昔の英雄たち
異世界の移動は世界によって、難易度は違うが、たいていの場合かなり難しい分類にあたる。
人では異世界を移動するための理論がないし、発動するための膨大なエネルギーもないため、異世界を移動することはできない。
神だからといって、ほかの世界に移動できるわけではないため、神の間でも異世界に渡る術を持つ者は少数である。
前回のあらすじ
レイたちと合流するべき、リベルダースへと向かうシュガーたち。一方、リベルダースにはある人物が噂を流しており、その真実をルキスが確かめようとしていた。
****
レイたちがこちらの世界に戻って来て、3日が経っていた。
砂浜で倒れていたレイたちはとりあえず町を目指し、歩き出した。そして、ある街に着き、リベルダースの地域であることが分かり、アモルの故郷である都市リベルダースに向かうことにした。
無事にリベルダースに着き、アモルの実家であるリベラ家の屋敷に泊まらせてもらっていた。
ルキスは町中を冒険しに行き、アスラは町中で走り込んでいた。レイとアモルは仲間とどうやって合流するかを話し合っていた。
「ミラたちはソルムにいるよな」
「おそらく、そうですね。しかし、ソルムに目指すべきでしょうか?」
「どうして?」
「シュガーたちも突然消えたので、当然探していると思うんです」
「そうだね」
「すれ違いになる可能性があります」
「それなら、待とうか」
レイの言ったことはアモルの中では少し疑問が残った。
「どうして、そう思ったかを聞いていいですか」
「シュガーが『リトスが集まるときを教えてくれる』と前に言っていった。夢の世界でもリトスの光に導かれた。それなら、いっそリトスが教えてくれるまで待つのも手だと思って」
「ほかに解決方法がありませんし、レイの言っていることも確かですね。もう何日か待つのが一番いいでしょう」
話し合いの結果、この都市でもう何日か、待つことに決まった。
****
都市リベルダースでは吟遊詩人により、ある噂が広がっていた。
『8つの道標と呼ばれるものを集めることで神座が示される。そこで神に出会い。願いが叶う。』
町に出ていたルキスはそんな噂を聞き、吟遊詩人にもっと詳しい話を聞くべき探していた。
「見つからないなー」
町にある宿屋や酒屋などを聞き込みし、吟遊詩人の特徴を掴んでいた。
「女性で青白い髪、濃い青の瞳をした人か。綺麗な人だろうなー」
「貴方が私のことを探していたの」
後ろから、声をかけられた。振り向くとルキスが探していた青白い髪で濃い青の瞳を持つ女性だった。
「私を探していた理由はなに?」
「町で流れている噂について、詳しく聞きたいとおもったから、探していました。遅れたけど、ボクの名前はルキス・ペリペティアです」
「私の名前は……シリウスよ」
噂を流した吟遊詩人はシュガーと因縁があるシリウスだった。
どこかで聞いたことがあるような名前とルキスは思いつつ、自分が気になることを尋ねた。
「あの噂について、どこで知ったんですか?」
「私は魔術師でもあって、古い文献を調べた時に見つけたのよ。その一部が解析できたから、みんなに目指してもらおうと思って、流したの」
「こう言っちゃうのもなんだけど、独り占めしようと思わなかったの?」
「私、独りだとかなり時間が掛かるの。興味があるのは結果でそれなら、みんなに目指してもらって、集めた結果を見ればいいかなって、考えたの」
「ふーん、そうなんだ」
「貴方にも期待しているの」
「えっ、なんで?」
「貴方も英雄に選ばれているんでしょう。それなら、可能性が高いと思うから」
そう言い、シリウスは言い、その場を去った。
「帰って、アモルたちにこのことを相談しようかな」
ルキスは屋敷に足を向け、歩き出した。
****
レイたちが都市リベルダースに着いて、さらに2日ほどが経った。遅れて、シュガーたちが都市リベルダースに入った。
「さすが、シュガーだな。感知して、レイたちの場所を探し当てるとはな」
「犯罪者を追う時にしている作業だ。正確に言えば、感知できたのはアスラの場所だ。アスラの荒々しい闘気のそばにリトスの力も感じる」
町を見つけるたびに感知しながら、歩き回り、レイたちの力を探していた。ついにこの都市リベルダースで見つけることができた。しかし、見つけることができたのはアスラの力だけだった。
「アスラのそばにはレイたちはいないのか?」
「リトスの力を感じないから、そばにはいないのだろう。アスラの闘気は動き回っていることから、走り込みをしていると考えられる」
「さすがだね、シュガーちゃん」
「なんで、フラースまでついてきているんだ?」
シュガー、ミラ、リアマの3人に加えて、フラースも付いてきていた。
