それぞれが歩む道
魔術は火、水、風、土、雷、光、闇の7つの属性と強化などの誰でも使えるものに分けられる。
7つの属性は適性が必要となるが、強化などは基本的に魔術が行使できれば、誰でも使えるが、どこまで使いこなせるかは本人の才能に変わる。
普通の魔術師だと2つの適性を持っていることが多い。魔術師連盟の指導者の中でもアルト・ケイモーン・オイサーストは7つ全部の適性を持っている魔術師である。
前回のあらすじ
五大英雄の1人シュテルに話を聞きに行くレイたち。一方、シュガーは新たな英雄を生み出そうとしていた。
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レイたちはリベルダースで馬車を借りて、シュテルを向かっていた。英雄6人に加えて、フラースも乗っていた。
「フラースさんはどこまで、一緒に来るの?」
「地の果てまで……と言いたいけど、さすがにそろそろチクスに戻らないと。だから、シュテルお姉さんに会ってから、帰ろうかなって」
「シュテルさんに会ったことあるの?」
「まあね。シュテルお姉さんは私のことを知っていたみたいだったよ」
フラースとレイの会話を聞いていたリアマだったが、自分と同じようにシュガーと付き合いの長いフラースなら、なにか分かるのではないかと思い、聞いてみた。
「フラン。お前ならシュガーの目的が分かるのではないか?」
「私は何も知らないよー」
「そうか」
馬車は順調に進んでいき、町シュテルに無事にたどり着いた。
英雄シュテルが住んでいる屋敷を町で聞き回った。その結果、この町から西に行った場所に屋敷があることが分かり、再び馬車を走らせた。
「町の人によると屋敷の近くには湖があるらしいね」
「そのうち、見つかるだろ」
レイはシュガーに言われたことを思い出していた。フィデスに目覚めていないという言葉を。
「フィデスに目覚めてないのは俺にアモル、リアマか」
「レイ、お前にはフトールム・フォルテがあるじゃねーか」
「アスラ、前に説明したと思うけど、それはシュガー曰く、違うだって」
「前向きに考えようぜ。目覚めてない力があるなら、まだまだ強くなれるって。そうだ、フォルテに聞けばよくね?」
「聞いたけど、記憶にないって」
「役に立たねーな」
レイはフィデスのことについて、考えた。英雄によって、フィデスに違いが出る。ルキスは磁力。アスラは右腕を分解し、黒い装甲に再構築する。ミラは種族の独自の力を使える。
自分の本来のフィデスはどんな能力なんだろうと考えた。
考えていると大きな湖が見え、その先には屋敷があった。
「アモルが住んでいる屋敷も大きかったけど、この屋敷はそれ以上だ」
「しかも、塀があって、門まであるよ」
ミラとルキスは屋敷を見た感想を言い合った。
湖に迂回し、屋敷の門まで近づくとある不自然な感覚が強くなった。そのことをレイはアモルに聞いた。
「ねえ、アモル。この塀、やけに右に伸びていない?」
「確かにそうですね。おそらく、そちらには畑などがあるため、スペースを取っているんだと思いますよ」
この屋敷の堀はやけに右に長く伸びていたため、それが不自然に感じていた。
レイたちは正門から入り、屋敷の扉の前に立った。アモルはノッカーを手に持ち、扉に付いている金属板に当て、音を鳴らした。すると扉が開き、中から人が現した。
「どちら様でしょうか?訪問の予定はないのですが」
その人をレイ、アモル、ルキスの3人は見たことがあった。金色の髪に緑の瞳。シュテルからラクテアと呼ばれていた使用人であった。
「フラース・アンヴィ・セニュエロです。シュテルお姉さんに会いに来ました」
(シュテルお姉さん……?)
