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機械仕掛けの魔人と妖怪の物語   作者: あっくす
初出動オカルト部!学校鬼退治編
6/20

失敗と死

体力の限界を既に超えているが駆ける脚を止めるわけにはいかない。

止めた瞬間が僕の死だ。


後ろでは片手で目を抑えながら迫り来る喰鬼(くいおに)がいる。

視力は潰したが、気配で僕を追ってきているのだろう。

もう片方の手で僕を捕まえようと躍起になっている。


「ったく、しつこいな!!もう!!!」


向こうの方が速度は速い。

このままでは追いつかれ、あの丸太のような腕で握りつぶされるだろう。


だがこちらには目の前に希望がある。

奴の視界が効いてない今がチャンスだ


廊下を全力疾走しているが、目前では廊下が二手に分かれており、片方の道はまっすぐ進み。もう片方は右へ直角に曲がっている。


(もう少し・・・!)


駆ける脚にさらに力を入れ


(いまだ!)


その曲がり角を曲がる

それと同時に足元に落ちているロープを引っ張りあげる。

今引っ張りあげたロープは反対側に存在する柱にしっかりと巻き付けられており、緩んで落ちていたこのロープを引っ張ることにより。


ツンッ


とロープは張りつめられる。

知っている人も多いだろう

そう、これは小さい頃によくやった


"足掛け作戦"だ。


僕も昔いじめられっ子にやられたことがある。

幼少期を越したものならば空間把握能力が増し、こんな子供騙しみたいな罠には引っかかることは滅多にないだろう。

だが今回の相手は視界を潰され、怒り狂っている鬼だ。

こんな子供騙しの罠にも気づくまい。



『ガッ!!!!ガアアアアアアアアアアアア!!!!!』



びっくりするほど綺麗に引っかかってくれた。

鬼の脚にロープが絡みつき、そのでかい図体はバランスを崩して、かなりの距離を転がっていき前方の壁に激突した。




そしてあろうことか、喰鬼はそのまま動かなくなったのである。




「まさか倒した・・・のか?」


予想外の展開に数分の間呆気にとられ呆然と立ち尽くす。

嬉しい誤算だった。

これならばかなりの時間を稼げる。


しかし柊さんの準備はまだのはずだ。

気を引き締め鬼を背に向け次の目的地、罠を仕掛けた場所へ向かおうと歩みを始める。

実は同じ罠をまだ数か所用意している。

鬼をそこへ誘い込みまた同じように罠にかけてやろう。

このままいけば順調に時間を稼げ、作戦成功も現実味を帯びてきた。


その未来を想像し笑顔をほころばせる。




しかしそんな嬉しい気分も続くことはなく

空気は一変し




『キャアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!』


再びの鬼の咆哮。

だが今までに不快なまでの高音な金切り声の叫びで、少し異質な感じがする。

そう感じた次の瞬間


鼓膜を引き裂くような激しい爆音とともに

僕の右真横を圧縮された空気のようなものがかすめていった。


「え?」


目の前に続く廊下はその空気の塊のようなものでえぐられ、廊下の先までそれの破壊痕はつづいていた。


その圧倒的な破壊力を前に呆然としていたが、ポタポタと水の滴るような音により我に帰る。

この音はどこからきているのか?

僕のすぐそばから聞こえる気がする。


その音のする方へ視線を向ける



僕の右肩から先が



「あ、あぁ・・・」



完全に消失しており、水の滴る音は僕の方からの鮮血が床に落ちている音だった。

と理解する同時に



「あああああああああああああ!!!!ぼ、ぼくの!!!う、う・・・うわあああああああああああああああ!!!!」



なぜだ。

何が起こっている。

頭は混乱しているが、目が勝手に周りを見渡し情報を収集しようとする。

僕の腕はどこにいったのか。

いったい誰がこんなことをやったのか


パニック状態に陥りながらも周りを見渡し続けると、

視界の端でゆらゆらと動くものを捉える。


喰鬼だ


塞いでいたはずの目はすでに開いており、おぞましいほど赤々とした巨大な目が僕を射抜く。

異物による充血なのか怒りによる充血なのか、はたまたそのどちらもか。


そして先ほどと大きく異なるのが喰鬼の腹部に巨大な口のようなものが開いているところである。

その腹の口の穴は闇のように暗く中を見通すことができない。

さっきの破壊現象はあの新しくできた口によるものなのか?

痛む肩を庇いながら執拗に観察していると



『キャアアアアアアアアアアアアアア!!!!』



その腹の口から甲高い咆哮があげられる。

あの異様な叫びはこの口からのものらしい。

そして間も無くして


「なにか、くる・・・!」


とっさの判断で横に倒れこむように回避の体制をとる。

そして数コンマ前まで僕がいたその場所に、鼓膜を破壊するような爆音とともに圧縮された空気のようなものが通り過ぎていった。


これだ。


先ほどの破壊現象はあの喰鬼の新しく出た腹の口からによる攻撃なのだと、そこで理解した。


もろに直撃していたら僕はこの世から跡形もなく消え去っていただろう。

だがなんとか助かった。


と安心したが突如として足に激痛が走る。

避けれなかったのだ。

僕の左足の肉はほとんど削り取られ血飛沫が上がる。


「があああああ!!い、いたい・・・」


逃げなきゃ。

奴はまずい。

逃げなきゃダメだ。

奴は僕のような一人間が歯向かっていい相手じゃない。

逃げなくちゃ。


体の全細胞が逃げろと僕に告げている。

その本能に従うままに、よろけた足取りで喰鬼に背を向け距離を取ろうとする。

こんな足じゃロクに走ることもできないがそれでも痛みをこらえて進み続ける


(いやだ。死にたくない!!)


『キャアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」


3度目の金切り声のような咆哮


(いやだいやだいやだいやだいやだ!!!!!)


そしてそれに続く強烈な爆音


(僕は・・・生きたい!!!!!)


誰かがそこにいるでもなく、何かがそこにあるわけでもないのに、目の前に掌をかざし、救いを求める。


(あぁ・・・柊さん・・・)


ある少女を強く思いその手に力を込めるが


その掌は何もつかむことなく−




僕の体はこの世から消え去った





主人公殺しちゃったよ。

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