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神に選ばれし英雄の異世界物語  作者: 甘味神宝
五大英雄ともう1人の英雄
24/86

天使VS英雄

種族について・戦人

戦うことを好む種族。この種族の共通点として、黒髪黒眼で若者である期間が長い。80歳ぐらいになると老い始める。

独自の力は闘気であり、ほかの種族より身体能力が高い。闘気は他の種族でも使えるものが多いが、この種族は闘気を増幅させる技術を持つ。また、戦いが好きなため、数が少ない。

レイたちが冒険しているところをヴァン大陸と呼ばれているが、戦人はアース大陸出身であり、ある理由でヴァン大陸に移住してきた。



前回のあらすじ

新たな英雄である花人のルリを仲間に迎えたレイ。2人は道標を探すが、その裏ではかつての英雄と天使が集まりつつあった。


****


 トルトニスにいるレイの1日はテントで始まっていた。

 食事などはラーパの家で取っていたが、寝る場所はラーパが貸してくれたテントで寝泊まりするように言われていた。

 レイとルリは道標を探すべく、ルリに聞こえてくる声を頼りに探していた。


「こっちですね」

「頼りしているからね」

「任せてください。それにしても妙ですね」

「何が?」

「その道標から聞こえてくる声が昨日と比べると動いているような気がします」

「早くそこに行った方がいいね」


 ルリの案内を元に道標がある場所へと向かっていった。

 一方、シュガーは旅館の部屋におり、部屋にはエクレール、イディナ、リリィがいた。彼は自分が持つ感知能力でレイたちの行動を把握しており、その行動に疑問を抱かされていた。


「なんで、レイはルークスに帰らない?」

「道標を探しているのではないか」

「あると知らない物を探せるはずがない」

「昨日、我が言ったし」

「……納得がいった」


 イディナの話を聞き、レイの動きにシュガーは納得した。リリィがあることを訪ねてきた。


「シュガー様って、いろんな人に道標を探すように言っているのはなぜなの?」

「英雄たちに強くなってもらうためだな」

「道標って、シュガー様に必要な物なんでしょう。万が一、第三者に集められたらどうするの?」

「リリィ、それは絶対にない。道標は俺の元に集まるようになっている。そういう運命になっている」

「ふーん」


 次にシュガーはエクレールに声を掛けた。


「エクレール、この近くでベテルギウスを見たんだな?」

「はい、そうです」

「ベテルギウスも道標を探しているかもしれない。エクレールとイディナはレイたちを追ってくれ。俺は状況に応じて、瞬間移動で行く。リリィはここで待機だ」

「追いついたら、何をすればいい?」

「当初の目的通り、道標を回収だ。だが、ベテルギウスが来ると思う。そのときはレイたちを守ってくれ。ベテルギウスとは俺が戦う。というより、俺じゃないとあいつは倒せない」

「分かった。任せとけ。行くぞ、エクレール」


 イディナはエクレールを連れ、外に出ていった。シュガーはかすかな笑みを作っており、それを見たリリィは疑問に思い尋ねた。


「シュガー様、頭でも打った?」

「違う、うれしいんだ。懐かしい仲間に会えることが」


****


 レイたちは道標の方へと向かっていた。レイはその最中にルリの種族である花人について、尋ねてみた。


「ルリの種族である花人って、どんな種族?」

「まあ、知らないですよね。あたしもほかの花人と会ったことがありませんし」

「数が少ないの?」

「それもあると思いますが、森の中に住んでいるので他の種族と関わることが少ないのが原因だと思います」


 花人は精霊と同じように自然から生まれる種族である。樹人が樹から生まれるなら、花人は花から生まれる。彼らは他の種族と関わることが少なかった。

 続いて、ルリは花人の説明をした。


「あたしたち花人は種族の力は魔薬と呼ばれています。体内であらゆる成分を生成することができます。この成分はいろんなことに使うことができます」

「例えば?」

「治療の手助けや毒を作り、攻撃することですね。毒を使うと同時に自分に解毒作用あるものを作らないといけませんから、大量には作れませんけどね」

「なるほど」

「……あれ?」


 道標から声を聞いていたルリはある違和感を感じ取り、それをレイに伝えた。


「先輩、道標から聞こえてくる声が動いています」

「誰かが拾ったかも……。先を急ごう」


 先を急ぐと異様な雰囲気を感じさせる場所へと入った。一見、異空間に入ったと勘違うほどだったが、景色そのものは変わっていなかった。その雰囲気はレイに声が聞こえなくとも近くに何かがあると感じさせていた。


