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神に選ばれし英雄の異世界物語  作者: 甘味神宝
異世界での冒険
13/86

ラブル・目覚めの使者

異能力はいくつかの定義がある。そのうちの2つを紹介する。


1・過程を無視し、結果を出す。

例としては炎を出す力があるとする。魔術師なら、火のマナと魔力を使い、炎の魔術を行使する。竜人なら、火のマナと竜力を使い、体内で炎を作り出し、それを吐く。

しかし、炎を出す異能力はこれらの過程を無視し、いきなり炎を出すという結果を残す。これが異能力である。


2・再現が難しい。

どの独自の力また種族が持つ特徴でも再現することができないまたは難しい能力を指す。

例としてはレイが持つ異能力、心剣である。魔術で剣を作り、人の手でも剣を作ることも可能であるが、心剣は人の心、想いから作られる。その想いはレイに対するものでもあるため、再現が非常に難しい。


たとえ、レイと同じ心剣の異能力を持つ者が同じ人から抜いたとしてもその人に対する想いが剣になるため、別の剣になる可能性が非常に高い。

ちなみにミラが持つ異能力、ウーニャは魔術でも氷の爪を再現することができるが、ミラは魔術を使わずにできるため、異能力である。そして、それは本質ではないため、きちんと理解できなければ、その部分しか再現することができない。



前回のあらすじ

謎の島ドレムに来たルキス。翼が生えた狐に会い、自分が目覚めの使者ということを聞かせられる。狐から、ルジオの北にある森に向かうように言われ、それを信じ、そこに向かう。


****


 ルキスは砂浜で会った狐鳥に言われた通り、ルジオの北にある森に向かっていた。森の入り口に着き、なぜかそこには看板が立てられていた。看板には「ちょっと不思議な森です」と書かれていた。

 狐が飛んできて、看板の上に足を着けた。そして、ルキスに話しかけてきた。


「ちゃんと来れたんだね」

「それより、ここがどこなのかを説明してほしいな」

「ここはドレムという島だよ」

「そんな島の名前は聞いたことないんだよ」

「そうだろうね。人は何かを知るために生きているんだよ。もし、全ての知識が持っていたら、生きていてもつまらないと思うよ」

「まあ、ボクもいろんなことを見たり、聞いたりしたいから冒険者をやっているよ」

「でしょう。あと、目覚めの使者の使命が終わるまでここから帰れないよ」


 狐は重要なことをいきなり言ってきた。しかし、ルキスは落ち着いた。

 その訳はいきなり英雄に選ばれたことがあったからである。あれ以来、自分の知らないことがまだまだあると実感していた。使命について、聞いてみた。


「目覚めの使者の使命って、何?」

「天海の水鳥を目覚めさせること。魔物たちによって、眠っているんだ。だから、6つのあるものを集めて、目覚めさせてもらうんだよ」

「あるものって?」

「ああ、六情球だよ。これを集めれば、目覚めるんだ」

「ようするに6つの球を集めればいいんだよね」

「その認識で大体問題ないよ。あと、君の仲間3人も来ていると思うから、探してね。僕も会いに行く予定だけどね」


 狐の言葉にルキスは違和感がした。


「仲間が3人って、まだいるはずなんだけど」

「それなら、来てないだけだと思うよ。君にさっそくやってもらいたいことがあるんだ」

「玉集め以外で?」

「そう。実は君の前にあった人がいるんだけど、その子にも説明してね」

「キミがすれば、よかったじゃないの?」

「いきなり襲われてね、する暇がなかったんだよ。一応、最低限の説明はしたから、この森に来ているみたいなんだけど」

「分かったよ。ボクから説明するよ」

「この森で鍵を手に入れて、ルジオの近くにある遺跡に向かうんだ。そこに球が1つあるよ」


 そう言い告げ、飛ぼうとした。しかし、ルキスはそれを止めた。


「待って、まだ君の名前を聞いていない」

「名前ねー。翼が生えた狐だから、ツバサと呼んでよ」

「分かった、ボクの名前はルキス」

「頼んだよ、ルキス」


 翼を広げ、飛んでいった。そして、どこかに向かっていった。

 ルキスは森の方を見て、呟いた。


「たぶん、アスラかリアマだろうなー」


 ルキスの中ではその2人があまり話を聞かないだろうと思っていた。レイとアモルは相手を襲うということはしないだろうと思っており、シュガーとミラは襲うなら、相手から情報を引き出してからというイメージを持っていた。


