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神に選ばれし英雄の異世界物語  作者: 甘味神宝
異世界での冒険
15/86

夢の終わり

この第5世界にすむ種族たちは異種族同士で子供を作ったとしても通常は互いの特徴を備えたハーフが生まれることはない。父か母のどちらかの形質を100%継ぐ。


例として、獣人と森人の夫婦がいるとする。生まれてくる子供は獣人か森人のどちらかであり、それぞれの種族の特徴である獣人の獣耳と森人の不老を兼ね備えた子供は生まれてこない。

しかし、ある条件を満たすことで子供が新たな種族として、生まれることがあると言われている。



前回のあらすじ

この世界が夢であることを知った英雄たちはそれでも前へと進んでいく。そして、ついにこの世界の終わりを迎えようとした。


****


 神殿で一晩過ごしたレイたちは次の目的地である湖へと向かうべき、船に乗り込み、移動していた。

 船に乗っているとアスラが砂漠の遺跡で戦ったスライムのことであることを思い出し、話し始めた。


「あのスライム、思えば軟液人に似ていたな」

「軟液人って、どういう種族なんですか? 聞いたことがないのですが」

「アクアにいる種族で体を液体に変化させる奴」

「その説明だとイマイチ分かりませんね」

「それなら、実際に会えばいいだろ」


 アスラがアモルにイマイチ説明になっていない説明をしていると湖が見えてきた。ここからでは向こう側の岸が見えないほど湖は広かった。


「このまま行くよ」


 ルキスは船を止まらせずに岸から跳び、水面に着陸し、何もなかったように進めていった。


「砂漠を走った船でも、案外平気なんだな」

「このまま何もなければいいんだけど」


 船を進めていくと湖の中心らしきに場所に建物が建っていた。レイたちは船から降り、船が流されないロープで固定してから、建物へと入っていった。

 建物に入ると砂漠の遺跡と同じように地下へと続く階段があり、下りていく。その先にはまた同じような湖が広がっていた。ただ、違うところは船がないことだった。


「船がない」

「船がない以上、泳ぐしかねーな」

「みんな、泳ぎには自信ある?」

「苦手ではないですね」


 水の中に魔物がいないことを確認し、それから水に入り、泳ぎ始めた。しばらく泳いでいると岸に見え、そこを上った。


「やっと、たどり着いたな」

「はあ、はあ。そうだね……」

「……」


 アスラとアモルはそれほど疲れた様子はなかったが、ルキスは疲れており、レイに至っては疲れ果て口が利けてなかった。

 上った先には扉があった。奥に魔獣がいる特有の気配は感じなかった。


「扉があるね」

「奥に魔獣がいる気配はありませんね」


 レイたちが扉を開けるとそこにはまたもや水が溜まっており、右回転で渦潮ができていた。速度は激しくはなく、緩やかにできていたが、それでも通常と比べると泳ぎにくいだろうと予想はできた。

 そして、反対方向には先へと続いているだろうと思われる扉があった。


「レイとルキスは敵が来ないかの警戒をお願いします。私とアスラでなにかないかを確認してきます」

「その前に試してーことがある。俺が入ってから、アモルも来てくれ」

「それはかまいませんが、何をするつもりですか?」

「まあ、見とけ」


 アスラは地面を殴り、フィデスを発動させた。砕かれた岩の欠片は水色の粒子となり、右腕に収束する。同時に右腕そのものも分解され、黒い装甲へと再構築され、片翼の水色の羽根が3枚生える。

 あちら側にある扉に向かって跳び、同時に羽が1枚消えていく。腕の肘の部分が開き、そこから闘気が爆発させ、推進力に使うことで扉まで滑空した。足で蹴って、開けようとしたが、鍵がしてあったようで開けることができず、そのまま水に落ちた。それを見届け後、アモルも水の中に入っていった。


