修羅の国イグニス
種族について・宝玉人
額に宝玉を持ち、女性しかいない種族。
独自の力として、魔力を持っていることが多い。額にある宝玉は取られてしまうと死んでしまう。
宝玉は魔具の材料として非常に価値があるため、常にほかの種族に宝玉を狙われることが日常茶飯事である。そのため、ほかの種族から離れて暮らしている。
暮らしている場所は森であり、その周りに結界などを貼っている。どの種族でも言えることだが、変わっている奴はどこにもおり、森から出て暮らしたり、一人旅をする風変りな宝玉人もいる。
女性しかいないので宝玉人だけでは増えることができないため、他の種族を攫うことがある。相手がどんな種族でも生まれてくる子は宝玉人である。
前回のあらすじ
無事に財宝の鍵である赤い球を手に入れたレイたち。地図に書き映り出された次の場所は何と雲の上だった。
シュガーに相談した結果、彼の姉である天人のシュテルに助けを求めることになった。そのため、彼女がいる光の国ルークスにあるシュテルという町へと向かう。
一方、シュガーがいる屋敷には新たな客が来ていた。
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レイたちが光の国ルークスに向かっているころ、シュガーの屋敷には古い友が訪ねていた。
「ということで宝玉人たちの移住をなんとかしてくれ」
「お願いします」
その友とは吸血人のマリクと宝玉人のシータだった。彼らはシュガーに事情を説明し、宝玉人の移住を頼んでいた。
「元々、様々な種族が山や森にいる地方だから、俺は構わない。しかし、そのことを国王に相談しなければならないな」
「それにしてもこの国の貴族に拾われていたんだな、シュガーは」
「それは違う。俺を拾ってくれたのはルークスという国のグランツという貴族だ」
「そうなのか。じゃあ、ここの爵位はどうしたんだ?」
「アース大陸から帰った後に国王であらせられたフレア・フォン・イグニス様と一緒に駆け回って、その功績が認めてもらって、伯爵の爵位を授かったんだ。フレアという名前はかの王から取らせてもらったんだ」
シュガーは前英雄と共に冒険している時にイグニス王家と縁ができたが、それが深まったのは彼がアース大陸からヴァン大陸に戻った後であった。フレア王とシュガーは様々な国を駆け回った。
「なるほど、その縁があるならスム~ズに行けそうだな」
「なら、移動するぞ」
そう言い、中庭に集まったのはシュガー、マリク、シータ、メロディ、ジルニトラであった。
(見覚えある。あの時にいた人達だ)
マリクとメロディを見たジルが抱いた最初の印象がそれだった。彼女が見覚えあるのは夢で見たウルズに願いを叶えた6人の中に2人がいたからであった。
そんなことを思いつつ、ジルはシュガーに移動方法を聞いた。
「シュガーの神装で移動するの?」
「神装タロスはマーテルによって破壊されたため、治るまでは使用できない。よって、ほかの方法で移動する」
「神装? ということはお前は再びレアタイプになったんだな」
ジルの口から出た神装という言葉を聞いて、マリクは反応した。
「……ああ」
「神装が使えないなら、フィデスか?」
「俺のフィデスはこの相棒のジルニトラだ。それとは別の新たに目覚めた力を使い、瞬間移動でイグニスに行く」
「あれ? シュガーの瞬間移動って、本人しか無理じゃないの?」
「それを可能にした。みんなしっかりと捕まってくれ」
シュガーの左腕にシータ、右腕にマリク、背中にメロディ、前にはジルが彼に捕まっていた。
シュガーの眼が光沢のある黒曜の瞳へと変わると火の国イグニスへと瞬間移動した。すると彼らは空へと移動しており、地上へと落ちていた。
その状況に驚き、マリクはシュガーに聞きだした。
「おい、この状況はどういうことだ!?」
「複数の瞬間移動は初めてだったからな、おそらく座標がずれたんだろう。しかし、下を見る限りはちゃんとイグニスに着いているからニアピンだ」
「シータ、俺に捕まれ」
「ジル、手を伸ばせ」
マリクとシュガーは魔術で空中を飛ぶことでとどまり、シータとジルに手を伸ばした。マリクは下の腰に手を回し、シュガーはジルの手を掴むことで彼女たちを支えた。
2人から放置されたメロディは地上へと落ちていったが、既の所でシュガーの足を掴んだ。
「お前たち、メロディのことを少しは心配しろ!」
「おそらく、俺とシュガーの考えていることは同じだぜ」
「メロディは強いから自分でどうにかできると信じていたんだ」
「そ、そうか。それなら仕方ないな」
彼らはゆっくりと降りていき、地上へと足を着ける。
「ようこそ、修羅の国イグニスに」
「修羅の国?」
「ほかの国からはそう呼ばれている。その原因は武闘大会の開催数だ」
「どれぐらい開催されているんだ」
