雲の国オーブラコ
種族について・霊人
コアを中心に特殊なエネルギーで構成されている種族。
独自の力は霊力である。霊力を使うことで様々なことができ、浮遊、壁を透き通る、霊体化などができる。霊体化は姿と共に力までも消すことができ、浮遊は自分の腰程度にしか飛べない。
体重は軽く、コアが壊れるときが寿命である。もしくは霊力の使いすぎたことが原因で消滅することもある。その時はコアだけが残り、再び霊力がコアに宿った時、新たな霊人が生まれることになる。それ以外の方法でどのように生まれるのかはわかっていない。
基本知識は生まれた時からあり、それ以外では興味を持ったもので変わる。セレネは本があるところで生まれたため、本を読むことを好み、それから知識を吸収した。
前回のあらすじ
骸人のデッドボディを無事に勧誘することができたシュガー。
レイたちはアイランを見つけ出し、ついに雲の国へと向かう。
****
シュテルの神装に予言してもらい3日後。
レイたちは無事に飯屋で大量のご飯を食べていたアイランを見つけることができた。彼らは今までの事情を説明した。
「……分かった。食後に行こう……」
「時間はどれぐらいですか?」
「6時間ぐらい……?」
「それなら、明日の朝のほうがいいのでは?」
「……じゃあ、明日の朝で……」
アイランの話を聞いたレイが提案し、明日に出発することになった。
そして、次の日。世界は和やかな朝の光に包まれる。
一行は宿屋の前に集合していた。
「……いこう。出でよ、筋斗雲……」
アイランが優しくそっと吹くと息は金色になり、それは金色の雲へとなっていく。彼女はそれにぽんと乗った。
「……乗って」
彼女にそう言われ、レイたちは雲におそるおそる足を乗せる。すると足は地面に落ちず、雲に乗ることができた。
「本当に乗れましたね」
ルリがそんな感想をもらしていると雲は浮かび上がり、空へと飛行していく。
レイは雲の国に行くためのルートを尋ねた。
「アイランさん、雲の国オーブラコに行くルートって、どんな方法なんですか?」
「1つは……スカイジャック。オーブラコから……下の方に伸びている蔓に登っていく方法……。もう1つは……安定した乗り物で直接向かう。私たちは……最初はスカイジャックで登った」
「それだと翼人とかが見つけませんか?」
「雲の上にあるから……案外ばれない。それに雲の中を通るから……運が悪いと死ぬ」
「それを避ける方法はないんですか?」
「……祈って」
アイランは天に任せるしかないという言葉を口にした。
****
レイたちがアイランを待ち、シュガーがデッドボディを勧誘しているころ、フレアの屋敷ではエクレールがシュガーの昔話をリリィたちにしていた。
「シュガー様が第1回の脱走したところまで話しましたね」
「脱走してどうなったんですか?」
「一緒に脱走していないので詳しくは知りませんが、少しした後シュテル様が英雄に選ばれ、シュガー様を探しに行かれました。その間にピラト様とギオン様に出会ったようで屋敷に戻られるときに一緒でした」
「ああ、分かったわ。そこでシュガー様がシュテル様にお願いして一緒に旅をしたんだわ」
「いや、一緒に行かず屋敷に留まりました。ピラト様たちとまた出会う約束をして、別れました」
リリィの予想が外れる。
「しばらくした後、シュテル様たちが再びシュガー様に会うために戻って来たんです。新たにあった英雄アリス様とイディナ様を連れて」
「何か、予想がついた。イディナがシュガー様を誘ったんだわ」
「半分正解。滞在し、別れたんですが、アリス様とイディナ様がこっそりシュガー様を誘って抜け出したんです。これが第2回目の脱走です。それからは一緒に旅をしていたようです」
「それで魔王を倒すからすごいわね」
彼女は話を聞いて素直な感想を口にした。エクレールは魔王を倒した話だけではなく、自分も一緒に旅をしたアース大陸のことを話す。
「それだけではなく、アース大陸でも冒険をしていましたから。これは私も一緒に旅をしていました」
「その話もお願いします」
「また、今度ということで」
****
アイランたちは雲の中を通り抜けていた。
雲の中は薄暗く、四方八方から水が降り、風も激しく吹いており、たまに雹が飛んできた。ただし、その大きさは直撃すれば、アイランたちが乗っている雲はひとたまりもないことは火を見るよりも明らかだった。
「ここから生きて出れるんですか!?」
「やるしかないよね!」
ルリがそう叫んでいるとアモルは天術で、ルキスは鉄球で、レイは神装であるマスクを着け背にあるマントで雹に対応していた。
生死をかけ、金色の雲を疾走させていると上から光が注いだ。その光を頼りに上へと飛んで行き、雲を通り抜けると太陽の光がレイたちに注ぐ。
「やっと、これで終わりですね」
「光がまぶしいね。なんで、あそこに草が?」
ルキスが見た先には草があった。それは雲に根を生やしており、芝生になっていた。
「良かった……。近くにあるみたい……」
アイランは筋斗雲を芝生に寄せ、彼女たちは足を着ける。ルリとルキスは芝生に寝転がった。
「気持ちいいですね」
「そうだねー。レイたちも寝ようよー」
「……そうしたいのはやまやまだけど、先に目的を果たそう」
