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神に選ばれし英雄の異世界物語  作者: 甘味神宝
五大英雄ともう1人の英雄
32/86

英雄の新たな領域・隔世

勇者について

英雄と同様、神に選ばれた存在。

勇者も後世では英雄として伝わっていることが多いため、その時代の人しか知られていないことが多い。神に贈られる勇者の証は剣であり、剣を渡すのは勇者の従者であるミストの仕事である。

勇者に選ばれた者はいくつかの特性を持つことになる。

ちなみに世間一般的な意味である優れた者に対しても使われることがある。



前回のあらすじ

無事に道標を手に入れることができたルキス達だったが、水の神アクアによって、デネブラエに飛ばされた。

一方、シュガーはシリウスと戦い、レイはシュテルと戦うことになる。


****


 事件を開発したレイたちは町長であるプリマによって手配された宿屋で休んでいた。1つの部屋に集まって、これからのことを話し合っていた。


「これから、どうする? ほかの奴がルークスに戻っていると判断するか、ルキスとリアマの2人を探すか、デネブラエに向かうかの3つだな」

「あたしは会ったことがありませんけど、どう行動するんでしょうか?」

「アモルたちなら、デネブラエの噂を聞けば、そちらに向かうと思う。ミラは除いて」

「それはどういう意味だ! なら、デネブラエに向かうってことでいいんだな?」

「そうだね。みんなに会って、ルリのことを紹介しないとね」


 レイたちが話し合っているとコンコンと扉がノックされた。


「はい、どうぞ」


 レイが許可を出すと窓が壊れ、それと共に女性が入ってきた。ガラスは見事にぶち破れていた。レイはその人物のことをよく知っていた。


「レイ君、久しぶり」

「フラースさん、ドアから入ってよ! なんで、窓から!?」

「フェイントだよ」


 入ってきたのは金髪で左目が緑眼で右目が赤眼のオッドアイ。森人のフラースだった。彼女はミラの方をじっと見た。


「私の顔に何かついているのか?」

「やっぱり、似てないなーって」

「何の話だ?」


 ミラがツッコンでいるとフラースはレイを左わきに、ミラとルリを右わきに抱えた。


「何しているの?」

「レイ君たちをある人のところまで連れていくことを依頼されているから、大人しくしていてね」

「離してくれないかな」


 レイはフラースの腕を離させるために力を込めて、開かせようとする。しかし、彼女の腕は女性とは思えないほどの力だった。

 窓のサッシに立ち、膝を曲げ、建物の屋根に向かって、跳躍した。次々と屋根を伝い、町の外へと跳んで行く。


「とーうちゃーく」


 彼女は屋根から飛び降り、着地するとクレーターができた。

 わきからレイたちを解放し、目の前にいた天人に報告する。


「連れてきたよ、シュテルちゃん」

「うん。ありがとう、フラース」

「シュテルさんですか」


 地面に落とされたレイたちは立ち上がり、シュテルと対峙する。


「僕たちに何か用があるんでしょうか?」

「まあ、いろいろと分かったから、それを伝えにね」

「それはどんなことですか?」

「その前にレイ・シルバ。私と戦いなさい」


 シュテルがそう言うと彼女の前に真っ黒に染まった水晶を思わされるもので出来た2本の足に2本の腕を持ったものが現れた。頭部と胴が1つになっており、体の淵は丸みがなく鋭角だった。そして、腕と足の付け根は細かったが、先に進んでいくにつれ、太くなっていることがアンバランス差を感じさせる。

 ミラはレイに話しかける。


「どうする? レイ」

「シュテルさんが何にも考え無しにあんなことを言うとは思えない。何か意味があると思うんだ。それに」

「それに?」

「俺たちの先輩である五大英雄がどれだけ強いのかが興味があるんだ」


 レイはリトスである銀の鍵を左手で持ち、右手で抜き、神装である心剣に変えていく。黒い剣と白い仮面に分かれ、仮面を装着し、白いマントを出現させた。


「行きます」

「行きなさい、レーゲンボーゲン」


 黒い剣とレーゲンボーゲンの手が交わる。レイは斬りつけるが、傷が入る様子は無かった。


「なら、これだ。風嵐弊絶(アネモイ)