「レイ君に会うためだよ。会うためになら、どんな苦労をいとわないよ」
「……そうか」
「アスラに会いに行くか」
レイたちはアスラのところに向かった。
****
無事、リベラ家の屋敷へと帰り着いたルキス。メイドたちに迎えられ、屋敷の中に入り、アモルたちがいる部屋を訪ねた。シリウスから聞いた話を伝えた。
「道標か……」
「願いを叶えることができるんですね。悪用される危険性がありますね」
「そうだね。ボクたちで集めるべきかなー。あと、なんで、アモルたちは地下にいたの?」
現在、レイたちは屋敷の地下にいた。
「五大英雄のことを書かれている本を探しているんですよ。箱にしまったということはわかったんですが、どの箱かが分からなくて」
「だから、こうして、その本を探しているんだ」
「そうなんだ」
レイたちの前に選ばれた英雄ピラトから、五大英雄は意図的に作られたと聞いていた。それでも、本に何かのヒントが書かれているのではないかとレイは考えて、本を探していた。
そして、ついにその箱を見つけた。
「レイ、見つかりました。この箱です」
箱の中には2冊の本、青色の丸い鉱石が入っていた。鉱石の大きさは野球ボールぐらいだった。
「この鉱石は何だろう?」
「これはたぶん投影石だと思う」
「投影石?」
「魔術で術者の視覚情報を映像にして、特殊な鉱石に保存したものを投影石って、いうんだよ。専用の魔導機で再生ができるはずだよ」
魔術と機械を融合させた魔術を魔導と呼んでいる。魔導機とは一般人でも魔術を機械で使えるようにしたものであり、洗濯機や冷蔵庫などの機械に当たるものである。
しかし、この世界では魔導を研究する人が少なく、さらに材料として使われる機械が希少なため、値段が高く、一般家庭には広まっていない。
「魔導機なら、屋敷にあると思いますよ」
「さすが貴族。それなら、再生してみようか。気になるし」
レイたちは地下から出て、部屋に戻っていた。アモルが魔導機の準備をしている間、レイとルキスは本を読んでいた。
レイが読んでいる本の題名は『英雄物語』、ルキスが読んでいる本は題名が書かれてなかった。英雄物語を要約すると次のようになった。
『英雄物語』
約500年前、神に選ばれた英雄がいた。英雄たちは各国で起こった事件を解決したり、様々な場所を冒険することで力を身に付け、絆を深めていった。
そして、世界の平和を思うあまりに世界に害なす存在になってしまったものが現れた。英雄たちは世界に平和を取り戻すために害なすものを倒す決意をする。
しかし、神々の中には害なす者の考えに賛同するものがいた。そのため、神々を巻き込んだ戦いに発展していく。神々を巻き込んだ戦いになったことから、人々はこの戦いを神界大戦と呼んだ。
戦いの結果、害なす者を封印することに成功する。英雄たちは願った。いつか封印が解けたとき、考えが変わってくれているようにと。
世界に平和をもたらした英雄を人々は五大英雄と呼ぶようになる。また、五大英雄の一人が異世界から来た者だったので、異世界人が崇められるようになる。
「アモルから、聞いた話通りだ」
「こっちの本はぜんぜん読めない」
ルキスが読んでいる本の内容は読めない文字を書かれてあった。
「冒険者としてのボクの勘がこの本は重要だって、言っている」
「その勘は当てになるの?」
「重要じゃあなかったら、こんな風に読めなくする意味がないと思うんだ」
「言われてみれば、その通りだね」
「お待たせしました。魔導機を持ってきました」
レイはアモルにお礼の言葉を言い、投影石と魔昌を魔導機にセットする。部屋を暗くし、映像を再生させた。
大きい屋敷があり、その入り口に3人おり、扉の前では使用人らしき女性が2人いた。
『これで残せるのか』
『そのはずよ』
そこに映っていたのはピラトだった。それ以外では金髪の女性と赤髪で狐耳が生えている少年の2人の加えて、ある声が聞こえていた。
レイたちは赤髪の少年に身に覚えがあるような気がした。
『早くしてください。この魔術は使い慣れていないので』
その声にルキスとレイには聞き覚えがあり、ギオンということが分かった。
「これは500年ぐらい前に撮られたようですね」
「ピラトおじさんとギオンおじさんがいるから、間違いないね」
「とりあえず、最後まで見てみよう」
ピラトが女性に話しかける。
『そもそも、映像に残そうとしているんだ?』
『この子がいつか帰るときに思い出になるとおもって』
『そうか』
女性が赤髪の少年に話しかけた。
『今度は抜けだしたら、駄目よ』
『分かりました。シュテル姉様』
『この子のことは任せたわよ。ラクテア、エクレール』
