道標の秘密
種族について・翼人
背中に翼をもつ種族である。
独自の力は翼力であり、この力を持つことで空を飛ぶができる。めったにいないが、翼力を持たずに生まれた場合は翼が生えていない。
寿命が50年程度で短いため、次世代を残すために恋愛には積極的である。ほかの種族が飛べないため、滑稽に映り、怒らせる発言をすることが多い。
前回のあらすじ
幻想の魔術師 魔人のプリマと幻獣の魔術師 獣人のミドを苦戦しつつも倒すことができたルリとミラ。
レイはついに土の魔術師 アスタを対面し倒すが、それは始まりに過ぎなかった。
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ルリとミラが敵を倒しているころ、レイたちは洞窟の最深部に着いた。
そこには栗色の髪をした1人の男性がした。男はレイたちに背を向けており、奥の方にあるゴーレムを見つめていた。アオイは男に声をかけた。
「アスタ! どうしてこんなことを?」
「アオイさんか……。至高のゴーレムを作るためです」
「何の意味が?」
「意味などない。力を手に入れれば、試したくなるものだ。この力を!」
レイの疑問にそう答える。その左手には道標が握られていた。
「なら、あなたを倒すまでです」
「俺も排除するまでだ。出でよ、土の住人。クレイマン」
アスタが魔術を唱えると地面の土が人型に固まっていき、レイたちに襲い掛かる。
レイはリトスを神装へと変えていく。リトスは白い仮面と黒い剣へと変わると仮面を身に着けると彼の背には白いマントが表れた。
「行きます」
クレイマンは左手をレイに向かって振り下ろすが、それを避ける。避けた後、彼は剣で左手を斬り下ろした。クレイマンはそれを気にせず、右手でさらに攻撃を仕掛けてくる。マントを前に出し、壁のように固めることでレイは攻撃を防いだ。その後、クレイマンとは距離を取った。
「アスタはあんな風に何かを作り出し、自分では戦いません。なので、接近できればどうにでもなります」
「それをさせないのが戦いだ」
さらに2体のクレイマンが出現させた。レイと戦ったクレイマンは斬り落とされた左手がすでに再生していた。
「物理がだめなら、魔術だ。風よ、敵を撃ち抜け。風弾」
レイは風の魔術を唱え、3発の風弾を作る。クレイマンに向かって放つが、大きな穴が開いただけですぐに再生された。
2体のクレイマンは再びレイとアオイに襲い掛かる。レイは先ほどの行動で攻撃しても無駄だと分かったので避け続けた。
(なにか、手を考えないと)
彼がそう考えていると2体のクレイマンが横から飛んできた何かに当たり、上半身と下半身に分けられた。
そして、レイたちに声をかけられた。
「大丈夫か? レイ」
「助かったよ。ミラ」
クレイマンに攻撃したのはミラとテリーだった。敵は先ほどと同じように再生していく。
「なんだ? これは」
「これは土で出来ているから、攻撃しても再生するんだ」
「なら、これだ」
ミラはフィデスである種族力理解を発動させた。青眼から金眼へと変わり、右手に鎖を具現化させる。
人差し指のアイス・チェーンをクレイマンに向かって伸ばしていく。敵は鎖を掴むが、手が凍っていく。
「凍らせば、再生する元がそのうちになくなるだろ」
「なるほど。なら、俺も」
レイは黒い剣を消し、ミラの胸に手をかざす。すると彼女の胸から青い棒が3つが鎖で繋がれている三節崑が出てきた。
「ミラはアオイさんのほうのお願い」
「分かった」
「私は助手君を手伝おう」
「凍らせたら、砕いてください」
レイは三節崑の節を氷で固め、棒状にしてから、クレイマンに向かって走りだした。右腕が彼に襲い掛かるが、それを見事に避け、腕の中に三節崑を突っ込み凍らせていく。
テリーがそれを確認すると鉄球を螺旋の回転をさせ、右腕へと投げた。螺旋の鉄球の威力は中心という一点に向かい、凍った右腕を砕いていく。
クレイマンは右腕を再生にせず、左腕を振り下ろそうとした。その前にレイは懐に入り、腹へと武器を刺し、腹から凍らせていく。再び、鉄球が投げられ、敵は氷の破片へとなっていった。
「良し」
三節崑の最初の節だけ氷を溶かし、崑を回す。地面に近づけ、滑らすように地面に付けると崑が前に回り上にいくと同時に氷の棘が出現した。氷の棘は滑るようにアスタの方へと生えていく。
しかし、アスタの近くにいたクレイマンが身を呈してかばう。再生している隙にレイは近づき、三節崑を刺し、凍らせていく。作戦通り、テリーが鉄球で敵を砕いた。
「これで終わりだ!」
砕かれた氷の破片が飛び舞う中にレイはアスタに向かって、跳んだ。心剣である三節崑を頭上に振り上げ、アスタの頭に向かっておもいっきり振り下ろした。
「うがっ!」
頭を殴られたアスタはそのまま地面に倒れることになった。
「そっちも終わったのか」
「ミラたちも無事に倒せたんだね」
ミラたちが相手したクレイマンも氷の破片となっていた。
