冒険の終わり、別れ
前回のあらすじ
無事に都市ルークスへと着いたレイたち。
そこでトラブルを巻き起こした戦人のアスラと人のミラの2人の英雄を仲間にした。
最後の仲間、竜人のリアマを探すべく情報を集めていたが、魔獣が活発に動いているという噂を聞いた。
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シュガーたちは先に戻っていたらしく、席に座って、レイたちのことを待っていた。そこに3人で座っており、リアマと呼ばれる女性の姿は見当たらなかった。合流し、得た情報をお互いに交換した。
「リアマさんは見つからなかったね。」
「そこはあまり心配しなくていい。あいつは強いからな。それにしても、魔獣か」
「こちらでも、そんなこと言っていた人がいたよねー」
「魔獣が集団なら、おそらく、裏で操っている奴がいるな」
シュガーもアモルと同じ意見だった。
「そいつは何が目的なんだ」
「さあ、それは本人しか分からん。どちらにしてもろくなことじゃない」
「集団で行動している場合、どこかを拠点にして動いているはずです。そこを手分けして、探しましょう」
「そうかな。たまたま魔獣が大量発生していて、縄張りを取り合っているだけかもよ」
ルキスは違う可能性を想定し、意見を述べた。それに対し、アモルが反論した。
「それなら、村の時みたいに外で見られるはずです。しかし、魔獣は町の中でも見られると情報があったため、それはないと思います」
「俺もアモルと同意見だな。しかし、ルキスの意見も頭の中に入れとく必要があると思う」
「そうだな。拠点があるという先入観に問われる危険性がある」
レイたちが話し合いをしていると外から人の悲鳴が聞こえてきた。外に出て、何があったのか確認するために人に話しかけた。
「なにがあったんですか?」
「魔物の集団が出てきて、人が襲われているんです」
「馬鹿な。ここは町中です。魔物が入ってくるとは考えにくい」
「確かに考えにくいが、魔獣が操っているなら、納得がいく」
「おい、魔物はどこにいるんだ」
「あちら側です」
そう言い、左手を上げ、道を指した。アスラはそれを確認すると走っていった。レイたちもアスラを追いかけるために走っていった。
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アスラたちは走り、魔物たちが現れた現場に着いた。そこには魔物は立っておらず、すべて倒されていた。代わりに槍を持っている女性が立っていた。
「遅いな」
女性はそう言い、こちらに振り向いた。
「これはすべてあなたが?」
「そうだ」
「あ、リアじゃん。やっと会えたな」
「ということは君がリアマさん?」
「そうだ」
リアマと呼ばれた人の瞳は緑だった。髪の色は赤でシュガーの髪と比べるとちょっと暗みが混じったような髪だった。長い赤い髪はツインデールにしており、服は髪と同様の色をしており、白いミニスカートをはいていた。その赤い服の上に同じ色のマントを羽織っていた。
レイの目に最初に入ったのはリアマの胸だった。その胸はアモルより大きかった。アモルが決して小さいわけではない。リアマのほうが大きすぎるのだ。
「ということはお前たちがシュガー以外の選ばれしものか」
「そうだ」
「シュガーとそこの天人と戦人以外は戦えるのか」
「自分の身ぐらいは守れるよ」
「なら、いいが。これから、どうする?」
「もちろん、追跡します」
「方法はあるのか」
「さっきから、変なにおいがする。おそらくこの魔獣はにおいを使い、魔物を操っているに違いない。ついてきてくれ」
シュガーは獣人の特有の鼻の良さでにおいをかぎ分けた。シュガーの歩く後をレイたちも歩く。
そうすると町の壁に当たり、そこに大きな穴が開いていた。
「魔物たちはここから入ってきたんだろう」
「ここから、また追跡を頼む」
リアマがそう言うとシュガーたちは町の外に出て、追跡を再開した。外は夜だったため、回りが暗く見えづらかったが、それでもシュガーはにおいを頼りに追跡した。追跡し、しばらくした後、シュガーは足を止め、口は開いた。
「まずいな」
「ああ、囲まれているな」
魔物たちはシュガーたちを囲むように近づいてきていた。
「どうする?」
「俺とリアマ、ルキスで魔獣を倒しに行く。レイたちはここで応戦してくれ」
シュガーが北西の方向に走り出した。リアマ、ルキスはシュガーの後を追いかけるように走った。途中、魔物たちはシュガーたちに襲いかかったが、シュガーは魔術、リアマは槍、ルキスは剣で追い払った。
