光の魔術師リミュエール・ブランコ・アーク
約500年前、魔術を極めた人グノシー、優しき天人エピオテース、不老の騎士サロス、過ちを正す昌人フィロドクシアの4人の魔術師がいた。魔術は争いを起こすといわれ、魔術たちは迫害を受けていた。4人は迫害を逃れる場所として、魔術師連盟を作った。魔術師連盟は魔術を発展させるために研究を行った。さらに魔術を学べる機関を作り、機関の名前をマーティスと名付けた。
魔術師連盟を作り、しばらくたった後、4人はそれぞれの地に旅立つことになる。
魔術を極めた人グノシーは魔術を学ぶ場所として新たに機関を作る。機関の名前はトリミニエオスと名付けた。
優しき天人エピオテースは魔術を研究できる場所として新たに機関を作る。機関の名前はクリムと名付けた。
過ちを正す昌人フィロドクシアは魔術を悪用する者を正すために機関を去る。
不老の騎士サロスは最後まで魔術師連盟に残った。サロスには2人の弟子がいた。やがて、不老の騎士サロスは死に勝てず、この世を去る。2人の弟子はこれに悲しみ、弟子の1人が死の克服を目指す。
やがて、魔術を学んだものから悪用するものが現れた。魔術師連盟はこれに悲しみ、魔術の尊厳を守るために同族を狩ることを決意する。
前回のあらすじ
魔術師連盟に所属しているシュガーがルークスのある学園の異変に気付く。その異変を解決するために魔術師連盟から、レイたちに依頼をくることで次の物語が始まっていく。
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前の物語から、1週間がたった。
レイはアモルの家に居候しており、体を休めていた。その間、ルキスとアスラに会っていたが、シュガー、リアマ、ミラに会えていなかった。今まではあちらの世界で着ていた学園の制服だったが、1週間の間にアモルと買い物に出かけ、服を買い揃えた。上は黒のシャツで下は青のズボンだった。その上に黄色の上着を着ていた。これは遠くから見ても分かるようにというアモルの配慮だった。
そこに1人の女性の天人が家を尋ねてきた。
「たのもー」
「誰かが来ましたね」
アモルがドアのところに行き、対応した。話していると急に慌て初め、家の中に入れた。そして、入ってきた女性の天人はレイに見て、話しかけた。
「そなたが異世界から英雄殿か」
「えーと、どちら様で」
「よくぞ聞いた。わが名は天人のリュミエール・ブランコ・アーク。魔術師連盟からブランコの称号を与えられし魔術師。気軽にエルと呼んでくれ」
エルと名乗った女性は金髪青眼だった。服は黒い前上がりドレスで袖にはフリルがついており、スカートは前が短く、後ろが長かった。そのせいか、前から見える足は綺麗に見えた。胸はアモルより少し大きいくらいの大きさだった。
「アーク様、今日はどのような用事で来られたんでしょうか」
「エルと呼んでくれ。そなたはシュガーの友なんであろう」
「しかし」
「呼んでくれ」
「分かりました。エル様、今日はどのようなご用件で」
「わが友シュガー・ロッホ・シャルロットの頼みでここに来た」
レイはアークという名前に聞き覚えがあった。そして、前アモルが言っていた言葉を思い出していた。アークはアモルが言っていた四大貴族の家系であるということに気付いた。このことから、リュミエール・ブランコ・アークは相当上の立場の人間だと理解した。機嫌を損ねれば、何をするか分からない。レイは恐る恐る口を開いた。
「エル様、シュガーの頼みとはいったい」
「英雄殿、様はいらぬぞ。アモルもつけんでいい」
「レイはともかく、私はそういうわけにはいきません」
「じゃあ、遠慮なく。エル、自分のこともレイで構わない」
「レイ殿、シュガーの頼みとはお主たちを連盟に連れてくるように頼まれた。依頼したいことがあるそうだ」
それを聞いて、シュガーはなんでわざわざ四大貴族に頼むのかを疑問に思った。それを尋ねつつ、今の会話に疑問に思ったことも聞いた。
「なぜ、エルがここに来たの。エルは相当偉い立場の人になるんだと思うんだけど」
「それは友の頼みだからだ。あと、異世界から来た英雄殿を見たかった」
