神との対話
種族について・森人
耳が尖り、不老な種族で森にすむことが多い。
独自の力は魔力だが、魔力そのものはほかの種族でも、持っていることが多い。しかし、森人にはマナを感知しやすいという特徴を持つため、ほかの種族より魔術が発展している。
寿命は500年ほどだが、500年も生きられる個体は少ない。ほかの種族でも言えることだが、長く生きれば生きるほど、病気や戦死などのリスクが大きくなるため、そこまで生きられるものはそういない。
前回のあらすじ
シュガーの過去を聞き出せたリアマとルキスは道標があると教えられた山へと向かっていた。レイたちも次の道標を手に入れるべき、魔術師連盟マーティスへと向かう。
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山へとたどり着いたリアマたち。中へと入る入口と上を上るための道があった。
「リアマ、どうする?」
「……」
「リアマ?」
「声が聞こえてくる。これが道標の声なのか?」
「なら、その声に従って、行ってみよう」
リアマたちは聞こえてくる声を頼りに先へと進んだ。
****
レイたちはアモルが聞こえる声を頼りに魔術師連盟マーティスを探索していた。
「ここから、声が聞こえますね」
声が聞こえている場所は図書室であった。
「それにしても、勝手に入って良かったのかな?」
「私がいるから、大丈夫だろ。たぶん」
4人は図書室に入り、怪しそうな本を探し始めた。探し続けること、30分。一向に見つからなかった。
「アモル、本当にここかよ」
「ここから、声が聞こえているはずなんですが」
アスラの愚痴にアモルは答える。ミラは気が付くようにある本を取り出した。
「私も本を持っていたな」
「ああ、その本ですね。私に貸してくれませんか」
「べつにいいけど」
ミラはアモルにガルドラボーグを渡した。彼女はその本を開き、読んでいく。
「アモルでも、その本は読めないだろう?」
「一部ですが、読めますよ」
「本当かよ。なんて、書いてあるんだ?」
「英雄についてですね。英雄に選ばれたものが持つリトスは神の魂の一部であり、己の個性であるフィデスを目覚めさせると。読めるのはこことこの先ですね」
アモルはページをめくり、読もうとした。
「なんて、書いてあるの。アモル」
「ええと、道標があると書かれていますね」
「なんで、ここまでくる必要があったんだ?」
「なにかしらの条件があったのではないのでしょうか」
ミラの疑問にアモルは自分の考えを言った。
「条件も書かれていますね。条件は英雄が4人、そしてフィデスに目覚めていることの2つですね」
「偶然揃っているじゃん。じゃあ、行くか」
「だから、アスラ。俺がフィデスに目覚めてないんだけど」
「やれば、分かる。やらなきゃ、一生分からん」
「それもそうだね。とりあえず、やってみよう。どうすればいいのかな、アモル」
「リトスを持ちながら、手を本に乗せればいいそうです」
4人はリトスを持ち、手を本に乗せた。レイは銀色の鍵を、アモルは黒色のロザリオを、アスラは水色のネックレスを、ミラは金色のブレスレットを手に持った。すると本は光だし、その光に4人は包まれ、本の中へと行った。
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本の中は中心に山があり、回りは森林で囲まれていた。上から降ってきた4つの光は東西南北へと別れていった。銀色の光は西に、黒色の光は北に、水色の光は南に、金色の光は東に落ちていった。
西へと落ちたレイが目を覚めると1人の影が見えた。その人はミラぐらいの背の高さで竜の銀色の尻尾が見えた。レイは立ち上がり、話しかけた。
「どちら様でしょうか?」
「僕は竜人のベテルギウス。英雄にお願いがあり、ここに来てもらったよ」
ベテルギウスと名乗った少女は銀髪赤眼であり、後ろ髪を2つに縛り、分けられていた。
「来てもらった?」
「そう。いずれ英雄が選ばれると踏み、その仕掛けをしていたんだ。ズヴェズダの目論見通りだ」
「何をすればいいんでしょうか?」
「君たちにはある魔獣を倒してほしいんだ」
ベテルギウスに君たちと言われ、レイは自分1人しかいないことに気付いた。
「そうだ、アモルたちは?」
「君の仲間は君と同様、僕の仲間が案内している」
