前英雄物語 終結
神に選ばれた英雄がいた。英雄たちは各国で起こった事件を解決したり、様々な場所を冒険することで力を身に付け、絆を深めていった。そして、世界の平和を思うあまりに世界に害なす存在になってしまった英雄が現れる。英雄たちは世界に平和を取り戻すために害なす英雄を倒す決意をする。
戦いの結果、害なす者を封印することに成功する。英雄たちは願った。いつか封印が解けたとき、考えが変わってくれているようにと。世界に平和をもたらした英雄を人々は五大英雄と呼ぶようになる。
戦いが起こり、500年後。再び、英雄たちは対立する。五大英雄は戦いを通じて、仲間である英雄を倒すのでなく、救うことができた。
彼らの絆は結び直され、未来を掴むため、前へと歩み続けた。
前回のあらすじ
天使を倒したアスカ、イディナ、ミラ。
シュガーと戦っていたアリスだったが、ついに神化し、本気を出す。
残る天使はミカエルのみとなった。
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扉の前で待機していたシュテルたちだったが、アモルがぼやいた。
「私たちにできることはないのでしょうか?」
「私たちがここにいるのは確実にテスラを倒すためよ」
「どういうことですか?」
「シュガーたちが勝って出てくれば良し。負けたとしてもテスラもただでは済んでいないはずだから、私たちはそこを叩く。確実にテスラを倒す、それがシュガーの意思よ」
「無事に帰ってきてください、みんな」
皆のことを心配していたアモルだったが、リアマはそんな素振りを見せずにミストに勇者のことを聞いていた。
「それでミスト、勇者とはなんだ? アスカに聞いてもよく分からなかった」
「詳しくは話せませんが、そうですね。英雄の力が勝つためなら、勇者の力は負けないことですかね」
「聞いた限りだと英雄の方が強そうだな」
「勝つことがあれば、負けることがある。英雄において負けとは死です。負けないとは今は勝てずとも負けないため、死ぬことはほとんどありません。諦めない限り、いつかは勝てる。それが勇者です」
「理屈は分かった」
普段と変わらない態度であるリアマにアモルはその態度を不思議に思い、尋ねる。
「リアマは皆のことが心配じゃあないんですか?」
「あいつらなら大丈夫だろう。シュガーは私の戦いの師で強い。ルキスは一緒に旅をしていたが、頼りになる奴だ。レイは最初の頃と比べられないほどに強くなっている。ミラは一番行かなさそうなあいつが自分で行くと言ったんだ。何か、考えがあるんだろう。任せたんだ、信じよう」
「リアマは強いですね」
「アモル、祈ろう。その祈りを風に乗せて、届けよう」
リアマとアモルが話しているとリアマがシュガーの力を感知した。
「これはシュガーの力か?」
「私には何の力も感じませんが」
「この力は……ついにシュガーが神化したのね」
(神化はあなたの命と世界そのものが危ない。早く決着をつけなさい)
シュガーに起こっているであろう状況をシュテルは心配した。
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レイはルシフェルと共に移動しており、ミカエルが相手だった。
「ルシフェル、なぜ裏切ったの?」
「私は従っただけよ。アリスのシュガーに従うようにという言葉にね」
「テスラ様よ。戦いましょう」
ミカエルは白い甲冑を身に纏い、右手には白い剣が握られていた。その背には白い翼が広がっていた。
「絶風弊絶」
リトスから神装である心剣を抜くと同時にレイの中心に風が集まり、リトスに吸収されていく。そこには緑色の仮面と黒い剣があった。彼が緑の仮面をつけると緑色のマントが出現し、体に巻き付いていきコート状になっていく。
「行きます」
レイは地を蹴り、ミカエルに接近する。その速さは目に留まらない速さだった。剣で斬るが、傷ついた様子は無かった。その感覚に覚えがあった。
「この感覚。神力結界……」
(この英雄、速い……)
(今の僕には神力結界は無効にできない。しかし、対策はある)
その対策で神力結界を破ろうとしていた。
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シュガーは神化したアリスから逃げていた。牽制としてドラゴン・ブレスを銃から撃っていたが、それはあまり意味を成していなかった。
その状況にジルは焦っていた。
