ボースハップン②
ある英雄が平和の国を築き、神の祝福を受ける。英雄は完全な平和を求め、それを実現した。英雄の傍らには4人の天使がおり、平和を維持し続けた。
ある時、1人の天使が裏切り、魔王になり、4人の悪魔と手を組む。魔王と4人の悪魔は英雄、神、3人の天使と戦った。また、魔王たちも神の手を借りた。結果、魔王が勝ち、平和は崩れ去った。
英雄は魔王と共に封印され、天使の1人は1人の悪魔を封印した。神は敗れた際に6つの神具と世界を見守るものを作り、2人の天使は眠りについた。
平和は失ったが、また平和は築かれた。
前回のあらすじ
襲撃されたレイとミラだったが、なんとか撃退することに成功した。そのころ、リアマはアモルにずっと不思議に思っていることを相談し、シュガーは懐かしい人物に出会うことになった。
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コルヌを倒したレイとミラは2のチェックポイントに向かっていた。
ミラはフィデスを発動して、鎖を具現化していた。親指の鎖ボンド・リンクをレイにくっ付けて、傷を癒していた。
「ミラ、ありがとう」
「いや、気にするな」
「それにしても、コルヌはなんで襲い掛かってきたんだろう」
「そりゃあ、リトスを奪いに来たんだろ」
「目的の1つだろうけど、それだけでない気がする」
レイはコルヌの襲来に疑問を浮かべていた。もし、フィデスを狙いに来たなら、奪えた時点で逃亡すれば、良かったはずである。それにも関わらず、レイの命を狙ってきた。そこに疑問を感じていた。
「なんで、そのまま逃げなかったんだろう」
「追いかけてこられても困るからじゃないか」
レイはあることに気づき、慌てて、ミラに言った。
「リトスを狙われているということは他のみんなが危ない」
「それなら、大丈夫だろう。シュガー、アスラはコルヌ程度には負けないだろうし、アモルに至ってはリアマと一緒にいるんだ。それより、対策だな」
「対策?」
「そう、まずはこのままゲームに続けるかだな」
レイは少し考え、自分の考えを言った。
「続けよう。やめたところで狙われることに変わらない」
「なら、リトスはもう誰にも気軽に渡さないようにすることだ。レイと私はフィデスに頼って、戦っている。リトスがなかったら、そのフィデスを使うことができない。だから、自分の手元から離さないようにする」
「分かった」
レイたちは2のチェックポイントに向かい、歩き続けた。
****
リアマとアモルがソルムから出発し、9日が過ぎていた。リアマたちは4と5と6と7のチェックポイントに行き、それぞれの水晶をもらい、1のチェックポイントに向かっていた。
リアマはアモルに不思議に思っていることを打ち明けた。
「アモル、相談したいことがあるのだが、いいか?」
「なんでしょう?」
「シュガーのことだ。シュガーとは長い付き合いになる」
「シュガーとは幼馴染だったんですか」
リアマは昔のことを思い出すように話した。
「そういう関係とは少し違う。気づいたら、私の近くにあいつがいた」
「子供のころのシュガーはどんな人だったんですか?」
「分からない」
「分からないとは? 長い付き合いになるんですよね?」
「シュガーは昔から年を取っていない。少なくとも20年近くは変化がない。相談したいこととはこれだ」
「え、でも、シュガーは20歳と言っていましたよね」
「それは確実に嘘だ」
リアマとアモルが知る限りでは獣人は天人と違い、老いがある。
アモルは少し魔術のことに考えて、何か思い付いたように発言した。
「魔術か何かで老いを無くしているのか誤魔化しているのではないんでしょうか。魔術師には不老の騎士と呼ばれているサロスという人物がいたと言われるぐらいですから」
「確かにその可能性がある。どの種族に言えることだが、種族のことがすべて分かっている訳ではない。そこに何かしらの秘密があるかもしれない。シュガーについてはそれだけだ」
「なぜ、私にそのことを相談したのですか?」
