日常・射撃大会
魔術連盟はマーティス、チクス、トリミニエオスの3つに分かれる。
マーティスにはロッホ、アスール、アマリージョ、ベルデ、マロン、ネグロ、ブランコの7人の指導者がいる。マーティスの指導者と全体をまとめるのがオーロ、プラータ、コーブレの3人の指導者である。
チクスにはセット、オルグイユ、アヴァリス、アンヴィ、コレール、アンピュルテ、グルトヌリー、パレスの8人の指導者がいる。チクスの指導者をまとめるのがセットの称号を持つ指導者である。
トリミニエオスにはホーラー、エアル、フロス、フスィノポロ、ケイモーンの5人の指導者がいる。トリミニエオスの指導者をまとめるのがホーラーの称号を持つ指導者である。
前回のあらすじ
夢の世界を終わらせ、水の神アクアを解放したレイたち。一方、シュガーたちは日常の生活を送っていた。
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ソルムにある宿屋の部屋にシュガー、スノウ、アルト、フラースに集まっていたが、それに加え、シュガーの友人である森人のセルバ、魔術師連盟の指導者である天人のリミュエール・ブランコ・アークことエルも集まっていた。
この2人はシュガーが町中で偶然見かけて、声を変えたのが集まるきっかけだった。
6人は人生ゲームをしており、もうすぐ後半戦に入ろうとしていた。現時点ではスノウ、アルト、エル、セルバが結婚しており、シュガーとフラースが結婚できていなかった。しかし。
「やっと、俺も結婚マスを踏めたか」
「これで残りはフラース、お主だけか。行き遅れだな」
「現実で行き遅れている人に言われたら、おしまいかなーって」
「余は結婚できないのではない。してないだけだ」
フラースとエルはそんな言い争いをしていた。エルの年齢は人間の年齢に換算するとまだまだセーフの範囲である。
ゲームは続いていき、結果が出た。1位はアルト、2位はセルバ、3位はスノウ、4位はエル、5位はシュガー、ドベはフラースだった。
「やはり、無職ではないシュガーさんは弱いですね」
「師匠が強いのは現実でも無職だからですか?」
「職は連盟の指導者に就いている。それに万が一、無職になったとしても別の収入はあるから、大丈夫だ」
ゲームの結果から、スノウにそんなことを言われたシュガーだったが、その時に中で行われたボースハップンの結果を知らないということを思い出し、セルバに聞いてみた。
「そういえば、セル。中で行われたボースハップンの結果はどうなった?」
「それなら……」
「余が優勝したぞ。シュガー」
「そうだったのか。エル、おめでとう」
「エル様、おめでとうございます」
シュガーとスノウはエルに称賛の言葉を贈った。シュガーはエルのことだから、普通ではない方法で優勝したと思い、その方法を尋ねた。
「どんなふうに優勝したんだ?」
「まず、7人雇い、それぞれに結晶を集めさせた。最後に余のところに集めて、そのままゴールした」
「その手があったか」
「だから、あんなに早かったんですね」
「セルはどうだった?」
「僕は12位ぐらいでしたよ、たしか」
そんなことを話しているとリアマとミラが部屋を訪ねてきた。
「シュガー、聞きたいことがある」
「何だ、リア?」
「昨日、ルキスは部屋に戻ってきたか?」
「いや、戻ってきてないな」
「アモル、それにアスラとレイも宿屋に戻ってきてない」
「男には旅に出たいときがある。俺にも覚えがある」
「さらわれた可能性もあるだろ」
ミラが考えられる可能性を口に出す。それに対し、シュガーは自分の意見を言った。
「レイ、アモル、ルキスならともかく、あのアスラがおとなしく捕まるわけがない。それに俺なら、ミラを真っ先にさらう」
「それもそうだな」
「おい!」
シュガーはボースハップンの始まる前にミラに貸していた指輪のことを思い出し、なにか不思議なことが起こっていないのか聞いてみた。
「ミラ、指輪を貸していたが、何か変化はあったか?」
「異能力に目覚めたぞ」
「なん……だと……」
