世界を愛せ
神の遺産は古代遺産と違い、人の手では作ることができないため、圧倒的に数が少ない。
前回のあらすじ
射撃大会が終わり、幽霊が出るという噂がある森にやってきたシュガーとミラたち。その間、宿屋ではリアマがフラースにシュガーと出会った時の話を聞きだす。
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シュガーたちは都市ソルムにある森に来ていた。森は樹木が鬱然と地をおおい、晴れた日でも地面が黒く湿っている。ここはこの近くに住んでいる村の人達などが狩猟している場所であった。森の中を獣のようにくぐり、前へと進んでいく。
「それにしても、幽霊も気の毒だな。マーティスのロッホとブランコに探されるなんて」
「まあ、あることが頭に引っかかってな」
「あること?」
「その幽霊が霊人という種族である可能性がある」
ミラはリアマの話したことを思い出した。リアマたちが霊人に襲われたという話を。リアマから聞いて、シュガーに詳しく聞きたいと思っていた。
「霊人って、どんな種族なんだ?」
「どちらかいうと精霊に近く、自然に生まれてくる種族だ」
「自然に?」
「種族の生まれ方は俺が知っている限りでは人型と精霊型の2つに分けることができる。人型は親がいて、子がいる。血によって、繋がれていく。精霊型は基本、親兄弟がいなく、自然発生で生まれる」
「何か、違いがあるのか?」
「人型は親が必要だ。もし、獣人が全滅した場合、親となるべく存在がいないため、生まれてくることがない。それに対し、精霊型は親を必要としてない。自然発生するため、全滅したとしても、また新たな個体が生まれてくる」
「霊人は精霊型なんだよな。どうやって、生きるための知識をどうやって得るんだ?」
シュガーの説明でミラたちは種族の生まれ方の違いを理解できた。そこに新たな疑問が生まれた。
「基本知識は生まれた時からあるとは聞いたことがある。それ以外では興味を持ったもので変わる」
「余ら、人でもそうではないか」
「彼らはそれ以上だな。影響をかなり受けやすい。知り合いの霊人は本に興味を持ったから、本ばかり読んでいるな。かなり話がずれたな」
霊人のことを説明するはずが、いつの間にか種族の生まれ方について、説明していた。
「そうだよ。霊人のことを教えてくれよ」
「霊人は特殊なエネルギーで構成されて、独自の力は霊力と呼ばれている」
「それなら、私のフィデスでも使えそうだな」
「それは難しいな」
ミラのフィデスは種族の独自の力を使うことである。それを使うことで自分でも霊力を操ることができると考えたが、シュガーに否定された。
「なんでだよ?」
「霊力で出来る壁抜けや浮遊などは特殊なエネルギーで構成されている霊人だからこそ、できると俺は考えている」
「なら、人の身で霊力を使える技を知らないのか」
シュガーは少し考え、口にした。
「……物質化?」
「なんだ、それ?」
「俺も詳しくは知らないが、武器に霊力を使うことで新たな武器にする技術らしい」
ミラにそう話すと今度はスノウが訪ねてきた。
「師匠はなんで、種族について詳しいんですか?」
「異世界のことを調べるために歩き回っていて、その時にいろんな種族と触れ合う機会があったからだ。中には異世界から来た種族もいるかもしれない」
「本当にいるんですかー?」
「そう考えた方が……ロマンがあるだろう」
シュガーたちは森の奥へと進んでいった。
****
射撃大会の後、リアマとフラースは一直線に宿屋に戻っていた。
リアマはフラースにいくつか聞きたいことがあり、それを聞いた。
「フラースに聞きたいことがある」
「なーにっかな、なーにっかな?」
「シュガーについてだ」
「シュガーちゃんのなにが知りたいのかなー?あと、私もリアちゃんと呼んでいい?私もフランって、呼んでいいから」
「断る」
「なら、私は何も話さないよー」
「子供か、お前は!」