「分かりました。主に聞いてまいりますのでお待ちください」
ラクテアはフラースが言ったことに疑問を持ったが、シュテルに聞くべき、扉を閉めた。しばらくすると扉が開いた。
「すいません。主は会いたくないそうなのでお帰りください」
「私たちは英雄に選ばれて、シュテル様にアドバイスいただきたく参りました。これが英雄の証である私のリトスです」
「分かりました。もう一度聞いてまいります」
ラクテアに帰るように言われたが、そうするわけにはいかず、アモルは自分たちが英雄であると話し、その証拠にリトスを渡した。再び扉が閉められ、しばらくすると扉が開いた。
「主がお会いになられるそうです。中へどうぞ」
レイたちは屋敷の中に入り、1階にある応接の間に通され、そこでシュテルが来るのを待つことになった。その間にレイはアモルにシュテルがどんな人かを尋ねてみた。
「ねえ、アモル。シュテルさんって、どんな人?」
「私は遠くから見たことしかなく、話したことがありません。ただ……」
「ただ?」
「父の話によるとリベラ家とグランツ家は昔から、関係があると言われています。昔、どんなことがあったのかまでは分かりませんが」
「そうなんだ。ありがとう」
話していると扉が開き、ある人物が入ってきた。腰まで伸びているであろう金色の髪に宝石みたいな青の瞳。そして、五大英雄の一人であるシュテルが部屋に入ってきた。
「こんにちは。私は貴方たちの先輩で五大英雄の1人。シュテル・ビナー・グランツよ」
「アモル・リベラと申します。本日はシュテル様の知恵をお借りしたく、参上しました」
「アモル、もっと楽にしても構わないわ」
シュテルとアモルは互いに自己紹介をする。アモルはさっそくシュテルに道標について、質問した。
「道標について、何かご存知でしょうか?」
「道標ね。知っているわ」
「私の仲間にはシュガーという英雄がいるんですが、彼から集めた方がいいというアドバイスをもらったんです。それで何か教えてもらえないかと」
「シュガーはどこにいるの? ここにはいないみたいだけど。知らないと思うけど、あの子は私の弟なの」
「……それがやりたいことがあると言い、今は別行動をとっています」
「フーン……。まずは道標についてね。道標はリトスによって、導かれるでしょう。貴方達が出会ったように。私が言えるのはここまでね。ほかに聞きたいことはある?」
続いて、レイが異世界から来た人について、シュテルに質問した。
「僕の名前はレイ・シルバと言います。異世界から来た英雄で五大英雄の中に異世界から来た人がいたと言われていますが、これは本当ですか?」
「それは本当だけど、私が教えるわけにはいかないわ」
「なんでですか?」
「その子が知られたくないと言っているから」
「……僕は無事に元の世界に戻れるんでしょうか?」
「私から言えることは貴方の意思次第ね」
「どういうことですか?」
レイはシュテルが言っている意味が分からず、聞き返した。
「旅を通じて、この世界に留まりたいと考えが変わるかもしれないから。自分でどうにかならないことはいくら心配しても無駄よ。仮にこの世界に残るとしてももう1人じゃないでしょう。帰る方法については知らないわ」
「答えていただき、ありがとうございます」
「ほかに聞きたいことはある?」
リアマがシュガーの行動とリトスについて、質問した。
「私の名前はリアマ・フォン・イグニス。シュガーが別行動をとっている理由が知りたい」
「それは知らないわ。昔から、突然行動することがあったから」
「あと、私はまだフィデスに目覚めていないのでリトスに関することが知りたい」
「それは自分で知っていくことね。そっちのほうがいい経験になるしね。聞きたいことはこれぐらい?」
「はい、今日は突然訪ねた上にお時間を取っていただき、ありがとうございます」
「なら、私も知りたいことがあるから、聞いていい?」
アモルがシュテルに時間を取ってくれたことにお礼を言うとシュテルが聞きたいことがあると言った。
「ええ、どうぞ」
「そこの銀髪の子に聞きたいことがあるの」
「私ですか……」
シュテルの目線はミラに注がれた。
「名前と出身国を聞きたいわ」
「私の名前は人のミラ・ピランです。出身はアクアです」
「あと、1つ。親はいる?」
「いや、捨て子だったみたいで拾われて、孤児院で育ちました」
「答えてくれて、ありがとう」
「いえ……」
シュテルはミラに質問が終わると今度はフラースのほうに顔を向けた。
「フラース、さっきは帰ってと言ったけど、近々あなたに仕事を依頼するかもしれないわ」
彼女にそう言い、五大英雄シュテルの接見は終わった。
レイたちは屋敷の外に出て、これからのことについて、話し合った。
「リトスに導かれるといっても拠点がほしいね」
「とりあえず、ルークスにある私の家でその時を待ちますか?」
「そうだね。それで事件などを起こってないかを調べよう」
「それでいいと思います」
「悪いが、私はみんなとは別行動をとる」