「私は誰かと秘密を共有したかったかもしれない。そして、私はシュガーのことは信じている。シュガーが何かを隠しているのは確かだが、誰にも秘密の1つや2つはある。あと、長い付き合いだから、私のことを騙そうという気がないのは分かる」
確かにシュガーには隠している事があった。それでも、リアマはシュガーの事を信じていた。リアマとシュガーは10年以上の付き合いになっており、リアマがシュガーのことをよく知っていたからである。
****
ソルムから出発し、5日が過ぎ、シュガーたちは7と6の結晶を手に入れ、5のチェックポイントに向かい、歩いていた。
その途中である女性がおり、こちらに話しかけてきた。
「久しぶりね、シュガー」
「久しぶりだな、シリウス」
シリウスと呼ばれた女性はシュガーに挨拶をし、シュガーはそれに驚いたような顔で返事をした。シリウスの髪は青白く、眼は濃ゆい青色だった。シリウスはシュガー以外の人物は眼中にないようだった。
「まさか、お前が生きているとは思ってもいなかった」
「こういうのを世間一般では感動の再会というでしょうね」
「そうだな。お前が生きているということはベテルギウスも生きているのか?」
「さあ、少なくとも私は会ってないわね」
スノウには2人が感動の再会に喜んでいるようには見えなかった。だが、シュガーはシリウスが生きていたことに驚いていることだけが感じてとれた。
「シュガー、あなたは昔から憧れていた英雄になれた。それはあなたの指にある指輪のリトスを見れば、分かる。本当におめでとう」
「それより、何の用だ」
「あら、冷たい。今日はあいさつしに来ただけ。それとも、戦うの?」
「それはやめておこう」
「また、会いに来るわ。それまで、死なないようにね。最も死ぬとは到底思えないけど」
シリウスはシュガーの前から、立ち去った。
フラースはシュガーにシリウスとのどういう関係なのかを尋ねた。
「シュガーちゃん、あの人とはどういう関係?」
「昔の知り合いだ」
「まったく、そんな風に見えなかったけど」
「本当だ」
フラースはシュガーに対し、疑っていたが、それ以上は追及してこなかった。
フラースが口を閉じると今度はスノウが口を開いた。
「本当だったんですね」
「何が本当だったんだ?」
「英雄に選ばれたということがです」
「信じておいて欲しかったな。そこは」
シュガーはフラースとスノウにシリウスのことについて、お願いした。
「フラン、スノウ。シリウスのことは誰にも話さないでくれ。それがレイたちでもだ」
「なんでー」
「シリウスのことは俺の個人的問題だ。自分でケリを着ける」
「シュガーちゃんがそこまで言うなら何かあるんだよね。分かったよ」
シュガーたちが再び歩き出そうとした瞬間、2本の足で走って、こちらに向かって来ている者が現れた。それにスノウが反応した。
「師匠、何か来ていますよ」
「あれは魔物だね。それにしても何か妙だね」
「何がだ。フラン」
「魔物なら、ほかの参加者を襲うはずだよね。それなのに私たちの方に向かって来ている」
「それなら、魔物じゃなくて、魔獣だな。魔獣に誰が狙われているのかを知りたい」
シュガーは誰が魔獣に狙われているのかを知るためにある提案をした。
「それぞれが別々の方向に逃げるとしよう。それで誰が狙われているのかが分かるはずだ」
「私も別の方向に逃げるんですか」
「もちろんだ。心配しなくても危なくなったら、助けてやる」
会話を終えると3人が別々の方向に逃げだした。逃げた後、2匹の魔物はシュガーを追いかけてきた。
「魔獣にも恨みなどの感情があるのか。それを抜きにしても恨みを買うようなことはした覚えがないな」
シュガーは2本の刀を抜き、魔獣に立ち向かった。両手の刀を魔獣の首に目掛けて、振り切ろうとした。左手の刀は避けられてしまったが、右手の刀は斬ることができた。シュガーは振り返り、避けられてしまった個体を火の魔術で全身を燃やした。
火で燃やした魔獣は痛みで暴れ回っていたが、シュガーはもう狙っていなかった。しかし、首を斬られた魔獣が再び襲い掛かってきた。魔獣の首を切り落とそうとしたが、魔獣の手の平から光の球が放たれた。シュガーの肩を掠ったが、刀を斬り抜いた。