「この近くに道標がある」

「……声が聞こえてきたんですか?」

「いや、雰囲気で分かる」


 道標がある場所にレイとルリがたどり着くと先客がいた。その先客にレイは会ったことがあった。


「なぜ、君がここに? ウエボ」

「声が聞こえたから来ただけだ」


 そこにいたのはウエボ・プロテンだった。ウエボとレイはボースハップンの時に決闘をし、レイが勝利した。

 ウエボの手には道標である矢が握られていた。


「ウエボ、手に持っているものを渡してくれないか」

「決闘をして、勝てたら渡してやる」


 レイはこのまま説得しても変わらないだろうと悟り、リトスを心剣へと変えていく。


「ルリは手を出さないで」

「分かりました」


 レイは白いマスクを着け、黒い剣を右手に持つ。ウエボは左手で剣を持った。

 互いに踏み込み、先にウエボが剣で振り下ろしたが、レイは剣で受け止める。剣で打ち合うが、傷つけることはできなかった。


「今回は変身しないんだな」

「自力で戦うことにしたんだ」


 先にダメージを与えたのはレイだった。ウエボの剣を前にマントを出すことでずらし、彼に傷を入れることができた。ウエボはレイと距離を取った。


「変身しなくても強いんだな。そろそろ手に入れた力を使うか」


 ウエボの右手を脇の下に持ってきた。レイに向かって、右手を勢いよく前に出した。するとレイの腹に見えない何かが当たり、鋭い痛みが襲った。当たったものにレイは予想がついた。


「これは衝撃波!?」

「これが俺の奇跡(フィデス)か」

「フィデス!? フィデスは英雄にしか使えないはず!」

「この矢のおかげだ。この矢が俺に力を目覚めさせてくれた」

(手に入れたのがウエボだったから良かった。けど、もし悪人の手に渡ったらどうなる?絶対に悪用される。そうさせないためにも集めなければいけない)


 今、レイとウエボは互いに距離を取っていた。ウエボは剣をしまい、両手を脇の下に持っていた。突っ張りのように手を連続で突き、大量の衝撃波がレイに襲い掛かる。

 それを必死に避けていくレイ。すべては避けられず、いくつかの衝撃波に当たり、痛みが襲い掛かり、動けなくなった。しかし、攻撃の手は緩まず、襲い掛かる。


「耐えれば、チャンスは来る」


 レイはマントで自分自身を纏い、亀の甲羅のようにこもった。それに異としてないのか、衝撃波は襲い掛かり、マントが少しずつ削れていく。

 この状況にレイは見覚えがあった。通じるかは分からないが、あのときと同じことをしようと思い、それを実行していった。


「亀のように籠っても勝ち目はないぞ。もう少しだな」


 衝撃波の攻撃を続けたことでついにマントがはがれ、レイの体が外へと曝された。その好機を見逃すウエボではなかった。


「もらった!」

「うぐっ」


 ウエボが放つ衝撃波にまともにレイの体に当たり、痛みで立ち上がることを難しくさせた。


「その痛みでは移動することも魔術を唱えることも難しいだろう。近づいてもいいが、念には念を込めよう。ここから衝撃波で止めを刺す」

「そんな冷たいことを言わないで……君から来てよ!」


 レイは上半身を起こし、白い帯状の物を引っ張りながら、そう言った。白い帯はウエボの左足に巻き付いており、それが引っ張られることでバランスを崩し、倒れることになった。その白い帯はレイがマントを帯状にし、こっそりと伸ばしていた。ウエボが倒れた後はマントを操り、レイは自分のところまで彼を引き寄せた。


「これでお終いだ!」

「ぐっ」


 レイの右手で握られていた黒井の剣の柄をウエボのみぞおちへと叩きつけ、気絶させた。

 決闘が見届けていたルリはレイのところに駆け寄った。


「先輩、派手にやられましたね」

「痛みでしばらく動けそうにないよ」

「そんな時はあたしの出番ですよ!」


 ルリは左手の人差し指と中指をレイの口の前に出した。


「痛みを和らげる薬と打ち身に効く薬を生成しました。指から吸ってください」

「えっ」


 いきなり指を吸ってくださいとルリは言われ、戸惑うレイ。そんな彼の心境をルリは察していなかった。


「さあ、遠慮なく吸ってください」

「……はい」


  レイはルリの細い指を口に咥え、吸い始める。彼女の指からにじみ出る液体は甘かった。


「あたしの能力は魔術と違い、本人の自然治癒力を高めるだけですぐには治せないんです。毒なども作れたりするメリットはありますけどね」


 ルリが話している間もレイは指から吸い取りながら、話を聞いていた。そのうち、彼女の指から液体が出なくなり、口から離した。薬を飲んで、しばらくすると痛みが引いていき、レイは動けるようになった。

