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神に選ばれし英雄の異世界物語  作者: 甘味神宝
五大英雄ともう1人の英雄
21/86

角人の英雄

種族について・竜人

竜の力と姿をもつ種族。ほかの種族と比べると数は少ないが、戦闘力は高い。

独自の力は竜力。この力を使うことで竜そのものへと変身する竜化や歌や踊りを通じて、周りを強化する竜奏などを扱うことができる。適性のあるマナと竜力を使うことで息吹を吐くことができる。


竜人の体は筋肉体質なため、ほかの種族と比べて重い傾向にある。女性であろうが人の男性並みに体重が重い。そのため、泳ぎが苦手な者が多い。

ただし、血に流れている竜の種類より、成長の仕方が異なる。ずっと幼い者もいれば、体重が人並みの竜人もいる。



前回のあらすじ

無事に道標を手に入れることができたアモルたち。一方、アモルたちと別れ、シュガーの過去を探るリアマたちであったが、500年前に英雄として活動していたと主張する女性に出会うことになった。


****


 アモルが道標を手に入れたころ、ルキスとリアマはようやく火の国イグニスに入っていたころだった。

 2人はハラティオという町におり、その町にある宿屋で泊まっていた。


「明日こそは都市イグニスへとたどり着く。そのつもりでいろ、ルキス」

「うーん」

「何、唸っている?」

「何か、変な感覚がするんだ」

「風邪か?それなら、何日か休んでいくが」

「何か呼ばれているようなそんな感覚」

「私にはそんな感覚はないな。念のためにもう休め」


 ルキスとリアマは明日に向けて、それぞれの部屋で休み、英気を養った。

 朝を迎え、宿屋を出て、都市イグニスへと歩いていた。歩いている最中、ルキスが都市とは違う方向に行きだした。


「やっぱり、どんどん声が強くなっている。こっちだ」

「おい、待て。イグニスはそっちじゃあない」

「でも、この声が道標や英雄に関することだったら?」

「確かにその可能性はあるが……、如何せん私には聞こえていないからな。判断の仕様がない」

「気になったことがあれば、行こうよ。旅には寄り道が付きものだよ。冒険者なら、旅や冒険の道中を楽しまなきゃ」

「私はべつに冒険者ではない」


 先を行くルキスの後を追っていくリアマ。彼女たちが向かった先には地下へと続く洞窟があった。


「ルキス、この先か?」

「うん。この先から聞こえる」

「では、行くか」


 洞窟へと入る2人。洞窟の中には魔物はおらず、どんどん先へと進んでいく。奥へと進むと広い部屋に出た。その部屋には扉があり、その左右には頭のない銅像が1体ずつ置いてあり、赤色の剣と緑色の剣が地面に刺さっていた。

 ルキス達は扉を開けるために前へと進んでいった。部屋の真ん中まで進むとどこからとなく、声が聞こえた。


「足を止めよ」

「誰だ」


 足を止め、警戒するとまたもや声が聞こえてきた。


「兄者よ。この2人が英雄らしい」

「弟よ。それは本当か。まだガキと小娘ではないか」

「英雄よ。力なき者にこの扉を通すわけにはいかない。早々に立ち去れ」

「どうする? リアマ」

「どうもこうもない。力の差を見せつけるだけだ」

「リアマなら、そうするよねー」


 リアマは槍を、ルキスは鉄球を手に持った。


「兄者よ。この者たちは戦うつもりらしい。力の差を見せてくれるらしい」

「弟よ。油断大敵だ」

「兄者よ。油断大敵とは? 敵と言う以上、あの二人以外にもいるのか?」

「弟よ。そういう意味ではない」

「さっきから、気になっているんだけど、頭のない体でどうやってしゃべっているんだろう。たぶん、ゴーレムのとか類だと思うけど」

「人の英雄よ。それは違う」


 2体の頭のない銅像は動き出し、左の銅像は赤色の剣を右手に、右の銅像は緑色の剣を左手で握り、地から抜く。


「英雄よ。我らの本体は像にあらず。本体は剣だ」

「そんなことはどうでもいい」


 リアマは息を吸い込み、炎の息を2体に向かって、吐く。


「兄者よ。わしがやる」

「弟よ。任せた」


 弟は剣を器用に回し始めた。剣から風を出し、竜巻を作り、炎の息をかき消していく。炎の息を消すとリアマに向かって、剣を振るい、風の刃を放つ。


「ふん」


 放たれた風の刃を槍で捌いた。


「兄者よ。大きな口を叩くぐらいの実力はあるようだ」

「ルキスは赤い剣の方を頼む。私は緑の剣の方を速攻で終わらせる」


 リアマは竜力を高めていく。瞳孔が縦に割れ、竜眼となり、竜化した。弟の懐まで一気に入り、槍で攻撃する。しかし、剣で捌かれる。次に空いている右手で像の腹を殴る。少し、後ろに下がらせただけだった。