 彼はフィデスを発動させ、風を利用し、高く跳躍した。両手を上にあげ、回りの風を集めていく。大きな風弾を作り上げていく。それをレーゲンボーゲンとシュテルに向かって、放つ。

 シュテルは避ける動作はせず、そのまま命中した。風弾は地面をえぐり、風は自然界へと帰っていく。風弾が命中したはずだったシュテルとレーゲンボーゲンには傷の1つも見られなかった。

 今、起きた現象にレイは心当たりがあった。


「神力結界……」

「あら、知っているのね。普段は使っていないんだけど、隙があったから。その技、威力はあるみたいだけど、動作が大きすぎるのね」

「とりあえず、今できることをすべてぶつけてみます!」


 それでも、レイは諦めずにシュテルに挑み続けていく。


****


 シュガーはシリウスと、アイランはミカエルと戦っていた。

 アイランの手にはリトスであるナイフから変化した方天画戟が握られていた。槍の先に付いている刃の両側に左右対称に月牙と呼ばれる三日月状の刃が付いているものを方天戟と呼ぶが、月牙が片方だけについているものを方天画戟と呼ばれている。

 アイランのフィデスは無窮兵仗。自分のリトスである柄が青いナイフを媒介に様々な武器に変化させるという能力であった。


「くぅ!」


 アイランとミカエルの戦いはアイランの優勢だった。ミカエルは神力結界を貼ってあるため、傷そのものは与えられていなかったが、武器で切りつけた際の衝撃などを利用することでダメージに近いものを与えていた。

 シュガーとシリウスの戦いは互いに生み出したものを戦わせていた。シュガーは青銅で出来ている銀色の自動人形タロスを、シリウスは魔術で生み出した守護霊である大鳥が戦っていた。

 タロスの体からは熱が発しており、銀色から赤へと染まっていく。タロスは大鳥に抱き着き、その熱で焼いていく。大鳥は光となり消え、シリウスの方へと走っていった。彼女は槍を取り出し、魔力を槍に注ぎ込み、光の刃を形成する。その槍でタロスを一刀両断にした。


「神装ではだめか」


 シュガーは黒い剣状の杖であるセイギャールンを手に持ち、シリウスに襲い掛かる。杖と槍が交差すると一方的に剣の刀身が切られてしまっていた。


「ズヴェズダのセイギャールンが……」


 ペテルギウスが信じられない物を見たような声を出していた。


「やはり、駄目か」

「シュガー。あの神器でなければ、対抗できないわよ」

「ないものねだりしてもダメだろう。……仕方ない。神力はこれ以上使いたくないし、対テスラ用に開発したあれを使うか」


 シュガーは瞬間移動でティアとセレネのところに移動した。


「ティア、道標をくれ。あと、セレネ」

「何でしょう?」

「ゴルドラの名前を考えてくれ。ミーティアみたいな名前で頼む。俺の相棒だからな」

「分かりました。任せてください」


 再び、瞬間移動を使い、シリウスの前に立つシュガー。その左手には道標である矢が握られていた。


「道標には英雄の力であるフィデスに目覚めさせることができる。私も持っていたから分かる」

「この国で暴れている魔人を唆したのはお前だろう。それを退治に来る英雄を一網打尽にするために。おそらく、魔人に道標を持たせているな?」

「正解。そして、ここで道標が2つ手に入る」

「手には入らん。ここから動けなくなるのだから。お前は本当の道標の使い方を知らない」

「道標の役目は2つ。1つは先ほどのように言ったフィデスの覚醒。もう1つはテスラ様の封印」

「道標を作成したのは俺だ。セレネのフィデスの力を借りてな。3つ目の使い方がある。3つ目は英雄にしか意味がない。英雄の力を未知の領域に行かせること。長年かけて、開発した。おそらく、俺以外の英雄では無理だろう」


 シュガーは道標を右手の中指にはめている赤い指輪のリトスに向かって、振り下ろした。


隔世(エヴォル)