 レイはルリにお礼を言った。


「ありがとう、ルリ。これで動けるようになったよ」

「どういたしまして」

「ウエボが気絶しているうちに道標を回収しないと」


 ウエボの懐から、レイは道標をみつけ回収した。


「これが道標……」


 道標は英雄でなくとも、その力である奇跡(フィデス)の行使を可能にした。それをレイは握っていた。しかし、彼の中から力に目覚めるような感覚はなかった。その理由にレイにはなんとなく察しがついた。


(もしかしたら、適性と条件があるかもしれない。ウエボはここには声が聞こえたからという理由で来た。結果、フィデスに目覚めた。道標で力に目覚めるのは道標から出ているという声が聞こえていることが条件かもしれない。声が聞こえていたルリなら……)


 レイはそう思い、ルリに道標を手渡そうとした瞬間。


「それは僕にくれないかな?」


 そこにはレイにとって、見覚えがある人物が立っていた。銀色の髪に赤い瞳、それに銀色の尻尾。


「……ペテルギウスさん」

「なんで、僕の名前を知っているのかな?」

(そうか。俺が本の中で会ったペテルギウスさんはあくまで精神の存在。ペテルギウスさん本人ではないから、この人とは会ったことがないんだ)

「まあいいや、とりあえず道標をくれないかな?」

「いやです」


 ペテルギウスに道標を渡すことをレイは拒んだ。アモルの予想が正しければ、事情は分からないが、英雄が戦わなければいけないと判断した相手であり、道標を渡せば何が起こるかが分からなかった。


「それなら、無理やりもらうけどいい?」

「こっちもあなたを倒します」

「絶対無理だよ。英雄とは戦ったことがあるし、何より負ける理由が見つからない。負けるとしたら、フィデスぐらいしかない」

「これを。あと、サポートをお願い」

「分かりました」


 レイは道標をルリに渡し、黒い剣を持ち直し構えた。そして、彼はペテルギウスのところまで走り、彼女に向かって振り下ろした。それに対し、何もしていなかった。結果、ペテルギウスに剣を当てたが、傷ついてなかった。ある違和感をレイに感じさせた。


(なにかがおかしい)


 2、3発さらに斬っていくが、彼女は痛がる様子すら見せなかった。レイの攻撃はペテルギウスに確実に当たっていた。


(攻撃が鎧とかで防がれているわけではない。確実に当たっている。しかし、効いていない)

「もういい? やっぱり、シュテルやセレネと比べると弱いね。まあ、英雄として成長しているから、まだまだこれからに期待ということなんだけど、ここで君たちの冒険は終わりだよ」


