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機械仕掛けの魔人と妖怪の物語   作者: あっくす
初出動オカルト部!学校鬼退治編
2/20

始まりの訪れ

夜も更け、時は午前2時を回ったところだ。

身支度を済ませ、カバンを持ち、家を出る。

月は11月。

さすがにこの時間帯となると真冬の気温並みに寒い。

本当はもう少し早く出る予定だったんだけど、いかんせん僕は寝起きが悪い。

目覚ましを11時にかけて仮眠をとったのだけれども、起きてびっくり午前1時。

どなたか寝起きが良くなる方法を教えてください。


そんなことを考えながら僕の通う公立 風街ふうがい高校を目指す。


僕が仮眠をとっている間に沙奈江さなえ先輩からひっきりなしにLINEが来ていた。


”はーい元気?”

”今日行ってほしいところはとりあえず屋上、理科室、女子トイレ、体育倉庫、ってところね”

”ほかにも各教室それぞれ回んなさい”

”写真いっぱいとってこいよ??”

”それと女子トイレ入ったからって変な気起こすなよ童貞くん”

”ってかなんで既読つかないの?ねぇみてるんでしょ?”

”あたししってるの。あなたがみていること・・・”

”ムシ スルナンテ ユルサナイ・・・”


などといった内容のものが延々と来ておりLINEの通知数は50を超えていた。

妖怪よりも怖いんだけど


”すみません仮眠してました。今から行ってきますよ”


とだけ返しておく。

ってか女子トイレ行けってどういうこと?聞いてないよ。

それに各教室回んなさいって隅々まで行けってこと?

まったく人使いが荒いこと・・・

そんなことを考えているとスマホの通知の音が鳴った


”今ヤってる最中だからLINEしてくんな”


ブッ!

先輩にも少しは恥じらいを持ってほしい。

とりあえずこのメッセージは既読無視しておこう。


僕の家から風街高校まで徒歩で15分といったところだ。

冷たい風を浴びながら通学路を歩きつつカバンの中身を確認しておく。

先輩から預かったカメラに懐中電灯、財布とハンカチ。

それと念のためのお守りと博多の塩。

まぁ写真撮って回るだけだから何もないと思うんだけど念のためね?

万が一にも出会うことはないだろうけど、少しビビりな僕にはあったほうが気が強い。


しかし可能性の一つとして、億が一にも妖怪に出会ってしまったらどうしよう。

そう考え自分の中で対策を決める。


ケース1 もってきた塩を投げつける

とりあえず先制攻撃だ。

そもそも妖怪に塩が効くのかどうかは分からないけど、幽霊にも効くと言うしたぶん大丈夫だろう。

だが相手が塩が効かない格上の妖怪だったら?

これはもう次の手だ


ケース2 お金を渡す

これはもうほとんど秘技と言っていい。

並大抵の悪い人間でもこれを食らえば去っていく。

こちらも当分の昼飯が質素なものとなるリスクを背負うが背に腹は代えられない。

ではもし相手が僕の命だけを狙ってくるとんでも野郎だったら?