「あともう一つ。シュガー・ロッホ・シャルロットのロッホって、何?シュガーは前名乗ったときは言ってなかったけど」
「それは名前だけを言ったんだろうな。ロッホとは魔術師連盟が与えられた称号だ。魔術師として名乗るときは言うが、一般の人には言わないこともある。それは人しだいだ。まあ、余は名乗るけどな」
「ならさ、もっと詳しく知りたいから、魔術師連盟について教えてくれない?」
「そんなに聞きたいか。なら、仕方ない。説明しよう」
エルは誇らしげな顔で説明をして始めてくれた。
「魔術師連盟はマーティス、トリミニエオス、クリムの3つに分かれる。どこでも魔術を学ぶことが可能だ。特にトリミニエオスは学ぶことに、クリムは研究または一過性の魔術に特化している。マーティスは連盟の中でも中心になっている。魔術を悪用したものを捕まえるのは主にマーティスの仕事だ。それぞれの機関には中心となる指導者がおり、マーティスには10人の指導者たちがおり、この指導者の役につくと称号が与えられる。ロッホ、アスール、アマリージョ、ベルデ、マロン、ネグロ、ブランコ、コーブレ、プラータ、オーロの10の称号がある。この中でも、コーブレ、プラータ、オーロは魔術師連盟の中心になり、まとめる人に与えられる称号である。ちなみにマーティスはルークスにあるが、トリミニエオスとクリムは魔術を使わないと行けないと言われている」
「指導者って、どんな事すればなれるの?」
「それはいろいろあってな、家系や連盟での業績、個人が持っている魔術などで選ばれている」
「そうか」
「説明も終わったし、さっそくシュガーのところに行くぞ」
魔術師連盟のことを聞き、連盟にいるシュガーのところに向かった。
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魔術連盟の建物は城だった。相当大きくほかの一般の家とは比べ物にならなかった。シュガーがいる部屋は城の隅っこにあった。部屋のドアをノックし、中に入った。
「よく来た。そして、エル、ありがとう。もう帰ってもいいぞ」
「面白そうだから、余も混ぜろ」
「それなら別にいいが。今日はレイたちに依頼したいことがあって、呼んだ。まずはここで研究していることを説明しよう。ここは魔術師連盟の中で研究を行っている部だ。研究内容は異世界のことだ。異世界から流れた物の研究や脅威に対策する。対策するのだが、人が少ない。俺以外に2人しかいない。これは異世界の存在が昔話で語り継がれるような幻想になっているため、過小評価されているからだ。しかし、レイの存在でどうにかできるのでないかという希望が出てきた」
「話がずれてきていると思います」
「それはすまない。今回頼みたいことはある学園に侵入してもらいたい。この案件はみんなで当たる」
「何があったのだ。その学園は」
エルが不思議そうにシュガーに尋ねた。
「通常では考えられないほどの規模の空間のゆがみが短期間でなり、学園で発している。これほどの強いゆがみが発しているなら学園の中で何かしらの手段で行われていると考えている。しかし、疑問が残っている。この現象がどうやって起こしているのかが分からない」
「分からないって、何が?」
「ゆがみがどのような方法でどんな目的で起こしているのかが分からない。なぜ、長期間、ゆがみを起こし続けているのかが目的が分からない。小さいゆがみなら、異空間を作り、そこを出入り口にすることや瞬間移動を使うことなどで発する。しかし、今回のゆがみは規模が大きい。ゆがみの原因、目的を探るため、学園に侵入する。もうじき、残りの4人も来るだろう」
そんな話をしていると残り4人も集まり、今話した事情を説明していった。再び、ここに7人の選ばれし英雄が集まった。
「最後に考えられる要素としては古代の遺産か神の遺産が関わっているかもしれない。特に神の遺産が絡んでいると何が起きてもおかしくない」
「古代の遺産と神の遺産って?」
「それはボクが説明するね。魔術師が作った道具を魔具というんだけど、古代の遺産とは魔具の中でも特に性能が高いものを言うよ。神の遺産とは神が持っていると言われている神力が宿っているものことを指すんだよ。なぜ、神の遺産が存在しているのかは今のところ分かっていない」