 ペテルギウスはレイの腹を力いっぱい殴り、ルリにぶつけた。そして、口を開け、光を集め始め、2人に照準を定めた。

 レイが動こうにもウエボとの戦い、それにペテルギウスの攻撃により動けなかった。


「ここで終わるのか……」


 ペテルギウスが破壊光線を撃とう瞬間、横から雷が纏った大斧が彼女を襲った。土煙を上げ、木に叩きつけられ、へし折られた。


「戻れ、粉砕するものミョルニル


 大斧は声がした方に戻っていった。そこにいたのはイディナであった。イディナの右手には手甲をしており、それでミョルニルを受け止めた。そばにはエクレールもいた。


「大丈夫か? ルリ」

「助かりました」


 倒れた木が四散に飛ばされ、ペテルギウスが姿を現した。やはり、傷つくどころか服に汚れていなかった。彼女は興味深そうにイディナを見た。


「君は英雄?」

「そうだ!」

「神界大戦の時は見なかったということは現英雄? ……いや、何となく違う。あの子たちとは違う雰囲気を感じる」

「先代の英雄の中では我を含む2人だけが第3段階目に行けたからな」

「そう」

「シュガーが来るまでは我が相手をしてやるぞ」

「……シュガーって、誰?」

「500年も生きるとボケ始めるのか……」

「ペテルギウス様はシュガー様の名前を知らないだけです」


 エクレールはイディナにフォローを加えた。


「誰であろうが、英雄なら排除しようか」


 イディナと対峙することでペテルギウスは戦闘態勢に初めて入り、2人は戦い始めた。

 2人が戦っている間にエクレールはレイとルリに近づき、声をかけてきた。


「レイ様にルリ様でしたよね? 私はシュガー様に仕えているエクレールと申します。以後、お見知りおきを」

「あの人は大丈夫なの?」

「イディナ様ですか?あの方は早々に負けたりしませんよ。勝つことも不可能ですが」

「ペテルギウスさんは何をしていたんですか?攻撃しても効かなかったんです」

「ペテルギウス様はテスラの使徒です」

「使徒?」


 使徒という聞きなれない言葉にレイは疑問に思うとエクレールが使徒について説明を始めてくれた。


「使徒とは神に仕えるために神と契約を行った者のことを言います。使徒は神の力である神力を分け与えられます。これにより、神と同じ不老の存在となります。テスラに仕える使徒は神力が多く与えられており、神力を使った技でレイ様の攻撃を防いでいたんでしょう。これを神力結界と言います」

「どうやったら、攻撃が通るの?」

「神力結界は神力以外の攻撃をほとんど無効化にします。神力を持たない限り、傷つけることもできません。しかし、シュガー様なら倒すことができます。私はシュガー様の使徒です」


 神力を与えられた者が使徒となる。エクレールはシュガーの使徒。この2つがレイにシュガーの正体を気づかせることとなった。


「それなら、シュガーは……」

「シュガー様は生まれながら、神力を持って生まれてきたそうです。神力を持った者も契約できれば、使徒を作ることはできます」

「少し昔話をしよう。古代では神人と呼ばれていた種族がいた。その種族は独自の力は神力だった。神人は滅びたが、ごくまれに神力を持って生まれることがある。それが俺とシュテルだ」


 いつの間にかいたシュガーが神人という種族を説明していた。


「シュガー」

「ペテルギウスとは俺だけで戦う。手を出さないでくれ」


 シュガーは3人にそう言い、ペテルギウスのところまで行く。2人は互いに見つめ合った。


「久しぶりだね、ズヴェズダ」

「そうだな、ペテルギウス」

「あれ、その赤い指輪はもしかしてリトス?」

「そうだ」

「英雄って、まるで呪いみたいだね。英雄は神に選ばれた祝福であると同時に戦わせられるという呪いを背負わされる」

「イディナは指示があるまで下がっていてくれ」

「勝てよ、シュガー」


 イディナはシュガーと拳を合わせてから下がり、その場にはシュガーとペテルギウスだけが残った。


「英雄なら敵として容赦なく消そう」

「俺は……俺は今でも君のことを大切な仲間だと思っている」

「裏切ったのに? 都合のいいことを言うね」

「それでも君を止めてみせる」


 シュガーの右手に神力である赤い光が集まっていく。それは剣の形に変化していった。


「来い、神杖セイギャールン」


 神杖セイギャールンは全身が黒い剣だった。それはまるで夜を表したような剣だった。


「現れよ、クラウ・ソラス」


 クラウ・ソラスは全身が輝いている剣だった。それはまるで太陽を表したような輝きだった。

 シュガーとペテルギウスはそれぞれの剣を持ち、戦闘態勢に入る。最初に動いたのはペテルギウスで彼女が振り下ろす剣をシュガーは剣で受け止めた。何度も剣で打ち合い、最初に傷を入れたのはシュガーだった。


「さすがだね。剣では勝てないかも」

「かもじゃない。勝てないんだ」

「それはどうかな? 光輝け!」


 輝いていたクラウ・ソラスはさらにまぶしい光を放ち、シュガーから視界を奪った。目が見えない隙を狙い、攻撃を畳みかけた。しかし、受け止められ更なる傷を入れられた。


「無駄だ」

「次はこれだよ」


 ペテルギウスは剣を突くことで剣から光の刃を放ち、シュガーを倒そうとした。


「燃え上れ! セイギャールン」


 セイギャールンの黒い刀身が赤に染まっていった。赤に染まりきると刀身から炎が燃え上がり、その炎で光の刃を燃やした。


「遊びはやめた方がいいんじゃないか」

「そうだね。君を本気で殺しにいくよ」


 クラウ・ソラスが光となり、ペテルギウスに纏っていく。それと同時に竜力を高めていく。瞳孔は縦に割れ、2対の竜角が頭から生える。それでも竜力の高まりは止まらなかった。