魔獣の首が斬り落とされ、燃やされた魔獣も動かなくなっていた。
フラースとスノウがこちらに近づいてきた。
「大丈夫ですか?師匠」
「平気だ」
スノウがシュガーを心配しているとフラースは魔獣の死体に近づいた。そして、死体を観察し始め、口を開いた。
「シュガーちゃん。これ、食べられるかな?」
「え、それを食べるんですか」
「食べられるかは知らん。だが、焼くか煮込んで、調味料をかければ、大抵のものは食べられるようになる」
フラースに返事しながら、シュガーは先程の戦いを思い出していた。魔獣がしたあることが頭に引っ掛かっていた。頭の中に浮かんだ疑問をフラースに聞いた。
「フラン、その魔獣が魔術を使ってきたんだが、おまえはどう思う?」
「魔獣だって、魔術を使うことが確認されているし、何も不思議じゃないような気がするよ」
「確かに人語をしゃべるぐらいの知能があれば、可能だろう。しかし、この魔獣は何か違うような気がする」
「違うって、何が?」
「それは分からない。こいつを調べる価値があるとは思う。こいつの一部を持って帰ろう」
首を切り落とした魔獣に近づき、ナイフで腕の一部を削り取り、回収した。
「今日は奇妙なことが続く日だな。これ以上、なければいいが」
シュガーたちは再び歩き出し、5のチェックポイントに向かっていた。
****
ルキス達がソルムから出て、5日が過ぎて、1,2,3のチェックポイントを回り、その番号の結晶を手に入れることができていた。川を渡り、7のチェックポイントに向かっていた。そして、どうやって、渡るのかを話し合っていた。
「どうやって、渡ろうか?」
「この時間帯に渡る奴は少ないみたいだし、船で渡るか」
「そうだな」
キルトの提案により、船で渡ることになった。それに加えて、ルキスとアスラに修行の成果を確認した。
「おたくら、修行の方はどうよ?」
「ボクのほうは回転の維持はずっとできるようになった。けど、アスラと比べて、勢いが弱いかな」
「俺は維持ができないことがあるが、勢いは強いぞ」
「なら、そろそろ、次の段階にいってもいいか」
回転の制御を修得できた2人は次の段階に移ることになった。
「次は回転を知ることだ」
「回転を知ること?」
「そうだ。どんな回転なら、手元に戻るのか、どのように動くかを知る。経験を積むんだ。近道はない。そして、その次は回転を読むんだ。どのように回転させて、投げれば、目標に当たるのかを読むんだ」
「地道だね」
「そりゃあ、技術だからな。力を持たない奴が勝つために学ぶんだ。そこに近道なんてない」
「でも、船の上だと修行がしづらいね」
「船のコベリで練習したらいい」
キルトから、修行の内容を聞き終わると船に乗る順番が回ってきた。ルキス達は船に乗り込んで、移動を開始した。
ルキスとアスラは船に乗ってからはコベリに球を投げて、手元に戻す練習していた。様々な回転で練習して、知ろうとしていた。しかし、ルキスがミスしてしまい、鉄球が手元に戻らずに船の外に行ってしまった。ルキスは鉄球を取るために身を外に出した。
「あ、外にいっちゃった」
「あぶねーぞ、ルキス」
しかし、キルトの手によって、抑えられてしまった。そのため、ルキスは鉄球を取ることができなかった。
ルキスが鉄球を取ることを諦めかけたが、そのとき、ルキスのリトスであるブローチがピンク色に輝いた。
「リトスが光っただと!」
ルキスのリトスが輝いたことにアスラが驚いていると外に行ってしまった鉄球がいきなり空中転換し、ルキスの手の平にゆっくりと戻ってきた。
「戻ってきたよ」
「おたく、一体何やったの?」
「もしかしたら、これがボクの……」
ルキスは確認をするために鉄球を手の平に乗せて、上に向けた。先ほどとは逆のイメージである離れるイメージをした。そうすると鉄球が手の平から離れ、ルキスの目線ほどに浮かび、そこで一時停止した。鉄球はそれ以上浮かばずに落ちもせず、その場所を維持し続けた。