驚きを隠せなかった。なぜなら、シュガーは長年身に着けていながら、異能力に目覚める気配がまったくなかったからである。
「どういう異能力なんだ?」
「氷の爪を作り、それを撃つ能力だ」
「……爪が飛ぶのか。……銃でいい気がする」
「銃を手に入れるのは難しいだろ。それに銃を運べない場所でも使うことができるし」
「そもそもちゃんと狙えるのか?」
「狙えているとは思う、たぶん」
自信なさげにミラは答えた。フラースがシュガーとミラの会話に突然乱入してきた。
「いいことを思いついちゃった」
「いいこと?」
「ここにいるメンバーで射撃大会を開こうよ。準備はー……、シュガーちゃん、お願いね」
「フランが言い出した時から、こうなるのではないかとは予想出来ていた」
「それじゃあ、よろしくねー」
「明日、射撃できるものを持って、この部屋に集まってくれ。これから、準備しに行ってくる。行くぞ、スノウ」
「分かりました、師匠」
「さっきから、ずっと思っていたことだが、その猫の獣人は何者だ?」
「俺の弟子だ」
リアマの疑問に答え、射撃大会に必要なものを買うためにシュガーとスノウは買い物へと出かけていった。
そして、次の朝を迎えた。シュガーたちは街はずれにいた。
「なぜ、街はずれなのかなー? シュガーちゃん」
「町中で銃などを撃ったりすれば、確実に憲兵が来るからだ」
シュガーとフラースが会話を交わしている間にスノウが木に的を吊るし、準備をしていた。
今回、シュガーが用意した的は星的と呼ばれるものであった。星的は白地の中心に黒丸を描いたもので黒丸を星と呼ぶ。的は1回使用した後は新たな的に変え、次の射撃を始める。
「順番はどうする?」
「くじで決める」
くじの結果、セルバ、ミラ、フラース、リアマ、エル、アルト、スノウ、シュガーの順でやっていくことになった。
セルバは弓を構え、矢を放つ準備をした。
「セル君は弓なんだ」
「森人は森の中で狩猟をして、生活している人が多いですから。って、フラースさんも森人ですよね?」
「私は都会派森人だから」
矢筒から、弓を取り出し、構える。指を放し、弓を撃った。撃った弓は見事に星の中へと刺さっていた。
「見事なものだな。セルの弓の腕は」
「次は私か」
ミラは左の手を前に出し、氷の爪を形成していく。的に向かって、氷の爪を飛ばした。氷の爪は星の中に入らず、白地の部分に当たってしまった。その結果にスノウは励ましの言葉を贈り、シュガーは苦言した。
「ミラちゃん、ドンマイです」
「やっぱり、銃の方がいいんじゃないか……。あと、指輪は返してもらう」
「これからだから! まだ目覚めたばかりだから!」
「フラース・アンヴィ・セニュエロ。次、行きます」
シュガーはミラから指輪を返してもらい、フラースが的の前に立った。
フラースが持っている物はダーツであった。それを力いっぱい投げる。的に当たらず、どこかへと飛んでいった。その状況にアルトが口に出した。
「あの……、フラース先輩。当たってすらいないんですが」
「今日、初めて投げたから、仕方ないね」
「なぜ、それでやろうと思ったんですか!?」
「次は私だ」
リアマは的の前に立つが、その手には何も持っていなかった。それを疑問に思ったミラが尋ねる。
「リアマ、今日使う道具を忘れたのか?」
「道具が必要ないだけだ。見とくがいい」
リアマは竜力を高め、息を吸い込んだ。そして、唇を細め、的に向かって、炎を針状にしたものを吹き、狙った。炎の針は星の中に貫き、炎は静かに消えていった。アルトは的を見て、その状態に驚きを隠せなかった。
「炎を使ったにも関わらず、的に使用されている紙は燃えずに周りを少し焦がしているだけ。ちゃんと力を使いこなせていますね」
「口から、炎を吹かれるなんて、リアマ様はまるで竜みたいですね!」
「私は竜人だ」
「次は余だ」
スノウの言葉にリアマが突込んでいる間にエルが的の前に立った。エルが持っているのはライフルだった。
「エルの銃は俺のと違い、ライフルなのか」
「これは余が狩猟するときに使う愛用の銃だ」
弾を込め、銃を構え、引き金を引いた。放たれた弾丸は星の中心を撃ち抜かれた。
「良し、命中だ」