 それを見ていたレイはこれから起こることがまったく分からなかった。


「何が起こるんだ?」


 竜力を高まるとペテルギウスは白い光を放ち、銀色のドラゴンへと竜化した。2枚の巨大な翼に銀色に輝く鱗、赤い瞳をもち、人の10倍以上の大きさのドラゴンとなった。


「今日でトルトニスは2度目の滅びを迎えることになる」

(この竜となったペテルギウスには今の俺だけでは勝つことが難しいだろう)


 シュガーはそう考えて、エクレールに指示をした。


「エクレール! レイとルリを守ってやってくれ。あと、そこに転がっている奴も頼む」

「分かりました」

「他人の心配より、自分の心配をしなよ」


 口を開き、光を集めていき、シュガーに狙いに定める。


「これが竜化した竜人の真のブレスだよ。避けたら、後ろの子たちが跡形もなくこの世から消えるよ」


 ブレスに対応するためにシュガーは両手を合わせ、そこに神力を高め、赤い光と集めていき、圧縮することである術の準備を始めた。そして、ペテルギウスが光のブレスを放ち、シュガーも術を放った。


「シン・ドラコ・ルギートゥス!」


 シン・ドラコ・ルギートゥスはシュガーが持つ術の中で1、2位を争うほどの破壊力を持つ術だった。手の平に神力を集め、それを魔術で圧縮し撃ち出す術である。その威力は山を軽く吹き飛ばすほどの威力である。

 ペテルギウスのブレスとシュガーの魔術がぶつかり合う。魔術がブレスに押しつぶされそうようになった。しかし、シュガーは諦めなかった。


「まだまだ全開ではない」


 さらに神力を高め、魔術の威力を一気に上げていく。するとブレスが押しつぶされ、ペテルギウスにシン・ドラコ・ルギートゥスが命中した。


「やったか!?」


 レイがそう叫ぶ。

 ペテルギウスに大きなダメージを与えることにはできたが、それでも倒すことはできていなかった。


「今のがまともに命中していたら、私を倒せていたね。今のは仲間を見捨てて、その隙に撃てば倒すことができたのに」

「俺はお前を殺したいわけではない。お前はレイたちと同じ大切な仲間だ」

「今の術を人に撃って、良く言えるね」

「お前なら、耐えてくれるだろうという信頼があったからな」

「なら、ボクの願いを聞いてよ!」


 ドラゴンの爪がシュガーに襲い、剣で受け止め、弾きシュガーは上へと飛んで行った。ペテルギウスも追いかけ、空へと飛んで行く。

 ベテルギウスの攻撃をシュガーは剣で捌いていった。ペテルギウスが竜となったことで攻撃力は上がっていたが、体が大きくなったことで小さいシュガーに当てることを難しくなっていた。人は自分より小さいことには気づきにくい。

 互いの攻撃が当たり、ボロボロになっていく2人。それでも戦い続けた。


「僕を倒す有効打がないようだね。あのシン・ドラコ・ルギートゥスはもう撃てないしね。あの術は神力を大量に使うし、何よりあまりの威力に体の負担が大きすぎる。それも体を強化することで対処はしているだろうけど、それでも負担が無くなるわけではない」

「確かにあの術は使えないし、有効打がない。それは俺に限っての話だ」


 シュガーは瞬間移動でベテルギウスの上へと移動し、すべての力を使い、下へと落ちベテルギウスを自分の体ごと地面に叩きつけた。


「今だ! イディナ!」

「砕け散れ、ミョルニル!」


 シュガーが叫ぶとイディナがベテルギウスにミョルニルを投げ飛ばした。しかし、ペテルギウスは余裕そうな態度でいた。


「無駄だよ。神力結界がある!」

「イディナには俺の神力を渡してある」

「……あの時か!」


 シュガーとイディナが分かれるときに拳を当て合っていた。あの時に神力を渡していた。ペテルギウスはそのことに気付き、余裕の態度を崩れ始めた。

 それもそのはずである。イディナの投げ飛ばした粉砕するもの(ミョルニル)は先代の英雄の中で1位、2位を争うほどの破壊力を持つ神装であった。その威力はシュガーが放つシン・ドラコ・ルギートゥスとほぼ同じといっていいほどの威力である。