「よかった」
「今から、君には僕と一緒に中心にある山へと向かってもらう。それまでにいくつかの試練があり、それを超えてもらう」
「試練とか倒すべき魔獣などについて、聞きたいんですけど」
「それは歩きながら、説明しよう」
レイとベテルギウスは中心にある山へと向かった。
一方、アモルは周りを見渡していた。ペテルギウスのいう案内人が現れていなかったからであった。適当に進むとその案内人を見つけることができた。
「グー……グー……」
案内人は眠っており、そのためアモルに気付いてなかった。
しかし、アモルはその案内人に見覚えがあった。赤い髪に狐耳、非常にシュガーに似ていた。目に入るのは青い宝石が付いた首飾りであった
アモルが近づくと案内人は起きた。
「やあ」
「こんにちは」
「僕の名前は獣人のズヴェズダ。憧れの英雄に会えるなんて、感動だなー」
「それは照れますね」
「僕の姉も英雄なんだ。話がずれて、ごめんね。君にはこれから、いくつかの試練を受けてもらって、中心の山へと向かってもらうよ」
「歩きながらでいいのでもう少し話を聞いてもいいでしょうか?」
「もちろん、いいよ」
2人は山へと向かう。アモルはこのズヴェズダがシュガーであるもしくはその関係者だと思い、確信を得るためにももう少し話を聞く必要があると思った。
「ズヴェズダという名前はとてもいいですね。確か、星という意味でしたよね」
「その名前を考えてくれたのがテスラなんだ」
「テスラ?」
「テスラは光の神ルークスによって、祝福され、神の力を分けてもらったんだ。その時に神名として、テスラという名前をもらったんだ。その時に僕たちにも神に仕える使徒として、洗礼名として、ズヴェズダをもらったんだ」
「そうでしたか」
アモルは教会にいたため、神に力を与えられることがあるという本を読んだことはあった。しかし、その方法までは知らなかった。
「貴方の姉が英雄なんですよね?」
「そうだよ。実は僕はね、英雄の人たちと一緒に旅をしていたんだ」
「そうだったんですね。聞きそびれたんですが、私は山に行って、何をするのが目的なんでしょうか?」
「ごめんごめん。話してなかったね。それは……」
ズヴェズダはアモルにこの世界ですべきことを伝えた。
****
レイはベテルギウスにこの世界について、教えてもらっていた。
「この世界は異界なんだ」
「異界? 異空間や異世界とは違うの?」
異界という単語を聞き、異空間や異世界との違いが分からず、ベテルギウスに尋ねた。
「少しだけ違うよ。異空間は魔術師などが意図的に作った世界とは異なる空間。異界は神や精霊、力のある魔獣が支配する世界。異世界は世界そのものが異なるところにあるつまり時空そのものは違うと言ったところ」
「よくわからない」
説明を受けたレイだったが、理解できなかった。ベテルギウスは世界を箱に例え、分かりやすく説明をする。
「1つの箱を世界と例えるね。通常はこの中で人々は暮らしている。しかし、この箱とは異なる箱があるとする。この箱の中でも人々は暮らしている。つまり、これが異世界だよ。箱同士が隣にあるとしてもその箱から出る手段はないため、自分が住むところとは異なる世界に行けない」
「異世界はそんな感じなのか」
ベテルギウスの説明を受けたレイは理解していく。
「異空間や異界は世界と言う箱の中にさらに箱があるイメージ。箱の中にあるため、移動できないわけではないが、それでも違う箱に入るため難しいんだ。精霊や神が住む世界などはそこに住む主が作り、支配している。そのため、異界に住む主が滅びたりすれば、異界が不安定になり、閉じられる」
「異界についても分かった。じゃあ、異空間は?」
「異空間は魔術師が簡易的に作った空間を指す。優れた魔術師であれば、主が作る異界同様、そこで暮らすのも不可能ではないが、とても難しい。一部の魔術師が使う結界もこの世界から、境界を作り結界を作っているため、一種の異空間ともいえる。異界を魔術師が参考して作ったのが異空間だから、異界と異空間にそこまで変わりはないよ。」
ベテルギウスの説明を受け、理解しまとめたレイは自分で出した答えを彼女に行った。
「つまり、魔獣がこの本に逃げてその魔獣が主となって、異界を作っているということ?」
「その通り」
「じゃあ、その魔獣が作る世界で英雄を待っていた君は何者なの?」