****


 ルキスは森に入り、歩き続けた。しばらく森の奥へと歩いていると魔物が襲い掛かってきたが、剣を抜き、倒し、また進んでいった。

 奥に進むとほかの木と比べ、大きな木があった。その木に近づくと大きな窪みがあることに気付いた。その中を覗くと鍵が置いてあった。


「不用心だね」


 そう言いつつも鍵を取るために手を伸ばし、窪みに手を入れる。鍵を掴むと手を出し、腰の後ろにある袋にしまった。


「鍵はこれで良しと。次は森の中にいる仲間を探さないと」


 そう言っているとある方向から魔獣の苦しむような鳴き声が聞こえた。


「誰かが戦っているかも」


そう思い、魔獣の鳴き声がした方向に向かい、走り出した。


****


 魔獣の鳴き声がしたところにたどり着くとそこにはルキスの予想通りアスラがいた。


「やっぱり、アスラだったんだね」

「おう、ルキスか。変な魔獣を見かけてな、そいつを追いかけている」

「それはツバサという名前で味方だよ」


 ルキスはツバサから説明を受けたことをそのまま伝えた。そして、アスラがどうやってここに来たのか、またアスラがどうしてツバサを襲ったのかを聞いた。


「アスラはどうやってここまで来たの?ボクはリトスが輝いて、その光に包まれたら、ここに来ていたんだけど」

「俺も走っている時にリトスが輝いたら、いつの間にかここに来たんだよ」


 アスラは思い返すようにルキスに話した。


****


「走るか」


 こっちに来たアスラは砂浜があったので、足腰を鍛えるためにそこで走り込んでいた。しばらくすると魔物が襲ってきたが、それを難なく退けた。

そして、そこにツバサがやってきた。


「お前も敵か」

「君が目覚めの使者なんだね?」

「魔獣か」


 ツバサも魔物だと考えて、襲い掛かるが、しゃべりかけてきたので魔物ではなく魔獣と判断した。

 攻撃が当たらないようにツバサは飛び、逃げながらも一応説明していた。そして、不思議な森に逃げ込んだため、アスラもこの森に入ったが、迷い見失ってしまった。

森の中で再び魔物に襲われたため、応戦したのであった。


****


「話を聞こうよ」


 アスラの話を聞いて、ルキスが始めに出た言葉がそれだった。


「いや、魔物に襲われていたしな。アレだ。最終的にルキスに会えたんだし、いいじゃねーか」

「あやうく、ボクたちの冒険が終わるところだったよ」


 2人はそんな会話をしつつ、次の行先を決めようとしていた。


「さっき、言った通り、遺跡の鍵はもう手に入れたんだ。だから、次は遺跡に向かおう」

「具体的な場所は分かっているのか?」

「いや、ツバサはルジオの近くにあると言っていたけど、ボクたちは来たばかりで土地勘がない。そこでルジオにいる知り合いに聞こうと思う」

「もう、知り合いがいるのかよ」

「うん、ラブルという女の子でボクを助けてくれたんだ」

「なら、決まりだな」


 ルキスとアスラはルジオに行き、ラブルに遺跡の場所を聞くことにした。


****


 ルジオに着いた二人はラブルがいる家に向かい、入り口の前に立ち、彼女がいるかどうかを確かめるために声を掛けた。


「ラブル、いるー?」


 ルキスがそう声をかけると扉が開いた。


「ルキス、ずいぶん早い帰りね。今日はもう戻ってこないと思っていた」

「いやー、ちょっとこの辺りの地理で聞きたいことができてさー。紹介するね、ボクの仲間の戦人のアスラ」

「ルキスを助けてくれて、ありがとうな」

「いえいえ。私の名前はラブルって言います」


 アスラをラブルに紹介し、ラブルも自分の名前をアスラに教えた。


「ルキス、仲間が見つかって、良かったね。ところで私に聞きたいことって、何?」

「この村の近くにあるっていう遺跡の場所を知りたいんだ」

「確かに近くに遺跡はあるけど、なんでそんなところに?でも、あそこって、扉に鍵があって、開かないはずよ」

「それなら、大丈夫だよ。鍵ならここにあるから」


 そう言いながら、ルキスは腰の袋から、鍵を取り出しラブルに見せた。


「これが遺跡の鍵……。どこでそんな物を手に入れることができたの?」

「それはボクたちが島に来たことに関係しているんだ。ツバサっていう動物にこの島でやらなければいけないことを教えてもらって、そのために遺跡と鍵のことも教えてもらったんだ」