ルキスの悪魔の囁きに打ち払い、目的である財宝の鍵である球を手に入れるべく、雲の国へと足を急がせた。
雲の国オーブラコへと着くとそこにはレイみたいな人の種族がいなかった。
その代わりに足の部分を雲で覆っており、地に足がついてなかった。多くの者は雲のような白髪を持った種族がいた。その種族以外には翼人などがポツンと見られるぐらいだった。
家などは雲のようなもので出来ていたため、白かった。
「アイランさん、あの種族は何ですか?」
「雲人……。地上ではめったに見られない種族……」
レイがアイランに雲人について聞いているとルリのリトスである緑色の指輪が輝き出す。
「わたしのリトスが……たぶん、こっちです」
ルリが1人で走り出すとレイたちも走り出し、彼女を追いかける。
たどり着いた先には国から少し外れた場所にあった祠だった。入り口の左右には2枚の看板があった。
アモルがそれに書かれていた言葉を読んでいく。
「英雄プロトオス、英雄イカロスと書かれていますね。聞いたことがありませんが、この2人は昔いた英雄でこの祠を建てたんでしょうか?」
「とりあえず、扉を開けてみよう」
レイは扉を押し、開けようとするが、開く様子はなかった。
「これが前と同じなら……ルリ、君に決めた」
「ルリ・ブリュスター、行きます」
ルキスは自分の故郷グラッドにて、球を手に入れたことを思い出した。あの時はリトスが光ったレイが取ることができた。今回の場合はルリであると推測した。
彼女が扉の前に立ち、レイと同じように扉を押すが開く様子はなかった。
「あれー、おかしいね」
「押してダメなら引いてみろという言葉がありますよ、ルリ」
「アモルさん、そんなわけが……きゃっ!」
アモルの言葉を冗談に受け取ったルリだったが、試しに扉を引くとあっさり開いた。彼女は開くという予想外のことが起こってしまったため、扉と共にそのまま後ろへと倒されてしまった。
それを見ていたレイが駆け寄った。
「ルリ、大丈夫?」
「ええ、なんとか」
ルリはレイの手を借り、立ち上がる。
祠の中へと入ると部屋の中心に台座があり、そこに緑色の球があった。
「これで2つ目ですね」
ルリがその球を手に取ると輝きだし、その光はルリの体へと入り込んでいく。
その様子を見ていたレイが彼女に話しかけた。
「もしかして、何かが目覚めるような感覚はなかった?」
「先輩、よくわかりましたね。力そのものが入ったような感覚です。それより、地図の変化があるはずですよ」
ルリにそう言われ、懐から地図を取り出すと雲から星マークは消えていた。その代わり、大陸の右上に浮かんでいた。
「ルキス、ここはどこの国?」
「そこはウェントゥス当たりだね」
「私は球を取ったことをこの国の人に説明してくるつもりですが、レイはすることはありますか?」
「僕はアイランさんに修行をつけてもらいたいかな」
「分かりました」
レイはルリと共にアイランに修行をつけてもらうことにし、アモルとルキスはこの国の人に事情を話す2つのグループに分かれ、行動した。
****
レイたちは国から外れた場所におり、下が雲だったため、床は白かった。
「……何が聞きたいの?」
「エインヘリヤルの先についてです」
「……先? まだ……極めてないのに?」
「えっ?」
「……神魂を取り込んだことで……何かしらの変化が出たかもしれない……。けど……エインヘリヤルの神髄はそこじゃない……」
アイランはエインヘリヤルの説明していく。
「エインヘリヤルとは……理想の英雄としての自分を具現化する……。そのためなら……世界のルールや世界そのものを……作り出すこともある」
「良く分からないですね」
彼女がした説明は非常に曖昧だった。
「私のエインヘリヤルなら……本気を出したシュガーとペテルギウスを同時に相手にしても……絶対に殺されない。長期戦に持ち込めれば……勝てる」
「それはすごいですね。真のエインヘリヤルに目覚めるにはどうすればいいんですか?」
「……さあ?」
「分かってないんですか……」
「目覚めた時は……必死で死にたくないと願っていたら……できたから」
アイランの話を聞くとレイはフィデスのことを思い出し、それを口にすると横からルリが口をはさんできた。
「聞く限り、フィデスと同じ強い思いやピンチがきっかけですかね」
「わたしはまだフィデスにも目覚めていないですけどね」
「強く念じれば、目覚めるんじゃない? さっき、力が入ったような感覚があったし」
「そうですね」
彼の言われた通り、ルリは強く念じ、先ほどの力がリトスである指輪に移動させるような感覚を続けた。すると緑色の指輪から透明のシャボン玉がフワフワと浮かび、空中をさまよう。
「これがわたしのフィデスですか?」
「たぶん、そうだね」
「シャボン玉ですよ」
「シャボン玉だね」
「これでどうやって戦うんですか!」
「何かに使えるよ、僕は使いこなせる自信はないけど……」
レイのフォローは後半につれて、声が小さくなっていった。
「……フィデスは戦うためとは……別にあると考えたら……」
「そうだよ。ルリならきっとできるよ」
「シャボン玉か……」
アイランのアドバイスをもらい、空に浮かぶシャボン玉を見上げるルリ。
そんな主人の苦労は知らないかのようにゆっくり浮かんで行き、やがてパンッと破裂した。




