考古学研究会(オカルト部)
午後の授業も全て終わりホームルームも終了した放課後。
庄司にラーメン食いに行こうぜ。と誘われたが、部活に行くといい断った。
ラーメンは好きだし行っても良かったが、実のところ僕は今金欠なのだ。
思い出しても見て欲しい。
僕はあの"鬼の巣"に迷い込んだときカバンを持っていた。
しかしゴタゴタが重なり、そのカバンはいつの間にか手元を離れ思い出した頃には僕は鬼の巣を脱出していた。
とどのつまり僕の財布の入ったカバンを鬼の巣に忘れてきたのだ。
取りに行こうにもその術がない。
不幸中の幸いにも財布には現金以外入れていなかったのだが・・・
そしてもう一つ思い出して欲しいことがある。
僕はあのカバンに財布の他に何を入れてた?
答えはそう。
先輩のカメラだ。
僕は今この考古学研究会の部室にて頭を抱えている。
なんと言って目の前の先輩に謝ろうか。
ありのまま起こった事を話すか?
冗談じゃない。
柊さんの正体がバレてしまう。
「ところでこの前渡したカメラなんだけど」
と考えているところに先輩から頭を悩ましている質問が来た。
まだ心の準備ができていない。
なんとかこの質問をごまかそう
そう考え
「あ!!そういえば先輩!今度僕の知り合いなんですけど、この部活見にきたいって子がいましたよ。」
「はぇ?このオカ研に?」
「考古学研究会です。」
部長のあんたが間違えちゃダメだろ。
いや、そもそもオカルト研究会という呼び名が広まったのはこの人が元凶なのかもしれないぞ。
「物好きな子もいたもんね。まぁいいけど。活動の邪魔だけはしないでもらいたいわね。」
「邪魔って・・・大した活動してないでしょう。」
よかった。
とりあえずなんとか誤魔化せたようだ。
と一安心していたのもつかの間
「それよりこの前頼んだ写真。あれ頂戴。ちゃんと撮ったんでしょうね。」
「・・・はい。」
だめだー。
誤魔化せねー。
何としても僕からカメラを回収する気だろう。
しょうがない。
取り敢えず失くしてしまったことだけは謝ろうと話を切り出そうとしたら
コンコン
っと部室をノックする音が聞こえた。
誰だろう。
先輩と目を見合わせ、扉の方を見て
「はーい。どうぞー」
と沙奈江先輩がドアの向こう側の人に対し入室を促す。
「し、失礼します。」
そして扉を開け、中に入ってきたのは柊さんだった。
半ば緊張したように部室内をきょろきょろと見渡し、僕と目が合ったところで、その固くなった顔が笑顔へと変わった。
「あ、彩斗くんだ。」
「あれ?柊さん、今日来たんだ。」
「うん。ちょうど何も予定なかったし、妙たちに聞いたら彩斗くん部活行ったって言ってたから覗いてみようかと。」
「なるほどね。ああ!先輩、この子がさっき話してた・・・」
再びチャンス!
と思い、話題を変えようと先輩の方を見たら、沙奈江先輩は何をトチ狂ったか机の上に立ち、柊さんを指差して
「出たな妖怪!!!!一体この部室に何の用だ!!!!」
ぶっ!
いきなり何を言いだすんだこの人は!
いきなりの展開に柊さんも目を丸くして動揺し始める。
「えぇ!?よ、妖怪!?え!?え!?」
「しらばっくれても無駄だよ!話は全部この守谷んから聞いているのさ!さぁ、さっさと正体を現しな!この妖怪め!」
いかん。いつもの先輩の茶番劇が始まった。
普段なら流しているところだが、話題が話題だけにこのまま逃すわけにはいかない。
なんとか先輩を黙らせなければ。
と急いで話に入ろうとしたのだが、それよりも早く
「ちょっと!彩斗くん!なんでこの人に私の正体バラしちゃったの!?一般人には私が妖狐って秘密だよって約束したのに・・・ひどいよ!」
「ち、ちが!!僕は何も!」
「げぇええええええ!!なになにこの反応!?マジに妖怪なの!?」
「へぇえ!!!?知らなかったの!??」
「うっひょおおお!!妖怪!妖怪だってさ守谷!うわああマジに初めて見たよ!!ウキャキャキャキャ!!!」
一瞬にしてこの考古学研究会の部室は混沌に陥った。
それからの先輩のはしゃぎようがすごいことすごいこと・・・
* * *
「ぐすん・・・まさか妖狐の私が嵌められるなんて・・・」
「まぁまぁ。ああ見えても先輩は妖怪のことが好きで、そんな言いふらしたりはしないと思うから」
そう励ましつつあったかいお茶を出す。
ありがと。といいつつそれを受け取る柊さん。