「そうなんだ……。ねえ、私も一緒に遺跡に行っていい?私も行ってみたいし、一緒に言った方がスムーズにいくと思うの」

「いいけど、危ないよ?」

「危なくなりそうだったら、ルキスが助けてくれるでしょう。なんだって、ルキスは英雄なんだから」

「うん、任せてよ。それじゃあ、遺跡まで案内よろしくね」


 ラブルも同行して、遺跡に向かうことになった。


「なあ、ルキス。あと2人は誰だと思う?」


 遺跡に向かっている時にアスラが質問してきた。こちらで初めて会った時に自分たち外にも2人いると話していたためである。


「レイとアモルじゃないかな」

「その根拠は何だ。」

「こちらに飛ばされた直前まで、レイとアモルと話していたんだ。その時に突然リトスが輝き始めて、こちらに飛ばされたんだ。確か、2人のリトスも輝いていたと思う」

「アスラ以外にも仲間がいるの?」


 2人が会話をしているとラブルが会話に入ってきた。


「うん、ボクとアスラを含めて、7人が英雄に選ばれて、一緒に旅をしているんだ」

「アスラもルキスと同じ英雄だったんだ」

「そういえば、言ってなかったな」

「残り5人はどういう人なの?」

「名前がレイ、アモル、シュガー、リアマ、ミラって、いう名前でね。レイは異世界から来た人でアモルは天人なんだ。そして、シュガーは獣人でリアマは竜人。ミラはボクと同じ人だよ」

「異世界って、何?」

「ボクたちが住んでいる世界とは別にいくつかの世界があって、レイはそこから来たんだよ」

「そうなんだ。でも、私から見たら、ルキスも別の世界から来た人みたいだよ」


 ルキスはラブルが言った言葉に疑問を持ち、聞いてみた。


「それって、どういうこと?」

「私ね、昔からこの島以外の陸はないと言われて、育ってきたんだ。けど、それは信じられなくてね、海の向こう側には必ず何かあるとずっと思っていたの。それで海を眺めながら、向こう側にある何かを想像することが好きだったの」


 今までの事を思い出しながら、ラブルは語ってくれていた。


「いつも通り、海を眺めに行こうとしたときに見つけたの」

「見つけたって、何を?」

「ルキスをだよ。ルキスを始めて見つけたとき、ワクワクしていた。だって、そこには知らない人がいて、海の向こう側からやってきたんだって。思っていたことが本当だったから」


 ルキスはラブルの気持ちが分かった。似たような経験をしたことがあるからだった。


「そうなんだ。それはうれしいよね」

「うん」

「でも、世界はまだまだ広いんだよ。それこそ、知らないこと、物がたくさんある。ボクはそれが知りたいんだ」

「私も知ることができるのかな?」

「できるよ」


 ルキスは幼いころに見つけた綺麗な石を思い出していた。それを見つけた時の感動をまた味わたいから。だから、彼は冒険者になった。

 ラブルとルキスは会話に夢中になっているとアスラが二人に声を掛けた。


「何か建物が見えてきたぞ」

「そこが遺跡よ」


 ルキス達は遺跡に着き、扉の場所を調べ、その前に立った。そして、アスラが口を開いた。


「ルキス、ラブル。ちょっと離れてくれ」


 そう言われた2人は扉からある程度距離を取った。


「おらぁぁぁぁぁぁ!」


 いきなり扉に向けて、拳を放った。しかし、扉は少しへこんだだけで開くことはできなかった。


「何がしたいの、アスラ」

「俺の拳でどうにかならないかと思ってな。へこんだなら、時間を掛ければいけるな」

「今回は鍵があるから、こっちのほうが早いよ」


 ルキスは鍵を鍵穴に差し、回した。ハンドルに手をやり、扉を開けた。


「この遺跡の扉が開くところが見られるなんて」

「ラブルはここで待っていてほしいんだ。この遺跡に来るまでに魔物には襲われなかったし、遺跡についてくるより安全だと思うから」

「分かった。無事に帰って来てね」


 ラブルは遺跡の外で待つことを了承し、ルキスとアスラは遺跡の中へと進んでいった。


****


 遺跡の中には魔物がいたが、ルキスとアスラの2人がいれば、問題なく倒せるレベルだった。何個かの部屋があり、扉には鍵がかけられており、ほかの部屋に鍵を探しに行く。しかし、鍵を掛けられているだけで特に知恵を使うような罠や仕掛けはなかった。

 そして、ルキス達は一番の奥の部屋に着いた。鍵を開け、扉を開き、中に入った。

 そこには犬型の魔獣がいた。ただし、体の大きさが普通の犬の3、4倍はありそうだった。

 犬型の魔獣はルキスとアスラに言葉を語りかけてきた。


「ヨソモノハカエレ」

「よそ者は帰れだと」

「恨みはないけど、倒させてもらうよ」


 ルキスは鉄球を回転させ、魔獣に対し投げ放つ。鉄球は魔獣に当たり、よろめいたが、ルキス達の方に襲い掛かる。魔獣には人とは違い、毛皮があり、何より体格もあったため、ダメージが減っていてしまった。

 ルキスは左、アスラは右に避けた。魔獣は小さいほうから襲う本能があったのか、右に行き、ルキスを襲い掛かろうとした。剣を抜き、対応しようとしたが、魔獣の動きは止まっていた。