「それは……試練だね」
ベテルギウスの説明を受けて、レイが浮かんだ疑問に答えようとした彼女だったが、第一の試練が訪れた。
「試練って、何をすればいいの?」
「それはリトスが決めるから、とりあえず歩けばいいよ」
ベテルギウスの姿が霧のように消えた。
「……消えた? でも、この感じはどこかで経験したような気がする。とりあえず、前に進むしかないか」
レイは第一の試練へと進んでいく。そのころ、ほぼ同じタイミングでアスラ、ミラ、アモルの3人も試練を受けていた。
彼はベテルギウスの言う通り、森の中を進んでいく。するとフォルテが目の前に立っていた。
「なんで、フォルテがここに?」
「アモルがここに入る前に行ったことを思い出せ」
「『リトスは神の魂の一部であり、己の個性であるフィデスを目覚めさせる』。なんかわかりかけたような気がするよ。フォルテの正体やこの異界のことも」
「おそらく、お前の考えていることは合っている。それにしても、こんなところで会えるとはな。ここは俺の世界では来なかったからな」
「俺の世界? フォルテは俺でしょう。同じところから来ているはずでしょう」
「それも分かるはずだ」
そういうとフォルテは消えていった。今の会話から、レイはフォルテやリトスの正体がなんとなく感づいた。進んでいくとベテルギウスと合流した。
「試練が終わった?」
「ベテルギウスさん。あなたの正体が分かりました。そして、この本の役目も」
「君の考えを言ってみて」
「あなたは守護霊などに似た精神だけの存在ですよね。そして、あなただけではなく、俺も精神だけがこの異界に入ってきた。」
「よくわかったね。正解だよ」
「この本は魔獣を封じ込めた共に英雄として成長をさせるためのものですよね?フォルテに会ったから、分かる。通常の方法では会えないのにここでは会えました」
「そうだね」
「今まで、リトスは英雄に選ばれた証と共にフィデスを目覚めさせるものだと思っていた。おそらく、フィデスには先がある。この本はその先に行くために助けをするもの」
「言っていることは合っているけど、英雄を助ける部分はついでに作ったものだよ」
レイはシュガーから、フィデスに目覚めていないと言われたのかを理解し、それと同時にフィデスに目覚めていないのにこの本に入れた理由も理解できた。
「俺の予想だと案内人の中に英雄だった人がいると思います。」
「大変惜しい。僕たちの中には英雄はいないよ。一緒に旅したものならいたけど。僕らの上に立つテスラ様が英雄なんだ。テスラ様の知恵を借り、この本を作った」
「……そのテスラという人はこの本にいるの?」
「いや、いない。そろそろ、次の試練だね」
また、ベテルギウスが霧のように消えた。それと同時にフォルテがそばに現れた。
「さて、行こうか」
「そうだな」
レイとフォルテは横並びで歩き始めた。
「俺の正体が分かったか?」
「分かったけど、だからこそ分からない。リトスが神の魂の一部で出来ているなら、フォルテの魂で俺のリトスはできている。しかし、フォルテは未来の俺だと言っていたよね。これからのことで推測できるのはリトスを利用して、神の領域まで成長できるということ。」
「そうだ。リトスには4段階の成長がある。俺は仲間の中で唯一最終段階までいき、神の力を使うことができるようになった」
「リトスの中にフォルテがいたのはただの偶然じゃあないよね? おそらく、未来で何かがあり、それを修正するために来たと思う」
「その通りだな。いいか、シュガーには気をつけろ」
フォルテの口からシュガーという言葉が出てきた。
「シュガーに?」
「奴の狙いが何かは分からないが、危ない。世界を滅ぼすほどに」
「何があったの?」
レイは尋ねるが、フォルテは答えようとはしなかった。それは思い出しくもないとでも言うような雰囲気も出していた。
「記憶が戻ってねーから、これ以上は言えないが、奴は危ない」
「……分かった。さっきから対話しているけど、これが何か知っている?」
「これは第二段階のノードゥスと呼ばれている。リトスの中にいる神の対話を可能にしている。これによって、その神が持っていた神装を使えるようにする」
「やっぱり、フィデスではないと言われたのは肉体を介して、フォルテが出ていただけだったから。けど、そのノードゥスと言われる段階に入っていたから、ここに入れたんだ」