「へえー、そうなのか」
アスラが感心したように言った。
「知っとけ。バカ」
「なら、俺の肉体が神の遺産だ」
「さあ、これからについて話をしましょう」
リアマがアスラを馬鹿にしたが、アスラはまったく気にしていなかった。それどころか訳の分からないことを言い始めたので、アモルは構うとキリがないと判断したのか、先のことについて、話し合うことを提案した。
「これから、どうするの?」
「学園に侵入するのはレイ、ミラ、リアマ、アスラだ」
「なんで、そのメンバーが選ばれたんだ」
「ルキスは魔術が使えるから、俺のサポートについてほしいからでアモルはルークスでは有名だから侵入するのに向いてないからだ。リアも有名だけど、ルークスなら偽名を名乗れば大丈夫だろう」
「入る学園はどこだ」
「サンライトという学園だ」
こうして、レイ、ミラ、リアマ、アスラはサンライト学園で起きているゆがみの原因を探るため、学園に侵入することになった。
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レイたちがサンライト学園に生徒として、転校する日がやってきた。
シュガー曰く、学園の上の立場に当たる人には話していることと仕事ばかりではなく、学園生活も楽しんでくるようにということだった。
サンライト学園は一般の勉強をし、選択制で魔術を学び、3年かけて卒業する学園である。優秀な生徒であれば、3年もかからずに卒業することもある。1学年ごとに3クラスあり、1クラス約30人である。男女の比率は1:1である。
レイたちは2年3組に転校することになった。教師に教室まで案内してもらい、みんなの前に立ち、自己紹介を始めるように言われた。
「レイ・シルバです。出身はルークスです」
「アスラ・グロスヤだ。よろしく」
「リアマ・ラスター。よろしく」
「ミラ・ピランです。ある事情で一時的にこちらで学ぶことになりました」
「今日から君たちの仲間だから、仲良くするように。君たちは一番右の列の席に座りなさい。あと、今日からもう1人仲間が増えます。失礼がないように」
教室がざわついた。レイたちも顔には出さなかったが、胸の中では慌てていた。そんなことはシュガーから聞いていなかったからである。もう1人がドアを開けて、みんなの前に立ち、自己紹介を始めた。
「魔術師連盟から視察に来たリュミエール・ブランコ・アークである。しばらくの間、この教室で授業の様子などを見させてもらう。よろしく頼む」
それは制服を着たエルだった。エルも先生から、指示され、席に座った。そして、授業が始まった。
授業が終わり、休み時間になった。レイとミラはエルの元に行き、事情を尋ねた。
「なんで、エルがここにいるの?」
「理由は2つある。まず、シュガーからレイ殿には魔術を、ミラには天術を教えるように頼まれた」
「もう1つはなんだよ」
「余も学園に入って、授業を受けてみたかった」
「わがままじゃねーか」
ミラは大きな声でエルのくだらない理由にツッコんだ。
「気にするな。お主らは授業が終わって、放課後に探索するのであろう。その時に時間を割いて、修行をつけるようにと頼まれたのだ」
「まあ、それはありがたいが。連盟の仕事はいいのか」
「全部、レインに押し付けてきた。シュガーもやっている」
「いいのか。それで」
エルが学園に入り、暇な時間にレイとミラに修行を見てもらうことになった。レイとミラはレインという人は大変苦労しているに違いないと思った。
エルが入ってきた理由をリアマとアスラにも伝えた。
「修行をつけてもらえるなんて、いいじゃねーか。羨ましいぞ、おい」
「こちらの邪魔をしなければ、問題ない。放課後はアスラと組んで、探索しよう。修行に集中するがいい。何か変化を見つけたら教えろ」
「分かった。修行がある程度進んだら、探索に参加するから。リアマさん」
「さんはもういい」
「分かった。リアマ」
放課後の探索はリアマとアスラに任せて、修行のほうに専念にすることになった。
感想、アドバイスをよろしくお願いします。