「待ってや、犬っころが」


 アスラが魔獣の尻尾を掴んだため、動きが止まっていたのであった。

尻尾を掴みながら、振り回した。ある程度回した後、尻尾から手を離し、壁にぶつけた。魔獣は体勢を直し、アスラに向かっていった。

アスラは間合いを図っていた。それは自分が作った必殺技を当てるためだった。ある程度、魔獣が近づき、拳の当てられる距離になった。


「スパイラルブロー!」


 右手の甲を下にして殴る動作に入る。そして、拳を内側に捻ることで180度の螺旋回転を加えながら、魔獣に目掛けて、殴り飛ばした。

 殴られた魔獣は壁に打ち、地面に落ちた。かすかに動いていたが、じきに動かなくなった。


「良し、この技は使えそうだな。後は特訓だけだ」

「ナイス、アスラ」


 ルキスがアスラにそう話しかけていると魔獣の体が光りだした。魔獣の体は小さくなっていき、光が収まり始めた。そこには緑色の球があった。それをルキスが拾い上げる。


「これが六情球かな」

「たぶん、そうだろうな。ほかに部屋がないし」


 ルキス達がいる部屋が一番奥であり、それ以上ほかの部屋に続く扉は見当たらなかった。

 魔獣が変化したこの球が六情球だと判断し、遺跡の入口へと戻った。


****


 入り口に戻り、外に出た時にはすっかり夕暮れになっていた。外には無事の姿のラブルが待っていた。


「遅いよ、ルキス。もう戻ってこないんじゃないかと思うほど」

「心配させて、ごめん。でも、目的の物はちゃんと見つけてこれたから」


 遺跡から取ってきた六情球をラブルに見せた。


「この球がルキスが探していたものなの?なんか、普通の球に見えるけど」

「でも、これが鍵を握っているんだ」

「いつの間に来たんだ?」


 いつの間にか、ツバサがおり、会話に交じってきた。そのことに驚きつつも遺跡内で取ってきた緑色の球を見せた。


「これでしょう?」

「この球で合ってるよ」

「次はどこに行けばいいのかな?」

「不思議の森の奥にね、沼があるんけどー、そこに洞窟があるんだ。次はそこに向かってよ。入り口に大きな岩があるのが目印だよ」

「大きな岩はどうすればいいの?」

「そこに行けば、アスラが岩を砕けるようになるよ」

「俺がか」

「そうだよー。とりあえず、行けば分かるよ」


 ツバサがそう言い飛ぼうとしたが、言い忘れたことがあったため、動きを止めた。


「そうそう、君たちの仲間に会って、明日そこに向かうように言ったから、よろしくねー」


 言いたいことを言った後、どこかへと飛んで行った。


「誰だろう。レイかアモルかな?」

「明日に行けば、分かる。それより、明日に備えて今日はもう休むべきだな」

「それなら、私の家に来ない?」


 ラブルは2人にそう提案した。


「いいの?」

「もちろん、ルキス達なら歓迎だよ」

「なら、言葉に甘えさせてもらうね」


 ラブルの申し出にルキス達は甘えることにし、彼女の家に一晩泊まることにした。

 家に着いたルキアたちはラブルが作った食事を食べた。その後は風呂に入った。

 最初に入ったのがラブル、2番目にアスラ、最後にルキスという順番だった。アスラは風呂から上がったら、すぐに寝てしまった。最後にルキスが入った。しかし、この時にトラブルが起こった。