 シュガーの赤髪が銀へと変わっていき、赤眼は青へと変色していく。彼の回りにある草は凍っていき、白い息を吐いていた。そして、獣人の象徴である獣耳が頭から消えていた。


「なに、その姿は? 何の力も感じない」

「悪いな、説明している暇はない。1つだけ答えるなら、今の俺の力はこの世に存在しないものだ」

「それはどういう意味?」


 シリウスの疑問にそれ以上答えることなく、シュガーは距離を詰めた。右腕を振り下ろすが、避けられる。しかし、攻撃が当たらずとも、彼が身にまとう冷気で腕の一部を凍らせていく。


「なに、この冷気は!?」


 彼女はシュガーの左肩に向けて、槍を振り下ろす。槍は肩をどんどん切り裂いていくが、途中で止まった。それは槍が凍らされたからであった。

 シュガーは右手で冷気を丸くまとめたエネルギー体をシリウスに放つが、槍を手放すことで距離を取った。


「凍らせることで無力化するつもりね。それが分かれば、距離を取って戦うだけよ」

「いや、もう遅い」


 シリウスの足はもう既に凍っていた。


「何これ!?」

「さっきのお前に向かって放った冷気はマーキングだ。当てれば良し、当たらなくとも次の攻撃の準備となる」


 彼女の足だけではなく、回りの空間も同時に凍らせていく。


「次に目覚めた時にもすでに終わっている。白銀氷牢」


 シリウスは下から凍らせていき、氷の中に閉じ込められた。


「次はお前だ。ミカエル」

「これはやばいですね」


 ミカエルはアイランとの戦闘を辞め、その場から逃げ始めた。


「逃がさん。白銀路次」


 シュガーが冷気を纏った拳で地面を殴りつけるとミカエルまでの道が凍っていく。ミカエルは必死に逃げるが、足が捕まり凍らせていき、捕まえたかのように見えた。しかし、彼女はその足を切断することで動けるようにし、その場から逃げおおせた。


「シュガー……追う?」

「やめとこう。それにそろそろ時間切れだ」


 シュガーの銀色の髪が赤へと戻り、獣耳も元に戻った。セレネたちが近づいてくる。彼女がさっきの姿について聞いた。


「シュガー、さっきの姿はなんですか?」

「アイランとセレネに説明しよう。ドルチェはシリウスの氷を封印してくれ」


 シュガー、アイラン、セレネはティアたちから少し離れた場所に行き、説明を聞いた。


「先ほどの力は隔世(エヴォル)というものだ」

奇跡(フィデス)とは違うんですか?」

「フィデスはリトスにある神の魂、つまり神力が英雄を刺激することで生まれる力のことを言う。これは異能力に似ている。それに対し、エヴォルは刺激する原理は一緒だが、刺激するのは遺伝子だ」

「遺伝子?」


 アイランは不思議そうな声を出す。


「そうだ。遺伝子を刺激することで眠っている種族の力を目覚めさせ、それを具現化させる。いわば、先祖返りだ。英雄はフィデスを基本とするが、エヴォルもフィデスと同じ基本だ」

「英雄はフィデスから始まる道が基本ですが、エヴォルから始まる道もある。つまり、スタート地点が違うんですね」

「フィデスには……いくつかの段階があるように……エヴォルにも……ある?」

「成長すれば、できると思う」


 エヴォルの説明が終わるとセレネはシュガーに頼まれていたことをできていたので、それを伝えた。


「ゴルドラの名前が決まりました」

「どういう名前だ?」

「ジルニトラ。魔法を操ると言われたドラゴンの名前です」

「良い名前だ」

「これから……どうする?」

「ノードゥスの次の段階、カテーナに入る。ジルニトラに不安があるが、そんなことは言っていられなくなってきた。神も協力的だから、おそらくうまくいくだろう」


 シュガーは黄金竜ジルニトラを呼び、英雄の第3段階であるカテーナに入る準備をした。


****


 レイはシュテルに力を振り絞り、攻撃していた。彼女にはダメージが与えられなかったが、それでも彼は諦めていなかった。


「諦めていないのは若さゆえの万能感から来るものかしら。でもね」


 レーゲンボーゲンの黒い腕がレイの胸を貫いた。


「思いだけでは五大英雄には勝てない」


 レイ・シルバ、死亡。

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