「さっそく、つかうか。フィデスを」
「フィデスって、なんだそれ」
「レイ、気を付けてください」
レイは深呼吸をした。前、制御できなかったが、今度は制御できるようにと気持ちを持ち、叫びながら、鍵を胸に刺した。
「フトールム・フォルテ!」
そうするとレイの姿は光に包まれ、金髪であり、褐色肌のフォルテに変身していた。
「数だけか。まあ、肩慣らしにはなるだろう」
「レイ、大丈夫ですか?」
「今の俺はフォルテだ。アモル」
アモルの名前を呼ぶとアモルの前に手をかざし、黄金の剣を抜いた。
「胸から、剣が出てきた」
「これが俺の異能力アニムスだ。さあ、おまえら、俺の足を引っ張るなよ」
フォルテたちは戦闘態勢に入り、魔物たちに立ち向かった。
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フォルテたちが戦っているころ、シュガーたちは魔獣を追跡していた。
「シュガー、まだか」
「もうすぐだ」
シュガーは魔獣の姿をとらえた。魔獣の周りには自分たちを守らせるためか、
10匹ぐらいの魔物がいた。
「リアマ、魔獣を頼む。俺とルキスは周りを片付ける」
「分かった」
リアマは真直ぐ、魔獣のところに走っていた。シュガーは右手で刀を手に取り、魔物を斬り捨て、左手から炎の魔術を出し、焼き殺していた。ルキスは右手で剣を持ち、魔物を斬っていく。
リアマの手には槍が握られており、魔獣の頭を目掛けて、槍で突いた。魔獣は避ける暇もなく、頭を突き抜かれた。
「さすが、リアマだな」
「まさに早業だね」
「たいしたことではない。シュガー、お前はどう思う?」
「魔物たちに周りを囲まれたことといい、おそらく、魔獣は俺たちがここをやってくることを知っていたと思う。魔獣は数で攻めることが多く、囲むなどといった戦略は取らないことが多い。これらのことから、魔獣を操っているものがいるに違いないだろう。魔物だと全部操らなければならないが、魔獣を操ることで操る数を減らすことで精度を上げつつ、操れる数を増やしたんだと思う」
「下手に知能を持ったことが裏目に出たんだね」
「頭を叩かないとな。戻ろう」
リアマたちはまだ戦っているであろうレイたちのところに向かった。
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しかし、もう既にレイたちはすべての魔物を倒していた。
「マジで数だけだったな」
「雑魚はいくら群れようが雑魚だ。もう時間か」
フォルテの体が光り、レイに戻った。
「レイ、大丈夫ですか」
「大丈夫だよ」
「レイ、お前、面白い体しているな。それにしてもミラはもうちょっと戦えよな」
「昨日までただの一般人に無理言うな」
「これから、大丈夫なのかよ」
「レイみたいにフィデスがあれば、戦えるようになるだろう。たぶん」
今の戦いの感想を言い合っているとシュガーたちが戻ってきて、さきほどのシュガーが考えを伝えた。
「やはり、裏から糸を引くものがいましたか」
「アモル、拠点になりそうな建物、辺りにある?」
「近くに廃墟が2つほどあります」
「それなら、近場から当たって行くぞ」
近くの廃墟から調べていくことになり、そこに向けて、歩いて行った。
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「レイ、フォルテになっている時はどんな感じですか」
「まず、俺の意識は明確にある。しかし、フォルテの意思で動いているんだ。フォルテもある程度、俺の意見を聞いてくれる。二重人格みたいなもんだと思う。集中すれば、フォルテと会話することもできるよ」
「なあ、フィデスって、どう使うんだ?」
「自分の場合はリトスを胸に刺して使う」
「フィデスは自分の思いが能力につながることが多いんだ」
「そうなのか」
シュガーが言った言葉について、レイは考えていた。自分のフトールム・フォルテは未来の魔王となった自分を呼ぶ能力である。確かに自分から新たなことに挑戦する度胸がなかった。それが自分を変えたいという思いにつながって、この能力になったのではないかと考えた。考えごとをしていたら、シュガーが妙なことを言い出した。
「そういえば、リアが入ってきて、自己紹介してないな。これが最後の自己紹介になるし、本格的にやろう」
「本格的にって、何すればいいの?」
「なら、自分の名前とリトスの形と色を絶対に言うこと、あとは自由に言おう」
こうやって、最後の自己紹介が始まった。