 ルキスが体を洗い、風呂に浸かった。浸かりながら、明日会う仲間について、少し考えた。そして、風呂からあがろうとした時だった。


「ルキスー。タオルを忘れているから、置いとく……」


 ラブルがタオルを渡すために浴室に入ってきた。そのとき、ルキスの姿がいやでも目に入った。なぜなら、ルキスの姿にはないと思ったものがあったからである。


「ルキス!付いているよ!」

「付いていて、当たり前だよ。だって、ボク、男だもん」

「女じゃなかったの!?」

「男だよ」

「いやでも、スカートを履いていたし、パンツも女性ものだったけど……」

「ボクが住んでいた村は女性の恰好をする風習があったからだよ」


 ラブルは最初にルキスを助けた行動を思い出していた


「たしかにルキスを見つけた時に胸に手を当てて、女の子にしては胸がないなーとは思っていたけど」

「とりあえず、タオルをくれるかな?」

「ご、ごめん。出ていくね」


 ラブルは浴室から出ていき、ルキスは体を拭き、服を着てから、彼女のところに向かった。


「ルキス、さっきはごめんね。同性だと思っていたから」

「気にしないでよ。言っていなかったボクも悪いんだから。これからも仲良くしてくれるかな?」

「それはもちろん。仲よくしましょう」

「それなら良かった。もう遅いし、ボクはもう寝るね」

「私もそろそろ寝るわ。お休みなさい」


 ラブルとルキスは休みの言葉を交わし、明日のために、もう寝ることにした。


****


 太陽が昇り、朝を迎えた。ルキスが起きた時にはアスラの姿はなく、部屋から出るとラブルが起きていて、朝食を作っていた。


「おはよう、ラブル」

「おはよう、朝食はパンと軽く食べれるものだけど、いい?」

「作ってもらえるだけ、ありがたいよ。ところでアスラがどこに行ったか知らない?」

「アスラなら、外に行ったよ。なんでも、日課とか言っていたわ」

「分かった。ありがとう」


 ルキスは扉を開け、外に行った。すぐにアスラを見つけた。しかし、妙な動きをしていた。

左腕は真直ぐに伸ばし、手の甲を上にしており、右腕は脇の下にあり、手の甲は下に向いていた。右腕をまっすぐ突き出すと手の甲は上に向いて、左腕は脇の下に戻すと手の甲は下に向いていた。その動作は何度も繰り返し、行っていた。


「何しているの? アスラ」

「必殺技の練習。昨日、魔獣を仕留めた技だ」

「ああ、殴る際に何かしていたね。どんなふうに殴ったの?」

「説明が長くなるけど、いいか?」

「なら、まずはご飯を食べて、不思議の森の奥に行く道中に教えてもらおうかな」

「それでいいぜ」


 ルキス達はラブルが作ったご飯を食べるために家に戻った。朝食はパンにトマト、卵焼きだった。それらを食べ、今日のためのエネルギーにした。

 行くべき場所が分かっていたことと不思議の森を通るため、ラブルは連れて行かないことにした。


「じゃあ、行ってきます」

「朝飯、ごちそうさん」

「怪我には気を付けてね」


 ラブルに別れを告げ、2人は不思議の森に向かった。

 そして、何事もなく、不思議の森に着き、沼があるという森の奥に向け、歩いていく。

 朝食を食べる前、話題になっていたことをアスラに聞いた。


「アスラ、さっきの続きなんだけど、どんなふうにして殴ったの?」

「拳を回転させながら、殴るんだよ」

「回転?」


 アスラが言った回転という言葉がルキスの中で引っ掛かった。なぜなら、ボースハップンというゲームで2人はキルト・クイスから回転の技術を教えてもらっていたからであった。


「キルトから学んだ回転が何か関係してくるの?」

「この技を生み出すきっかけになったぜ」


 生み出すきっかけを思い出しながら、話した。


「あれはこちらに着いて、まだお前と会う前だ。ツバサを追いかけて、ここに入って、魔物に会ったんだ。魔物に向かって、鉄球を投げたんだが、うっかり回転させることを忘れてな。当たったことには当たったんだが、大したダメージにならなかった。ここで思いついたんだ。普通に殴るより、回転させた方がよくねと」


 アスラの発想は例えるなら、ネジである。ネジはただ押し込むより回転させて押し込む方が刺さりやすい。


「それから、回転させる方法を考えてな。手の甲を下にして、殴るときに上に向けることで回転させるようにした」

「昨日思い付いたということは魔獣に放ったあれは」

「ぶっつけ本番だったな」

「成功して良かったね」

「本当だな。ただ、この技は連打が効かないんだ。ここぞという時に使うようにしないとな」

「そうなんだ。朝のあれは何のためにやっていたの?」

「回転の動作を瞬時に行えるようにするためだ」


 アスラとルキスはそう話しながら、森の奥へと向かっていた。向かう途中で魔物に出会ったが、見事に倒し、先へと進んだ。

****


 出口が見え、通り抜けた先には草原が広がっていた。その先には山脈があった。

 2人が草原の右側を見ると沼があり、ツバサが言った通り、大きな岩があった。草原を歩くとそこには見覚えがある人影があった。その人は背を見せており、長い金髪でそれを三つ編みにして、まとめていた。もちろん、ルキスにはその人が誰か分かり、声を掛けた。


