表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
機械仕掛けの魔人と妖怪の物語   作者: あっくす
初出動オカルト部!学校鬼退治編
8/20

反撃開始


「って、ええええええ!柊さんちょ!当たってる!いろんなのが!」


「へ?」


僕の一言で我に帰ったのか、今のこの体勢を目をパチクリさせながら見る柊さん。

次の瞬間

ボンッと顔が爆発したように真っ赤になり、どういう原理か狐耳と尻尾が生え


「きゃー!彩斗くんのエッチ!」


お風呂が大好きな国民的アニメのヒロインのようなセリフを履きながら僕を投げ飛ばす。

力は断然こちらのヒロインの方がうえのようだった・・・


柊さんはそのまま涙目で僕を睨みつけ掌に炎を召喚し、僕をめがけて投げの体勢をとる。

その炎で追い討ちをかけるつもりだろうか。

それを理解し全力で命の懇願を開始。


「まって!まって!当たってただけ!触ってないから!!!」


その一言を聞いたと同時に掌の炎がだんだんと大きくなっていく。

まさに油を注いだ一言だったようだ。


ただ助かりたい一心で両手を前に出し待ってくださいのポーズをとる。


両手・・・?


・・・

右腕が生えてる。


さらにゆっくりと僕の全身を見渡す。

足も傷ひとつない。

服に至ってはあんなに攻撃を受けたはずなのに破れも見当たらない。


「あれ、生きてる?」


痛みもダルさも感じない

自分の体をペタペタ触っていると、柊さんが怪訝そうな顔で


「彩斗くん、何やってるの?大丈夫?」


「あぁごめん。大丈夫だよ。・・・ねぇ僕ってどうなってた?」


「どうって・・・本当に大丈夫なの?」


僕の一言がさらに柊さんの疑問を加速させたようだ。

しょうがない。

僕はそれ以上に不思議なのだ。


「うん。本当に僕は大丈夫だよ。それよりどうなってたか教えてくれると嬉しいな」


柊さんに僕の真剣な想いが伝わったのか、出していた炎をしまい、僕の前に座って話し始めてくれた。


「彩斗くんに言われた通りの準備が終わったからね、呼びに行こうと思って探したの。それで探し回って見つけたと思ったら廊下で倒れてるし。周りはこんなにボロボロになってるし本当に心配で・・・」


そう説明してくれている途中で泣きそうになっている柊さん。

確かにここは僕があの喰鬼にやられた場所だ。

夢や幻想じゃない。

この廊下一帯の破壊痕がそれを証明してくれている。


なら僕はどうやって助かった?