「竜人よ。力がないな」

「はあああー!」


 さらに竜力を高めるリアマ。すると彼女の頭から、2本1対の赤い角が生えてきた。リアマは竜力を高めることでさらに竜化を進めた。竜角が生えるのは竜化の第二段階である。


「これでくたばれ!」


 さらに拳に力を入れ、前に突き出し、像をぶっ飛ばし、壁に叩きつける。弟は立ち上がろうとしたが、その前に腹のところに槍を投げられ、上半身と下半身が離され、動けなくなった。


「さすが、竜人だね」

「弟よ」


 兄者は弟のところまで駆け寄り、弟である緑の剣を回収した。


「1本の剣の力を100と2本の剣を持てば、力は200となり、倍となる」

「何言っているんだ、このバカは」

「さらに2倍の回転を加えることで力は400となる」


 両手の剣を回し始め、それぞれの剣から炎と風を同時に出した。


「くらえ、我ら兄弟の奥義。火炎熱風」


 火の竜巻がリアマとルキスに襲い掛かる。ルキスは鉄球を1つ床に落とした。


「リアマ、僕に捕まって」

「分かった」

磁力(ガウス)


 リアマはルキスに捕まり、フィデスである磁力を発動させた。床の鉄球と自分を反発させ、上に大きく跳ぶことで火の竜巻を避けた。


「今度はこっちの番だ」


 ルキスは手の平にある鉄球を磁力で高速で回転させていく。それを相手に向け、反発させることで射出した。結果、相手の腹に当てたが、鉄球を埋め込むことだけに終わった。


「この程度では倒れんぞ」

「いや、もう終わりだよ」


 無事に着地したルキスは像に向かって、手を伸ばし、再び磁力を発動させた。今度は自分と埋め込んだ鉄球を吸引させ、敵を引き寄せた。


「リアマ、とどめは頼んだよ」

「任せとけ」


 リアマは引き寄せられた敵にカウンターの要流で相手の腹へと拳を叩き込み、像をバラバラに砕いた。


「約束通り、力の差を見せてやったぞ」


 リアマはそう言い、扉を開け、先に進もうとすると兄者が2人を制止した。


「竜人の英雄よ。待たれよ」

「わしらの役割が終わった」

「我らを持っていけ」


 この場所にはルキスが声を聞こえたため、たまたま寄った場所であった。しかし、洞窟の中には英雄を待つような試練が待っており、リアマはそのことを疑問に思っており、それを聞いた。


「そもそも、お前らは何なんだ。何の目的があり、なぜ剣なのにしゃべっている?」

「我らは昔に作られた古代遺産(アーティファクト)

「ある魔人の英雄に頼まれ、ここを守っていた。それだけだ」

「その魔人の英雄に覚えがあるんだけど」


 ルキスは魔人の英雄と聞いて、ギオンのことを思い浮かべていた。

 粗方なことを聞くとリアマは先に向かおうとした。


「そうか。なら、先に行くか」

「英雄よ。我らは?」

「うるさいから、いらない」

古代遺産(アーティファクト)だし、話す剣って、珍しいよね」


 リアマはうるさいという理由で兄者と弟を置いていこうとしたが、ルキスが言った珍しいという言葉で考え直した。


「確かにそうだな。妹の土産にちょうどいいかもしれん」

「なら、我らを持っていくがいい。」

「妹のアルティに少しでも変なことをすれば、その瞬間バラバラにするからな。名前は?」

「名はない」

「とりあえずは兄者と弟でいいか」


 リアマは兄者と弟をリトスの中にしまい、扉を開け、先へと進んだ。

 扉の先には1つの銅像が置いてあった。その銅像のモデルは女性であり、額には一本角が生えていた。どことなく高貴な雰囲気を感じさせるような銅像だった。


「これから、声が聞こえる。ボクを呼んでいたのはこの像だよ」

「じゃあ、これが道標なのか……。それにしてもこの像はよくできているな。城に飾りたいぐらいだ」

「どうやって運ぼうか、これ」

「リトスの中に入れて、運べばいいだろ」


 リトスの中にしまうために像にリアマは触る。触った瞬間、像は輝きだした。


「なんだ、この光は?」


 輝きが終わったとき、そこには女性がいた。外見は銅像と全く同じだった。水色の髪に金色の眼であり、髪の長さは肩にかからないぐらいの長さだった。服装は袖がなく、ロングスカートにスリットが入ったものであった。腰には赤色の帯が巻かれてあり、右手だけに皮の手袋をしていた。赤い石を着けたペンダントを首にぶら下げていた。