レイとアモルの話し合いの結果、一先ずルークスに戻ることに決定したが、リアマが別行動をとると言い出した。アモルは彼女にその理由を尋ねた。
「なぜですか?」
「私はシュガーの過去などを調べるためにイグニスに戻る。それをもとに行動する予定だ」
「3人ずつに分けますか?」
「1人で十分だ」
「そういうわけにはいかないよ。リアマにはボクが一緒に行くよ」
リアマは道標を集めることも大切だが、シュガーの過去もなにか繋がりがあると考えていた。彼女は1人で十分と思っていたが、ルキスは一緒に行くと言った。
「お前がついてくるのは別に構わない」
「リアマも別れるのか……」
「一時の別れだ。また会える」
リアマとルキスは仲間に別れを告げ、イグニスへと向かった。
レイたちはリアマたちとは反対の方向に馬車を走らせ、ルークスへと向かった。
****
一方、シュガーは自分の屋敷にいた。火の国イグニスの北には森があり、山脈があり、そのふもとにはフレアという村があった。彼の屋敷はその村から少し離れている場所にあった。
ある部屋にシュガーがおり、ほかには2人いた。
1人はエクレールという森人だった。肩にかからないぐらいの長さの銀髪であり、シュガーと同じ赤眼であった。
もう1人はドルチェという宝玉人だった。髪はロングでエクレールと同じように耳が尖っていた。赤髪青眼であり、額には四角錐の赤い宝石があった。
「ルシフェルはどこにいる?」
「さあ、彼女は気まぐれですから」
「まあいい。あいつもやるときはちゃんとやるからな」
シュガーはルシフェルがいないことをエクレールに確認した。すると今までのことが脳裏にかすり、懐かしむように言った。
「ようやく、最後のピースである英雄が選ばれた。俺まで英雄になるのは予想外だったが」
「シュガー様はフィデスを修得され、その先までいっておられるんですよね?」
「ああ、この領域に来るまで、少し苦労したが、見返りは十分あった」
「これから、何をなさっていくんですか?」
エクレールにこれから先のことを聞かれ、シュガーはそれぞれの役割を託していく。
「ドルチェにはスノウを指導してもらい、エクレールにはセレネ、シリウス、ペテルギウスの探索だな」
「私はそのスノウって子の指導をすればいいよね。その間、シュガー様は何をするんですか?」
「リトスを使いこなす修行が主だな。シリウスとペテルギウスの戦闘は避けることはできないだろうしな」
「分かりました。それでは私が先に行きますね」
「スノウのことを頼んだぞ」
「任せてください」
ドルチェは屋敷を出て、スノウたちがいるソルムへと向かった。
シュガーは彼女を見届けると地下へと向かう。彼が魔術の実験や研究などを行う時は屋敷の地下でやっていた。
地下へと向かうシュガーの右側には1人の少女がいた。彼女の名前はリリィ。15才で金髪赤紫眼であり、髪型はツーサイドアップのロングヘアーである。
2人はある部屋に入るとそこには魔方陣が書かれており、神々しい力も感じ取れた。リリィはシュガーに力の正体を聞いた。
「シュガー様、これは何?」
「何だと思う?」
「分からないから聞いているのよ。さっさと教えなさいよ」
「この力は神力だ。神の遺産に宿っている神力を抽出したものだ。元々、魔術は神の奇跡である神術を真似たものだ」
「魔術が神の奇跡と並んだ術を魔法と呼ぶんだったわね。つまり、この陣は魔法を行使するためのもの。何をする気なの?」
「この陣は英雄を作る魔法を発動させるものだ」
魔方陣は高度な魔術を使用する際に補助として、使われている。しかし、書くというプロセスがある以上、戦闘に向かないとされる技術である。シュガーは戦闘ではない儀式や研究などで使用していた。
「英雄を作る……」
「そうだ。英雄に選ばれた者はリトスを持つことになる。これは英雄を選ぶ儀式を再現したものだ」
「これが本当なら、何人でも英雄が作り出せるじゃない。」
「世の中、そう簡単にいかん。これを使えば、相手側に対策されるし、本来ならリトスの元となる原材料が用意することすらできない。さあ、儀式を始めよう」
シュガーは魔方陣の中心に赤い球を置いた。神力と魔力を陣に沿って、流していく。魔方陣が輝き、赤い球は赤き光となり、陣から放たれる光と1つとなる。光は中心で圧縮され、強い光を放ち、消えていった。
「シュガー様、これ失敗?」
「成功したはずだ」
「そもそも、なんで作ったのこれ?」
「知的好奇心と英雄を手元に置いておけるようにするためだったが、俺が英雄に選ばれたからな。発動させたのはちゃんと発動できるかの興味本位だ」
「その興味本位で選ばれる英雄には憐れみを覚えるわ。興味がわいたから、陣をもう少し見ていくね」
「そうか。先に戻るぞ」
シュガーは部屋を出ていく。リリィはずっと気になっていたことがあった。
「誰なんだろう。あの人は」
シュガーの左側にいた人のことをリリィは気になっていた。
それぞれの道を歩む英雄たち。己が進む道が正しいと信じて。