「レイ、話せるようになった?」

「……なんとか」

「じゃあさ、ボクから心剣を抜いてくれないかなー」

「別にいいけど」


 レイはルキスの胸に手をかざし、心剣を取り出す。ルキスの心剣は紫色のギターであった。


「レイって、ギター弾けるの?」

「音を鳴らすことくらいしかできないな」


 試しに音を弱く鳴らした。するとギターに電気が蓄電される。レイはそれに気づき、次に強く音を鳴らすと蓄電されていた電気は電撃となって、壁に放たれた。

 適当に弾き、ギターに蓄電させ、強く弾くとそれは電気を纏った蝙蝠みたいになり、レイの周りを飛び回る。再び、音を鳴らすと蝙蝠は壁に向かって、飛んで行った。


「ボクの心剣は電気を発生させ、それを操るギターなんだね」

「そうみたいだね」

「これって、もはや剣じゃないよね」

「たぶん、剣とは武器という意味なんだよ。俺はそう信じている」


 ルキスの疑問に対し、レイは自分の信じる道を言った。


****


 一方、アモルたちは底に向かって、泳いでいた。渦潮ができているため、泳ぎにくかったが、アモルは天力、アスラは闘気を纏い、体を強化することで抵抗を少なくしていた。

 しばらく泳ぐと底に着き、そこにはレバーがあった。アスラがレバーを引くと上からガチャンという音が聞こえた。


(扉が開いたんだな)


 アモルもそう思い、上に戻ろうとしたが、アスラが手招きしていることに気付いた。アスラに近づくと左手でアモルの手を掴む。すると羽が消え、闘気を爆発させた。その勢いを利用し、水面へと上がっていく。地上に戻れたが、勢いを止まらずに天井へと右腕が突き刺さった。


「アスラ、アモル。大丈夫?」

「怪我はありません。アスラ、すいません」


 アモルは体全体を前後に動かす。その動きを利用し、前に来た時に手を放し、先の扉に跳び移った。


「俺も行くか」


 アスラが右腕を天井から引き抜くと再び水へと落ちていった。アスラに続き、レイとルキスも水の中に入り、奥の扉へと移動した。

 扉から先は泳ぐ必要はなく、歩いて移動していた。すると大広間に出て、その先には大きな扉があった。部屋から魔獣の気配が感じ取れ、この扉の先が最後の部屋だと判断した。


「何もない部屋だ」

「魔獣の気配がする。たぶん、奥の扉で最後だね」


 レイたちは警戒しながら、扉へと進んでいく。しかし、部屋を進み、扉に近づいていくとある違和感がした。魔獣の気配は扉からではなく、別のところから発していることに気付いた。


「ねえ、なにか……」


 このことをルキスが口にしようとした瞬間、床が崩れ、下に落ちていく。

 それぞれは落下に対し、身構えた。アスラは全身に闘気に纏い、アモルも全身に天力を纏いつつ、左手に天力を収束させ、地面に天撃を放つことで速度を落とした。ルキスはレイの手を掴み、フィデスである磁力(ガウス)を発動させ、鉄球を下に撃つ。そして、自分と鉄球を反発させ、落ちるスピードを遅くした。

 結果、4人とも怪我もなく、無事に地面に着地することができた。


「ありがとう、ルキス」

「どういたしまして」


 レイがルキスに助けてくれたことにお礼を言った。

 落ちた場所は部屋の中心に丸い柱があり、それ以外は水場であった。ルキスが感じた違和感がルキス達を水面から襲い掛かってきた。


「さ、魚?」

「バカでかい魚だな」

「やっぱり、魔獣は扉の先じゃなくて、部屋の下にいたんだ」


 違和感の正体はルキス達と比べて、5倍以上はでかいであろう強大な魚の魔獣だった。ルキス達は戦闘態勢に入った。

 ルキス達は前と戦った時のように魔術など使い、距離を保とうとした。


「どんなにでかいだろうが、所詮は魚。陸には上がってこれねーよ」


 アスラの予想は裏切られることになる。魔獣は柱の周りをグルグルと回り、アスラを目掛けて、水面から勢いよく跳びだしてきた。アスラは魔獣の体当たりを受け止めようとしたが、止めることができずに魔獣と共に水の中へと連れていかれた。


「まずい!水の中ではアスラが不利だ」

「相棒。俺様がやる。フィデスを使え」


 頭の中に聞こえてくるフォルテの声に従い、レイはリトスである銀色の鍵を胸に刺し込み、フィデスを使った。


未来召喚(フトールム・フォルテ)


 レイの体は光に包まれていき、褐色肌で金髪のフォルテに変身する。


「久々に派手に動けるぜ。ルキス、お前の心剣を借りるぞ」


 ルキスの胸に手をかざし、心剣である紫色のギターを取り出す。しかし、フォルテのギターの持ち方は普通ではなかった。ギターのボディではなく、ネックのほうを手で持ち、絃を弾き、電気を発生させた。