「シュガー、どうするの!?」
「何とか不意を突くしかない。刀さえあれば、どうにでもなる」
「ない物ねだりしても仕方ないじゃなかったの?」
「追いついた」
そう言い合っているうちにアリスに追いつかれてしまった。右手で持っている銃を変形させて、剣へと変えアリスと斬り合う。剣ではいい勝負だったが、不意を突かれ、腹を足で蹴られることでシュガーは地上へと叩きつけられる。
「本当にどうするの? まだ生まれて1週間しか経っていないんだけど」
「2人で戦う。お前は刀を回収してくれ。俺が隙を作る」
「分かったわ」
2人は作戦を話し合った。アリスがシュガーに話しかけてきた。
「それで終わりということはないでしょう?」
「当然だ。そして、これで一気に終わらせる」
シュガーは両手の平に神力を集め、それを魔力で圧縮していく。それをアリスに向け、撃ち放った。
「シン・ドラゴ・ルギートゥス!」
「すごい術ね」
アリスは神力の壁を作り、その術を防いだ。しばらく防いでいるとシュガーがいる方向から爆発音が炸裂した。
「なにかしら? この音は?」
彼女が次に見た光景は想像できなかったものであった。次に飛んできたのはシュガーそのものだった。彼は獣人の姿に戻っており、神力の壁を体当たりで破り、アリスへとタックルをした。彼女の右手から刀が離れ、地上へと落ちていった。
「今だ! ジル!」
「オーケー」
「取らせてたまるものですか!」
「行かせるか!」
ジルは刀の元に向かって走る。シュガーはアリスの腕を意地でも離そうとはしなかった。
「シュガー、ごめんね」
アリスは掴まれていない右手をシュガーに向け、神力を溜め撃ち放した。その衝撃で手を離さざるをえなかった。
シュガーから解放された彼女は刀を回収するべく、全力で飛んで行く。ジルも全力で走っていく。
「良し、私の方が早い!」
アリスが刀を掴もうとした瞬間、横から炎の鞭が伸びてきた。それが柄を掴み、回収された。その人物は燃えるような赤い髪をしていた。
「この神刀 焔はラヴァの物だ!」
「それはわた……」
アリスが私の物と言おうとした瞬間、シュガーが彼女を追いかけ、頭を足で蹴られ、顔面は地面へと叩きつけられる。彼はラヴァに駆け寄った。
「ラヴァ!」
「シュガー、これを!」
ラヴァからシュガーから刀が渡される。彼が刀を手にすると赤い煙のような力が出てきて、それが人の形になっていく。頭はスキンヘッドであり、黒いひげに黒いローブを着ていた。
「久しぶりだ。イグニス」
「本当だ、シュガー」
「再会を喜びたいが、その余裕はなさそうだ」
「私にも時間がない。行くぞ、シュガー。神化だ」
「万象を灰燼に帰せ、神化 火之迦具土神」
シュガーは自分自身の神核と神器である焔を融合させることで神化していく。獣人の証である獣の特徴が無くなり、その身には火の粉を纏っており、少し焦げた土のような匂いをさせていた。右手には刀が握られていた。
「久しぶりに神化したから、力加減が間違えないようにしなければ」
「行くぞ! シュガー」
「来てくれ! イグニス」
「神化 破滅をもたらす炎」
神化したシュガーはさらにイグニスと融合し、さらに神化する。イグニスは黒い炎となり、一体化していく。シュガーの服と刀は黒く染まり、瞳も黒色になっていた。
「神の遺産との融合が神化、神との融合を超神化と名付けるなら、その2つと融合したのは究極神化と言えるだろう。アリス、お前の負けだ」
その場からシュガーが消えたと思わせるほどの速さでアリスの後ろに回り込んだ。そして、彼女を刀の柄で殴りつけ、吹き飛ばした。
アリスが態勢を治し、顔を上げるときには目の前にはシュガーが立っていた。
「分かっただろう、力の差が」
(ミカエル、今すぐこっちに来なさい)
アリスは念波でミカエルに声をこちらに来るように呼びかける。
一方、ミカエルはレイに苦戦させられていた。
「はあ!」
「くぅ!」
レイが攻撃し、ミカエルがやり返そうとしたときには既にその場から離れていた。彼はこうして、ヒットアンドウェイを繰り返していた。
神力結界を展開されている以上、ダメージを与えることはできない。しかし、その結界を貼り続けさせることで確実に神力を消費していく。まずはその神力を減らすことをレイは考えた。彼は緩急をつけた移動でミカエルを惑わせていた。
苦戦していたその時、彼女の主であるテスラの声が聞こえる。
(ミカエル、今すぐこっちに来なさい)
(テスラ様、一体何があったんですか?)