フラースに話を聞きだすために仕方なくリアマはリアと呼ぶことを了承した。
「……仕方ない。特別にリアと呼んでいい、フラース」
「フランだよ。リアちゃん」
「……分かった、フラン」
「やったー」
リアと呼べることとフランと呼んでもらえることを笑顔で喜んだ。
「何が知りたいのかなー?」
「シュガーにいつから、知り合いになったかを知りたい」
フラースが自分と同じように小さい頃からシュガーに会っていれば、その時から、姿は変わってないはずである。そのことを魔術師としての意見を聞けるのではないかとリアマは考えていた。
「私が8歳のころに知り合ったから、今から13年前だね」
「シュガーの姿はどうだった?」
「今と変わってないね」
「それに関して、どう思う?」
「えー、別になんとも」
リアマが予想していない答えが返ってきた。森人は不老のため、あまり気にしないことの理由であるのだろうが、フラースはあることを知っていたことが理由の1つだった。
「なんで、そう思う?」
「60年前ぐらいから変わってないって、聞いているし、魔術で何とかしているんだよ」
「……60年前?」
「シュガーちゃんは60年前ぐらいにチクスの指導者に就いたんだよ。5年前ぐらいから、マーティスの指導者になったんだけどね。私は9歳で指導者になったよ」
シュガーがフラースと同じ9歳の時に指導者に就いたとしても現年齢は60歳を超えることになる。
「……そうか。シュガーはどんな魔術を使う?」
「それは教えられないかなー。どれぐらい知っているの?」
「瞬間移動が使えるというぐらいしか知らないな」
「それに関することならいいかな。シュガーちゃんの魔術は瞬間移動に加えて、魔力感知、目の強化が得意だよ。ターゲットを追いかけるときは魔力感知で追って、それがだめなら獣人の鼻で追って、それでもだめなら目で追う。だから、逃げ切れる人はめったにいないと聞くね」
リアマは魔力感知や鼻の良さは知っていたが、魔術で目が強化することが得意までは知らなかった。
「そんなに目がいいのか?」
「遠くを見ることはもちろん、透視までできると聞いているよ」
「透視か……。それは本当なのか?にわかには信じがたいが」
「直接、聞けば答えてくれそうだよね」
「自分の手の内は明かさないだろ。それでも、聞いてみるが」
リアマはシュガーが宿屋に戻ってきたら、使用できる魔術について、尋ねることに決めた。
****
シュガーたちは森の中を歩き回っていたが、一向に見つかる気配がなかった。
「見つからないな」
「いませんねー」
「噂だったからな」
ミラは仮に幽霊を見つけた後のことが気になり、シュガーに尋ねた。
「仮に見つけたら、どうするんだ?」
「幽霊なら浄化して、霊人なら保護だな。戦うにしても、あまり森を荒らさないようにしなければな」
「もし、荒らしたらどうなる?」
「森を守るために樹人が襲い掛かる可能性がある」
「樹人か……」
シュガーの話を聞いていたエルはそう呟いた。スノウは樹人という種族を知らなかったため、聞いてみた。
「エル様は樹人という種族を知っておられるのですか?」
「森で生まれ、森で育ち、森を守る種族だ。森を荒らすものに容赦なく、人より精霊に近い種族だ」
エルの説明を聞いたミラだったが、ミラとシュガーがいるから、勝てるだろうという楽観的な考えだった。
「会ったとしても、シュガーとエルがいるから、倒せるだろ」
「樹人相手で俺とエルが組めば、7対3ぐらいで有利だが、1VS1だと勝てるかは分からないぐらいほど強いな」
「私が戦ったら?」
「確実に負けるな。話合いでどうにかするしかないな」
歩きながら、樹人に関することを話していたら、森の奥から女性の幽霊が姿を現した。
「……これは霊人?」
「霊力を感じるから、霊人だな。おい、名前はあるのか?」
「……」
霊人は何も答えない。
「おい、シュガー。相手は何もしゃべらないぞ」
「無口なのか。こちらを警戒している可能性があるな。こういうときはこれだ」