 水の中にいる魔獣のほうに跳び、ギターを振り下ろし、ボディの部分で強打した。魔獣は少しひるんだが、口を開け、襲い掛かる。フォルテは手と足を使い、魔獣の顎を支え、飲み込まれないように耐えた。


「隙ありだぜ!」


 アスラは魔獣に対し、スパイラルブローを放つ。水中だったため、威力が半減していたが、それでもダメージを与えることには十分だった。

 しかし、予想外の事が起こった。魔獣は殴られた痛みで口を開いたことが原因でフォルテが前へと滑り、丸呑みにされてしまった。


「残念!レイとフォルテの冒険はここで終わってしまった!」

「そんなことを言っている場合ですか! 助けますよ!」


 ルキスとアモルが言っていると魔獣の体から血が噴き出した。魔獣の体の内側から出ているであろう刃が見える。その刃は魔獣の体を内側から一直線に切り裂いていく。その切り傷からフォルテから出てきた。その手には鎌が握られていた。


「臭いったら、ねーな」

「フォルテ、無事だったんですね!」


 魔獣は内側から切られたことでもう動いていなかった。アスラとフォルテは柱へと上がっていく。ルキスはフォルテが持っている鎌について、尋ねた。


「その手に持っている鎌はどこから持ってきたの?」

「これか?これはルキスの心剣だぜ。変形させて、鎌にしたんだ」


 そう言われ、鎌をよく見てみると取手の部分に弦が張られていた。刃の部分はボディを変形させて、出したのであった。


「ほらな」


 手に持っている鎌が変形し、ルキスが見覚えあるギターに戻す。心剣が光となる共にフォルテも光に包まれ、心剣は消え、レイに戻った。

 そして、魔獣も光りだし、球に変わり始めた。完全に球に変わる前に魔獣はレイたちに未練がましく言い放つ。


「何故、来た。お前たちさえ……、お前たちさえ、来なければ……、何も変わらなかったのに……」


 魔獣は青の球へと完全に変わった。球は浮かび、ルキスの手元へと移動した。


「この世界の住むものたちにとって、ボクたちは世界を滅ぼす悪者だね……」

「魔王みたいものか……」


 ルキスの言葉にフォルテを思い浮かべながら、レイは呟いた。すこし重い空気になっていたが、アモルが口を開いた。


「……ここから、どうやって入り口に戻りましょうか?」


 アモルたちは上から落ちてきて、ここまでやってきた。周りにあるのは水だけで扉などは見当たらなかった。どうやって、戻ろうかと考えている時、青い球が突然光だし、その光に包まれていく。次に気づいた時には入り口まで戻っており、そこにはツバサがいた。


「5個目も無事にゲットできたようだね。次で最後だ。6個目をゲット出来たら、そのまま解放してもらうよ」

「次の場所はどこですか?」

「山だね。正確に言うと山にある洞窟だよ。道はルジオとヘルムのちょうど真ん中あたりから、山に向かえば、着くはずだよ」

「何か、目印はあるの?」

「ルジオとヘルムの中間には赤い大きな石があるから、それを目印にしてね」

「あともう1つ聞きたいことがあるんだけど」

「何かな?」

「山を向かうのは明日でもいいかな?」


 ルキスがこう言いだしたには理由があった。ルキス達が天海の水鳥を目覚めさせれば、この世界は消えてしまう。その前にラブルにお別れの言葉を言うためだった。意を酌んだのか、ツバサは拒否をしなかった。


「別に構わないよ。それじゃあ、明日だね。君たちの活躍に世界の命運がかかっている。頑張ってね」


 ツバサはどこかへと飛びだって行った。

 レイたちはこれからのことを話し合った。


「ボクはラブルがいるルジオに行きたいと思っているんだけど、みんなはどうしたい?」

「俺はバツがいるヘルムに寄りたいな」


 ルキスはラブルに別れの言葉を言うためにルジオ、レイは剣術を教えてもらったバツに会うためにヘルムに行きたいと言った。ルキスとレイの意見にアモルがそれを解決する策を言う。