(シュガーが神化されたわ。貴方の力が必要よ)
(今すぐ行きます)
「貴方達と遊んでいる時間はなくなったわ」
ミカエルがレイたちに一方的に言うと移動するためか、体が光り始めた。
「逃がさないわよ」
「逃がしません」
レイとルシフェルが移動しようとする彼女の体を逃がさないように掴んだ。
「離しなさい!」
彼らの手を必死に剥がそうとしたが、離れる様子は無かった。そのため、危険であったが、2人も連れてアリスのところまで移動した。
アリスがいる部屋に移動したミカエルは彼らを引きはがし、主の元まで駆け寄った。
「テスラ様、ミカエルただいま来ました」
「ありがとう、ミカエル」
「しかし、勝ち目はあるのですか?」
「ええ、あるわ。貴方のおかげでね」
ミカエルと会話を交わしたアリスは空へと飛んで行った。
レイは変わり果てたシュガーに話しかけた。
「シュガーなの?」
「ああ。レイはこの戦いに手を出さないでくれ。お前はジルたちを守ってくれ。それだけの強さがあるならできるだろ?」
「任せて」
レイに頼むとシュガーのアリスがいる上を向いた。
彼女の近くにいたミカエルがいなくなっており、背中には2枚の翼が増え、合計4枚の翼になっていた。手には莫大な神力を光に変え、溜めていた。
「シュガー、貴方なら耐えられるでしょうが、ほかの仲間どうでしょうね?」
アリスはシュガーの仲間もろとも、発動しようとしている術で倒そうとしていた。
シュガーは神力で作った黒い炎を魔力で圧縮していった。
互いに準備が終え、術を解き放った。
「零れ落ちた光の涙!」
「生と死を生み出し神火!」
アリスから涙を思わせるような巨大な光が撃ち出され、シュガーからは黒い炎はレーザー上になり、放たれた。
光と闇はぶつかり合った。結果、闇が光りを撃ち破り、アリスに直撃した。彼女はボロボロになりながらも前を見た時にはシュガーの姿がなかった。
「どこに?」
「ここだ」
シュガーはアリスの後ろにいた。彼の右手が彼女の胸を貫く。赤く染まった手には輝く球が握られていた。
「この神核を壊せば、500年の因縁もついに終わる」
手に神力を込め、握り壊した。バラバラになった神核からは金髪の女性が出てきた。
「まだあきらめるわけにはいかない。平和が満ちた世界を作るまでは」
「ルークスか」
ルークスはその場から逃げ出したが、シュガーはそのことを意図に介さず、アリスの傷を神力で治療した。
「アリス、大丈夫か?」
「私は今まで一体何を……?」
「もう喋らなくていい」
シュガーがアリスを抱え降りるとそれと同時にセレネ、イディナ、ミラの3人がこの部屋にたどり着いた。
「シュガー、ついにやったんですね」
「ああ、アリスを頼む。俺はまだやることがある」
セレネにアリスのことを頼んでいるとミラが彼女の顔をジロジロと見ていた。
「何かあるのか、ミラ」
「いや、何も」
シュガーの神化が解け、イグニスと神器である刀に分かれた。
「イグニス、後は頼んだ。今までありがとう」
「貴重な体験だったな」
「ルシフェルとジルは俺の中にいてくれ」
「分かったわ」
ルシフェルとジルは光の粒子となり、リトスへと吸収されていく。シュガーはその場から離れていった。
火の神イグニスは英雄たちに話しかける。
「さて、英雄たちよ。もうすぐこの世界は崩壊する。私の力で外まで送り届けよう」
「イグニス様はどうなされるんですか?」
「ラヴァよ。私の神核はもうない。シュガーの神器の代わりにしていたが、取り付くための神力も限界だ。もう消えてしまう」
「イグニス様……」
ラヴァは胸が裂けそうな気持ちに襲われる。イグニスは最初にシュガーと会ったことを思い出していた。
「シュガーと会ったのが運命の分かれ目だったな。生意気にもあいつに呼ばれたときは殺そうとしたが、それもいい思い出だ。ラヴァよ、最後に頼みがある」
「何でしょうか?」
「新たに生まれてくる火の神イグニスを手助けしてくれないか? ほんの少しでいい」