 そして、女性は口を開いた。


「我はトルトニスの英雄にして、名は角人のイディナローク・モノケロース」

「おい、ルキス。道標とは人なのか」

「さあ、見たことないし」

「英雄よ。我を復活させてくれたことに礼を言うぞ」


 イディナロークは2人に銅像から復活させたことにお礼を言う。ルキスは目の前にいるが何者かを聞いた。


「貴方は何者なんですか?」

「間違いがなければ、先代の英雄に選ばれたものだ」

「五大英雄の1人なのかなー」

「五大英雄とはなんだ? もしかして、我の活躍が後世まで名を残っているのか。いくら、封印されてしまっても、栄光は隠せないのだな。なんという罪だ」

 

 イディナは自分に酔ったような言い方をした。

 五大英雄という単語を聞いて、イディナロークがした反応を見たルキスはある人物を思い出させた。


「なんだろう。ピラトおじさんを思い出すよ」

「ピラトか。懐かしい名前だ」

「ピラトおじさんを知っているということは英雄で間違いなさそうだね」

「ただの知り合いという可能性もある。おい、英雄ならリトスを持っているはずだ。互いにそれを見せ合い、確認しよう」

「我は全然構わないぞ」


 3人は自分のリトスを見せ合った。リアマは緑色の懐中時計を、ルキスはピンクのブローチを、イディナロークは赤い石が付いたペンダントを見せ合った。


「確かにリトスだな、それは」

「確認もできたし、とりあえず外に出るか」


 3人は洞窟の外へと向かった。

 外に出るとイディナロークは深呼吸をした。


「久しぶりの外の空気だ! あれから、何年経っているんだ?」

「イディナロークさん。約500年ぐらいです」

「イディナでいい。それにしても500年か。自分の眼で世界がどうなっているかを確認するとしよう。お主たちはどこに向かう予定だ?」

「イグニスに向かう予定です」

「イグニスか。我も行くか」

「ボクは別にいいけど」

「私も構わない」

「見たところ、歩きのようだな。ちょっと待てよ、雷鳴を響かせる戦車ビルスキルニル。」


 イディナがそう言うと空から雷が落ちてきた。雷が落ちた場所には2輪の戦車があり、その前には牽引する動力として、2匹の黒山羊がいた。


「我の戦車に乗るがいい」

「これがイディナのフィデスか?」

「フィデスとは少し違う。見たところ、お主はフィデスには目覚めていないようだな」

「本当に英雄らしいな」

「当然だ。道案内は頼んだぞ」


 イディナは手綱を掴み、黒山羊をイグニスへと走らせた。

 イグニスへと向かう途中、リアマはイディナに目的を尋ねられた。


「時にリアマよ。なぜ、お主はイグニスへと向かう?」

「調べたいことがあるからだ」

「ほうほう、調べたいこととは?」

「シュガーという獣人についてだ」

「……シュガーか」


 シュガーという名前を聞くとイディナはその名前を意味深そうに呟いた。リアマは知っていることがないかを聞いた。


「何か知っているのか?」

「我の口からは言えんな。調べるにしても、どういう方法で調べる?あれはガードが堅いと思うぞ」

「シュガーは私が幼い時から城に来ていた。奴と我がイグニス王家は何かしらの関係があるはずだ。そこから調べる」

「そうか。お主はイグニスの王族だったのか」

「イディナはシュガーとどういう関係だ?」

「簡単に言うなら、昔の仲間だな。そして、かけがえのない友だ」

「そうか」


 イディナとリアマが話していると走行している道の前に魔物が現れた。


「一旦、止まるか?」

「いらん心配だ。ウォーミングアップはここまでにして、本気を出して走らせる。だから、しっかり捕まっておけ」


 手綱を緩めるとさらにスピードが上がり、戦車の周りに雷が纏われていく。その状態で走行し、魔物がこちらに気付くころには引き殺され、何も言わないバラバラの肉塊となっていた。肉と血は戦車に飛び散ったが、3人にかかる前に雷により肉は消し炭に、血は蒸発したことで汚れることはなかった。