「なら、二手に分かれましょう。私はレイに付いていきます。アスラはルキスをお願いします」

「分かった」

「明日の朝に出て、ルジオとヘルムの中間にあるという赤い大石に集合してから、向かうことにしましょう。それでいいでしょうか?」

「それでいいよ」


 こうして、ルキスとアスラはルジオに、レイとアモルはヘルムに向かうことにした。


****


 ルキスとアスラがルジオに着くころに夕方であり、日が沈もうとしていた。

 ルキスはラブルの家を訪ね、ドアをノックした。家に帰っていたラブルは出てきて、対応した。


「あら、ルキスにアスラじゃない。また聞きたいことがあって、来たの?」

「いや、そうじゃあなくて、別の用事で来たんだ」

「何の用事かなー?」

「明日でこの島を離れることになるから、お別れの言葉を言いに来たんだ」

「……そうなんだ。明日で別れることになるんだね」


 ラブルの顔が悲しげに曇る。そして、あることを思いつき、ルキス達に提案した。


「明日なんだよね?」

「うん」

「なら、今日は家に泊まっていってよ。明日でお別れなんだし」

「その言葉に甘えさせてもらおうかな」


 ルキスとアスラはラブルの好意に甘え、家に泊まらせてもらうことにした。


****


「剣を持て」


 一方、レイとアモルもヘルムにたどり着き、バツの家を訪ねた。別れの挨拶をしに来たことを伝えるとバツはレイの顔を見て、そう言った。


「何か、迷いが見える。それでは使命とやらは果たせない。俺が叩き直してやる」

「……分かった」


 レイとバツは剣を抜き、構える。バツが持つ剣はレイの剣より細く、少し長かった。剣を斬り合わせる。この時、レイは前に戦ったファンティーのことを思い出していた。

 あの時は世界を救うために戦い、そのために戦う覚悟をした。今回も自分ができる最大限の事をすると決めた。

 手合いは日が落ち、回りが暗くなるまで行った。


****


 日は出て、この世界を運命を決める朝を迎えた。

 昨日の夜、ルキスはラブルと会話を交わし、あることを考え、決断した。


「これでお別れなんだね……」

「でも、ボクたちは友達でずっと君のことを忘れないからね」

「私もあなたたちことを忘れないから。また、遊びに来てね」

「……うん、また遊びに来るね」


 ラブルに別れを告げ、レイたちと落ち合う予定になっている赤い大石へと歩いて行った。


****


 赤い大石にはレイとアモルたちが先に着いており、ルキスとアスラはレイたちと合流した。一行は山へと向かい、歩き出す。

 山にたどり着くまでの道のりは楽ではなく、険しい道だった。そのうえ、魔物たちも襲ってくる。レイたちは撃退していき、山へと向かっていく。そして、洞窟を見つけた。


「これで最後になるのか……」


 ルキス達の使命は六情球をすべて集め、神を目覚めさせる。その使命もこれで終わりを告げる。それはすなわち、この世界の終わりを意味する。


「ルキス、本当にいいんですか?」

「うん、答えはもう決めたよ。この世界を終わらせる。どんなものでも絶対に終わりがある。けど、そのことを忘れない限り、ボクの中で生き続ける。誰からも忘れられた時に本当に終わってしまう。だから、絶対にこのことをボクは忘れない」


 ルキスは自分に言い聞かせるようにみんなに言う。


「だから、行こう。みんな!」


 ルキス、レイ、アスラ、アモルは洞窟の中へと入っていった。

 洞窟の中は少し進むとすぐに行き止まりだった。


「なんで、もう行き止まりなんだ?」

「なんでだろう」


 アスラとレイが疑問に思うとアモルは自分が思いついたある仮定を言った。


「もしかしたら、洞窟は複数あって、違うところに来たのではないのでしょうか?」

「考えたくないけど、それは十分に考えられるね……」


 そんなことをアモルとルキスが話し合っていると突然全員のリトスが光りだした。


「この光は?」


 リトスから放たれる光はルキス達を包んでいく。光がなくなったときにはルキス達の姿もなくなっていた。

 飛ばされた先でルキスは周りを見た。壁は石で作られており、先に行ける道があった。これらの情報である程度の予想ができた。


「おそらく、ここは洞窟の中じゃないかな。リトスを持っていたから、移動で来たんだよ」

「私もそうだと思います」

「道があるから、先に行こうぜ」


 先へ進むと扉があった。その扉からは今までとは比べ物にならないプレッシャーを感じた。


「ここで最後だ」

「この先にはとてもない何かが待っている」

「ここまで来たなら、後はやり遂げるだけだ。行こうぜ」


 扉を開け、部屋に入ると中には一人の男がいた。白色の髪と青色の眼で眼付きは稲妻の如く視線で貫きそうな鋭い目をしていた。ただ、雰囲気はなんとなくアモルに少し似ているような感覚がした。 男はルキス達をじっと見て、口を開いた。