「ボクからいくよ。ボクの名前はルキス・ペリペティア。年齢は15才でリトスはピンク色のブローチだよ。出身はソルムの山奥の村だよ。さまざまな魔具などを集めたいのと自由でありたいから、冒険者をやっているよ」
「次は俺だ。戦人のアスラ・グロスヤだ。18才でリトスは首にかけている水色のネックレスだ。この旅で達成したい目標は俺が最強であることを証明することだ。出身はアクアだ。次は頼んだぞ。ミラ」
「私はミラ・ピラン。リトスは金色のブレスレット。17才で出身はアクアだが、魔術の学校に通っているから、今はルークスに住んでいる。得意な魔術は水だ。ジュリアにバトンタッチだ」
「私の名前は竜人のリアマ・フォン・イグニス。19才。リトスは緑色した懐中時計。出身はイグニス。あとは頼んだ。シュガー」
「名前は獣人のシュガー・シャルロット。リトスは赤色した指輪で年齢は20だ。魔術連盟に所属している魔術師で得意な魔術は火だ。目標は魔法である瞬間移動を究極魔法にすること。パス、アモル」
「私の名前はアモル・リベラです。年齢は16才でリトスは黒色のロザリオです。出身はルークスで目標はすべての種族が手を取り合い、助け合う時代を作ることです。最後は頼みました。レイ」
「レイ・シルバだ。年齢は16才で出身は異世界。リトスは銀色の鍵。まだ来たばかりで分からないことばかりだが、よろしく」
レイが出身は異世界というとアスラ、ルキス、リアマ、ミラが少し驚いた顔をしていた。ルキスは異世界に興味がわいたのか、レイに質問した。
「ねえ、レイ。異世界って、どんなところ?」
「様々な国があって、こちらでいう人間しかいない。あと、魔力などといった特別な力がないから、魔術がまったくない」
「不便そうだね」
「その代わり、機械が発展していると思う。こちらでは機械とか見かけないから」
「機械かー。こちらにもあるけど、確かに数は少ないね。そっちの世界はロマンがあるね。ロマンが。その世界に帰るとき、連れていって、お願い」
「帰る方法が分からないな。そういえば」
「こっちで私たちと過ごしましょう。レイ」
「廃墟が見えた。お前たち、気を引き締めろ」
朝日が見え始めたころに廃墟に着き、リアマの言葉でレイたちは気持ちを引き締めた。
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「いるな」
シュガーは廃墟を観察していた。入り口には魔獣が1匹立っており、魔獣が出入りしていた。そして、廃墟の中から、魔力が感知できた。これらのことから、魔獣を操っている者は間違いなく、ここを拠点しており、ここにいると確信した。自分の目で確認したことと考えをレイたちに伝えた。
「どうやって、侵入する?」
「二手に分かれよう。魔獣を引き付ける役と操っている者を倒す役に」
「どう分かれる?」
「俺とレイとアモルとミラで侵入しよう。後は引き付け役を頼む」
「分かった。行ってくる」
アスラがシュガーのグループ分けを聞くと廃墟の入り口に向かい、走り出した。それに気づいた魔獣が声を上げ始め、中にいる仲間に知らせようとしていた。
アスラは入り口にいた魔獣の首をつかみ、声を出せないようにした。首をつかんだ手に力を込めたが、なかなか千切ることができなかったのか、さらに力を込めた。そうすると魔獣の首を千切ることができた。しかし、首につかむ前の声を聞きとっていたのか、入り口から魔獣たちが出てきた。
「来いよ。俺を楽しませろ」
「あのバカが」
「こうなったら、やるしかないよね」
リアマとルキスはアスラに加勢するために入り口に向かって、走った。その後ろをレイたちが追いかけて行き、入り口から廃墟の中に侵入した。
廃墟の中はアスラたちが魔獣たちを引き付けてくれたおかげで見かけなかった。
「こっちだ。」
シュガーはそう言った。彼は魔力を感知し、操る者の場所を探り当てていた。それを頼りに追いかけていた。廃墟の奥に進むと1つの人影が見えた。
「何の用かな」
「お前を倒しに来た」
「それは困りますね。まだ、目的が果たしていない」
「あなたの目的とは何ですか。それは魔獣を使ってもやることですか」
「真の平和を人に与えることです。かつてのテスラのように」
「寝言は牢に入ってから言え」
シュガーが瞬間移動で近づこうとしたら、魔獣が襲い掛かかり、シュガーは手から火を出し、火の壁を作り、魔獣を近づけないようにした。
「この中ではあなたが一番厄介ですね、シュガー」
男は走り出し、さらに奥に入っていった。それと同時に魔獣たちがレイたちに襲い掛かってきた。
「レイ、アモル、奴を追え。ここは俺とミラがやる」
「分かった。行こう、アモル」