レイとミラを呼ぶ声が聞こえた。
「先輩ー。ミラちゃーん」
「ルリ! 無事だったんだね」
「もう終わったんですね」
レイとルリが再会を喜んでいるとアオイとプリマがあることを不思議に思い、そのことを話し合っていた。
「プリマ、妙だと思いませんか?」
「何がです?」
「アスタの目的が至高のゴーレムを作ることだと言っていました。彼にゴーレム作りの趣味がありましたっけ?」
「なかったはずです」
「アスタのバカは力に眩み、俺たちの洗脳をした。分不相応なことをするからだ。あいつはその罰を受けたんだ」
「そうだな。この器では無理があったようだ」
「そうそう反省しろよ……って、えっ!?」
ミドが聞き覚えある声に振り向くと倒れていたアスタは立ち上がり、空中に浮かんでいた。
「まだ、立ち上がれたのか」
「使えない道具はゴミでしかない」
アスタの体から力が抜け、地面に落ちた。残っているのは道標である矢だけが浮かんでいる。
「これからは私が天に立つ」
アスタの声ではなく、道標がしゃべっていた。それを見た英雄たちは驚きを隠せなかった。
「先輩、道標がしゃべっていますよ」
「何が起きているんだ?」
(どこかで聞いたことがあるような声だな)
「起これ、共鳴!」
空に浮かんでいる道標がそう言うと体が輝きだした。それに応えるかのようにレイのリトス、ミラのカルドラボーグ、ルリが持っている道標も輝きだした。その光は辺りを白く染めていった。
その白が無くなるとそこにはいなかった2人が立っていた。1人はレイたちの前に立っており、彼らがよく知っている赤髪の獣人の男性だった。もう1人は誰も知らない人物でルリのそばにおり、黒髪の男性だった。
レイは赤髪の男性の名前を口にした。
「シュガー……」
「私を知っているのか。まあ、どうでもいい。久しぶりだな、ナイア」
「500年ぶりだね、シュガー」
「久々におしゃべりがしたい気分だ」
「もしかして、俺たちが知っているシュガーじゃない?」
目の前に現れたシュガーはレイ、ミラ、ルリが目に入ってないかのような振る舞いだった。レイはそのことに違和感を覚え、その結論に至った。
「自己紹介でもするか。私は五大英雄の獣人のシュガー。これから、世界の頂点に立つ予定だ」
「レイ・シルバです」
「あたしは花人のルリ・ブリュスターです」
「こんな自己紹介をしてる場合か! お前たちの目的は何だ!?」
ミラはそう言うとシュガーは目的を答えてくれた。
「非常にせっかちだな。私は非常に気分がいい。何が知りたい?」
「目的と道標、それにこのナイアという男についてだ」
「いいだろう」
シュガーは語り始めた。
「私の目的は英雄たちに変わり、世界を管理することだ。そのナイアという男は勇者だ」
「勇者?」
「知らないかもしれないが、英雄以外にも英雄と同じように選ばれるものがいる。それが勇者だ」
「英雄以外にもそんなのがあったんだな」
ミラは意外そうな顔をしていた。続いて、道標の説明を始める。
「道標とはリトスを参考にして作られたものだ。それゆえに適性があるものが持てば、フィデスが使えるようになる。しかし、道標とリトスの最大の違いは神の魂で出来てないため、フィデスから先に行くことができないという点だ」
「神の魂の代わりに入っているのが英雄たちの魂が入っているのかな?」
「レイ君、その通りだ。道導の中にいる英雄と波長が合うものに声が聞こえるという仕組みだ」
レイはシュガーの説明を聞いて、今までの出来事に納得ができた。英雄ではないウエボが道標を手にすることができたのはナイアという男と波長が合ったためであろう。
「聞いておいてなんだけど、なぜペラペラとしゃべっているんだ?」
「人は努力が実ったら、その過程を話したくなるものだ」
シュガーは目を伏せ、今までのことを振り返っていた。
「こうして、具現化するにはリトス、道標、カルドラボーグの3つが必要だったからね」
「それらを集めるためにムストが消えるという事件を起こしたのか」
「そうだ。敵対する前に1つ聞こう。私の部下にならないか? 思いのままに世界を支配するのも悪くないぞ」
「お断りします」
「……そうか」
「寝言を言っているんじゃねーぞ」
ミドはシュガーに距離を詰めるが、2人が交差したとき、ミドの腹は手刀で斬られ、血を吹き倒れた。
「今の私はとても弱い。そのためにアスタ君にこれを作らせたのだ」
シュガーはゴーレムの前に立つ。自分が持っている道標をゴーレムに埋めると彼の体は光となり、それもゴーレムに染み込ませていく。するとゴーレムは動き出した。
「さあ、戦いを始めよう」
シュガーは魔術を唱えるためにマナを取り込み始めた。
ナイアがレイたちに話しかけてきた。
「現英雄たちよ。あのシュガーは別に倒しても大丈夫だ。道標から出てきただけだから、倒しても君たちが知っているシュガーに影響はない」
「あなたは一緒に戦ってくれないんですか?」