それを見たキルトが口を開き、その力の正体を言った。」
「磁力か」
「そうだよ。これがボクのフィデス『磁力』だよ」
「フィデス?魔術の事か」
「ちがうちがう。フィデスは英雄としての力だよ」
「英雄って、あれか。昔話で出てくる神に選ばれたという英雄か」
「そう、それだよ。ボクとアスラはその英雄に選ばれたんだよ」
キルトはルキスの話を聞き、信じられないような顔をしていた。そして、あることを思いつき、アスラに尋ねた。
「アスラ、お前も選ばれた英雄なら、リトスを持っていて、フィデスも使えるんだよな。見せてくれよ」
「俺のリトスは首に掛けているネックレスだ。フィデスのほうはまだ使えない。」
キルトはアスラのリトスを興味深そうに眺めた。眺めているとあることに気づき、ルキスに聞いた。
「磁力があるなら、回転の技術って、いらなくないか」
「それなんだけど、まだ使いこなせていないのからか、反発と引き合うことの2つしか行えないみたい。それとは別に学びたいから、教えてよ、師匠」
「師匠はやめろ、照れくさいだろうが」
「ボクたちの事を教えたんだから、キルトのことも教えてよ」
「なぜ、そうなる?」
「ねーねー、いいでしょう、いいでしょう。おーしーえーてーよー」
「分かった分かった。教えてやるよ」
キルト・クイスは自分が生まれたクイス家と回転の技術を語りだした。
「クイス家は星を研究していた家系なんだ。回転の技術は先祖が生み出した技術だ」
「どういうきっかけで生み出されたの?」
「星を研究していて、金が無くなって、喰うのに困ったんだ。そこら辺の野生の動物や魔物を狩ろうとしても武器を買う金もなかった」
「それからそれから」
「俺のご先祖様はどういうわけかそこら辺に落ちてある石を武器にしたんだ。もちろん、投げるだけでやっつけられるほどの筋力があれば、良かったんだが、研究ばかりしていたからそんなものがあるはずがなかった」
「そこで生み出されたものが」
「そう、回転の技術だ。石に回転を加えて、動物を狩ったんだ。これが回転の技術が生み出された経緯だ」
ルキスはキルトの話を聞き終わった感想を率直に言った。
「思いっきり失礼だけど、少し間抜けだね」
「うるせえ。クイス家にはいくつかの言い伝えがあるけど、もう教えね」
「謝るから、言い伝えも教えてよ」
「仕方ねえな。俺の中で印象が残っている言い伝えは赤い獣、666の獣、星が回っているの3つだな」
「1つずつ解説をお願い」
「赤い獣っていうのは昔の先祖が戦った奴のことらしい。危うくやられかけたらしいが、相手は先祖を倒すことができず、その場は引いたらしい。666の獣はよく分かっていない。何かの比喩表現だと俺は予想している。最後の星が回っているは自転のことを指しているんだと思っている」
「なんか抽象的な言い伝えばかりだね」
「言い伝えなんて、そんなものだろ。もうすぐ、岸に着くから降りる準備をするぞ」
キルトから話を聞き終わるとルキス達は船から降りる準備を始めた。
****
ソルムから出発し、11日が過ぎていた。レイとミラは2、3、4のチェックポイントに回り、それぞれの番号を手に入れていた。そして、予定通り、5のチェックポイントに向かっていた。
レイはミラにこの世界が異世界にどう思っているのかを聞いた。
「ねえ、ミラ。聞きたいことがあるんだけど」
「何が聞きたいんだ?」
「この世界が異世界について、どう思っているかなんだ」
「それなら、アモルから聞いたんじゃないのか」
「ミラの口からも聞きたいと思ってさ」
ミラは自分が思っている異世界に対するイメージを整理し、それをレイに伝えた。
「私が思っているイメージはやはり、昔話で出てくる英雄の出身地だな。少なくとも、コルヌみたいに危険とかそういうイメージはない」
「そうか」
「あと、幼い時に思ったことがなぜ、異世界から来たんだろうと思っていたけど、その疑問もなくなった」
「幼い時?」
レイはミラのほうを見た。その時にミラのほうが年上だと思いだした。
「なんだ、その顔は?さては私が年上だということを忘れていたな!7人の中で身長が1番低くて、胸が小さかったとしても年は私のほうが上なんだぞ」
