立たない。なぜか知らないが、フィデスが使えない」
「そのうち、使えるようになりますよ。あと、シュガーさんが相手はエインヘリヤル級だと言っていました」
「エインヘリヤル……。どうしよう、行きたくない……」
ミラは以前レイから英雄の段階について聞いていた。彼女は第2段階であるノードゥスであったが、敵はそれを超える第3段階であるエインヘリヤルであった。しかも、今はフィデスが使えない。
「なんとかしてください。英雄ですよね?」
「好きでなったわけじゃない」
「とりあえず、行きましょう。話せる相手なら相談できますよ」
「そうなるよう願うよ」
いやいやながら、ミラは英雄たちが集るウェントゥスへと向かうことにした。