「分かりました。必ず探し出します」
「それはよかった。では、英雄たちよ。武運を祈る」
熱さを感じさせるような赤い神力がイグニスから放たれ、レイたちを囲んでいく。赤く光ったと感じた時には既に元の入口へと戻っていた。そこには合流していなかったルキス達の姿もあった。
「レイ、無事だったんですね」
「なんとかね」
「シュガーの姿が見当たりませんが」
「シュガーはまだ中にいる」
「なんでですか?」
「シュガーがそう決めたから。もう、扉が閉まっている」
レイたちが入った入り口である魔方陣は光を失っていた。それを見たシュテルはレイに声をかけた。
「あの子が決めたことなのね」
「そうです。しかし、シュガーは絶対に戻ってきますよ」
「なんで、そう言い切れるの?」
「シュガーは500年間も仲間を助けようとしていた。仲間を失う気持ちは分かるはずです。そんな人が僕たちに同じ気持ちを味わせるとは思えません」
「そうね。貴方の言う通り、シュガーを信じましょう」
英雄たちは1人の英雄の無事を祈った。
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中に残ったシュガーはルークスを追っていた。
「ルークスの神力はこっちだな」
全力で追いかけ、ついにルークスに追いついた。
英雄と光の神は向き合う。
「なぜ、貴方はこの世界を信じられるのかしら?」
「俺はこの世界に住むヒトの可能性を信じている」
「私にもそんな時代があったわ。けど、いつまで経っても戦いを続ける。貴方になら、理解してもらえると思うのだけど。第4世界の神である貴方なら」
「俺は500年間、この世界を見てきた。確かにヒトは争い続けていた。それでもヒトは幸せを求めていた。今日より少しでも明日を良くしようと努力している。それだけで信じる価値がある」
シュガーはヒトの可能性を信じ続けていた。
ルークスは自分の理想を口にする。
「私が作りかった世界は完璧な世界よ」
「魔王は生まれるぞ」
「それは悪しき心を持つヒトがいるからよ。私が作る世界にはそんなのはいない」
「それでも……魔王は生まれる」
「何か知っているの?」
魔王は生まれると断言するシュガーにルークスは疑問を覚えた。
「俺たち、英雄……レアタイプは神によって選ばれる」
「レアタイプ?」
「レアタイプとは神によって選ばれたものことを指す。英雄、勇者、覇王、救世主、聖女などがある」
「なんで、貴方がそんなことを知っているの?」
「俺は長い旅の果てに神ウルズに会うことができた。その時に5人の仲間と共に願いを叶えてもらい、レアタイプについて知った」
「まさか、魔王も……」
「おそらく、お前の想像通りだ。そして、お前はもう詰んでいる。この世界はもう終わろうとしている。たとえ、俺の体を奪えたとしてもここから出ることはできず消滅する」
焔を右手で持ち、斬る体勢に入った。
「今だから言うが、お前の考えた世界は嫌いではなかったし、否定するつもりもない。ただ、俺の目指すべき世界と正義とは違った。最後に頼みがある」
「なに?」
「お前の神魂を使わせてくれないか。英雄として力をもっと身に着けたい」
「それが平和に繋がるなら」
「お前の平和にするという意思は俺が引き継ぐ。安らかに眠るといい」
刀を振り下ろし、光の神ルークスを斬った。神としての体を失い、そこに残されたのはルークスの神魂であった。
「出てきてくれ、ルシフェル」
「今から、何するつもり?」
「これより、カテーナに入る」
「それは無理でしょう。シュガーはもうカテーナに入っている」
ルシフェルはシュガーの案を否定し、彼もそれを肯定した。
「確かにそうだ。しかし、カテーナは基本である第3段階目であるエインヘリヤルと違い、自分自身ではなくフィデスの使役対象が神魂を取り込むことで入ることができる。考えてみれば、英雄自体には変化はない。変化しているのはフィデスだ。このことから、フィデスであるルシフェルがヘタイロスに入れる可能性はある」