「アモルー」

「ルキス、それにアスラもいたんですね」


 それはアモルだった。ルキス達に気づき、振り返った。ルキス達は情報を交換しあった。


「ルキス達はいつこちらに着いたんですか?」

「昨日の朝だったよ。アモルは?」

「夕方でしたね。ツバサという羽が生えた狐にここで待つように言われました。そうすれば、明日、仲間に会えると。その通りでした」

「ボクたちはこの球を集めているんだ。天海の水鳥を目覚めさせないとこの島から出られないらしいんだ」


 この島での目的を説明し、ここにきている仲間が4人いるということも伝えた。


「4人……。私、ルキス、アスラで3人。残り1人はレイの可能性が高いですね」

「ボクもそう思う」

「なんで、レイなんだ?シュガーやリアマ、ミラの可能性もあるじゃねーか」

「昨日、言ったと思うけど、ボクたちと一緒だったからだよ」

「そういえば、そうだったな。なら、大きな岩があるところに行こうぜ」


 ルキス達は沼の方に向かい、大きな岩があるところまで、歩いて行った。

 沼は浅く、足と膝の真ん中当たりまで浸かった。もし、ここで戦うことになったら、いつも通りには動けないぐらい、動きを制限していた。3人は時間をかけながら、転ばないようにゆっくり歩いていく。そして、大きな岩があるところまでたどり着いた。

 アスラが岩の前に立つ。


「おらぁぁぁぁぁぁ!」


 岩に向けて、右腕の拳を回転させて、スパイラルブローを放つ。しかし、岩はへこむこともなく、大きな音を鳴らしただけであった。


「何をやっているんですか?」

「この岩はアスラが砕けるらしいって、ツバサが言っていたんだよ」

「もう1回だ!」


 再び、スパイラルブローを放つ。しかし、同じ結果で終わる。しかし、アスラのリトスであるネックレスが突然水色の光を放ち、輝いた。


「何ですか、この光は?」

「リトスから光が。これがボクの時と同じなら、アスラのフィデスが目覚めるはず」


 岩を殴った部分が水色の粒子になり、アスラの右腕に集まっていく。右腕は分解されていき、水色の粒子と共に右腕の形に再構成されていった。そこにあったのは普通の腕はなく、黒い装甲が覆った腕になり、黒く鈍い光を放っていた。背中の右側には水色に輝く片翼が3枚あった。


「これなら、行けるな!」


 この力の使い方をアスラには分かったのか、再び、スパイラルブローを岩に対し、放つ。そして、3枚ある片翼の1枚が消えていく。それと同時に腕の肘の部分が開き、そこから闘気が爆発した。その威力を利用し、推進力に使うことで拳は加速させた。