『分かりました』
シュテルは屋敷の入り口にいた2人の女性に話しかけた。
ラクテアと呼ばれた女性は金髪でエクレールと呼ばれた銀髪で2人ともショートだった。エクレールの耳は尖っており、このことから森人であることが予測できた。
『ピラトさん、ギオンさん。短い間だったですけど、楽しかったです。今までは屋敷の中で過ごしていましたので』
『なーに、俺が映像を土産にまた来るからな』
『はい、楽しみにしています』
『それでは行ってくるわね、シュガー』
そこで映像が終わった。
「見覚えがあるとは思ったけど、赤髪の少年がシュガーとはね……」
「一度、整理してみよう。ピラトさんは神界大戦のときに封印されて、動けなくなっている。このことから、これはピラトさんが英雄として、活動している時。つまり、500年前に撮られたもので間違いないこと。シュテルと呼ばれていた人はシュガーの姉に当たる人ということ。分かったことはこの2つだね」
「これはリアマから聞いた話ですが、シュガーは昔から年を取っていないみたいです。それにしてもシュテル様が前世代の英雄だったですね」
レイが映像を見たことで分かったことを整理した。アモルの口から、『シュテル様』という単語が出てきたため、知っていると思い、彼女に尋ねてみた。
「アモルはシュテルという人物を知っているの?」
「かなり有名な方ですよ。少なくともルークスの貴族で知らない人はいないと思います」
「かなり大物なの?」
「シュテル様は四大貴族の1つ、グランツ家の出身でルークスの相談役にして、教会にも所属している天人です」
シュテルがグランツ家であることを聞くとルキスはある考えが頭に浮かび、アモルに確認した。
「それって、シュテルさんの弟であるシュガーもグランツの血が流れているということ?」
「いや、グランツ家で獣人の方はいなかったはずです。それにシュガーは小さいころに家族と離れ離れになって、別の家に拾われたと言っていましたのでグランツ家に拾われたのでしょう」
「シュガーの小さい頃か……。どれくらい前のことだろう?」
「少なくとも500年前以上のことでしょう。映像に出てきた獣人が私たちのシュガーと仮定した場合ですけど」
「映像に出てきたのは少年の面影が残っているよね。いまでも、若干は残っているけど」
レイは500年以上前以上という言葉を聞き、なんとなく、どうやって生き延びているかが気になり、呟いた。
「そもそも、シュガーはどうやって500年間生き延びているんだろう」
「魔術じゃない? 魔術で不老不死になっているとか」
シュテルが天人ということを聞き、レイの中であることが気になり、それを確認するためにも天人の寿命について、アモルに聞いてみた。
「アモル、天人の寿命はどれぐらい?」
「およそ200年ぐらいですね」
「シュテルさんは今でも生きている。どうやって、生き延びているんだろう。アモル、知っている?」
「いや、それは知りませんね」
「そこに鍵がある気がする。シュガーとシュテルさんの共通している何かがあると思う」
「シュガーが話してくれるまで待つしかないねー」
「でも、シュガーが何かが知っているのは間違いない」
話さないということは知られたくないということである。レイたちは信じた。シュガーがいつか話してくれるだろうと。
****
シュガーたちは町の外れにいたアスラを見つけることができた。アスラの案内でリベラ家の屋敷へと向かい、途中で少し迷ったが、無事にたどり着くことができた。レイはフラースがいることに驚きを隠せなかった。
「なんで、フラースさんがいるの?」
「レイ君に会いたいがためにソルムからはるばる追いかけてきたよー」
(自分の世界に帰ったとしてもフラースさんなら、追いかけてきそう……)
「もう、お腹がペコペコだから……ごはんにしよう!」
屋敷に着いたころは夕方だったため、全員で食事を摂った。食後の紅茶を飲んでいる時にシュガーがレイに尋ねる。
「レイ。さっきからお前の視線を感じるが、俺に何か用があるのか」
「いや、用は何もないんだけど……」
あの映像を見たことでレイは無意識にシュガーのことを見ていた。2人の間にルキスが入ってきた。
「シュガー、読めない本が見つけたんだけど、君に読んでもらえるかな」
「別に構わないが」
ルキスは地下で見つけた本をシュガーに手渡した。本の中身を読んでいった。そして、閉じた。
「読めないな」
「シュガーでも、ダメかー」
「ただ、この本は封印されているな」
「どういうこと?」
「魔術で封印されていて、それを解くことで読み解けるタイプだ。違う言語とかで書かれているわけではない。最も魔術以外の方法で封印されているかもしれないが」