「よく来た、英雄たちよ。私は光の神ルークスより祝福を受け、テスラ様に仕える四大天使の1人、天人のプロキオン」

「しゃっべたっ!」


 ルキスはプロキオンという男が話したことに驚いた。今までの奥にいた魔獣は最初から、話したことがなかったからである。


「貴方がプロキオンですか?」

「そうだが、同族よ」

「貴方を倒せば、六情球が?」

「そうだ。大切なものは自分の手が届く場所に置くタイプだ」

「なら、話しが早え。お前を倒せば、いいんだろう」


 アスラはフィデスを発動させ、右腕を黒い装甲へと再構築させた。一気に距離を詰め、プロキオンへと殴りかかった。しかし、その拳は当たらなかった。プロキオンの体から出ている暗緑色に鈍く輝く帯状の触手に受け止められたからであった。


「これが君のフィデスか。なるほど、ギオンやピラトと比べて、対処がしやすいタイプだな」


 触手はアスラの右腕に絡まり、壁に向かって、放り投げ飛ばした。


「なぜ、こんなことをしているのですか?」

「しいて言うなら、暇つぶしだな。私はギオンとピラトに敗れ、せめてものだと思い、ピラトを封印した。肉体はもうないが、それでもステラ様ならいずれ復活させてくださると信じている。そこでアクアとピラトの力を使って、いろいろ試している」

「暇つぶしでこんなことをしていいですか!?」

「私が作らなければ、存在していなかったのだから、別に構わないと思っている」

「私は貴方を倒します」

「それはこっちも同じだな」


 プロキオンがそう言い、左手に篭手が装着されていき、その上に青色の盾ができていく。盾と篭手の間からは細長い刃が生えた。

 帯状の触手がレイたちを襲い掛かる。彼らはバラバラに散ることで攻撃を避けた。


「早くフィデスを使え。こいつは強い。このままじゃあ、全滅だ」

「分かった」


 レイは頭の中に響くフォルテの声に従い、リトスである銀の鍵を胸に差し込み、フィデスを発動させる。フォルテに変身し、続いてアモルのところに行き、心剣であるアストライアを引き抜いた。

 プロキオンはレイがフィデスを発動し、フォルテに変身するところを見て、呟く。


「彼のフィデスは変身することで戦闘力を上げるタイプなのか。私と同じくらいの強さか」

「覚悟しやがれ!」


 フォルテはプロキオンに向かって、走り出す。触手が襲い掛かるが、難なくと切り払っていく。剣を振りかざし、プロキオンに振り下ろした。斬ることはできず、触手で受け止められた。


「俺の剣でも、斬れねーのか」

「これは私が天力で作成したもの。弱体化しているとはいえ、この触手を斬りさくのはとつてもなく難しい」


 触手の先が尖り、フォルテを突き刺そうとするが、彼はこれを避け、距離を取る。

 入れ違いにアスラが襲い掛かる。片翼の翼は1枚消費し、プロキオンに殴り掛かる。またもや、触手でガードされようとしたが、触手を打ち砕きながら、プロキオンへと向かっていく。その拳は左手の盾で防がれてしまった。


「驚きだな、触手が打ち砕くとは。しかし、私にはルークスより受けたまりし神の遺産(レグリア)・スヴァリンがある」

「なら、もう一発だ」


 翼を1枚消費し、闘気を爆発させる。盾であるスヴァリンごと、殴り飛ばそうとした。しかし、触手を地面に刺すことでプロキオンは踏みとどまり、アスラを蹴り飛ばした。

 フォルテたちはプロキオンの防御を打ち破るのかの作戦を立てた。


「分かったことはあの緑色の触手はとつてもなく固いこと、それでも砕くことは不可能ではないこと、左手にある盾スヴァリンは触手以上に固いということの3つだね」

「俺の拳はあと一回だけだ」

「それを本体に当てるしかありませんね」

「俺に提案がもう1つある」


 フォルテが作戦を話した。周りは納得したような顔をした。


「その方法なら、おそらく行けますね」

「アスラがダメだったら、その作戦で行こう」

「話し合いはもういいか」


 触手がルキス達を襲い掛かる。プロキオンから見て、フォルテとルキスが右に、アスラとアモルが左に避ける。アスラの左手にはアモルの剣が握られていた。


「ほう、剣が使えるのか」


 フォルテとアスラが触手を打ち払いながら、プロキオンに距離を詰めていく。フォルテがプロキオンに剣を斬り上げる。触手が間に合わずに左手でガードする。結果、左わき腹ががら空きになる。