レイがアモルに呼びかけ、2人は男を追いかけるために走り出した。
「大丈夫なのか。これ」
「頑張れよ、ミラ」
シュガーが前に立ち、ミラは後ろに下がり、魔術を唱え始めた。
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レイとアモルが男を追いかけていき、廃墟の最深部に入った。男はそこで足を止めていた。男の回りには魔獣が2匹、石像が1体いた。
「しつこいですね」
「お前が逃げるからだろ」
「私は争いを好みません。さきほども言ったように人に真の平和を与えるのが目的ですから」
「魔獣を使い、人々を襲わせている。お前の行動は矛盾している」
「かつて、大きな争いがありました。その時代の人は平和の大事さが分かっていたでしょう。しかし、今はそのような争いはほとんどない。当たり前のように平和に過ごして、平和の価値を理解していない。だから、人を不幸にして、平和の大事さを分かって貰いたいのです。大事さが分かれば、大切にしてくれると信じていますから」
「平和の価値が分からせるために魔獣を使い、人を襲わせて、不幸にしていい道理はないです。犠牲の上で成り立つ平和は偽物です」
「この世は犠牲の上で成り立っていると考えています。考えを理解してもらえないようですね。これは戦うしかありませんね。せめて、死にゆくものにわが名を。わが名はハン・ハーベン」
「レイ、戦う準備を」
レイは鍵を取り出し、胸に刺し込み、フォルテに変身した。フォルテは自分の胸に手をかざし、胸から白い槍を取り出した。ハンの周りにいる魔獣はレイを、石像はアモルに襲い掛かる。
「簡単に死ぬなよ」
フォルテは魔獣に向かって、槍を突き刺した。魔獣は予想をしていたのか、それを避け、槍を掴み取った。もう1匹の魔獣がフォルテに襲い掛かる。魔獣を右手で殴り、壁に殴り飛ばした。そして、槍を魔獣ごと持ち上げて、勢いよく地面に叩きつけた。叩きつけられた魔獣はもう動いてなかった。
「1匹、終わった」
槍を魔獣から抜き取り、壁のほうにいる魔獣に向けて、走り出した。フォルテは勢いをつけ、足を前に出し、魔獣の頭を踏み潰した。
「足が血で汚れてしまった」
一方、アモルが相手していた石像は石で作られていたため、剣ではなかなか傷つけることができなかった。そこでアモルは天術を使うことにし、戦いながら、右手に天力を溜めていた。溜め終わると石像に向かい、右手を差し出した。
「安らかに眠りなさい、天撃」
右手から放たれた天力は石像の左手と頭を残し、貫いた。石像は動かなくなり、活動を停止した。
「時間稼ぎは十分ですね。永遠の闇の中で眠りなさい」
ハンは魔獣たちが戦っている間に闇の魔術を発動させる準備をしていた。闇の魔術を光線ようにして、レイに向かい放った。
「あいにくだが無駄だ。こいつは暴食でなんでも喰う」
放たれた黒色の光線が槍に飲み込まれていく。どんどん黒く染まっていき、飲み込み終わった槍は漆黒に染まっていた。
「ほら、返してやる」
槍の先から、黒色の炎をハンに向けて、放った。漆黒に染まっていた槍は黒色の炎を放たれる量に比例して、綺麗な白に戻っていく。
「テスラの意思に栄光あれ」
ハンはそう言い、黒色の炎に飲み込まれていった。
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シュガーとミラは魔獣たちを殲滅していた。ミラが水の魔術で氷を作り出し、それを利用して、戦っていた。基本的にはミラが氷で魔獣を足止めし、それをシュガーが止めを刺していた。隙ができれば、ミラも氷を棘状にし、魔獣たちを突き刺していた。
「片付いたな」
「シュガー、危ない!」
シュガーは全員片付け終わったと思っていたが、まだ1匹残っていた。魔獣が後ろから、シュガーを襲いかかろうとしていた。
ミラは今の戦いで魔力がもう無くなっていたが、それでも、右手を伸ばした。そのとき、自分の中で新たな力を感じ、すぐさま、その力を右手に集め、放った。襲い掛かろうとした魔獣に当たり、後ろに下がった。
シュガーは後ろに振り返り、魔獣を刀で斬り捨てた。
「ありがとう、助かった。今の天力だよな。どうして、ミラが使えるんだ?しかも、目の色が金色になっているが」
「分からない。いきなり、自分の中で魔力以外の6つの力を感じて、それを適当に集めて、撃っただけなんだ」
「6つ。天力、竜力、闘気、翼力、魔眼、異能力。そして、神が持つといわれている神力。おそらく、ミラのフィデスだろう」
「私の?」