 結果、アスラの拳は大岩を打ち砕き、バラバラに崩れていく。バラバラに落ちていく岩の欠片は沼に落ちる前に光となり、消えていった

 ルキスとアモルがアスラに駆け寄っていく。


「やったね。それがアスラのフィデスだよね」

「そうみてーだ。この右腕に変化することが俺のフィデスらしい」

「右腕に装甲が付いたけど、天力で具現化したのかな」


 ルキスは天力を使い、腕を具現化したと予想したが、それはアモルが否定した。


「いえ、アスラの右腕から天力は感じ取れません。岩から発した水色の粒子が右腕に集まり、それと同時に右腕が分解され、再構成することで一体化したように見えました」

「確かに右腕そのものが変化しているな。左腕とは違うから、違和感あるな。まあ、使っていくことで慣れていくだろう」

「なら、異能力かな?」

「おそらくはそうだと思います」

「じゃあ、元に戻すか」


 アスラの右腕は再び分解され、元の腕に構成されていき、2枚の翼は散っていく。この時、体に違和感がした。


「疲労が一気に来たな。それに闘気もかなり減った」

「アスラの背中にあった翼って、何で出来ているの?」

「俺の闘気で出来ているらしい。それを爆発させることで推進力として、利用することで拳の威力を上げることができる」


 アスラは初めて、フィデスを使ったのになぜそういうことが分かったのかが気になり、アモルは質問した。


「アスラ、なぜ初めて使ったのにそういうことが分かるんですか?」

「そういえばそうだな。フィデスが使えるようになったことで使い方も分かるようになったんじゃね」


 アスラの説明はアモルにとってはいまいち、要領が得なく、曖昧だった。


「分かるよ、アスラ。ボクが目覚めた時も磁力ということだけが分かったもん」


 しかし、ルキスには何となく分かったみたいであった。


「大岩はアスラが壊せたし、先に進もう」


 大岩の先には洞窟があり、3人は先を進んでいった。


****


 洞窟の中には扉が一つあり、扉の左側には片方の皿だけに物が乗った天秤があり、右側には色とりどりの石が置いてあった。


「どうする? 俺のフィデスを使って、壊すか?」

「それはやめておきましょう。さっきのアスラを見る限りではミラやレイのフィデスと違って、負担が大きそうです」

「そうそう、仕掛けがあるんだから、それを解けばいいんだよ」


 ルキスは天秤があるほうに、アモルは色とりどりの石のほうに進んだ。ルキスが天秤をいじくっていると扉が上がっていった。


「扉が開いた」


 扉が開いたことに反応し、天秤から手を離すと扉は下に降り、閉まってしまった。


「閉まりましたね」

「どんな風にやったんだ?」

「いや、適当にいじっていたら、勝手に開いた」

「何か、条件があるはずです。それを探しましょう」


 ルキスは再び天秤に触る。しばらくし、左の皿と右の皿が平行に並んだ時に変化が起こった。扉が再び開いたのであった。


「なるほど、天秤の両方の皿を平衡にすればいいんだ」

「こっちの石で左と右の皿の重さにすればいいんですね」


 アモルはいくつかの石をルキスのところに持っていく。それらの石を右の皿に乗せていった。すこし手間取ってしまったが、平行にすることができ、扉は開きっぱなしになった。


「これで完璧に開いたな」

「先に進みましょう」


 アモルたちは次の部屋へと進んでいった。

 次の部屋は3つの扉があった。扉はどれも開いたままであり、なぜか看板があった。それをルキスが読んだ。


「えーと、1つの扉に入れるのは1人まで、だってさ」

「どうしますか?」

「じゃんけんで決めるか」


 どの扉に入るかはアスラの提案により、じゃんけんで決めることにした。結果、アモルは左の扉に、アスラは真ん中の扉に、ルキスは右の扉に入ることになった。


「一時の別れだな」

「無事であることを祈ります」

「互いにがんばろうね」


 それぞれの扉へと入っていた。入った後、扉は静かにゆっくりと閉められていった。


****


 アスラが入った部屋は広く一番奥に扉があった。

 ある程度、進むとどこからとなく熊に似た魔物が2体現れた。


「こいつら、倒せばいいんだな。いくぜ!」


 拳で地面を殴り、フィデスを発動させた。地面から水色の粒子が現れ、右腕に集まり、右腕が分解され、再構成されていく。そこには黒い装甲をした腕と3枚の水色の羽があった。

アスラは魔物に向かって、走り出し、戦い始めた。


****


ルキスの部屋は2つに分かれていた。左側には扉があったが、鍵がかけられていた。右側には1本道の通路があり、一番奥には台座があった。


「たぶん、あそこに鍵が置いてあるよね。でも、この通路は怪しすぎる」


 この通路がただの1本道であるはずがない。何かの罠がある。冒険者の勘がそう告げていた。


「でも、早く通り抜けることができれば、問題ないよね。考えていた新技を試そうかな」


 鉄球を4つすべて取り出し、自分のフィデスである磁力(ガウス)を発動させた。


****


 アモルが部屋に足を入れると扉が4つあり、扉の上には数字が書かれており、左から

、1、2、3、4と並んでいた。

部屋の真ん中には看板があった。そこには『人が生まれし時、若き時、そして老いたる時その足跡が残される』と書かれていた。


「どういう意味でしょうか」


 しばらく考え込み、答えを思いついた。


「ここの人とはおそらく私を指すとして、足跡はその時に使う足の数だとしたら。生まれし時は赤ちゃんの時に指していると思うので、赤ちゃんはハイハイなので足跡は4つですね」


 一番右の部屋に入った。そして、またもや同じ部屋があった。違うのは看板がないことだけだった。


「次の若き時とは今の私を指すはずです。今の私は2本の足で立っているので、足跡は2つ」


 左から2番目の部屋に入る。


「最後の老いたる時とは……。私の種族は天人で老いがないので、年をとっても2つのはず」


 また、左から2番目の部屋に入る。そして、見えた者は看板であった。看板に書いてある内容はまったく同じだった。最初の部屋に戻ってしまった。


「あれ……、おかしいですね。本当に同じ部屋かを一度試してみましょう」


 アモルは腰から剣を抜き、看板に傷をつけた。先ほどと同じように進み、部屋の地面に目印をつけていくが、またもや最初の部屋に戻った。看板の傷を調べた。


「私が傷つけた跡があります。つまり、ここは間違いなく最初の部屋ですね」


 看板に新たな文字が書き加えられていた。それにアモルは気づくことができた。


「新たな文字がありますね。『やり直しは効かない。これで最後』。これ以上は失敗ができないということですか……」


 アモルの行動は少し軽率であった。間違えたら、何が起こるかが分からないなら石橋を叩いて渡るべきだった。彼女は今まで行動を分析した。


「最初の部屋に戻ったということはそれは間違いだったということ。それなら、間違ったなら、最初の部屋に戻る、裏を返せば、3つ目の部屋までは戻らずに行けたということは2つ目までは合っているという考えで間違いないはず。それなら、老いたる時という言葉を考えればいいはず」


 老いたる時という言葉の答えを見つけるため、考えた。もしかしたら、最後になるかもしれないので、仲間たちのことを思い出した。しかし、アモルの中でレイ、ミラ、ルキスの顔が引っ掛かった。