「この速度なら、すぐに着くな」

「我の走行を止めることは誰にもできん」

 イディナはそのまま本気の走行でイグニスへと向かった。


****


 リアマの実家であるイグニス城に無事にたどり着いた3人。

 リアマたちが真っ先に向かった場所はアルティの部屋であった。それはただいまという言葉を言うためとお帰りという言葉を聞くためだった。


「アルティ、ただいま」

「お姉さま、お帰りなさいませ」

「アルティにお土産があるぞ。世にも珍しい話せる剣だ」


 リトスから、兄者と弟の2本の剣を取り出す。


「兄者よ、どうすればいい?」

「弟よ、流れに身を任せるしかない」

「本当に剣が話すんですね」

「もっと、話したいが、お姉ちゃんは少ししなければいけないことがあるので、席を外すぞ」


 リアマは部屋を出ていく。ルキスとイディナはアルティに自己紹介した。


「ボクは人のルキス・ペリペティア。アルティ様、よろしく」

「アルティでいいですよ。私の名前は竜人のアルティ・フォン・イグニスです。よろしくお願いします」

「我は角人のイディナローク・モノケロース。トルトニスの英雄だ」

「貴方達もお姉さまとシュガーさんと同じ英雄なんですね?」


 イディナはルキスに確認を取った。


「ルキスよ、シュガーも英雄になったのか?」

「そうだよー」

「そうか、シュガーが英雄になったのか」

「旅をしているお姉さまって、どんな感じですか?」


 アルティの疑問にルキスが答える。


「一見、冷たいように見えるけどね、心では仲間を大切にしているよ」

「誤解されやすいところがありますから」

「我らはどうしたらいい?」

「私が持ってみます。これでシュガーさんと同じ二刀流です」


 他愛のない話が続くとリアマが部屋に戻ってきた。


「あっ、リアマ。シュガーについて、何か分かった?」

「とりあえず、居そうな場所は見当がついた」

「もう、行ってしまわれるんですか」

「ああ、名残惜しいがな。また、お土産を持って帰ってくるからな。アルティは優しいからな。その2本の剣がおかしなことをすれば、遠慮なく捨てていいから」

「わかりました。それでは英雄様の無事をお祈りします」


 リアマたちはシュガーがいると思われる場所へと向かった。

 一方、シュガーは屋敷の近くにある泉におり、不敵な笑いをした。そばにいたリリィがそれを見て、不思議に思う。


「何、笑っているの?」

「少しうれしくてな。懐かしい友に会えると思うと心躍らせる。それにリアマたちも来ているしな」


 シュガーはリアマたちがこちらに来ることが分かっていた。


****


 リアマたちは戦車に乗り、都市イグニスから北へと向かっていた。ルキスはどこに向かっているのかをリアマに尋ねた。


「リアマ、どこに向かっているの?」

「フレアという森の中にある村だ」

「なんで、そこ?」

「……爵位を与えた記録があり、それを調べた。そこにシャルロットという伯爵の爵位が与えられた貴族がいた」

「シュガーの苗字はシャルロットだったね。もしかして……」

「あいつは我がイグニスの貴族だ。爵位が与えられたのは今から約300年前らしい」

「そうか。シュガーはついに自分の力で貴族になったのか」


 やがて、森にたどり着き、中へと入っていく。

 しばらく進むと森の中にポツンと立っている少女がいた。それを捉えたイディナは戦車を止めた。


「なんだ、お主は?」

「お待ちしていました。シュガー様からあなたたちを案内するよう言われて待っていました」

「なぜ、シュガーにそんなことが分かるんだ?」


 リアマたちは行先を誰にも言っていなかった。つまり、3人以外に知るものはおらず、知ることは不可能であった。

 少女は3人に自己紹介した。


「私の名前は魔人のリリィ・シャルロット。じゃあ、さっそくその乗り物に乗らせてもらうわよ」


 リリィは戦車に乗り、道案内し、シュガーのところまで連れて行った。

 着いた先は泉であり、シュガーは背を木に預け、座っていた。イディナがシュガーに声をかける。


「シュガー、久しぶりだな」

「……」

「なんだ。感動のあまり、声が出ないのか?」

「……」


 シュガーは何も答えない。次にリアマが声をかける。


「よくも私に挨拶もしないで勝手にどっかに行ったな」

「……」

「何か、言ったらどうだ?」

「グー……グー……」


 シュガーは気持ちよさそうに寝ていた。


「起きろ!」