 彼女は何とか逃れようとするが、シュガーは逃がさなかった。結果、シュガーもろともベテルギウスに当たり、そこら一帯を粉砕した。シュガーはなんとか立ち上がり、イディナが駆け寄った。


「これからが……本番だ……」

「シュガー、大丈夫か?」

「ベテルギウスの戦いに……お前のミョルニルが……命中したからな」


 シュガーとイディナはベテルギウスの元まで行く。彼女はあまりのダメージに竜化が解け、人に戻っていた。

 シュガーはベテルギウスに触れた。イディナが彼にこれからすることを確認した。


「これから、テスラとの使徒としての契約を切る手順だったな。そうすれば、神力を介してテスラに洗脳されているこいつが元に戻ると」

「そうだ。うまくいけばだが……」


 この手順には問題点があった。神力を持っているとはいえ、他人の契約が切れるかどうかの問題。次に無事テスラとの契約が切れたとしてもベテルギウスが本心から従っていれば、契約とは関係なしにこちらに牙をむいてくる。

 シュガーはリスクを承知に契約の解除をしていた。なぜなら……


(ペテルギウスは今でも大切な仲間だ。助けられる方法があるなら、それをする。それがだめで最悪の事態になれば、自分の手で片付ける。助けられるなら、助けたい)


 シュガーが契約解除を進めていく。そして、あるものがペテルギウスの中から突然出てきた。


「ズヴェズダ……いや、シュガー……」

「テスラ……」

「500年ぶりね。ここでまとめて契約してあげるわ」


 腰まで伸びた銀色の髪に緑眼を持つ人、それはテスラだった。テスラとシュガーの神力のぶつけ合いが始まった。徐々にシュガーが押され始めていた。


「この子と戦闘で弱っているのね。あなたを思い通りできると思うと体がゾクゾクしてくる」

「負けられないんだ、君を助けるためにも」

「シュガーの強がる姿もまたいいわ」

「ぐっ」


 シュガーはついに膝をついた。このままではシュガーが負けることは誰の目でも明らかだった。彼の後ろにシュガーとルリが立っており、手を肩に置いて応援した。


「事情が分からないけど、仲間が頑張っているなら全力で力を貸すよ」

「シュガーさん、気合を入れなおしてください」

「俺には……仲間がいる!」


 最後の力を振り絞り、シュガーは神力を高めていく。そして、テスラの神力を押し返すことがなんとかできた。


「今回は私の負けね、そこの2人」

「何ですか?」

「シュガーを信じないほうがいいわ。きっと、裏切られることになる」


 最後に一言を残し、テスラは霧のように消えていった。


「これで倒したの?」

「いや、今のは分身みたいなものだ。それより、ペテルギウスだ」


 シュガーはペテルギウスのところまで駆け寄る。目の前には今までずっと助けかった仲間がいた。


「大丈夫か? ペテルギウス」

「うう……」


 ペテルギウスが目を覚ました。


「ズヴェズダ?」

「そうだ」

「今まで僕は何をしていたの?」

「誰か、操られているような感覚はあるか?」

「それはないけど」

「良かった……成功だ!」


 シュガーは長年望んだ希望を手につかむことができた。


****


 シュガーたち一行は旅館の部屋に集まり、輪になるように並んでいた。シュガーはペテルギウスに記憶がどこまであるのかの確認をしていた。


「ペテルギウス、どこまで記憶がある?」

「正直、ぼんやりしていて、ほとんど思い出せないんだ」

「俺はペテルギウスが元に戻ればいい」

「相当迷惑をかけたようだね」

「なに。気にすることない。お前が戻ればいい」

「シュガー」


 レイが恐る恐るシュガーに声をかけた。


「なんだ」

「聞きたいことがあるんだけど、2人の関係って?」

「仲直りした仲間だ。ベテルギウスとレイたちに今までのことを簡単に説明しよう」


 記憶が曖昧になっているペテルギウスにシュガーは説明を始めた。


「テスラに誘われて、俺たち4人はそろった」

「そうだったね」

「リベルダースという地方を作り、そこで理想を実現しようとしていた。だが、その理想が過激になっていき、行き過ぎるようになった」

「そこから、曖昧になっているね」

「確か、使徒になったのもそれぐらいだったな。それなら、操られ始めたのもその時期か」

「リベルダースって、アモルの先祖が作ったんじゃないの?」


  レイのもっともな疑問をシュガーは後回しにした。


「それは後で説明しよう。俺はテスラたちを止めるために抜けて、力を集めテスラたちと戦った。犠牲はあったが、封印に成功した。封印したといえ、問題を先延ばしにしたに過ぎない。今は完全解決するために動いている」

