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機械仕掛けの魔人と妖怪の物語   作者: あっくす
初出動オカルト部!学校鬼退治編
14/20

初出動 考古学研究会

「そういや彩斗。あんたこの柊ちゃんの正体知ってたわよね。あんたらどこで知りあったん?」

「え?それはその・・・」


急な核心をついた質問に少し動揺する。

どうする?庄司たちと同じ答えにするか?

果たしてこの先輩に作り話が通用するかどうか。

と思考にふけっていたところ柊さんからちょいちょいと手招きをされ、それに従う。

僕の耳に顔を近づけ僕だけに聞こえるような声で


「彩斗くん。あの先輩にはもう正直に話しちゃっていいんじゃないかな?私の正体もバレちゃってるし、なんだか妖怪にも理解があるみたいだよ?どうかな?」


やばい。

柊さんの顔が近くて心臓がドキドキ言ってる。

話半分聞いてなかったが正直に話していいと言う部分は聞こえたので理解の意を示す。


「こらお二人さん。いくら密室だからってイチャイチャしない。あたしの存在を忘れないでちょうだい。」

「い!イチャイチャしてません!」

「じゃあ何?秘密話し?ほほう、入部初日から先輩をハブるなんて度胸あるじゃない?何?あたしから部長の座を譲ろうって?それはダメ!!私人の上に立つのは大好きだけど上に立たれるのは嫌いだから!」

「そんな気もありませんよ!もう!私どんな子に思われてるんですか!」

「まぁ!上が好きとか下が嫌いとか言ってるけど体位は全然別だからね。

むしろ私は下の方が・・・」

「先輩!黙って!」


なんなんだこの人は。

頭の中8割は妖怪で、残りの2割は下ネタで出来ているのか?


「ねぇねぇ彩斗くん。」

「ん?なに?」


先輩を叱責してすぐ後、柊さんが僕の袖を掴んで問いをかける。


「上とか下とか、体位ってなんの話?」

「そりゃあんたセッ・・・」

「黙れって!!!!!」


なんだなんだ。

柊さんが入ってから、先輩が新しいおもちゃを見つけたようにはしゃぎ始めているぞ。

この先どうなるのやら・・・



* * *


「コ、コホン!じゃあいいでし・・・いいですか先輩!私と彩斗くんはですね・・・」


先ほどの沙奈江先輩の下ネタを理解したのか顔を真っ赤に染めながらも体裁を取ろうとする柊さん。

しかし残念ながら台詞を噛んでいる。


「いいよ柊さん。僕が説明するね。」

「うぅ・・・ごめん彩斗くん・・・」


柊さんがこの調子なので彼女に変わり僕が僕たちの出会いを沙奈江先輩に正直に話した。

鬼の巣に迷い込んだ事。喰鬼と戦った事。



「それでなんとか柊さんが喰鬼を撃退してくれて、僕たちは無事脱出できたわけです。」


しかしながら異端者の事は話す気になれなかった。

柊さんが小首を傾げながらこちらを見る。

きっとなぜ異端者の事を話さないんだと言う疑問の意だろう。

確かに話せば良いのだが、妖怪に理解がある先輩でもあの機械魔人まで理解が及ぶとも限らない。

そして本当の理由は、なんだかその存在を自分で認めてしまうと、自分が普通ではないと認めてしまうようでなんだか嫌だった。

異端者とはあの機械魔人ではなく、

僕のことを指していたのだろうか。


「へぇえ・・・まさか鬼の巣がこの学校に張り巡らされてたなんてねぇ・・・そんでもって喰鬼を撃退したと・・・」

「知ってるんですか?」

「ええ知ってるわよ。喰鬼の"暴食波(ぼうしょくは)"、妖狐の"誘い込み"に"狐火"と"幻術"。全部伝承通りだからこりゃ信じるしかないわね。しかしまぁよくもここまで体験できたものねぇ。素直に羨ましいわあ。」


流石妖怪博士だ。

喰鬼の事も、鬼の巣の事も知識にあったようだ。

しかも僕の聞きなれない言葉まで出てきた。


「喰鬼の、その暴食波?ってなんなんです?」

「ありゃ?あんたが今話した事にあったじゃない。圧縮された空気のようなものを腹にできた口から吐き出してたって。」

「えぇ。あの攻撃が"暴食波"って言うんですか?」

「そうよん。まぁ正確に言うと"暴食波"っていうのは圧縮した空気を吐き出してるんじゃなくて、その逆。透明な気化された胃袋を吐き出してその胃袋が通った空間を全て喰ってるのよ。」

「うへぇぁ・・」


なんて恐ろしい攻撃だ。

つまりあれか?