「都市イグニスでは月2だが、ほかの村や町でもバンバン開かれているから国全体で見ると毎日どこかで武闘大会が開かれていると考えてもらって構わない」
「そんなにか」
「都市や大きな町には闘技場が立てられており、小さな町や村となるとリングが作られている。早速、闘技場へと案内しよう」
「報告は?」
「あとでいい」
シュガーはそう言い、マリクたちを都市イグニスにある闘技場へと連れて行った。
「ここが我がイグニスの伝統と誇りが込められている闘技場だ」
闘技場は円形であり、大部分は石で出来ており、傾斜ある観客席までもが石で作られていた。最前列の席は赤く塗られて、中心には戦士が戦うためのフィールドが広がっていた。
「こんな場所なんだな」
「シュガーではないか」
後ろから声をかけられたので振り返るとそこには見覚えある人がいた。
「リアマにミストか」
「ここにいるということは試合を見に来たんだろう。とりあえず、最前列で座って、話すぞ」
シュガーたちは最前列に座り、リアマに宝玉人の移住について相談した。
「移住か……」
「フレアにある村が少ないから、いい機会だと俺は思っている」
「それはそうだが、何か問題があればお前に責任を取らせるからな。しっかりと管理しろ!」
「分かった」
「父の方には私が話を通しておく」
移住の話に最初は渋っていたリアマだったが、最終的には許可を出した。その分、シュガーにしっかりと釘を刺した。
話が終わると今度は勇者の従者である天人のミストが話しかけてきた。
「お久しぶりです、心の友シュガー」
「久しぶりだが、心の友じゃない」
「じゃあ、私とシュガーの関係って何ですか?」
「腐れ縁だ」
「それじゃあ、古い知り合いとは認めているんですね。そうそう、次の試合にはアスカが出るんですよ」
シュガーとミストが話しているとメロディが間に入って来た。
「ミストって、勇者の従者?」
「ええ、そうです。ヴァン大陸の担当です。あなたになら話しても大丈夫でしょうし」
「ミストはアース大陸でいうフロックに相当するのか」
「そうです。その名前は懐かしいですね」
会話を交わしていると歓声が上がり、選手が入場した。1人は緑色の髪を持ち、レアタイプである勇者に選ばれた森人のアスカだった。もう1人は黒髪で英雄に選ばれた戦人のアスラだった。
「手加減しません」
「こっちもだ」
アスラは拳を、アスカは勇者の証である剣を交わせ、戦いだした。
「シュガーはどっちが勝つと思いますか?」
「アスカはアスラの戦いを今まで見ていたんだろう?」
「ええ、もちろん見ていましたけど」
「なら、アスカだ。いくらアスラといえど勝つことは難しい。この形式なら、俺でも勝てるかは分からない」
「勇者に有利ですしね、闘技場の戦いだと」
「勝ち目があるとすれば、フィデスだな」
闘技場の戦いだと観戦することができる。そのことは勇者が持つある特性を最大限に生かすことになった。その特性を知っているシュガーはアスラに勝ち目が薄いと判断した。
勝ち目があるとすれば、英雄が持つフィデスであるが、それはリアマが否定した。
「それは私が使わないようにきつく言ってある。あいつのフィデスは闘技場がボロボロにする」
「そうか」
シュガーはアスラのフィデスを知らなかったが、彼女が言うならそうなんであろうと納得した。
戦いは続き、アスラが一気にとどめを刺すために必殺技を放った。
「スパイラルブロー!」
(来た!)
アスラが放った技スパイラルブローは腕を回転させながら、殴りつける技である。この技は闘技場で幾度か放たれていた。それはすわなち、アスカが何度も見ている技だった。
彼女は距離を取らず、身を低くすることで避け、アスラの懐へと入る。そのまま、剣の柄で鳩尾に攻撃し、彼を気絶させた。
勝者はアスカになった。
「やっぱり、勝者はアスカでしたね」
「俺たちはこれで帰るとしよう」
ジルたちはシュガーたちに捕まるとフレアまで瞬間移動した。今度は空でなく、水の中だった。
ジルとマリクは泳げず、そのままに沈んでいきそうだったが、ジルはシュガーが、マリクはシータが助けた。
ずぶ濡れになったマリクがシュガーを責めるように言った。
「今後はなるべくお前の瞬間移動に頼らねー」
「そう言うな。今度はうまくいく気がする。3度目の正直だ」
「2度あることは3度あるとも言うな。エクレールの魔力を感じるから、歩いて帰るぞ!」
「やっぱり、こいつらといると退屈しないな」
シュガーの魔術で服を乾かしてから、彼らは自分たちの足で屋敷へと帰った。
彼らはこれからの行動について、話し合った。
「俺はルークスへと行くつもりだが、マリクとメロディはどうする?」
「俺はシータたちと一緒に森を見回るぜ」
「メロディはシュガーについていく」
マリクは宝玉人の住み場所を探すために森へと、シュガーは勧誘とシュテルに会うためにルークスへと向かった。