「おらああああああ!」


そこを狙い、アスラは闘気を爆発させ、勢いある拳を叩きこむ。プロキオンに直撃するが、触手を地面に刺し込み、踏みとどまる。間髪入れずにアモルの天撃とルキスの鉄球で攻撃する。天撃は左手を、鉄球は体を狙った。


「この程度……」


天撃は手を下げることで避けたが、回転する鉄球は避けることができなかった。プロキオンは攻撃を避けることに夢中になり、前が見えてなかった。再び、前を見た時にはフォルテとアスラが奇妙なことをしていた。

 フォルテで攻撃するために剣を振り下ろそうとしていたが、アスラは剣を使い、フォルテの剣の先を止めることで振り下ろすことを防いでいた。


「これでおしまいだ!」


 プロキオンは奇妙な行動の真意に気付き、触手で左肩をガードした。しかし、意味はなかった。  フォルテはさらに力を入れることでアスラの剣から解放され、思いっきり剣を振り下ろした。触手は斬り砕かれ、そのまま足元まで切り落とされ、プロキオンは真っ二つになった。


「これで終わりだな……。テスラ様、シリウス、ペテルギウス。また会える日までその幸運をルークスに祈る。そして、裏切者のズヴェズダよ。死んだら、水に流してまた語り合おう」


 プロキオンの体は光始め、赤色の球へと変わっていった。それをルキスが拾う。


「これですべての六情球が揃った」

「それにしてもフォルテの作戦が成功してよかったですね」


 フォルテの作戦とはアスラ以上の力で斬り裂くことだった。そのために自分の剣をアスラの剣に接触させ、負荷として使うことで反発力を生成し、そこから解放された際の反動によって斬撃を加速、強化したのであった。

 ようするに剣を使ったデコピンである。アスラの剣が親指の役目、フォルテの剣が中指の役目を果たしたのである。

 ただ、剣を接触させ、負荷をかける溜めが必要になる。その隙を作るためにアモルとルキスが攻撃したのであった。


「今回は久々に骨がある奴だったな。もう限界だ」


 フォルテは光に包まれ、レイに戻った。

 壁が崩れ、先へと続く道ができた。


「この先に神様がいるんだね」

「どんな方なんだろう?」

「神様なんですから、それはもう立派な方だと決まっています。人を思い、愛してやまない方だと思います」


 ルキス達は先へと進んでいく。そこには緑髪で紫の眼をしている男がいた。服装は白いズボンに青墨色のコートを着ており、胸の部分はコートに付いているベルトで閉めていた。首からは振り香炉が下げられていた

 男は気軽に声をかけてきた。


「よく来たな。弱っているとはいえ、プロキオンを倒すとはな」

「貴方が水の神アクア様ですか?」


 アモルはおそるおそる質問した。男の見た目はただの人に見えた。しかし、神に会ったことがなかったため、分からなかったが、その男からは今までに感じたことがない雰囲気を感じたのであった。