僕は一度あいつに体丸ごと食われたって事か?なんだその無茶苦茶は。


僕の隣で柊さんも「知らなかった・・・」と驚きの声を漏らしている。


「んで?彩斗。まだあんた隠してることあるでしょ。さっさと言いなさい。」


何を言い出すかと思えば。

きっとこの先輩は僕の表情のちょっとした曇りを見抜いたのだろう。

末恐ろしい先輩だ。


「いえ・・・もう全部話しましたよ。」

「そう?まぁ妖怪に関して分かんないことがあったらいつでも聞きなさい。大抵は知ってるから。」


と言い、話を締めくくる先輩。

・・・


そうだ。

妖怪の柊さんよりも妖怪のことを知っている先輩だ。

もしかしたら異端者の事を何かしら知っているかもしれない。

そう思い、なんとなくの気持ちで少し尋ねて見る。


「先輩ってその・・・異端者って妖怪知ってます?」

「いや知らん。」


即答だ。

なんでも知ってると言ってたのに。

いや、という事はそもそも異端者というのは妖怪の部類ではないのか・・・


「それがなんかあんの?」

「いえ、なんでもないです。」

「ふーんそ。」


先輩は興味を無くしたようにその話を終え、僕と柊さんを繰り返し見て口を開く


「じゃあさっきの話を纏めると、柊ちゃんが鬼の巣に引きずり込まれて、一人で戦ってたけど心が折れて、無意識に妖狐の力でたまたま近くにいたこの彩斗を鬼の巣に引きずり込んだ。んで二人で協力したと。」

「そうですね。」

「はい。あってます。」


僕と柊さん二人で肯定する。

常人なら信じられないような内容なのだがこの人はすぐさま理解した。


「で?あんたがその異端者とやらになって喰鬼を退治したと。」

「ぶっ・・!ななな、なにを言ってるんですか!」


いきなりの直球に驚きを隠せない。

この人は本当に何者なんだ!?


「いやだってさ、喰鬼つったら守り神級の妖怪よ?それがいたずらっ子レベルの妖狐に負けるわけないじゃない。」


なんだかまたわからない単語が出てきたがそれでもかまわず説明を続ける先輩


「仮にこの柊ちゃんが神話級の九尾だったら話が違うわ。でもさっきの変身見た時この子尻尾一本だったじゃない。まだ幼い妖狐って証明ね。」

「あの、その守り神級とか神話級とかってなんなんです?」


このままだと僕たちがあたかもそれを知っている前提で話を進めそうだったので質問をなげかける。


「ん?妖怪研究者なら知ってて当然よ。柊ちゃん、あんたならわかるかも知んないけど妖怪にも強さがある。おっけい?」

「は、はい。それは私も知ってます」

「よろし。そんでその強さの階級を表したものがさっき言った神話級とか守り神級とかね。上からランク順に言うと"神話級""守り神級""伝説級""上位妖怪""下妖怪"ってところかしら?んでこの子柊ちゃんはせいぜい上位妖怪ってところね。」

「はぁ。なるほど」


とどのつまり妖怪にも強さがあり、それはランク分けされているようだ。


「神話級は人間が神と崇める存在ね。滅法強いわ。んで守り神級はそれに似てるんだけど自分たちの土地を守ってくれる神様。神話級は国を統べて、守り神級は村を統べたって言えばわかる?」

「なんとなくわ。」

「す、すごいよこの人。人間なのに私がお屋敷で習った事より知ってるかも」

「んで話は戻るけど、そんな上位妖怪の柊ちゃんじゃ守り神級の喰鬼は倒せないってわけ。それであんたの変な質問が来たもんだ。異端者だっけ?こりゃそれを疑うしかないっしょ。」


先輩との付き合いはそこまで長くはない。

それでもこの千波の洞察力と理解力、本質を見抜きすべてを見破る力には驚かされてばかりだったが今回はさらに驚かされた。

全く恐ろしい人である。

正直あの喰鬼よりも敵に回していたら厄介な相手だったのでは?と変なことを考え始める。


「で?あってんの?あってんでしょ?その異端者ってなによ。ちゃんと説明しなさい。それにね、ぶっちゃけ言うと喰鬼はまだ生きているし、近いうちにまたあんたと柊ちゃんを鬼の巣に取り込むわ。いやそれだけじゃない。鬼の巣がこの学校に張り巡らされている以上、なんかの拍子に関係のない一般生徒までもが引きずり込まれる可能性だってあるのよ?彩斗、あんたのように。」


今なんと言ったこの人は?