「もしかしたら……」


 次に思い出したのが彼女がいた教会のことであった。祈りをささげる老人のことを思い浮かべた。老人は教会に来る時にあるものを持っていた。そして、答えを思いついた。

 3つ目の部屋までは同じ扉に入った。部屋の床にはアモルが傷つけた跡がきちんと残されていたので、確信が持てていた。3つ目の部屋にたどり着いた。


「最初の前提が間違っていたとしたら。人とは私ではなく、種族を指しているとしたら。人という種族は老い、足腰が弱くなる。その補助のために使う物があります。それは……杖です。2本の足と杖で足跡は3つになるはず」


 アモルは不安を覚えながらも、勇気を出し、左から3番目の扉を開け、歩いて行った。

 新たな部屋に出て、そこにはルキスとアスラの姿があった。


「遅かったな」

「無事でよかったよ」

「そちらこそ、無事でよかったです」


 3人は互いの無事を喜び合った。

 部屋には3つの台座があり、そこにはボタンがあった。またもや、看板があった。そこには『団結』とだけ、書かれていた。


「これはどういうことですか?」

「ボタンがあるでしょう。それを3つ同時に押すんだと思う。アモルが来る前にいろいろ試したけど、反応しなかったんだ」


 ルキスが1番目にこの部屋に着いた。ボタンを順番通りに押すのではないかと考え、6通りの押し方を試したが、駄目だった。

 アモルたちはそれぞれの台座の前に立った。


「いっせいのせでいくよ」

「おう」

「分かりました」

「いっせいのせ」


 息を合わせ、同時にボタンを押した。扉は開かれた。


「開きましたね」

「この先はなんかいやな雰囲気を感じるなー」

「ややこしいのもこれで最後かもな」


 3人は扉の先に進むとさらに扉があり、それも開く。

その先には犬の魔獣がいた部屋と同じく、広い部屋があった。そこには蛇型の魔獣がいた。そして、ルキス達に襲い掛かる。

 鉄球を当てるのが難しいと考え、ルキスとアモルは剣を抜き、アスラは壁を叩き、フィデスを発動させ、右腕を黒い装甲の腕へと構成した。


「当たりやがれ!」


 アスラは拳を振るうが、魔獣は振るわれた場所だけ、器用に体を避けた。蛇の体を持たなければできない芸当だった。

 蛇はアモルに向かって、口から液体を飛ばす。アモルは嫌な予感がし、受け止めるのではなく、避けた。それは正解だった。液体の正体は毒液であり、周りを溶かしていく。


「蛇が吐く毒液は危険です。気を付けてください」

 

 アモルは2人に注意を促した。

 牙から毒液を作り出し、ルキスに向かい、飛ばすのではなく、直接噛み付こうとした。

 ルキスは剣を横に持ち、口の方にやり、何とか噛ませないようにした。しかし、離れていく様子は無く、むしろがっしりと剣を離さないように噛み付いてきた。

 蛇の目的は毒液を大量に作り出し、剣に垂らしていき、ルキスにかけることだった。


「離せー」


 それに気づき、なんとか振り払おうとしたが、離す様子は全くなかった。本格的に剣の方に垂らしかけたとき、振り回せすことでそれによって、動いていた蛇の体が止まり、一直線になった。

 その原因はアスラにあった。彼が尻尾の方を掴んだことが原因であった。


「今だ、アモル!」


 アモルは蛇の体の方に走り出し、剣を振り下ろすことで蛇の体を2つに分けられた。蛇の口は剣から離し、苦しんでいた。そして、言葉を話した。


「無駄なドリョクだ。どうせ、アワになるんだからよ」


 話し終わると蛇の体は光りだし、紫色の球へと変わっていった。

 ルキスは球を手に取り、ある疑問が浮かび上がった。


「蛇が言っていたアワってなんだろう」

「どうせ、魔獣が言ったことだ。深い意味なんて、ねーよ」


 ルキス達は洞窟の外に出るために歩き出した。

 外に出たら、そこにはツバサがいた。


「お疲れ様。無事に2つ目がゲットできたんだね。順調順調。次の向かうべきところなんだけど、ルジオの東にあるんだ。そこで選ばれし証を持って、扉に触ることで開くことができるよ」

「選ばれた証って、リトスのこと?」


 ルキスが念のためにツバサに確認した。


「そうだよー。それじゃあ、よろしく」


 ルキスに続けて、アモルも質問した。


「ちょっと待ってください。あと1人はどうなったんですか?」

「それは3つ目の球を手にいれてからだね」


 ツバサはどこかへと飛びだって行った。


「行くしかねーな」

「そうだね。次の目的地に行こう」


 ルキス、アスラ、アモルはルジオに向かい、歩き出していった。


 しかし、英雄たちは知らなかった。この島がどういうところで何が真実かを。

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