記憶に靄がかかったようで思い出せない。

もし喰鬼がとどめを刺し損ねたとしたとしても手足が復活している説明にはならない。


「確か僕は柊さんの準備の時間を稼ぐために・・」


今しがた自分がした呟きに引っかかりを覚え


「準備・・・そう!準備はもうできたの!?」


なぜ助かったかはともかく、自分が今まで何のためにあの喰鬼から逃げて時間稼ぎをしていたのかを思い出した。


急な僕の態度の変容にあっけにとられていた柊さんだが、それでも柊さんはしっかり僕の言葉に応えてくれ


「う、うん!ちゃんと言われた通りに無事完了!彩斗くんが時間を稼いでくれたおかげだよ」


そう言って彼女はニコッと微笑む

そんな彼女の笑顔を見れたことがどうしようもなく嬉しくて、さっきまで考えてたことがどうでもよくなってきた。


「そっか・・・僕、ちゃんと時間稼げたんだ・・・約束通りやり切れたんだ・・・!」


胸の奥から熱いものがこみ上げてくる


「本当にお疲れ様!でも喜ぶのは全部終わってからにしよ?後もう少し。彩斗くんに頑張りを無駄にしないためにも!」


彼女は僕の手を取り、力強い言葉で鼓舞してくれている。

彼女は僕の考えたこの作戦が喰鬼を倒せると信じて、今まで必死に準備してくれたんだ。

僕こそそんな彼女の頑張りを無駄にしないためにも最後まで気合を入れていかなければならない。


「じゃあ、行こう!僕たちの反撃開始だ!」


そんな決意を言葉にし気持ちを奮い立たせる。

そして柊さんも僕のその言葉にコクっと笑顔で頷いてくれ、その瞳には熱い決意が見られる。


賽は投げられた。

僕と柊さんの反撃開始である。


* * *


ここまできたらあとは成功を祈るのみ。

まずは柊さんに準備をしてもらった学校の離れにある体育倉庫。

そこに喰鬼をおびき寄せることからスタートだ。


柊さんと僕の二人で校舎をウロウロしていた喰鬼を見つけ出し、罠を仕掛けた体育倉庫までおびき寄せるために喰鬼に近づく。

再び目にした鬼の恐ろしい外見に一瞬たじろいだが、もう後戻りはできない。

進むのみだ。


「ここだよ喰鬼!こっちだばーか!」


勇気を振り絞り声を荒げ、鬼にこちらの存在を気付かせる。

とりあえずなんでもいい。

できるだけ鬼を怒り食うわせて理性を失わせ僕たちを無我夢中で追うようにさせる。


『ギャガ・・キシャアアアアアアアアアア!!!!!!』


なんとなくだが喰鬼は僕の姿を見て一瞬驚いたように見えたが、すぐに獲物を捕らえた目に変わり激しい前傾姿勢で僕を追いかける。


追われているのに前回とは違い今回は全く恐怖を感じない。

理由は二つ。

この追われている行為は、約束された勝利を詰将棋のように一つ一つ処理して行く過程にすぎないこと。

そしてもう一つは柊さん。

彼女がすぐそばで僕を見守っていてくれていることだ。


お互いがお互いをかばい合うように数分間の間鬼から逃げあっていたが、やがて目的地である体育準備室が見えてきた。

ここまできたらもう終盤だ。


振り返り喰鬼に向かって大声で


「さっさとこいよぉ!この・・・顔面兵器!!!!!!」


全力で喰鬼の怒りを煽る。

そりゃもう徹底的に馬鹿にする。

それが勝利の鍵なのだ。

僕に続き柊さんも


「えっと・・・き、筋肉番付!」


はたしてそれは悪口なのか?



『バギャアアアアアアアアアアアア!!!!!』


喰鬼は自分が馬鹿にされたことに気づいたのか走りを加速させた僕に向かって突進してくる。

それを合図に僕たちは踵を返し体育倉庫の扉を中に逃げ込み扉を閉める


-もっともそれは ”柊さんが喰鬼に見せた幻覚” なのだが。


『ヴァアアアアアアアアアアア!!!!』


喰鬼はもちろんそんなことを知る由もなく、勢いよく体育倉庫の扉に突進して、ぶち破り大穴をあけて中まで僕たちを追いに来る。

ただそこには僕たちの姿はない。

もちろんだ。

なぜなら喰鬼が追っていたのは幻覚なのだから。


あるのは火災現場の跡のような室内。

部屋中に広わたる沈静化してきた炎と、部屋中に大量にバラまかれている”未燃物”の石油。

そこに喰鬼は入ってきたのだ。

それも壁に喰鬼と同じ体格の大きさの”大穴”を開けて。


この密閉された体育倉庫に喰鬼の開けた大穴から新鮮な空気が大量に入ってくる。

部屋中の酸素を燃やし尽くし沈静化しそうになっていた炎たちは、燃えるために必要な酸素というエネルギー源を大量に補充することとになるのだ。


-バックドラフト現象-

火災現場で燃焼が続き酸素濃度が低下している空間に、新しい新鮮な空気が入ってくることにより起こる-爆発-

加えて部屋には大量の未燃物の石油がばらまかれている。

結果は言うまでもない。



大爆発だ。



その破壊の衝撃は喰鬼の頑丈な肉体を外面だけではなく内部に至るまで破壊し、

燃え盛る炎は喰鬼の再生速度すらも凌駕するほどに肉体を焼き尽くし続ける。


「今だよ柊さん!!」


その様子を外から見ていた僕たちは作戦の詰めにかかる。


「わかってる!いくよ!」


その言葉と同時に柊さんは体育倉庫の前まで躍り出て、今まで力をためてたであろう掌の上にある巨大な炎を振りかざし、


「はあああ!!!!」


建物の中に見える喰い鬼のもんである人影に向かってその炎を放つ。

その炎はおそらくむき出しとなっている喰鬼の臓器を焼き尽くすだろう。

そして部屋に新たな熱が加わったことにより起こる再びの爆発。


その光景を見て僕たちは確信した。


”勝った”と



* * *


「やった・・・のかな?」

燃え盛る体育倉庫を眺めて柊さんがボソッ声を漏らす。


「う・・・うん・・・」

その声に応えるように僕も声を絞り出す。


そして僕と柊さん、二人は顔を見合わせ


『やったあああああああ!!!!!』


二人でハイタッチをかます


「ほ、本当はうまくいくかどうかなんて分かんなかったんだよお!柊さんのおかげだよ本当にありがとう!!」


「違うよ!彩斗くんが一生懸命考えて、彩斗くんが命がけで時間を稼いでくれたおかげなんだよ!お礼言わなきゃいけないのは私!ありがとう彩斗くん!」


そう涙目で語り掛けてくれる柊さん。

そして二人で喜びを分かち合う

これで。

やっとこれで元の世界で帰れる。

二人が約束したとおりに。


そのはずなのだが


「かわら・・・ない?」


怪しい雲は空を覆い隠したままで不気味な赤い三日月は一向にその姿を消す気配がない。


「どういうことだ?」

そんな疑問を口に出した瞬間



「彩斗くん危ない!!!!」


柊さんに抱え込まれるようにしてその場を退避し地面に倒れこむ。

そして一瞬前まで僕たちがいた場所に、轟音とともに圧縮された空気のようなものが地面を削りながら通り過ぎて行く。


「な・・・」



間違いない。

奴の攻撃だ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