「いや、違う」

「違うのかよ!」

「なら、君は誰なの?」

「よくぞ聞いてくれた。俺は昔、英雄に選ばれた夢人のピラト・モーリだ。君たちの先輩だ」

「それなら、あなたが五大英雄の1人なんですね?」


 レイは五大英雄であるかを聞いた。それが事実なら、異世界人が誰かを特定できるからであった。しかし、予想外の返事が返ってきた。


「五大英雄って、なんだ?」

「えっ」

「えっ」


 少し間、沈黙は支配した。ルキスがピラトに五大英雄の説明をした。


「五大英雄っていうのは昔を活躍した英雄のことを指しているんです」

「それなら、俺の活躍が後世まで名を残しているのか。活躍しすぎだろ、オレ」

「いや、名前まで伝わっていないんです」

「そうか、そろそろ真面目に話すか」


 ピラトの顔つきが変わり、真剣そうな眼付をしていた。


「今、外の世界はどうなっている?」

「一応、まだ平和です」

「平和とかじゃなくて。ちゃんと意見が言える?喧嘩できる?それが原因で死刑にならない?」

「そんなことで死刑はないよー」

「なら、妙なことになっているな」

「妙なこと?」

 レイが不思議そうに言った。


「俺たちが最後の戦いになったのがステラって言われる奴であいつにはルークスという光の神がついていた。あいつが死ねば、おそらく俺の封印は解除されるはずなんだが」

「実際には解除されてないよ」

「そうなんだよ。ルークスが生きていれば、さっき質問がしたことすると死刑になるんだ。しかし、それはないという」


 アモルは五大英雄を知ることになった昔話の内容を思い出していた。


「確か、害なす者を封印したと書かれてあったと思います」

「そうだよ、そんな感じだったよ。確か」

「それなら、辻褄が合うな。なら、お前たちの使命はルークスをどうにかすることかもしれないな」

「神をですか?」


 アモルたちには英雄の力を与えられたが、それでも、神をどうにかするとかはとても考えられなかった。


「俺の仲間たちができたんだから、お前たちもできると信じろ。特にルキスは」

「なんで、ボクを強調するの?」

「なぜなら、お前は俺の子孫だからだ」


 とてつもない真実がさらっと明かされた。


「つまり、ルキスは英雄の子孫なのか!?」

「何か、証拠はあるのかよ! 証拠は!」

「こうして、向き合うとリトスを持っているからか、はっきりと俺の子孫と分かる」


ピラトは指から指輪を外し、ルキスに手渡そうとした。


「これは俺の家系は代々英雄が出ていて、この指輪はその血筋を証明する。俺の血を継いでいるなら、これは光輝く仕組みになっている」


 ルキスは受け取り、はめてみた。するとピラトの言う通り指輪は光輝いた。


「なあ、俺が言った通りだろ」

「あなたがボクのご先祖様になるんだね」

「そうだ。そろそろ限界だな。何か質問はあるか?」


 まずはアモルが疑問に思っていたことを聞いた。


「神であるルークスと戦うことになったでしょうか?」

「ルークスはテスラの考えた理想の世界に賛同し、それが世界に害をなした。それで倒そうと決めたんだ」

「それは危険な考えだったんでしょうか? 神には神の考えがあったとは考えられませんか?」

「ルークスとテスラは完全なる平和を求めた。そこには人は生きてなく、存在しているだけだった」

「それはどういう意味ですか?」

「奴らの考える平和は自己中心とでもいうのかな。人にとっては害をなした。それが原因だ」


 続いて、レイが前に選ばれた英雄たちについて、質問した。


「あなたと同じように選ばれた英雄の中で異世界人はいたんですよね?」

「いや、俺は聞いたことがないな」

「しかし、昔話では異世界から来たと言われる人がいると書いてありました。これに覚えはありませんか?」


 少しの間、ピラトは考え込む。


「……覚えはあるな。その昔話とやらは名前が伝わってないことから、おそらく意図的に隠してあるな。それなら、俺が答えるわけにはいかない。俺の仲間が何かの目的があって、やっている可能性があるからな」