こうしよう


ケース3 土下座

当然であろう。

僕は物理的な死よりも社会的死を選ぶ。

生きていれば汚名返上、名誉挽回のチャンスはいくらでもあろう

しぶとく生きよう。そう思った瞬間だった。


とまあこんな感じでゴミみたいな対策を練っておく。


学校までの距離が近くなってくるに比例し僕の不安が増えていく。

おかげで頭の悪いことばかり考えてしまった。


でも今までだって同じようなことをして何もなかったんだ。

今回もまぁ大丈夫であろう。

自分の中でそう締めくくる。


* * *



「はぁ。ついちゃったよ」


場所は風街高校の裏門

先輩から夜の学校には裏門をよじ登って入ればいいと聞いた。

理由は簡単。

風街高校の正門はとてもよじ登っていける高さではないからだ。

それに対し裏門の高さはおおよそ3メートルといったところか

それこそ頑張れば登れるたかさである。


「それじゃあ・・・よっ!!」


柵に手をかけ棒のぼりの要領で登っていく。


「くぁぁっ!かっ!!」


我ながら気持ち悪い声を出しながら力を入れ門の頂上に手をかける。


「ふぉおおおお!!!」


かけた手に力を入れ全力で体を持っていく。


「はぁ・・・はぁ・・・」


よかった。僕には男子高校生の平均筋力があるようだ。

そんなことを考えながら裏門のてっぺんに座り込み休憩する

とりあえず乱れすぎた息を整えよう。


「はぁ・・・ああすっごい疲れた。本当に僕って体力ないな」


自嘲気味にわらってしまう


だがこれで僕がそもそも裏門を超えられるかというとりあえずの第一関門はクリアした。

勢いをつけ裏門から飛び降り校内に侵入する。

さぁ、さっさと先輩からの課題を終わらせ休日を謳歌するとしよう。

そう決心し僕は早々と校舎に向かった。


・・・これから僕が事件に巻き込まれると知らぬままに。




* * *



「屋上の写真もこんなもんでいいかな?あー、それよりも少し疲れちゃった。休憩しよ。」


そう思わず口に出し僕は屋上の床に寝っ転がった。


「あ、今日は満月なんだ」


夜空に浮かぶ満月を見て口に出す。

乾燥し澄んだ空気、雲一つない夜の空に浮かぶ星々とひときわ目立つ大きな月をみて、体とともに心も落ち着かせる。


「きれいだなー。学校の屋上でお月見ってなかなかいいね。」


先輩に使いパシリにされて苦労したんだ。

このくらいのご褒美くらい受け取っても罰は当たらないはずだ。

罰が当たるとしたら次の場所・・・


先輩から言われたままに教室、体育倉庫、理科室、そして現在いる屋上と順に訪れそれぞれ数枚写真を撮って行き、残る場所は・・・


女子トイレだ。


夜の高校に忍び込み、それだけにとどまらず女子トイレに侵入し、そればかりか写真まで撮って行くって・・・


確実に変態だな僕は。


ただ内心はちょっとだけ、ほんのちょっとだけ行きたいという気持ちがある。

それは男として生まれたからには誰しも女湯だとか女子更衣室とかに興味は持つだろう。

それと同じだ。

違うか。


この風街高校は6階建ての校舎であり女子トイレは偶数階に男子トイレは奇数階に設置されている。

僕の現在位置は屋上であり6階に設置されている女子トイレが直近となる。

残す女子トイレはそこで終わらしてしまおう。


「よっし。じゃあさくっと終わらせて帰ろうかな!」


そう意気込み勢い良く立ち上がる が


その瞬間


「うっ・・・」


ぐらっと視界が激しく揺れた。

吐き気を催すようなひどい目まい。

立ち上がった体はバランスを崩しその場で崩れ落ち、うずくまる。

心臓の鼓動は激しく、全身からは嫌な汗が噴き出していた。 

生まれて初めて体験するようなひどい不快感により僕はその場から一歩も動けなくなっていた。


「な、なんだよこ・・れ・・・」


自分が陥ったこの状況を誰にでもなく訴えかける。

やがて視界がぼやけていき意識が弱くなっていくのをスローモーションのように感じているのをただただひたすら耐えていた。




体感として10分くらいだろうか


先ほどの激しい不快感は消え、なんとか体を動かせるようにはなった。

熱でもあったのだろうか。

もしくは夜の校舎に侵入したことによる罰なのか。

ともかく自分が正常ではないことは理解できたので、先輩の約束は途中だが帰って寝ることにする。


「先輩怒るかな?まぁしょうがないっか。ちゃんと謝ろ。」


先輩にはどう説明しようか、どう謝ろうかなどを考えながらカバンを手に取り体を起こしたところで周囲の異変に気が付く。


「う、嘘・・・でしょ?」


先ほどまで夜空に浮かんでたきれいな星々は姿を消しその代わりに不気味な雲が空を覆いつくしている。

そして何よりいびつなのが、先ほどまで星空でひときわ華麗に輝いていた満月は見るも不気味な血色の三日月に変貌していたことだ。


瞬間で理解する。何かが異常だと。


「さ、沙奈江先輩なら何かしってるはずだ!」


ポケットからスマートフォンを取り出し先輩に電話を掛けようとするが


「圏外って・・・なんだよそれ!!!!」


普段からあまり怒りをあらわにすることはない僕だが今回ばかりは目の当たりにしている不可思議を前に、怒りを吐き捨てるように口に出した。


家だ、家に帰ろう。家に帰って何もかも忘れて寝てしまおう。

僕の貧弱な脳みそではそれしかこの現実に向き合う方法が見つからなかった。


頭の片隅では、僕は異世界に来てしまったのではないかとか、僕以外の人間が存在しないのではないかと嫌な思考がよぎったが自らそれを無視し帰路に就くことを決意した。

きっと大丈夫。

帰って寝れば休日。

休日が終わって学校が始まれば先輩から今日のことをいろいろ聞かれるだろう。

写真を渡して起こったことを全部話そう。

そしてまた始まるんだ、僕の先輩と過ごす考古学研究会の部室で行われる日常が。


思考を無理やりプラス思考に切り替え、いや、現実から目をそらし進み始める。

だがそんな僕の思考はあっさり崩れ落ちることになる。


屋上出口の扉のドアノブに手をかけたその刹那-



『ギ、グゴギャギギィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!!!!』


この世のものとは思えない断末魔が校舎の下から聞こえる。

確実に何かがいる。

何階にいるかはわからないが確実にいる。

そして僕は理解した。


自分に対する危機を



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