「な、なんで生きているって確信もって言えるんですか?」


柊さんがそう口にする。


「あら柊ちゃんは知らない?妖怪はね、人とは違って死んだら遺体は残らずこの世から完璧に抹消されるの。その伝承ごとね。」

「?」


どういう意味か僕と柊さんは理解できず二人で目を見合わせる。


「あー、言い方が悪かったかもね。つまりだわ。その妖怪が死んだとき、この世から”そいつがいた”という事実さえも抹消されるの。わかる?本に載ってる記事、人々の記憶からも、この世のすべてからきれいさっぱり無くなっちゃうのよ。」


「まぁ直接的に強くかかわった人間、つまりあんたらね。その人たちの記憶からはなくならないらしいけど他の人間は例外なく忘れる。でも直接会ったわけでもないこのあたしが喰鬼という存在を認識しているでしょ。きっと妖怪古書なんかさがせば喰鬼のページはまだ残ってると思うわ。つまり」

「喰鬼は死んでないから先輩の記憶からもなくなってない・・・」

「そういうこと。」


直接かかわってない先輩の記憶から喰鬼という情報が消えていない。つまりはまだ生きている。

そういう事らしい。


「なんだか・・・やだな・・・」


突然柊さんが悲しそうな声で言葉を漏らす。


「私も死んじゃったら周りの人たちから忘れられちゃうんだ・・・」

「そ、そんなことないよ!」


柊さんの悲しい事実に真っ向から否定に入る。


「沙奈江先輩が言ってたのは強くかかわってない人間の記憶からでしょ?僕や先輩は絶対に柊さんのことをわすれない。それに何より僕が柊さんを死なせないよ!」

「彩斗くん・・・」

「よく言った!男さいと!でもそのためにはもう一度喰鬼と戦わなきゃいけない。さっき言ったでしょ、あんたと柊ちゃんをまた鬼の巣へ引きずりこむって。」

「はい。」


僕の理解の意を読んだとたん急に机の上に立ち胸を張る。


「もちろん部長のこのあたしがかわいい部員たちをめそめそ鬼の餌にさせるつもりはないぁい!だからあたしの知識に基づいてしっかりと作戦を練る!そのためには彩斗、あんたのその異端者って力を知る必要があるのよ。」

「な、なるほど。」

「ただ興味本位で聞いたわけじゃなかったんですね。」

「そ、そ、そそのとーり。あたしがそんな浅はかに見える??」


ああ、こりゃ興味本位だったな。

それを見抜き二人でジト目で先輩を見続ける。


「シャ、シャラーップ!いや、しゃべってないか・・・。ともかくその眼をやめい!!」


「と、ともかく!いい?この学校に潜む喰鬼を退治できるのはあたしたちしかいないの!あたしたち以外に適任がいる?いーやいない!結成から約半年、ついにこのオカルト部が出動する時が来たのだよ!」


僕はオカルト部に入った記憶はないんだが。

考古学研究会ね。

しかしその危険な喰鬼を放っておくわけにはいかない。

どうせまた引きずり込まれるのなら、こちらから攻め立てればいい。

そう考え拳に力が入る。

柊さんも同じ意見のようだ。

僕を強い意志のこもった眼差しで見つめ


「行こう、彩斗くん!」

「・・・うん!かならずあの喰鬼を今度こそ倒そう!」

「よおおおっし!いい心がけだ諸君!際は投げられた!狼煙は上がった!戦いの火ぶたは開かれたああ!!オカル・・・考古学研究会初出動!その名もおおお!学校鬼退治!!」


僕の敵意に満ちた目線で言い直した先輩だったが最後の言葉は強い気持ちを込めて言った。

しかしその言葉は真実だ。

これからはじまる。

沙奈江先輩と柊さんと僕。僕たち考古学研究会の初ミッション


学校鬼退治が。


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