昌人と朧人
種族について・ロール種族
第5世界に様々な種族が存在しているが、その中でも特殊なのがロール種族である。
ユニーク種族は数が少なく、レア種族は世界に1人しか存在しない。ロール種族は存在できる数の上限が決まっており、何かしらの役割が当てられている種族を指す。
自然に生まれることはなく、何かしらの方法で後天的にその種族になることが多い。
前回のあらすじ
デネブラエにあるダイゴの近くにある遺跡にキング型機人がいると当たりをつけたレイたちはルナと共にその遺跡を調べる。
すると予想通り、キング型機人ベータがおり、交戦する。ベータを破壊し、遺跡の奥へと進むと宝の地図に書かれている七芒星が刻まれている扉を見つけた。
地図を取り出すと星マークが浮かび上がり、それはルキスの故郷グラッドを示していると分かり、そこに向かうことにした。
****
都市ソルムに着いたレイたちは休むべく、宿屋を探していた。これから向かうグラッドは都市から北の方にあるため、一旦ここで休むことにしたのであった。
レイはルキスに彼の故郷であるグラッドのことを聞いた。
「君の故郷グラッドはどういうところなの?」
「前に少し話したと思うけど、ボクも含めた男の人は女装している村だね。男と女の区別がつかないと思うよ」
「そうだったね」
ルキスの故郷グラッドは昔、男だけがかかる奇病が流行り、次々と死んでいった。女装することで奇病にかかることを防いだ。これをきっかけに男も女の恰好をして、暮らすようになり、これが村の風習になり、今でも続いている。
ルキス達が歩いていると見覚えある4人が前から歩いてきた。
「お主はルキスではないか」
「イディナじゃん。久しぶりー」
前から歩いてきたのは角人の英雄イディナに霊人の英雄セレネのヘタトロイである森人のミーティア、花人の英雄ルリ。その3人に加えて、かつてアリスの使徒だった竜人のペテルギウスがいた。
ラファエルを見かけたペテルギウスは声をかけた。
「久しぶり、ラファエル」
「お久しぶりです、ペテルギウス様。もしかして、隣にいる森人はセレネの関係者ですか?」
「そうだけど。ほら、かつて神界大戦の時に戦ったセレネのそばにいた精霊たちだよ」
「……あの戦いは思い出したくないです」
ラファエルにとって、神界大戦でセレネとシュテルと戦ったことは強烈な印象を残しており、脳裏にその光景を思い出してしまっていた。
ルキスはラファエルにそこまで言わせる出来事が気になり、そのことを聞いてみた。
「そこまでひどかったの?」
「ルキスも体験したら分かるよ。ドラゴンを1人で殴り掛かり、地に伏せる光景を見ればね。それといつ後ろから襲われるのか分からない恐怖を味わえば……」
「それは……ご愁傷様」
「ところでお主たちはどうしてここにいる?」
「それはですね……」
イディナにここにいる事情をレイはイディナたちに説明した。
「そうか。そんな事情があったのか」
「良し、決めた」
レイが話したルナたちの事情を聞いたペテルギウスはそうつぶやいた。
「今の事情を聞いたところ、ルキスは英雄の活動でルナとデルタをもう手伝えないよね。それなら、僕とラファエルが手伝おう」
「有難いんですが、いいんですか?」
「もちろん。今の僕は暇を持て余しているからね」
ルナとペテルギウスがそう話しているとレイはルリに話しかけていた。
「ルリにお願いなんだけど、僕たちについてきてくれないかな?」
「わたしは構いませんが、なぜですか?」
「今の僕たちはある地図を頼りに冒険しているんだけど、ある場所でアモルのリトスが反応したんだよ。このことから、英雄に何か関係しているかもしれないと思ったからついてきてほしいんだ」
「分かりました」
レイはルリを誘い、宿屋で休むことにした。そして、明日を迎えるとルキスの故郷であるグラッドへと向かった。
****
上司であるホークとの修行を終えたシュガーはメロディと共にトリミニエオスへと向かった。行き方は以前やったような非正規なルートではなく、正規ルートを使い移動した。
肝心のトリミニエオスがどこにあるかというと……。