「見事です。リミュエール先輩の次は私ですね」
アルトはリアマと同じように何も持たずに的の前に立った。
「私は魔術師。魔術でやります」
指先に風を集め、風の弾丸を形成し、的に狙いを定める。撃たれた風弾は星の中に入った。
「さすが、アルトだ。細かいコントロールもできている」
「私も魔術でいきますね」
スノウは両手を前に出し、魔術を発動させる。伸ばした両手の先に氷の塊を作る。しかし、氷の塊の大きさは的より少し小さい程度だった。それを放つが、氷の塊は星と白地の部分をまとめて、破いた。
「的には当たりましたよ。師匠」
「的には当たったな。スノウはアルトみたいに細かいコントロールできるようになることが今後の課題だな。最後に俺か」
シュガーは右太ももからリボルバーを取り出し、ハンマーを指で引き起こし、撃つ構えに入った。狙いを定め、引き金を引いた。撃たれた弾丸は星の端を貫いたため、白地も破けていた。
「ギリギリ入っているね、シュガーちゃん」
「シュガーは魔術で挑戦したほうがよくね。なんで、銃で挑戦したんだよ?」
「射撃は銃でやりたいからだ」
「なぜ、師匠は銃を持っているんですか?」
「魔術が使えないときに攻撃するためだ」
シュガーはミラとスノウの疑問に答えていく。そのあとにセルバがおそるおそるゲームの勝ち負けについて、尋ねた。
「あの……、シュガーさん。これって、どうやって、勝ち負けを決めるんですか?」
「第一に星に入っていること、第二に中心で近いことを条件で決める」
使用した8枚の的を見比べた。条件に合わせ、順位を決めていった。
「順位が決まった。最下位はフラース。7位がスノウ、6位がミラだ」
「私とスノウちゃんの違いは?」
「的に当てたかだな。5位は俺で4位はアルト、3位がリア、2位がセルバ、優勝がエルだ」
「余が1位か。ほめるがよい、シュガー」
「おめでとう、エル」
「おめでとう、エルちゃん」
シュガーとフラースがエルを褒めたたえた。シュガーは赤、黄、青の3つの箱を取り出し、エル、セルバ、リアを中心にそれらを見せた。
「これらが賞品だ。優勝したエルが初めに選び、次にセルバが選び、余ったものがリアの物
だ」
「余は赤の箱を選ぶぞ」
「僕は青の箱でお願いします」
「私は余った緑の箱か」
「これをもって、射撃大会は無事に終了だ。この後はどうする?」
シュガーはこの場にいるメンバーにこの後の予定を聞いた。
「僕は故郷であるウェントゥスの森にそろそろ帰ろうと思っています」
「私もトリミニエオスにそろそろ戻らないと。長い間、抜けていますので」
セルバは故郷に、アルトは魔術師連盟トリミニエオスに帰るという返事だった。フラースは前々から気になっていたことをアルトに聞いてみた。
「前から気になっていたんだけどさ、トリミニエオスって、どこにあるの?」
「フラース先輩といえども、教えるわけにはいきませんね。まあ、1つ言えることは簡単に見つからないところにあるということだけですね。チクスがどこにあるか、教えてくださるなら、こちらも教えてもいいですよ」
「その条件なら、別に教えてもらえなくてもいいや。自分でさーがそー」
「師匠はトリミニエオスとチクスの場所を知っているんですか?」
「ああ、知っている。ただ、言えることは探しだすことが難しい場所にあるということだ。あと、ミラとスノウは今後の予定はあるのか?」
「特にないけど、それがどうかしたのか」
「今日の準備をしていたら、町中である噂を聞いたから、それに確かめに行く」
「どんな噂だ? 余にも聞かせろ」
シュガーがミラとスノウに話している内容にエルが興味を持ち、首を突っ込んできた。
「都市ソルムの近くにある森で幽霊が出るという噂だ。実際に襲われているケースもあるそうだ」
「それなら、余も加えて、幽霊退治といくぞ」
「私も行った方がいいか?」
「リアは宿屋で待機してくれ。レイたちが戻って来て、入れ違いになる可能性がある」
「分かった」
「私もチクスに戻る前にレイ君に会いたいし、リアマちゃんと宿屋に戻ろうかな」
それぞれは別れの言葉を告げ、次の場所へと向かっていった。