「すいませんでした。それで疑問がなくなったというのは?」
「謝ったならいい。話がそれたな。昔の異世界の英雄もレイみたいに選ばれて、異世界に来たんだろう、きっと」
「そうか、俺みたいな方法で来たのか。でも、ギオンさんの話だと帰ることができなかったって、言っていたよね」
レイとミラはエルと一緒に演劇を見に行き、その後にルキスの案内によって、五大英雄の1人であるギオン・テアトロに会っていた。その時にギオンは『彼は帰ることができませんでした』と言っていた。
「確かに言っていたけど、生きて、元の世界に帰るための研究を続けている可能性もある。その証拠に五大英雄の1人であるギオンさんは生きていた。これはギオンさんが魔人という種族だったからだ。5人の英雄たちがどんな種族が分からないけど、あの人みたいに長寿の種族であるかもしれない」
「ミラが知っている限りでいいから、長寿の種族を教えてくれない?」
「私が知っている限りだと森人と魔人の2つの種族だな。ギオンさん以外にもまだ生きている五大英雄がいるかもしれない。異世界人は未知な種族だから、その可能性も高いと思う。五大英雄に会って、話を聞くことができれば」
「元の世界に帰るための手掛かりが見つかるかもしれない」
「その通りだ。でも、本当に元の世界に帰るのか?」
「前にも言ったと思うけど、この世界から帰るにしても残るにしても、家族には事情を説明したいし、一度元の世界に戻りたいんだ。残るかはこの旅で決めたいと思う」
英雄の使命とは別にレイには五大英雄に会い、話を聞くという目的ができた。
レイたちが歩いていると魔物と戦っている若者がいた。見た目はレイと同じくらいで白髪であった。魔物とは剣で戦っており、苦戦している様子であった。
「ミラ、あれ」
「あれはどうやら、魔物と戦っているようだな」
「助けよう」
「やめとけよ。また、コルヌみたいに襲ってくるかもしれないぞ」
「ならさ、せめて、遠くから助けてから、すぐにその場を離れよう。それならいいだろう」
「仕方ないなー」
レイは魔術で風の弾を1発準備し、ミラは異能力を発動させ、左手に氷の爪を生やした。風の弾と氷の爪を魔物に向かって、放った。攻撃が終わったレイたちは走り出し、その場から離れた。
レイたちが放った攻撃は魔物に当たり、魔物は動きを止めた。若者は魔物が動きを止めた隙を狙い、剣を振り下ろし、魔物の息の根を止めた。若者はその場から走り出し、その先にはレイたちがいた。レイとミラは若者に追いかけられていることに気付いた。
「やはり、追いかけて来たじゃないか。レイのバカ」
「あのまま、死なれるよりかはましでしょう」
レイとミラは若者から逃げていたが、その距離は離れなかった。それどころか、徐々に縮まっていた。
「どうするんだ、レイ」
「足を止めて、話し合うとかは?」
「襲われたら、どうするんだ」
「2対1だし、リトスがあれば、負けないはず。あいつは魔物に手間取っていたんだから」
「それもそうだな」
レイたちは足を止め、振り返った。そうすると相手も足を止めた。レイが若者と話し、目的を聞いた。
「何が目的で俺たちを追いかけてくる?コルヌの仲間か?」
「助けてもらわなくても、あんな魔物は俺一人で倒せたんだ。だが、助けてもらったからな、そのお礼を言いに来たんだ。助けていただき、ありがとうございます。あと、コルヌって、誰だ?」
「知らないなら、それでいいんだけど。それだけ?もう追いかけてこないで」
「いや、用ならまだある。お前に決闘を申し込む」
「なんで?」
「お前に勝って、助けなど必要なかったと証明してやる」
「受けろよ。もう、これ以上ややこしくしたくない」
レイはミラに決闘を受けるように言われたが、悩んだ。無暗に戦うようなことはしたくなかった。しかし、お礼を言うためだけに追いかけてきた以上、決闘を受けるまで追いかけられることが容易に想像できた。これ以上、追いかけられないようにするために決闘を受けることにした。