「今の僕はシュガーと同様に力を失っている。しかも、勇者の証がない以上、戦力にならない」
「さて、行くぞ」
レイたちに狙いを定め、黒色の破壊光線をシュガーから放たれる。それは洞窟全体を埋め尽くされるほどの大きさだった。
「全員、何かしらの魔術で放つんだ!」
ミラがそう叫ぶとルリを除いた4人が魔術を放つ。結果は多少、相殺できただけで終わった。
黒色の破壊光線により、全員が地面に背をつけることになった。
「何とかなったな……」
ミラとレイが体を起こし、安心していると2回目の破壊光線が放たれた。
「ははっ、もうどうにもならないな……」
「俺は最後まで諦めない。守るために」
レイが覚悟を決めると自分の中に何かが目覚めるのを感じた。彼にはその感覚に覚えがあった。
「これが最後の1発になるだろう」
シュガーがそう呟くと自分の身に起こっている変異に気付いた。
「ん? これは?」
鉱石で出来ているゴーレムの体がほんの少しだが、風によって崩れていることに。そして、その風がある一点に集まっていることに気付いた。
「何が起きているんだ?」
レイの回りには風が集まっていた。レイを中心にし、小さな竜巻になっていた。彼は大量の風を圧縮し、1つの風弾にした。それを破壊光線に向けて、撃った。すると黒色の破壊光線とぶつかり、完全に相殺した。
「これが俺のフィデスだ!」
「なるほど。風を操るフィデスか。くだらない、そんなものはいくらでも替えが効く。奇跡は1度しか起こらないぞ」
再び、黒色の破壊光線が放たれる。それに対し、レイはフィデスを発動させる。さっきほどとは比べ物にならないほどの勢いで手の平に風を集めていく。それと同時にシュガーの体の一部が細かい土へと変わっていった。
(まさか……これが本当のフィデスの力か)
闇と風の対決は闇が勝った。闇がレイたちに襲い掛かるが、レイがフィデスを発動させると風と共に闇もレイの回りに集まる。風と闇は1つになり、黒い風となる。
「奇跡は1度だったね。じゃあ、2度目はなに?」
「調子に乗るな!」
レイは黒い風を風弾にし、相手に放つ。それに対し、シュガーは黒色の破壊光線が風弾に向かって、放たれた。それは今までで最大の威力だった。破壊光線は風弾を押していく。その時、シュガーの体であるゴーレムの右腕があまりの出力の反動で壊れた。
「今だ!」
フィデスを発動させるレイ。彼は自分のフィデスを少しだが、理解できていた。
(俺のフィデスは周囲のエネルギーを自然界に存在する風によって、吸収し、それを操る能力だ)
レイの回りにはミラ、ルリ、プリマ、アオイの4人がいた。悪いと思ったが、彼女らの魔力を風によって、吸収した。その風に加えて、別に集めていた風も合わせて、大きな風弾を1つ作り上げた。
「これで終わりだ!」
大きな風弾を破壊光線に当て、押し返していく。シュガーはさらに噴出を上げようとするが、それに比例して、ゴーレムの体が壊れていく。壊れるたびに破壊光線の威力は下がっていった。
「くっ」
「いっけー!」
風弾は破壊光線を打ち破り、ゴーレムの体が砕かれていく。残ったのは道標だけだった。レイとミラは近づき、ミラが道標を手に取った。
「これで終わりか……」
「そうだ、これで終わりだ」
「ん?」
道標の中にいるシュガーにミラが話しかけると妙なことを言い出した。
「もしかして……転生体か……?」
「転生体?」
「まあ、今の私にはどうでもいいか」
道標はミラの中に溶け込むようにして入っていった。
そばにいたナイアが話しかけてきた。
「ようやく、終わったか。僕はレイの中に行くかな」
「声に聞こえる理由は分かりましたけど、中に入るのはどういう仕組みですか?」
「声が聞こえるのは波長で中に入るのは相性かな? 英雄や勇者でもない人の中に入ったら、大変だし」
「勇者とはなんです?」
「英雄と同様、世界を守るものだよ。おそらく、選ばれているだろうから、喧嘩はしないで。じゃあ」
レイと話し終わるとナイアの姿は消え、道標に戻った。それはレイの体の中に入っていった。
地響きが鳴り響いた。
「なんだ、これは?」
「たぶん、町が地上に戻ろうとしているんだ」
地響きと共にレイたちの体も光に包まれた。次、気が付いた時には地上に戻っていた。
地上では太陽が山から顔を出し、夜が終わり、朝を迎えようとしていた。
「終わったんだね」
「そうですね」
「町長として、お礼を言わせてください。ありがとうございます」
プリマにお礼を言われるが、レイは遠慮がちにそれを否定した。
「英雄が引き起こしたような事件だから……」
「それでも、英雄として助けたのですから、誇るべきだと思います」
「ありがとうございます」
「これからはどうなされるんですか?」
「とりあえず、町でゆっくり休みたいです」
「そうですね。頑張りましたしね」
戦いで溜めた疲れを取るためにムストに向かうレイたち。
こうして、一晩で消えた町ムストの事件は道標により引き起こされ、英雄たちによって解決された。