「痛っ!」

「何、のんきに寝ている!」

「リア、もっと優しく起こしてくれ」


 リアマの拳によって、目が覚めたシュガー。彼はイディナを見つめる。


「イディナか……」

「久しぶりだな、シュガー」


 シュガーの両目より涙がはらはらと流れる。その姿を見て、イディナがシュガーのことを心配する。


「ど、どうした?」

「すまない……。……ずっと不安だったんだ。イディナが僕を恨んでいないのかと」

「馬鹿を言え。封印されることは我も納得していた。お主を恨む筋はない」

「それでも、長い時間、封印してしまった。何も残っていない」

「シュガーがいる。我はお主の仲間であり、友だ。共に歩もう。過ちがあれば、止めてやろう」


 イディナはシュガーを力強く抱きしめる。


「満足するまで泣くがよい。それまでは決してお主を離さない」


 イディナは優しくそう言った。

 2人のやり取りの一部始終をルキス、リアマ、リリィの3人は見ていた。


「何だろう。ボクたち、完全に蚊帳の外だね」

「というか、シュガー様とイディナってどういう関係なの?」

「見たところ、深い関係に見えるよね」

「もしかして……恋人だったりして……。それはないか」


 ルキスとリリィがそんなことをしばらく話しているとやがてシュガーは泣き止んだ。


「ふぅ……。泣いたら、すっきりしたな」

「お前がいきなり泣くとはな」

「すまない。何が聞きたくて、ここまで来た?リア」

「お前が何者かを聞きに来た」

「全部は教えられないが、それでもいいなら、教えよう」

「それでもいい」

「俺は五大英雄の1人、シュガー・エリュトロンだ」


 シュガーがあっさりとそう言った。シュガーがシャルロットではなく、エリュトロンという名前を使ったことをリアマは不思議に思い、それを尋ねる。


「エリュトロンとはなんだ?」

「魔術師は血によって、繁栄させていくことが普通だ。しかし、エリュトロンは技術によって、繋がれていく。子ではなく、弟子を取り、技術と名前を伝える魔術師のことだ。魔術の師匠がエリュトロンだった」

「それなら、なぜ今は名乗ってない?」

「弟子を作って、エリュトロンを譲ったからだ」


 シュガーがエリュトロンを名乗っていない理由を聞き終わった。リアマはシュガーが突然出ていったこといい、英雄に詳しいことから、五大英雄とは言わないが、それの関係者だとなんとなく感づいていた。


「お前が五大英雄なのはなんとなく感づいた。何が目的なんだ? 私たちとまで離れて、やりたいこととは何だ」

「500年前、俺は力がなく、倒せずに封印するという結果に終わった。だが、今は違う! 今度こそ、悔いのないように……封印という問題を先延ばしにする方法ではなく……完全なる解決をする。それが目的だ」

「それと私たちを離れることが何の関係がある?」

「お前たち英雄も俺の計画に入っている。そのための道標だ」

「ボクからも1つ。五大英雄って、何?」


 リアマの質問が終わり、次はルキスが質問をした。


「五大英雄とは英雄の名誉を上げるために作ったものだ。それだけではないがな。最終的に5人残ったから、五大英雄だ。厳密に言うと違うがな」

「ピラトおじさんが知らないわけだ」


 ルキスの口から、ピラトという単語を聞き、今度はシュガーが尋ねた。


「ピラトにどうやって会った? あいつは会える状況ではないはずだが」

「ちょっと、夢の世界で会ったんだよ」

「興味深いな」


 リアマはシュガーに道標を集める理由を尋ねた。


「何のために道標を集める必要がある?」

「この世界には新たな脅威が迫っている。それに対抗するために力をつけるためだ」

「脅威とはなんだ?」

「それは俺にも分からないが……それを倒すためにリアたちは英雄に選ばれたんだと俺は思う」

「分かった」

「今日はもう遅い。屋敷に泊まっていくか?」

「言葉に甘えさせてもらおう」


 屋敷に向かうためにイディナは2輪の戦車と黒山羊を出した。

 シュガーは黒山羊を撫でる。


「懐かしいな……」


 懐かしむようにつぶやく。


****


 屋敷に泊まり、リアマは夜中に目を覚ました。ふっと思い、部屋の外に出ると玄関から出ていくシュガーとイディナを捉えた。


「なんだ、いったい?」


 2人が気になり、後を追いかける。しかし、夜中の森の中では追いかけることができず、見失ってしまった。諦め、帰ろうとしたリアマだったが、ある少女を見つけ、声をかけた。