「種族が持つ独自な力である魔力、天力、竜力、闘気、翼力、魔眼、異能力の7つの力を使えるようになることがミラのフィデスだ。おそらく、それに応じて魔力も増えているだろう」
「そうか」
ミラがそう答えると金色の瞳が元の青の瞳に戻っていった。
「歩けるか。レイたちを追いかけるぞ」
「大丈夫だ」
2人は廃墟の最深部に向かって、走り出した。
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ハンは廃墟の外に押し出されてしまっていた。ハンの体はフォルテの攻撃によって、ボロボロになっていた。
「なんとか生き延びないと。平和を与えないと」
魔獣が2匹そばに寄ってきた。
「良かった。こいつらを操れば、どうにかなる」
しかし、魔獣を操ることができなかった。フォルテの戦いのせいで魔獣を操る魔力がもう尽きていたからである。
2匹の魔獣は叫びながら、ハンの体を食いちぎっていく。その叫びは犠牲になった魔獣たちに知らせるかような叫びだった。
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フォルテはレイに戻っていた。魔獣の惨状を見て、つぶやいた。
「やり過ぎたな」
「やり過ぎましたね。しかし、仕方ないことだと思います。相手も私たちを殺そうとしていました。やらなければ、こっちがやられていました。やり過ぎだと思いますが」
「そういえば、ハンはどこに行った」
「あの傷では遠くに行ってないと思います」
そう言っているとシュガーとミラは廃墟の最深部に着き、レイたちと合流した。
「やったな。レイ」
「何が?」
「あの男を倒したんだろう。魔力はもう感じないからな」
「しかし、死体を確認していないんです」
「まあ、大丈夫だろう。生きていれば、魔力を感じているはずだしな。もう感じていないから、死んでいるはずだ」
「それにしても、ひどいな。魔獣の頭はないし、壁には穴が開いてるし」
「アスラたちを早く助けに行かないと」
そう話し合い、廃墟の入り口に向かって、走り出した。
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アスラたちは手こずっていた。負けはしてなかったが、魔獣が魔物たちを統率して、アスラたちに襲い掛かっていた。数が多かったことでいくら倒してもきりがなかった。
「数だけの雑魚どもが」
「数で押す戦いか。厄介だな」
戦い続けたことで疲れが見え始めていた。そのとき、遠くから、魔獣の叫びが聞こえた。その叫びを聞いた魔獣と魔物たちは背を見せ、逃げ始めた。
「いきなりなんだ。追いかけるぞ」
「いや、逃げてくれるならそれでいいよ。ボクらの目的はあくまで廃墟の中に入らせないことだよ」
魔獣たちが逃げ出しているところを見ていると廃墟の入り口からレイたちが出てきて、ルキスたちと合流した。
「無事にたおしたよ」
「だから、魔物たちが逃げたのか」
「やりましたね」
「とりあえず、ルークスに帰ろう」
こうして、黒幕を倒したことで事件を解決し、最初の物語が終わった。レイたちはルークスに向け、歩きだした。
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レイたちは無事にルークスにたどり着き、宿の食堂の席に座っていた。
「とりあえず、解決したな」
「レイはこれから、どうしますか。異世界から来たわけですし」
「選ばれた英雄としての使命を果たしつつ、とりあえず、元の世界に帰る方法を探すことにするよ。まだ、この世界のことは分からないことだらけだけど、この世界に残るにしても事情を説明するためにも一度帰らないといけないからね」
「みんなはこれからどうするの?」
ルキスはみんなにそう尋ねた。彼らは事件を解決するだけためにルークスに集まっただけだからである。
「とりあえず、住む場所かな」
「なら、レイ。私の家に来ませんか」
「いいの?」
「もちろん」
「俺は宿屋でいいとして、金稼ぎだな」
「俺とリアは知り合いのところかな」
「私は元々ここに住んでいる」
レイはアモルの家に世話になることになった。ルキスとアスラは宿屋に泊まり、シュガーとリアマは知り合いの家に世話になることになった。
シュガーとリアマは席から立ちあがり、みんなに別れの言葉を言った。
「じゃあな」
「また、あえるよな?」
「もちろんだ。次、集まるときはリトスが教えてくれる。」
レイとアモルも立ち上がり、みんなに別れの言葉を言った。アモルの家に向かった。
こうして、レイの異世界での最初の物語は選ばれた七人が集まり、力を合わせて、事件を解決し、終わった。