「分かった。決闘を受けるよ。決闘のルールは?」
「殺すのは無しで審判はそこの小さい嬢ちゃんにやってもらう」
「私のことを小さいと言うな。」
レイと若者はある程度距離を取り、向き合った。そして、互いに名乗った。
「俺の名は人のウエボ・プロテン」
「俺はレイ・シルバ」
「さあ、いつでもかかってこい」
「分かった、行くよ。未来召喚」
レイはリトスである鍵を胸に刺し込み、フィデスを発動させた。体が光りに包み込まれていき、レイはフォルテに変身した。その動作の一連を見ていたウエボは口を開き、驚いていた。
「俺様の名は魔王フォルテ。お前なんかにアニムスは必要ねーな」
「えっ」
フォルテはウエボの懐に入り込み、顔に向かって、拳を放った。ウエボは殴り飛ばされ、気絶し、動かなくなった。
「やり過ぎだ」
「手加減はしておいたぜ。殺してはいない」
レイの言葉にフォルテはそう答え、体が光りに包み込まれ、レイに戻った。ミラがレイに駆け寄ってきた。
「勝ったのはいいが、どうするんだ、これ」
「気絶させたのは俺だし、どうにかするしかない。ミラ、手を貸してくれ」
レイのアイデアをミラに言って、ミラの力を貸してもらい、ウエボを運びながら、次のチェックポイントに向かうことにした。
****
リアマとアモルは1と2のチェックポイントに行き、合計の6個の水晶を揃え、最後のチェックポイントでもらえる3の水晶を手に入れるために向かっていた。
向かっている最中にアモルがリアマに話しかけてきた。
「リアマ、あなたは運命というのを信じていますか」
「私はあまり、信じていないな」
「そうですか」
「なぜ、そういうことを聞く?」
「私たち7人が神に選ばれ、英雄になり、集まったのが運命と感じたからです。リアマやシュガーとはいずれ会っていた可能性がありますが、英雄に選ばれなかったら、異世界から来たレイとは会うことはあり得なかったでしょう。私はそこに運命を感じているんです」
「確かにそうだな。私は今まで様々な人に出会って来た。人生という限られた時間の中で出会える人の数は出会えない人の数よりずっと少ないだろう。だから、出会った人をどれだけ大事にするべきだと思う」
「そうですね、リアマの言う通りです」
アモルとリアマは運命と人の出会いについて話し、アモルが次の話題を振ってきた。
「運命といえば、赤い糸で結ばれているとかの表現がありますよね。リアマには気になる人はいますか?」
「それは7人の中からということか」
「それでもいいですよ」
「それなら、シュガーだな。単純に付き合いが長い。しかし、奴もだめだ」
「どういう意味ですか?」
「国の後継ぎとして、向いていない。前に言ったが、シュガーには隠し事がある。少なくともそれを打ち明けてもらわないと困る。国を支えていき、その秘密が国の危機を呼ぶかもしれないからな。アスラは国をまとめる能力がないし、レイはいつ自分の世界に帰るか分からない。ルキスは姿が貧弱すぎる」
「あくまでも国中心の考えなんですね」
「王家だからな。上に立つ者として、民のことは考えなければいけない。お前はどういう考えだ、アモル」
「7人の中だとレイですね。神のお告げによって、最初に出会い、1番付き合いが長いですから」
アモルが言った神のお告げという言葉を聞き、あることを思い出していた。
「神のお告げか。シュガーが言っていたことは本当だったんだな」
「シュガーが変なことでも、言っていたんですか?」
「みんなに会う前、ある日突然、シュガーから英雄に選ばれたと言って来たんだ」
その時の出来事をアモルは思い出しながら、話した。
「リアマ、俺たちは英雄に選ばれたぞ」
「いきなり、なんだ」
シュガーがリアマの部屋に訪れ、こう言いだした。
「神によって、昔話に出てくる英雄に選ばれたんだ」
「いきなりすぎて、話が分からないし、信じられないな」
「神から、英雄に選ばれた証としてリトスが送られてくる。それを見れば、リアも信じてくれるさ」
次の日、リアマの手元にはリアマのリトスである緑色の懐中時計があった。リアマはシュガーが何か仕掛けているのではないかと疑い、城の者に懐中時計のことを聞いたが、誰も知らなかった。