フォルテから、リトスの成長段階に説明され、シュガーの言葉が完全に理解できた。
「本来なら、第一段階でフィデスを修得するはずが最初から話せたからな。俺がリトスに入ったことで順序がめちゃくちゃになったんだろう」
「そうだったのか」
「これから、フィデスを覚えられるだろう。もう、俺の心剣の抜き方は分かるな?それが俺様の神装だ」
「うん」
「これからは俺様ではなく、お前が戦え」
「分かった。今まで俺の代わりに戦ってくれて、ありがとう」
フォルテは消えていき、その代わりにベテルギウスが現れた。
「無事に対話できましたね。これにて、試練は終わりです」
「そうだね」
レイとベテルギウスは中心の山へと歩いて行った。
****
レイたちが山のふもとへとたどり着くとそこにはすでにアモルとズヴェズダがおり、それと同時にミラたちも来た。
そこに集まった顔ぶれを見て、レイは驚きを隠せなかった。なぜなら、かつて敵として戦った天人プロキオンにシュガーと瓜二つの顔をしたズヴェズダがいたからであった。アモルとミラに考えを聞く必要があると彼は考えた。
「ベテルギウスさん、ちょっといいかな」
「なにかな?」
「仲間と情報交換したいから、ちょっと離れていいかな」
「べつにいいけど」
ベテルギウスに相談し、今までのことを話し合うためにもレイ、アモル、ミラはその場から、少し離れた場所に行った。
「なんで、ミラはプロキオンと一緒に行動しているんだ?」
「よく名前を知っているな」
「かつて、戦った敵で神を封印していた奴だよ」
「本当かよ。あまりしゃべらなかったけど、かなり優しい人だぞ」
「ミラがそこまで言うなら、本当かな」
「それはどういう意味だ、レイ」
「そのまま意味だよ。アモル、なんでシュガーがいるんだよ?」
レイはミラにプロキオンのことを聞いた後はアモルにシュガーに似た獣人について聞いた。
「あの人はシュガーではなく、ズヴェズダという獣人ですよ」
「似すぎでしょう、あれ」
「私もそう思い、情報を引き出しました。その結果をお話しします」
アモルはここまで来る間に会話を重ね、ズヴェズダの正体をある程度掴んでいた。
「ズヴェズダはレイの言う通りシュガーに間違いないでしょう。しかし、今のシュガーではなく、昔のシュガーですね」
「昔のシュガー?」
「ズヴェズダから話を聞いた限りでは英雄が活動していたころだったので約500年前ですね。なので、500年前のズヴェズダという名のシュガーです」
「そうなのか」
「これは私の予想にすぎませんが、この本を封印した後より、なにかしらの出来事が起こったと仮定すれば、プロキオンの性格が変わったことも納得がいきます。今の3人にはそれほど警戒しなくていいと思います」
アモルの報告を納得するレイ。2人の試練がどういうものになったのかが気になり、それを尋ねた。
「わかった。別の話になるんだけど、試練はどうだった?」
「私はきちんと会え、話し合いはできましたよ。ただ……」
「ただ?」
「フィデスに目覚めたばかりなのでもう少し使いこなしてからまた来るようにと言われました。ミラはどうでしたか?」
「……ある意味すごい人が好きな神だったよ。なんでも相談に乗ってくれそうな神かな」
「よかったですね、ミラ」
「話していて、疲れる神だったよ」
「それにしてもアスラが遅いね。一旦、戻ろうか」
レイたちはベテルギウスたちのところまで戻った。
「これで全員揃ったから、先に行くよ」
「待って、アスラがいないんだけど」
「彼は試練を超えることができなかったようだね。シリウスが責任をもって、元の場所に返しているよ」
「試練はリトスの中にいる神の対話でしょう?どうやったら、失敗するの?」
「とりあえず、歩きながら説明します」
レイ、アモル、ミラ、ベテルギウス、ズヴェズダ、プロキオンの6人は封印した魔獣のところまで行くべき、山を登り始めた。
ベテルギウスが試練について、説明を始めた。
「ここに入るための条件がフィデスを修得し、4人であること。フィデスを修得していないとここで行う試練はできないし、受ける意味がないからです。4人という人数制限は僕たちが4人だから。試練を超えることができなくとも現実に返すためなんだ」
「アスラはどうして、失敗したの?」