シュガーは腰のバッグから、チョコレートを取り出した。
「うまいぞ」
霊人に近づき、チョコを渡そうとした。それを受け取り、口にする。こちらを警戒する気配はなくなった。
「保護しに来た。とりあえず、俺たちに付いてきてくれ」
「はい……」
霊人を保護し、ソルムの宿屋へと戻っていった。
****
宿屋に戻ったシュガーたちはリアマたちと合流した。レイたちは戻ってきてなかった。霊人をどうするかを話し合った。
「霊人は見つかったのはいいが、どうするつもりだ。シュガー?」
「魔術師連盟で預かることができない。そこで教会に保護してもらうつもりだ」
「当てはあるのか?」
「ああ、エルに橋渡しを頼みたい」
「余にか」
「教会に所属しているエルの妹がいるだろう。その人に頼みたい」
「余の姉妹をよく覚えていたな……。分かった。その霊人は余が責任をもって、引き付けよう。お主の名前は何という?」
「……」
エルは霊人に名前を尋ねるが、答えは返ってこない。シュガーが霊人に質問する。
「誕生したばかりか?」
「……気づいたら、森にいた。私をみて、驚く人、襲いかかる人がいた。だから、その人たちを追い払った……」
「おそらく、誕生したばかりで名前がないのだろう。それなら、名前を付けなければな」
「それなら、余が名付けよう。森で生まれたから、フルシュだ。気に入ったか!?」
「フルシュ……。いい名前だと思う……」
「世に美しい華はあまたあれど、これほど稀有な金色の華は稀少。与えられし称号はブランコ。その名はリュミエール・ブランコ・アーク。余がお主に様々なことを教えよう。まずは世界を愛せ」
「……なんで?」
「良いことがあるからだ。では、シュガーよ。フルシュは余に任せろ」
エルはフルシュを連れ、部屋を出て、ルークスへと向かった。
リアマはフラースから聞いた透視のことを聞いてみた。
「シュガー、フランから魔術で透視ができると聞いたのが、本当か?」
「ああ、本当だ。証明をしようか?」
「待て、何かを見るかは私が決める」
リアマは疑り深かった。バッグなどではシュガーが事前に見ている可能性があると考えていた。リアマが知り、シュガーが知らないという確証があるものでなければなかった。それを思いつき、それを提案した。
「私たちの下着でも可能か?」
「一応、可能だが……」
「では、下着の色を当ててもらおう」
「私を巻き込むな!」
ミラはそう言ったが、シュガーは眼に魔力を集め、魔術を発動させようとしていた。リアマ、フラース、スノウ、ミラの順で見ていった。
「分かった。リアマが黄緑、フランが黒、スノウが白、ミラがピンクだ」
「こいつ、本当に見やがった!」
「まあまあ、ミラちゃん。大事なところを見られないために履いているんでしょう」
「私の色は合っているから、本当に透視ができるようだな」
こんなことを言い争っているとある大きな力がこちらの世界に来たことをシュガーとミラが感知した。
「なんだ、今の力は?」
「レイたちがいなくなる前に感じた力と似ていたな。あの時は消えていくような感覚だったが、今のはこちらに現れたような感覚だったな」
「私には感じ取れなかったが、それが本当なら、レイたちはそこに現れたのではないか?」
「行く価値は十分あるな。さっそく向かうか!」
「感じた方向はリベルダースだ。先に2人で向かっていてくれ」
「なんでだ?」
「俺はスノウを知り合いのところに預けてから、お前たちを追いかける」
シュガーはスノウを連れて、部屋から出ていった。ミラたちは荷物をまとめて、リベルダースに向かうための準備をした。
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スノウは知り合いに向かう道中でシュガーにあることをお願いしていた。
「師匠。私も連れて行ってくださいよ」
「最初に言っただろう。あまり見てやれないと。知り合いの魔術師に見てもらう。ときにスノウ、お前には夢はあるか?」