して、その話題の先輩はというと。
椅子の背を抱きかかえる世に座りながら、キラキラして目でずっと柊さんを見ている。
「うっ・・・」
柊さんはそれがとても居心地が悪いらしい。
「先輩。そんなに見たら
「ねぇねぇ!あなたって妖狐なんでしょ!?狐に変身してみてよ!!」
人の話聞けやおい・・・
「先輩!柊さんが困ってるでしょ!ちょっとは落ち着いてください!」
「何よそんなプンスカしちゃって。あんたこの子にほの字なの?」
「い、いや!それは・・・」
「流石ね。おとぎ話通りだわ。昔から妖狐は人の心に入り込むのが得意だって言われてるからね。」
「柊さんはそんな事しない!いいですか先輩!柊さんはねとっても優しい子なんです!僕のちょっとうざい友達とだって仲良く話せる接する子だし、こんなに可愛いのに、僕みたいなやつにわざわざ話しかけてくれる子なんですよ!!」
先輩が柊さんをなんだが蔑んでるように聞こえて思わず熱くなってしまう。
先輩は僕の剣幕に押されたのか「お、おう・・・」と小声を漏らしている。
「彩斗くん、恥ずかしいからやめて・・・」
当の柊さんはというと、顔を伏せて手で顔を覆ってる。
そして指の隙間から見える顔の皮膚は赤く染まっていた。
あ、本人の前で恥ずかしい事言っちゃってたな。
と考えていると、しばらくして柊さんはため息をついて顔を上げた。
「もういいよ彩斗くん。ばれちゃったのはしょうがないよ。」
そう困ったよう僕に笑いかけ、さらに続けて
「先輩・・・さん?あなたの言う通り私は狐の妖怪。妖狐です。」
「ああこりゃどうもご丁寧に。あてくし怪越 沙奈江と申します。以後お見知り置きを。」
「沙奈江先輩、お願いがあります。どうかこの事は僕たちだけの秘密にして欲しいんです。柊さんもこの学校生活を心から楽しんでますし、妖怪だからって彼女は害を与える行為なんかしないですよ。」
「え?別にばらす気なんかサラサラないわよ。」
『へ?』
僕と柊さんの声が被る。
「だいたい他の生徒にこの子が妖怪だってバラして誰が信じるの?またあの怪越がおかしな事初めたってみんなの笑い話になるだけよ。」
自分でわかってたんかいあんた。
「あたしはただ妖怪が大好きで、できればお近づきになりたいだけなの。だから・・・柊ちゃんて言ったわね?私はあなたと個人的に知り合いたいだけよ。」
「そ、そうなんですか。」
「そ。だからあなたの妖怪の姿を見して欲しいな。お近づきの印に!」
「そう言う事なら・・・」
と先輩の言葉に従い深呼吸をする柊さん。
そして突如として柊さんの周りの空気が変わり、次の瞬間狐の耳と尻尾が現れた。
この雰囲気・・・
初めて柊さんにあった時の妖しい雰囲気だ。
普段の人間モードの柊さんは可愛いけど、狐モードの柊さん美しいと言う言葉がふさわしいだろう。
そうして柊さんに見とれていたら隣から突然
「ピャーーーーーーー!すっげえええ!妖怪だ妖怪だ!え?まじで妖怪じゃん。耳とかはえたのもすごいけど何この雰囲気!これが妖気ってやつなの!?はぁ私今最高に幸せ!」
そんな驚きように若干引いている柊さん。
「ねぇ!柊ちゃんだっけ?あんたこの部活に入んないよ!って言うか入って!まじお願い!」
「私が・・・ですか?」
「そうよ!だってもともとこの部会に興味あったんでしょう!?じゃあもうこの際入部しちゃいましょ!なぁ彩斗!」
「え?そうですね・・・」
急に話を振られて少し動揺するが
「入部するかどうかは柊さんが決めることだけど、僕は柊さんが入ってくれたら嬉しいな。」
これは正直な気持ちだ。
この部活は部員の僕でも何をするかよくわからない部活動だ。
あまりお勧めできる部活動ではないが、放課後も柊さんといられる。
そんな気持ちが上回り、その言葉を口にした。
「じゃ、じゃあ彩斗くんがそう言うなら・・・」
「はい決まりィイ!!ってことで彩斗、新しい部員よ紹介するわ。」
柊さんの言葉に食い気味に反応する沙奈江先輩
紹介て言ったってもう知ってるよと思いながら柊さんの方を見ると目があった。
互いに困ったように笑い
「柊琴美です。今日から考古学研究会の部員になりました。よろしくお願いします。」
「うぃいい!よろしくう!」
「よろしくね柊さん。」
こうしてこの日を持って風街高校で妖怪退治で有名の考古学研究会(通称オカルト部)が新生したのだ。