「おまえ、こんなところで何をやっている?」

「グー……グー……」


 少女は眠っていた。


「こいつは何者なんだ?」


 リアマが最初に目に入ったのは少女の足であった。それは普通の足ではなかった。少女の足の膝の下あたりからは樹であった。

 少女は目覚めた。


「……」

「起こしてしまったか。それについては謝ろう。しかし、ここで寝るのは危険だぞ」

「英雄……?」

「そうだが」

「懐かしい……」

「懐かしい?」


 少女の言っていることが分からず、オウム返しをしてしまう。少女は独り言のように英雄について、呟いた。


「英雄とは……ケーラで会った……。その人……泣いていた……。悲しいなぁ……」

「詳しく聞かせてくれ!」

「眠い……」


 少女は再び眠ったが、それでもリアマは話を聞こうとした。


「起きてくれ! 力になれるかもしれないんだ!」


 少女は起きず、回りの木が蔓のように襲い掛かる。最初は避け続けたリアマだったが、疲れが出て、足を掴まれてしまった。その場から離れた場所で放り投げられた。

 リアマは再び森の中に入り、少女を探したが、見つけることはできなかった。

 一方、シュガーとイディナは泉にいた。泉を見ながら、話し合っていた。シュガーはイディナが封印した後のことを伝えていた。


「今、どうなっている?」

「結局、倒すことはできず、封印という結果で終わった」

「そうか」

「これは俺の予想に過ぎないが、そう遠くないうちにあれは復活するだろう」

「封印は完璧ではなかったのか?」

「シリウスに会った。あいつが何かしらの方法で生き延びていたなら、ベテルギウスも生き延びている可能性が高い。プロキオンは体を使って、ピラトを封印したから、生き延びてはないとは思う」


 イディナはシュガーから先ほど聞いたピラトの封印について、尋ねる。


「お主から聞いたピラトの封印はどうなっている?」

「封印が解ける見込みがない。おそらく、根本的な力をどうにかしないと外からでは無理だろう」

「お主はどうしたい?」

「みんなを助けたいと思っている」

「何か、当てはあるのか?」

「ある。これは誰にも話していないことだが、イディナを信用して話そう」


 シュガーは姉であるシュテルにすら話していない秘密をイディナに話した。それを聞いたイディナは彼が話した内容に納得できた。それと同時にリスクがあることも理解できた。


「それは本当か? 確かにそれが本当なら、みんなを助けることができるな」

「ああ、これは俺にしかできないだろう」

「しかし、リスクがあるな。本心から従っていたら、それは無意味だな」

「その時は……止めを刺す。それが世界のためになるなら、俺はやる」

「……お主がそう決めたなら、止めん。それにしても、なぜそんなことを黙っていた? みんななら、協力してくれただろうに」

「時間がなかった。それに重荷を背負わせるようなことはしたくなかった」

「お主が背負ったら、意味がなかろう。シュガーらしいが、もっと周りを頼れ。背負えないほど、弱くないからな」

「分かった。どんどん頼らせてもらおう」

「どーんと来い! あと、聞きたいことがあるのだが、いいか?」


 イディナはシュガーと話していて、ずっと気になったことがあった。


「なんだ?」

「お主の口調はどうなった。まるで別人だぞ」

「ある大陸を冒険している時にややこしいから、変えた」

「ある大陸って?」

「そこはアース大陸と言い、船で行き、100年ほどそこで冒険していた」

「仲間にはどんな種族がいたんだ?」

「お前が知っているエクレールだろ。それに魚人、宝玉人、虫人、歪人だな。ほかにもいるけどな」


 シュガーは思い出すように言う。


「知らない種族ばかりだな」

「このヴァン大陸にはいない種族だからな。みんな、いいやつだったよ」

「聞かせてくれ、お前の冒険を」

「もちろんだ」


 シュガーがイディナにアース大陸でした冒険を話していく。話していると空が白んでいた。

 リアマとルキスは屋敷の入り口でシュガーに見送られていた。


「リア、ルキス。元気でな」

「お前もな」

「……道導の1つはあの山にある。あそこは岩人や蛇人などの種族が集団で暮らしている。失礼がないようにしてくれ」

「分かった。教えてくれて、ありがとう」


 リアマとルキスは道標を集めるべき、村フレアよりさらに北に行き、山へと向かっていった。


 英雄であるイディナの封印を解き、シュガーの過去を聞いたリアマとルキス。新たな脅威に対し、力を身に着けるため、道標を集める。

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