「アモルのご先祖様は?」

「テスラたちを倒してとはいえ、そこに住む人がおり、生活があった。その面倒を見てもらうためにいくつかの貴族に頼み、リベラ家はその1つだ」


 説明を聞き終わったペテルギウスはシュガーに残りの仲間について聞いた。


「ズヴェズダ、プロキオンとシリウスはどうなっているの?」

「シリウスは生き延びていて、プロキオンは自分を媒介に仲間を封印された」

「……プロキオンは俺が倒しちゃったんだけど」


 レイは言いにくそうにそう言った。プロキオンは夢の世界でレイたち英雄に倒されていた。しかし、シュガーはそれを余り気にしてないように頷いた。


「そうか。レイでも倒せたということは相当弱体化をしていたようだな。なら、プロキオンは死んでいる可能性が高いな。魂があれば、作った肉体に入れる手段もあったが」

「気にしていないの?」

「俺も含むテスラたちは殺されても仕方ないことをしていた。英雄に殺されることも想定内だ。だから、気にするな、レイ。お前は英雄として行動しただけだ。それがたまたま俺の知り合いだっただけだ」

「……うん。あと、今の話を聞く限りじゃあ、シュガーも五大英雄の一人なの?」

「そうだ」


 レイはアモルからシュガーが先代の英雄側についたとは聞いていたが、五大英雄とまでは知らず、シュガーに聞いた。彼からそうであると聞き、ある疑問を浮かび、それを尋ねる。


「なら、シュガーは2回英雄に選ばれているの?」

「それは違う。前は英雄たちと一緒に旅をしていただけだ」


 効かれた疑問にシュガーは答え、今度は彼がレイに質問した。


「そもそも、レイはなぜトルトニスにいるんだ?」

「マーティスで本を読んだら、ここに飛ばされたんだ」

「ああ、俺が仕掛けた本か」

「じゃあ、シュガーのせいじゃん」

「ちょっと昔にいたずら目的で仕掛けたんだ。これから、レイたちはどうする?」

「アモルたちの元に戻るよ」

「じゃあ、気をつけてな」


 レイ、ルリ、ウエボは部屋から出て、旅館の外に出た。


「なんかとんでもない話を聞いてしまったな」

「なんで、君までいたの?ウエボ」

「なんか……こう……その場の雰囲気に流されて」

「そう……。俺たちはルークスに向かうから」

「もっと力をつけて、また挑戦しに来るからな!」


 ウエボはレイにそう言い、その場から離れていった。レイはルリに話しかけた。


「ルリ、ルークスに行こう」

「そうですね。ルークスから声が2つ聞こえてきています」

「1つはアモルが持っている道標だとして、もう1つあったのか」

「遠いのではっきりとわかりませんが、2つとも動いていると思います」

「ウエボみたいに誰かが道標を回収したのかな。なんにせよ、ルークスに戻ろう」


 レイとルリはアモルたちがいるルークスへと向かった。


****


 レイたちが部屋から出た後もシュガーたちは話し合っていた。


「ペテルギウス、これからお前はどうする?」

「ズヴェズダに協力したいかな」

「いいのか、せっかく自由になれたというのに」

「ズヴェズダが僕を止めたのは助けかったからだよね。それなら、僕もテスラ様たちを助けたい」

「ペテルギウス、力を貸してくれ」

「喜んで」


 シュガーはこれからのことを指示した。


「エクレールとイディナとリリィはシリウスとセレネを探してくれ。使徒が減ったということはそれに使っていた神力をシリウスに注がれて、もっと厄介になるだろう」

「シュガー様は何をするの?」

「神力を回復させる。今回の戦いで使いすぎてしまったからな。なるべく、戦闘を行わないように行動する。俺は回復が遅いからな。でも、希望は掴めた」


 シュガーは絶望的な状況でペテルギウスを助けることができたという希望を掴み取れた。希望があるなら、前へと進んでいける。シュガーはそう確信できた。


 500年の因縁に決着をつけ、無事にペテルギウスを助け出すという希望をシュガーは掴んだ。彼の物語はどういう結末を迎えるのだろうか。

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