「下にあるはず町が見えないな、シュガー」
「高いからな」
空に浮かんでいた。
魔術師連盟チクスは異空間に、トリミニエオスは空にあるため、普通の方法ではたどり着けなかった。
チクスは指導者が持つ特別な鍵が入るのに必要でそれ以外の方法では基本侵入できない。トリミニエオスには魔方陣による転送魔術で移動することが正規ルートである。ただし、シュガーみたいに空を飛べるものは直接侵入が一応可能である。
シュガーとメロディは転送魔術でトリミニエオスへと移動したのであった。
「そういえば、シュガーは瞬間移動が使えると言っていたけど、どんな魔術だ?」
「魔術ではなく、魔法だ。基本的なことはここに来るときに使った転送魔術と同じだ。ただし、転送魔術は魔方陣などのマーキングを必要とするが、俺のはマーキングなしに跳べるようにしている魔法だ」
「つまり?」
「転送魔術はマーキングしている2つの空間を行き来する。この場合、マーキングしている場所しか移動できない」
「転送魔術は分かったけど、シュガーの瞬間移動の原理は?」
転送魔術のことを理解したメロディは次に瞬間移動の原理をシュガーに聞いた。
「俺が使う瞬間移動は感知魔術で場所を把握し、2つの座標を重ねて移動する。自分で座標を重ねることでマーキングなしに移動できる」
「つまり?」
「俺がいる場所をAとし、移動したい場所をBとする。AとBの座標の空間を弄ることで一時的に重ねて、同じ場所にする。そうしたら、AからBに移動することでBの場所に瞬間移動できる。これが瞬間移動という魔法の原理だ」
「なるほど」
瞬間移動の説明が終わった2人はトリミニエオスの指導者であるアルトに会いに行った。彼女にはジルニトラを指導してもらえるようにお願いしていた。
アルトがいる部屋に入るとそこにはアルトとジルニトラの2人のほかに赤髪の男性がいた。彼の手の甲には丸い結晶がついていた。シュガーは彼に声をかける。
「フンケか」
「あっ、シュガー。久しぶり、隣の方は誰?」
「朧人のメロディだ」
「オレは昌人のフンケ・テロス・クシア。朧人という種族は聞いたことがないな」
メロディとフンケは互いに種族をいうが、どちらも非常に数が少ない珍しい種族だった。
「そりゃあ、希少種族だからな。メロディは昌人という種族を聞いたことがない。シュガー、昌人とはなんだ? 初めて聞く種族だ」
「昌人とは手の甲にガルと呼ばれる結晶がある種族だ。この種族は独自の力の適性がほぼない。これは魔力に目覚めることがないことを意味する」
「なら、どうやって魔術師になったんだ? 指導者になるぐらいの実力があるのだろう」
「そこで昌人特有の器官であるガルの出番だ。その器官には様々な力を溜めることができる。フンケは魔力を溜めることで魔術を使うことを可能にしている」
魔術師は己の体内にある魔力と自然界にあるマナを混ぜることで魔術を行使する。しかし、フンケは体内にある魔力ではなく、ガルに溜めた魔力を使う。彼は魔力の素質がないのに魔術を使う数少ない魔術師だった。
昌人という種族を聞いたメロディが口を開いた。
「昌人が持つガルって、宝玉人が額にある宝石に似ているよな」
「そうだな。案外、先祖の種族が同じかもしれないな」
「シュガー、朧人とはどういう種族だ?」
昌人の説明が終わると今度はフンケに朧人の説明を求められた。
「朧人とは霊人を先祖に持った種族だと言われている。霊人そのものが珍しい種族だ。だから、彼らの子ともいえる朧人も珍しいと言える。朧人の独自の力は霊力だが、霊人と比べ、制限があると聞いている。説明できるのはこれぐらいだ」
「大体分かった」
「修行と勧誘も終えたし、これからどうするの?」
ジルがシュガーにそう聞いてきた。
「フレアにある屋敷へと戻る。骸人の勧誘は後日に回す。それに」
「それに?」
「イグニスでもうすぐ武闘大会があるはずだ」
「それにシュガーは出るの?」
「出るかはまだ決めてない」
シュガーたちは火の国イグニスの北の方にある彼の領地であるフレアに戻ることにした。