「簡単に言えば、会話にならなかったため失敗したようだね」
英雄に選ばれた証とリトスをもらうため、その目的を果たすためなら協力してくれるものだとレイは思っていた。
「神って、協力するんじゃないの?」
「それは神によって、違うよ。協力的な神もいれば、体を乗っ取るのが目的な神もいる。これはめったにいないけどね」
「体を乗っ取る? 何が目的なの?」
「リトスの中にいる神の魂はあくまで一部でリトスとは別に生きている神もいれば、滅んでいる神もいるんだ。英雄を利用し、現世に復活しようとする。まあ、本体を把握できないため、リトスの中にいる神の意思だね」
「めったにいないなら、大丈夫だね」
レイはリトスの中にいるフォルテが協力してくれたことに感謝していた。
「いろんな性格の人がいるようにいろんな性格の神がいます。アスラの神は相当無口で会話にならず、それが原因だね」
「アスラはこれ以上成長できないのか」
神の対話が必要な以上、それができなければ、先に進めないと考えていたミラだった。しかし、それは否定された。
「いや、そういうわけではないよ。本来、リトスの中にいる神の対話はフィデスを修得し、自分のものにすることで初めて対話できるようになるんだ。この本は神と同様、英雄を精神の存在にすることで対話しやすくしているんだ。本来なら、長い時間をかけるところを短くしているんです。付き合った時間が短ければ、人間関係のようにうまくいかないこともあるんだ」
「つまり、アスラはこれからに期待ということだよね」
「それで合っているよ。テスラ様が調べた記録によれば、フィデスを修得しただけで終わる英雄も少なくありませんでした。それから見れば、対話ができただけ、君たちは才能があると思うよ」
いまだにここにいる魔獣について、聞いていなかったためレイはベテルギウスに聞く。
「あと、ここにいる魔獣って、どんな奴?」
「通常の魔物とは少し違うね。どちらかというと精神的な存在で幽霊や精霊に近い魔物で物理的な攻撃に強く、魔術などでダメージを与えるしかないよ」
「分かった」
そんなことを話していると山の頂上に到着した。
そこには黒いハリネズミのような魔獣がいた。
「お前たちを倒せば、シリウスが消えたようにその3人も消える。俺様を抑える者がいなくなり、ようやく自由になれる」
「くらえ」
ミラはフィデスである種族力理解を発動させ、青眼から金眼へと変え、鎖を具現化した。人差し指のアイス・チェーンを伸ばし、魔獣に巻き付けた。しかし。
「無駄だ!」
魔獣は体を霧のように分散し、抜け出した。そのまま、レイたちのところへと近づいた。アモルは剣を抜き、攻撃したが、通り抜けただけだった。
「俺様に物理攻撃は効かねー!」
「なら、天弾」
アモルは左手の人差し指に天力を溜め、弾のように撃った。すると魔獣の体を突き通り、ダメージを与えた。
「精神的な存在なら、同じ精神で作られた武器なら切ることができるはず」
レイはフォルテの心剣を抜く動作に入った。手の平は自分の胸ではなく、リトスが握られていた。レイの異能力である心剣は心を武器に具現化させる能力である。
フォルテはレイの肉体を介し出てきて、自分の胸から心剣を抜いた。なぜなら、そこに魂があったからである。フォルテはレイの体の中にいるわけではなかった。ないものは心剣にすることはできない。
「フォルテの魂はリトスの中にある。だから、リトスそのものを心剣に変えればいい」
レイが心剣を抜くことでリトスは形を変えていった。リトスである鍵から白い仮面と黒い剣の2つに別れた。
レイは白い仮面をつけると彼の背には白いマントが現れ、黒い剣を右手に持った。
「これがフォルテの神装か」
レイは魔獣を倒すために近づいていく。アモルとミラの相手をしていた魔獣だったが、レイに気付くと体から黒い針を出し、攻撃した。
しかし、白いマントを伸ばし、壁を作ることでレイは攻撃を防いだ。レイは攻撃の動作に入るが、魔獣は避ける動作に入ってなかった。結果、一刀両断に魔獣を切り捨てた。
「馬、鹿な……俺様に……物理攻撃が効くはずが……」
「これはただの剣じゃない。心を具現化した剣だ。相性が悪かったね」
切り捨てられた魔獣は黒い霧となり、消滅していった。レイが仮面を外すと黒い剣と白いマントは消え、元の形である銀色の鍵へと戻った。