「シュガー、この懐中時計は何だ。起きたら、置いてあったぞ」
「その緑色の懐中時計がリアのリトスか。俺のリトスは赤色の指輪だったぞ。それが神に選ばれた証であり、英雄の証だ」
シュガーから説明を受け、リアマは緑色の懐中時計が神に選ばれた証であることを理解したと同時に英雄の証であることも受け入れた。しかし、リアマにはある1つの疑念があった。
「私が英雄に選ばれたのは信じるしかないが、私には神のお告げとやらはきていないぞ」
「それは俺にも分からない。リアは光の都ルークスに向かってくれ。そこで選ばれた英雄が集まるらしい」
「シュガーはどうするんだ」
「俺は光の都ルークスの外れにある教会に行く。そこで2人の英雄に会いに行かないといけないらしい。あと、教会に行く前にある街に行き、そこでも英雄に会うらしい」
「私は一緒に行かなくてもいいのか」
「そのようなことは言ってなかったが、ルークスにはもう英雄が1人いるらしい。リアのすることはおそらくそいつに会うことじゃないか」
英雄として、旅立つことになり、そのことでリアマが真っ先に思い付いたのが妹であるアルティのことだった。
アルティの名前はアルティ・フォン・イグニス。リアマの妹である。母親譲りの金髪であり、眼は父、姉と同じく緑色だった。年は12であり、姉とは7歳差である。
「そうか。しばらく、アルティに会えなくなるのか」
「俺とリアが旅立つことを王やアルティに伝えないといけないな」
「そうだな。特にアルティにしばらく会えなくなるからな。アルティが寂しくならないようにたくさん話しておかないと」
「今から、アルティに会いに行くか」
リアマとシュガーはアルティに英雄に選ばれ、世界を救うため、旅立つことを伝えるためにアルティがいる部屋に向かった。
「そういう事情で俺とリアは英雄として、旅に出ることになった」
「しばらくお姉様とシュガーさんに会えなくなるんですね。寂しいです」
アルティにそのことを伝えると寂しがった。シュガーはアルティが寂しくならないようにある約束をした。
「近くに来たら、必ず寄る。土産を楽しみにしておいてくれ」
そして、シュガーはアルティの寂しさを紛らすために手を広げ、抱きしめる用意をした。
「来るか?」
「はい」
アルティはシュガーのほうに早歩きで近づいてきた。しかし、あと、もう少しというところでリアマに横から押されてしまった。その結果、アルティはシュガーではなく、姉であるリアマに抱きしめられた。
「私もアルティにしばらく会えなくなって、寂しいから、今日は一緒に寝よう」
その日の夜、姉妹は仲良く、一緒のベッドで寝て、シュガーは1人寂しく寝ることになった。
次の日、イグニスの王に旅立ちの挨拶をし、リアマとシュガーは一緒に旅立ち、途中で別れ、それぞれの目的地に向かうことにした。
「リアマとシュガーはそのような経緯でリトスをもらい、旅立ったんですね」
「ああ。しかし、私は最後に合流することになってしまった。本来なら、私が先に着いていたはずなのに。いつまでもぐだぐだ言っていても仕方ない。アモルはどのようにして、もらったんだ?」
リアマの話を話し終わると今度はアモルが話し始めた。
「私は教会で祈りをささげていた時に神のお告げが来ました。最初は私の祈りが通じ、神と話すことができたと思ったんですが、違っていました。聞くことができたのは英雄として、選ばれたからだったんです。神からリトスである黒のロザリオを授かりました。私に告げられたのは異世界から英雄として選ばれ、鍵を持っている人が来るので、その人に世界の案内とお世話をしなさいと。それがレイとの最初の出会いでした」
「やはり、アモルも神のお告げを聞いていたのか。私には聞けなかったから、もしかしたら、嘘かもしれないと思っていたが、どうやら本当の事みたいだな」
「もう少しシュガーのことは信じてあげたらどうですか。あと、話を聞いている限り、シュガーの扱いが少しあれではありませんか?」