「分かった、ありがとう」
ルキスに本を返し、それぞれは準備のされた部屋に戻っていく。アモルは自分の部屋に戻り、レイはアスラと、リアマはミラと、シュガーはフラースと同じ部屋になり、ルキスは1人部屋となった。
レイが部屋に戻るとベッドの上に手紙が置かれていた。それを拾い、読んだ。その手紙にはある場所に来るようにと書かれていた。そこへと向かうため、部屋を出た。そこでアスラに声をかけられた。
「どこに行くんだ?」
「ちょっと、外で風を浴びてくる」
「そうか」
外は星が瞬く音も聞こえてきそうなほどの静寂であり、レイは手紙に書かれた場所へと向かっていく。
そこは都市の中にある湖だった。その場所には既に人がいた。シュガーとアモルだった。
「レイも来てくれたか」
「アモルもシュガーにと呼ばれたの?」
「ええ、そうです」
2人を呼んだのはシュガーだった。彼は2人の方を見ずに湖を見ていた。
「話したいこととはなんですか?」
「やりたいことができたから、後は任せた」
「えっ……」
アモルとレイは今シュガーが言ったことは分かったが、頭の中では理解できなかった。
「それはどういうことですか?」
「言った通りだ。やりたいことができたから、英雄は任せたと言っている」
「そのやりたいことを聞いていい?」
「それは話せない。もしかしたら、これが英雄に選ばれた理由であり、果たすべき使命かもしれない。もっとも、英雄に選ばれなくともやっていたが」
シュガーは自分のことを話さなかった。シュガーは長く生きているため、昔のことが関係しているのではないかとレイは考え、彼に聞いた。
「それは昔のことが関係しているの?」
「それも話せない。最後に3つのアドバイスをしよう。1つ目はルキスが持っているあの本を大切にするといい。あれはガルドラボークという本だ。次に噂になっている道標は集めるべきだ。その経験がお前たちを強くするだろう。最後にレイとアモル」
「何かな?」
「早く、フィデスを使えるようになれよ」
「アモルはともかく、俺は使えて、フォルテを呼び出しているよ!」
レイの使うフィデスはフトールム・フォルテで自分の未来であるフォルテを呼び起こすことだと思っていた。しかし、それはシュガーに否定された。
「一緒にいて、分かった。フィデスではない。リトスによって、起こされているのは事実だが、レイのそれはフィデスではない」
「……」
「お前たちとの旅は楽しかった。だからこそ、離れてでも、やり遂げたいという気持ちが強くなった」
振り返り、シュガーがそう言いながら、右眼からは緑の光が放たれていた。言い終わると瞬間移動でどこかへと行き、その場から消えた。
次の日、シュガーがいなくなったことを尋ねられたが、昨晩に起こったことをありのままに伝えた。シュガーと付き合いの長いリアマに何か心当たりがないかを聞いてみた。
「ねえ、リアマ。シュガーの行動に心当たりはないかな?」
「ない。今、振り返ってみれば、シュガーは自分のことを全くと言ってもいいほど、話してなかったな」
「そうか」
「だが、気に入らないな。」
「何が気に入らないの?」
「この中で付き合いが一番長い私に何も言わずに出ていくとはな」
レイたちはこれからのことについて、話し合った。
「これから、どうしようか?」
「シュガーが言った通り、ガルドラボークの解読と道標を集めるべきだと思います」
「ガルドラボークの解読は誰がやるんだ?」
シュガーが抜けた今、魔術が使えるのはレイ、ルキス、ミラだった。その中で魔術学校に通っていたのは1人だけだった。みんなの目線はミラに刺さった。
「私がー!?」
「だって、ボクは村の人に教えてもらっただけだし」
「俺はエルに少し手解きを受けただけでこの中ではミラが一番適性あるよ」
「はい、これがその本だよ」
ルキスはガルドラボークをミラに渡した。
「本の解読はこれでいいとして、道標はどうする?」
「そのことですが、前世代の英雄であるシュテル様に会ってみるのはどうでしょうか?」
リアマの疑問にアモルが提案し、レイはそれに賛成の意を示した。
「今のところ、何もヒントがないし、アモルに意見に賛成だな。けど、シュテルさんがどこにいるか、分かるの?」
「ルークスにあるシュテルという町にいらっしゃいます」
「町に自分の名前が付いているのかよ!」
「シュテルという町はシュテル様がそこに住んだことで人々が集まったことが由来だと言われています」
「ならさ、準備してからそこに向かおう」
シュガーに関することや道標のヒントを聞くべき、英雄シュテルにいる町へと向かうレイたち。
シュガーはいったい何が目的でレイたちから離れていったのだろうか。