「ありがとう。これで僕たちの心残りもなくなった。最後の力で君たちを現実世界へと戻そう」
「最後に1つ聞いていいかな。どうして、テスラ様のもとに4人は集まったの?」
レイは集まった経緯が気になり、それを聞いた。
「それは英雄が作った平和を維持しようと思ったから。英雄が選ばれたということは問題が起こったとは思いますが、世界は平和ですか?」
「問題は色々起こっているとは思いますが、平和だと思います」
「それなら、良かった」
ベテルギウス、ズヴェズダ、プロキオンは光となり、レイたちの体を纏われていく。少しするとだんだん眠くなり、目を閉じた。
****
気が付くとマーティスの図書室にいた。そこにはアモル、ミラ、アスラの姿があった。
「やっと、目が覚めたな」
「無事にこちらに帰れましたね」
「今回のことで様々なことが分かったね」
レイがそう言い、アモルが今までのことで分かったことをまとめた。
「ちょっと、整理してみましょう。英雄物語をまとめるとテスラと英雄が争う話ですね。テスラには光の神ルークス、英雄には火の神イグニスがつき、神界大戦と呼ばれるまでに発展します」
「けど、テスラは英雄だったよね」
「目的が平和を維持するためだったのでおそらく英雄としての活動が終わった後に集めたんだと思います。夢の世界のプロキオンがズヴェズダが裏切ったと言っていましたので、なにかしらの確執が起き、シュガーがテスラを裏切り、英雄側についたんだと思います」
「英雄同士が戦ったのか……」
アモルの言葉を聞いたミラはそんな言葉をもらした。そして、以前ルキスから聞いたシリウスという人物をレイは思い出した。
「シリウスという名前はルキスが道標のことを尋ねた人だったよね」
「そうです。シリウスが残っているということはベテルギウスも生きている可能性がありますね。目的は封印されたテスラの復活でしょう。封印が解かれることがあれば、また神界大戦が起きてしまいます」
「これからの目的はその2人を止めることと道標集めだな」
ミラがこれからのするべきことをまとめるとレイはあることが気になった。
「なんで、シュガーは裏切ったんだろう?」
「平和を思うあまり害なす存在になったテスラを止めようとしたのではないのでしょうか」
「でも、ほかの3人はそのままだったんだろう?」
「うだうだ言っても分からねーよ。シュガーに聞けばいい」
「アスラもたまには言うことをいうな。お前の神はどうだったんだ?」
「ひたすら無口な奴で会話にならなかったから、殴り掛かろうとしたら返り討ちにあった」
そんなことを話していると1人の男性が入ってきた。
「君たち、図書室では静かにな」
「すいません」
その男性にアモルは謝ると彼はあることを訪ねてきた。
「君たちは……もしかして英雄かな?」
「はい、そうです」
「懐かしいものだな」
「英雄にお知り合いがいらっしゃるんですか?」
「シュテルという知り合いがいるんだ。紹介が遅れたな。私の名前はゴールド・プラータ・ホークという」
「プラータって、いえば……」
「ミラ、知っているの?」
ミラがプラータについて知っている素振りだったのでレイは尋ねた。
「魔術師連盟そのものをまとめている人だよ。シュガーより上の人だ」
「シュガーを知っているのか。私はあいつの上司だ」
「本当かよ。あれにも上司はいるんだな。それなら、魔術のことを教えてもらってもいいですか?」
「少しでいいなら構わないよ」
ゴールドからミラが教えてもらっているその間、レイは本を適当に探っていた。ある本を掴むと光だした。
「何、この光は!」
レイもその光に包まれ、光り終わったときにはその場から消えていた。急に光を放ったため、ほかの4人も集まり、レイがいなくなったことに気付いた。
「レイが消えてしまいました」
ゴールドはレイが持った本を手に持ち、書かれてある魔方陣を見つけた。
「この本に書かれている魔方陣はシュガーが作ったものだな。おそらく、瞬間移動の原理を利用して、どこかへと飛ばされたんだろう」
「レイを探すしかないな」
「あいつも弱くねーし、大丈夫だろう」
「地道に探すしかありませんね。それまでは無事にいてください、レイ」
神装であるフォルテの心剣を抜くことができたレイ。しかし、どこかへと飛ばされてしまった。彼は無事でいられるのであろうか。