「……それなら、もう1つだけ。外では500年経っているんですが、五大英雄は何人ぐらい生きていると思いますか」

「全員生きているな、おそらく」


 レイの質問に対し、帰ってきた答えはまたしても予想外の答えだった。


「全員……ですか?」

「ああ、寿命が長い種族だったからな。そろそろ行くか」

「行くかって、どこに?」

「アクアのところだ。俺も一緒に行く」


 ルジオがそう言うと今までなかったところに階段が現れた。


「なんで、あんなところに階段が?なかったはずなのに」

「これが夢人である俺の力だ。お前たちには階段がないという幻を見せていた」


ルジオを加えたルキス達は階段を上がり、先へと進んでいく。その途中、ルジオのリトスやフィデスが気になり、ルキスは聞いてみた。


「ルジオさんのリトスはどんな形なの?」

「もっと気軽に呼んでくれよ」

「ルジオおじさんって、呼ぶね。ギオンさんのこともおじさんって、呼んでいるから」

「ギオンは知り合いなのか。それにしても……、おじさん……か」


 ルジオはおじさんと呼ばれたことにショックを受けつつ、ルキスの疑問に答えた。


「俺のリトスは首から下げている紫色の振り香炉だ。フィデスのほうは秘密だな」

「えー、なんで?」

「秘密があるほうがもっと俺のことを知りたいって、思ってくれるからさ」

「おじさんの封印も解けるんだよね」

「いや、解けない」

「なんで!?」

「これはあくまでもアクアを解き放つためだからな。なに、俺の封印は仲間たちがどうにかしてくれさ。だから、お前たちは英雄としての使命に集中してくれ」

「……分かった」


 そんなことを聞いていると大きな扉があるところまでたどり着いた。


「この先に水の神アクアがいる」

「神様がいる部屋なのに力が感じないんですね」


 今までは扉の前に来れば、魔獣の気配が感じた。しかし、この扉は違った。この部屋からは力が一切感じなかった。そのことをレイが口に出した。


「神が持つ力、神力は同じく神力を持つ者でなければ、感じ取れない力らしい。俺たちが普段神の存在が感じ取れないように。例外はあるけどな」

「例外……。もしかして、神の遺産ですか?」

「その通りだ。神の遺産(レグリア)が持つ神力だけは感じ取れるにしてある。まあ、感じ取れなかったら、ただの道具だしな」


 ピラトの問題にアモルは答えを当て、扉を開けていく。部屋の中は神秘的であり、幻想的な空間が広がっていた。しかし、神アクアの姿はどこにもなかった。


「アクアはどこにもいねーな」

「アスラ、神様ですよ。様をつけなさい!」

「この部屋を探索する必要があるのかなー?」


 ルキスがこの部屋を探ろうとした瞬間、ツバサが目の前に現れた。


「やあ、お疲れ様」

「ツバサ、次はどうすればいいの?」

「君たちの使命は無事に完了したよ。君たちの知恵、勇気、力は見せてもらったよ。それこそが君たちが英雄である証だよ」

「そう言われると照れるじゃねーか」


 ツバサの称賛に対し、アスラは恥ずかしそうに言う。


「実は水の神アクアの心の1つが具現化した存在がボクなんだ。君たちを目覚めの使者として、導くことが仕事だったんだ。これで役目が終わったし、帰るとするよ」


ツバサがそう言うと六情球が光り始めた。六情球は緑、紫、黄、橙、青、赤の6つの光となり、ツバサに集まっていく。集まった光に別の光が集まっていき、人の形へとなっていった。

 光が収まり、そこには女性が1人いた。女性の髪は青色で腰まで伸びており、眼の色も髪と同じく透き通ったような青色だった。身長はレイと同じぐらいで胸は普通より少しだけ大きく、すべてを包んでくれそうな雰囲気をしていた。背には2翼の羽が生えていた。

 女性が口を開いた。


「私は水の神アクア。私を解放してくださりありがとうございます」

「いや、英雄として、当然のことをしたまでです」

「英雄たちよ。困ったことがあれば、アクアに来なさい。その時はできる限り力になりましょう。火の神イグニスが英雄たちに力を貸したように」


 アクアが目を瞑り、今までの事を振り返る。


「ここは夢の世界。この世界では様々なものが生まれました。夢が覚めれば、この世界は消えてしまうでしょう。しかし、夢は覚めるのが自然の摂理。この島の思い出はあなたたちの現実として、心に残り続けるでしょう。あなたたちが忘れない限り、確かに存在し続けるはずです。時は満ちました。共に目覚めましょう」


 水の神アクアから生み出される光にルキス達が包まれていく。ただ、その光にピラトは包まれていなかった。

 アクアの姿が大きな水鳥に変わっていく。

 水の神アクアの目覚めと共に夢の世界が消滅してゆく。

 村が消え、村人たちが消え、魔物たちが消えていく。

 そして、ドレムという島が消えていった。


****


 ルキス、レイ、アモル、アスラは気が付くとどこかの砂浜にいた。

 巨大な影ができ、太陽が遮られた。上を見上げるとどこかへと去っていく大きな水鳥の姿があり、その周りにはたくさんの水鳥がいた。

 ルキスはあの中にラブルがいるような気がした。

 夢の世界から解き放たれた彼女はどこでも自由に飛んで行けるだろう。

 鳥たちが飛んで行くところを見届け、ルキスは満足そうな笑顔を浮かべた。

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