「そうね。私もアリスのフィデスで作られた存在」
「特殊なケースであるものの条件は揃っている。俺のリトスと契約しているルシフェルにルークスの神魂。本来ならここまでの条件は揃わないはずだ。神との協力に他の英雄が生み出した存在を使役すること。それらすべてがありえないと言ってもいいだろう」
本来なら、第3段階に進むための神魂はリトスから具現化するしかない。それ以外に手に入ることはなく、フィデスで生み出した存在はカテーナの領域に入れば、ヘタイロスという存在に確立する。
この状況はシュガーの言う通り、思い付いたとしても神の死に特殊な状況で生み出されたフィデスの2つが必要不可欠となり、ほぼ不可能なことであった。
「セレネのことを見る限り、ミカエル以外の天使はアリスのフィデスではなく、神力で疑似的に作られた存在かもね」
「そうかもしれない。やってくれるか」
「面白そうね」
ルシフェルはシュガーから受け取った神魂を口に入れ、一体化していく。彼女の存在は生まれ変わっていった。
彼女の青い瞳は赤くなっており、天使の証である聖なる力は消えていた。その代わり、禍々しい力が放っていた。
「ルシフェル改め、魔人のサタンちゃんよ。よろしくねー」
「カテーナに入るとティアみたいに性格が変わるんだな。それにしてもなんで光を取り込んだのに堕天しているんだ?」
「天使なのに神の力を取り込んだから、生意気! という理由だからじゃあないの?」
「考えてみれば、そうかもしれないな」
「それにしてもシュガー。ここからどうやって出るの? 生まれて、5分も経ってないのに死にたくないんだけど」
シュガーはルークスがどんなことをしても無駄にするためにこの世界と第5世界の繋がりを閉じていた。ここに来るための扉も閉まり、ここから出る方法はなかった。しかし、シュガーには策があった。
「俺が開発した究極魔法を使い、ここを出る」
「そんなものを開発していたの?」
「この究極魔法は本来、俺が元の世界に帰るために開発した魔術だ。まだ完全にはできていないが、それを使用し移動する。サタンはリトスに中にいてくれ」
「りょ~かい」
サタンは赤い光となり、リトスの中に戻った。
シュガーは世界から世界を移動する究極魔法を発動し、この世界から姿を消した。
誰もいなくなった世界はやがて崩壊し、すべてを消滅させ、跡形なく消えた。
****
アリスとの戦いから、約1ヵ月後。シュガーの戻ってくる姿はなかった。英雄たちは必死に彼のことを捜索したが、何も手掛かりを見つけることはできなかった。
アリスは湖にいた。リベルダースにあるシュガーがレイたちに別れを告げたあの湖に。外はもう暗く夜になっており、彼女のそばにはミカエルがそばを離れずにいた。
「アリス様、体を冷やします。今日のところはもう戻りましょう」
「あと、もう少しだけ」
「分かりました」
毎日、こうして待っていた。思い出のある湖で、夢を叶えるために興した町で。ずっと待っていた。
「ねえ、ミカエル」
「はい、アリス様」
「シュガーが姿を現すなら、絶対にここよ。だって、彼は湖が好きだから」
この1ヵ月間、ずっとある疑問を抱いていた。
「どうして、シュガーは私のことを助けようとしてくれたのかな?」
「俺がアリスの立場だったなら、全力で俺のことを助けようとしただろ」
どこからか、声が聞こえてきた。その声はアリスが一番逢いたかった人の声であった。
「友達を助けたかった。それだけのことだよ」
「シュガー……」
「心配かけてごめん。アリス」
「私の方こそごめんなさい」
「今、一番言いたい言葉があるんだ」
「私も……」
「なら、それを言おう」
「ただいま、シュガー」
「お帰り、アリス」
500年間にも及んだ戦いの傷はそう簡単には治らないだろう。しかし、その溝は埋まり、彼らは力を合わせ、確実に前へと歩き出す。
こうして、現英雄をも巻き込んだ英雄物語は終わりを迎えた。