「立派な魔術師になることです。師匠には夢がありますか?」
「そうだな。各種族から1人ずつ嫁に貰って、ハーレムを築くことだ」
いきなり、シュガーはそんなことを言い出した。スノウはなぜ、自分が弟子になれたかの理由が理解できた気がした。
「もしかして、私もその目的のために!?」
「冗談だ。……そうだな、子供に戻りたい」
「子供……にですか。子供に戻れたら、何がしたいんですか?」
「会ってみたい人がいる」
「誰なんですか?」
「その人に1日だけでも、会えたらいいのにな」
「もしかして……、初恋の人ですか?」
「……さあな」
シュガーは目をそらしながら、返事をした。
「その反応は図星ですねー。なんか、納得がいきました」
「何がだ?」
「師匠がアルトちゃんと一緒に究極魔法を研究していることです。師匠は自分の夢を叶えるために究極魔法を取得したいんですよね」
「初恋の人はともかく、自分の夢を叶えるためという部分は合っている。いい勘をしているな」
「ほめられましたー」
「この店だ」
シュガーとスノウはある店の前で足を止めた。店の看板には『何でも屋・しゅーてぃんぐ☆すたー』と書かれてあった。
2人は店の中へと入っていった。
「いらっしゃいませー☆」
「依頼を申し込みに来た、ティア」
「シュガーじゃん、おひさー☆」
ティアと呼ばれた少女は青髪赤眼であり、シュガーより少し低いぐらいの背の高さだった。
シュガーとティアは知り合いだった。
「依頼は何かな?☆」
「神の遺産である8つの道標を集めてもらいたい」
「それを集めるということはついに動くんだね☆」
「英雄も選ばれた。これで万が一の事態になっても大丈夫だろう。あと、スノウを頼む」
2人の会話を聞いていたスノウだったが、ティアに教えてもらえると思い、シュガーに聞いてみた。
「この人に魔術を教えてもらえるんですか?」
「いや、別の人に教えてもらうことになっている。お前もティアと一緒に行動して、道標を集めることだ。これも修行の1つだ」
「君がスノウだね。ボクの名前はミーティア・エレオン。ティアって、呼んでね☆ 」
「スノウ・ニクスです。よろしくお願いします」
スノウとティアは互いに自己紹介した後、シュガーがある人物のことをティアに尋ねた。
「あと、セレネがどこにいるか知っているか?」
「お姉ちゃんはどこにいるかは分からないね☆ 」
どうやら、セレネという人物はティアの姉にあたる人らしい。姉という言葉を聞き、スノウがシュガーの姉であるシュテルに会ったことを思い出した。
「そういえば、師匠のお姉さまであるシュテル様にこの間、会いましたよ。綺麗な方でした」
「……そうか。ほかに何か言っていったか?」
「シュテル様は自分が五大英雄の1人とおしゃっていました。師匠の身近にはすごい方がいるんですね」
「ああ、俺の自慢の姉だ」
「私のお姉ちゃんも自慢の姉だよ☆ 」
「それではティア、スノウを頼む」
シュガーが店から出ようとするとティアが見送りに来た。
「わざわざ、すまないな。1つ言い忘れていたが、俺も英雄として、選ばれた。これが赤い指輪が俺のリトスだ」
「これがシュガーのリトスかー☆ シュテルのリトスと似ているね☆ 」
「同じ指輪だからな。もう既にフィデスも使用できるようにした。リトス自体の解析も着実に進んでいる。みんなに追いつけるようにしなければな」
「そうだね☆ 」
「この後、ドルチェという宝玉人にティアを手伝ってくれるように指示している。彼女がスノウに魔術を教えてくれる。ティア、道標集めを頼む」
「分かってるって☆ あとさ、シュガー☆」
「なんだ?」
「口調が少し変かな☆」
「それはほっといてくれないかな」
「少し戻ったね☆」
シュガーはリアマとミラに合流するために感知し、2人の場所を把握し、追いかけていった。
シュガー、リアマ、ミラの3人は無事にアモルの故郷であるリベルダースで合流できるのだろうか。