「いや、信じているぞ。しかし、今回は言ったことが言ったことだったからな。扱いについてはシュガーがアルティを抱きしめようとしたのが悪い。妹であるアルティを抱きしめたり、添い寝できるのは姉としての特権だ」
妹のことになると熱くなるリアマにアモルは妹が結婚することになったら、リアマがどう対応するかが気になり、聞いてみた。
「妹さんが結婚したら、どう対応するんですか」
「アルティの結婚相手か。いや、私が守る。妹と結婚したければ、私を倒せるぐらいの強さがなければないといけない」
リアマとアモルはお互いに英雄に選ばれた経緯を話し、さらにリアマは妹について、熱く語りながら、先を目指した。
****
ウエボを倒したレイとミラは5のチェックポイントに向かっていた。ウエボを放置するわけにはいかなかったので、ミラに協力してもらって、運んでいた。
その運び方はミラの魔術で氷の板を作ってもらい、その上に乗せ、運んでいた。さら際に氷の鎖を2つ作ってもらい、それを板にくっ付け、レイとミラが1本ずつ引っ張って運んでいた。
それに対し、ミラは不満を漏らしていた。
「レイ、重い。疲れた」
「頑張って、君が掴んでいないと氷が解ける」
そんな不満を漏らしていたミラを説得しているとウエボの目が覚めた。
「なんか、背中が……、冷たーい!」
「あ、目が覚めたか。もう、引っ張る必要がないな」
ミラがそう言っているとウエボが体を起こし、立ち上がった。そして、周りを見回した。
「景色が変わっている。ここはどこだ?」
「お前はレイに負けて、気絶したんだ。ほっといて、誰かに襲われても後味が悪いから、ここまで連れてきた」
「それはすまん」
ミラとレイにお礼を言うとウエボは少し考え込んだ。考え終わるとミラたちの方を向き、話しかけてきた。
「俺は失格じゃないか」
「なんで、そう思ったんだ」
「このゲームは自分の足で歩かなければ、いけないというルールがある。俺はお前たちに運ばれてしまった。ルール違反を犯してしまった」
「それは俺がやり過ぎたからそうなったんだ。君が気にすることはないよ」
「いや、これは俺の問題だ。これはもう必要ない」
ウエボは右手首に着けていたベルトを切り、レイたちの方に投げつけた。
「やるよ。しかし、覚えとけ。俺の名前はウエボ・プロテン。お前のライバルでお前を倒す者だ。あと、せめて、ゲームは勝てよ。そしたら、俺が2位という証明になるからな」
レイとミラにそう言い、話し終わると走り出した。どこかに行ってしまった。
ウエボのベルトには1、5、6、7の結晶が付けられてあり、レイとミラはこれからどうするのかを話し合った。
「これ、どうしよう」
「そもそも、取り外せることができるのか?」
「試してみよう」
ミラはウエボのベルトの結晶を手にかけた。するとすんなりと取れた。そして、レイのベルトにはめてみた。
「ミラ。なんで、俺のベルトに付けたの?」
「お前が1位にならないと約束を破ることになるからだよ」
「本当のところは?」
「結晶の取り付けができる以上、私が付けたら、私が狙われるからな」
「ウエボのことがあるから、別にいいけどさー」
レイはあることを疑問に思い、自分のベルトの結晶を外そうとした。しかし、外すことができなかった。おそらく、ベルトが切るなどして、手首から離さないと取ることができないと予想した。
レイとミラはこれらのことを話し合った。
「ミラ、ゴールに向かおう」
「そうだな、全部のポイントは回っていないが、結晶は全部揃ったしな」
「ウエボの犠牲を無駄にしないためにも1位を狙おう」
話し終わるとレイとミラはゴールに向け、歩き出した。
ウエボと決闘し、勝利したレイとミラ。自分たちの軽はずみな行為でウエボは自分の意思でゲームから去ってしまった。ウエボの犠牲を無駄にしないためにも優勝を目指す。そして、レイはこのゲームを通じ、英雄の使命とは別に自分の目的を作ることにできた。ゲームは終盤を迎え、ゲームは終わろうしている。
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