風街高校
キーンコーンカーンコーン
「おっと。もう時間か。じゃあ今日はここまで。加賀、号令をたのむ」
「はい。起立!礼!」
4時限目の終わりを告げるチャイムがなり、クラス委員長の加賀さんの号令のもと皆が席を立ち礼をする。
午前の授業はすべて終わりだ。これから1時間の昼休憩。
さて、今日は購買のパンにしようか学食にしようかなどということを考えていると。
「さ・い・と・くぅん。よぅよぅ一緒に昼飯くおうやぁ!もう逃がさんからな。」
庄司だ。
ちなみに今のさいとくんのイントネーションは柊さんを真似てのものだろう。
激しく気持ちが悪い。
庄司は授業の合間の小休憩中しつこく僕に話しかけてきた。
それに対し毎回のようにトイレへこもり逃げていただが今回はだめかもしれない。
1時間も大の個室に篭る勇気はないし、何より僕もご飯が食べたい。
「あ、あー、あ!。ごめん、僕今日部室で先輩と食べる約束してるんだ!だからまた今度!」
「あ?オカルト研究会?」
「考古学研究会ね」
「どっちでもいいだろ。おっけ。そういうことならしゃーねえな。いけよ。」
「うん。理解が早くて助かるよ。じゃあまた」
と言い庄司の横を通り抜ける。
ふ。何とか乗り切れたぜ。
と思いながら教室の外を目指すと、知った顔の子が僕に手を振ってきた。
柊さんだ。
わざわざ僕の教室まで何の用だろう。
「おーい彩斗くん!一緒にお昼食べない?」
「うん!もちろんおっけ!ちょっとまっててね!」
「おう、ゴラ。」
庄司に後ろから片手で頭をわしづかみにされた。
やっちまったぁ・・・
余りの嬉しさにこいつの存在を一瞬で忘れてしまっていた。
「あっっっれぇ?しゃいときゅうん。ちみはぶかつのせんぱいとたべるんだったんでわぁ?」
「はは、あははは。な、なんかね先輩急に予定入っちゃったみたい・・・な?」
「いい加減にしろやゴルァアアア!!!」
襟をつかまれ激しく頭を揺らされた。
作戦失敗のBGMが頭で鳴り響く。
* * *
「あたし木村妙。妙って呼んで。よろしくね柊さん。」
「俺は田中庄司。呼び方はなんでもいいや。よろしく。」
「ふふ。ありがと。柊琴美です。じゃあ私も琴美でいいよ妙、庄司くん。」
「あ、僕の名前はもりやさ『聞いてねえよ』
ひどい。
というかどうしてこうなった。
僕の席と前後の席をくっつけそれを囲うように4人が集まっている。
柊さんをパーティー席にその両隣に木村さんと庄司。
向かい合う様に(なかばハブられるように)僕が座る。
そして木村さんが口を開く。
「それでそれで、琴美と守屋はいつ知り合ったの?」
「えぇ?」
いきなり核心ついたなー。
柊さんもおどおどしながら僕のほうをチラチラみてくる。
本当のことは言えないのは当たり前だ。
妖怪の事、柊さんの正体を知られるわけにはいかない。
なので適当な作り話をする必要がある。
僕は柊さんの作った話に乗っかろう。そういった念を込め柊さんのほうに微笑む。
「え、えと・・・その。で、電車に乗ってた時にね。痴漢にあってね。た、助けてもらったの。」
おぉう。
予想外な展開が起きたな。
もっと普通な出会いを期待していたんだが。
だがこれはこれでありだろう。
僕が助けたという理由から柊さんは僕にお礼を兼ねてちょいちょい話しかけに来てくれる。そういう構図も出来上がる。
普通なら柊さんみたいな子が僕みたいなのに話しかけるなんてありえないだから。
などと感心していたら、木村さんと庄司、二人がさげすむような眼でこちらを見てきて
「彩斗・・・お前・・・痴漢はダメだろ・・・」
いや僕じゃねえだろ。
どこをどう考えても今の流れだと助けたほうが僕だろ。
「ち、違うよ!助けてけてくれたのが彩斗くんだよ!」
と助け船を出してくれる柊さん。
それでも止まらないこの二人。
いつもの光景だ。
「琴美ちゃんいいんだよ。このむっつりに脅されてんだろ?だからわざわざ話しかけに・・・」
「守屋最低・・・」
「ち、違うんだって!もぅ!彩斗くんもなにパンもしゃもしゃ食べてんの!」
「ん?慣れてるから。」
「慣れてるってお前・・・痴漢の常習犯だったのかよ!!」
「守屋最低・・・」
庄司の馬鹿が大声で変なことを言ったせいで、この日から守屋彩斗は痴漢の常習犯といううわさが2組に広がった。
「そういや琴美ちゃんって部活何やってんの?」
「ぶかつ?何もやってないよ」
「えーもったいない!琴美ちゃん運動神経いいって有名じゃん!なんか入りなよ!」
そうなのか。
まぁ妖狐だしな。そこらの人間よりは全然運動神経いいだろう。
「べ、別にそこまでじゃないよ。それに部活いっぱいあって何やったらいいかわかんなくて」
「じゃあさ女バスに入んなよ!あたしも庄司もバスケ部なんだけどどう?琴美ともっと仲良くなりたいし!」
「おお。それいいな!男バスも隣のコートでかわいい子がいたらやる気上がるしな!」
「バスケかぁ・・・あんまりやったことないから上手くないと思うし・・・その・・・」
「まぁ無理にとは言わないけどね。でもなんかしらの部活はやったほうがいいと思うよ。そこの守屋だって一応部活は言ってるし。」
急にに僕に話題が来た。
「そうなの?」
「あれ、言わなかったっけ?」
たしか初めて会った時に言ってたと思うんだが、まぁ忘れてしまっても無理はないだろう。
なんせ地味な部活なのだから。
「あー、あれな。オカルト研究会」
「だから考古学研究会ね」
こいつはいい加減に覚えろ。
「こーこがく、けんきゅうかい?」
「そう。考古学だよ。遺跡や遺産を見たりして昔のことを研究する部活なんだ」
「で、実際の活動は?」
「・・・心霊スポットに写真撮りに行ってます・・・」
「やっぱオカ研じゃん」
木村さんと庄司に僕の部活を全否定されたような気分だ。
柊さんに至っては
あぁ・・・だからあんなとこに・・・
なんてつぶやいている。
おそらく僕たちの初めての出会いのことを思い出しているのだろう。
なんでこいつあんなとこにいたんだ?と。
「その考古学研究会?ってたのしい?」
「なに?琴美ちゃんそんな部活に興味あんの?やめとけやめとけ馬鹿が移る。」
「本当にやめといたほうがいいよ。その部活にはね、この守屋だけじゃなくて風街高校屈指の変人がいるんだから。」
沙奈江先輩の事か。
「屈指の変人・・・そんなにすごいの?」
「そりゃもう年がら年中妖怪と出会おうとありとあらゆる奇行をくりかえしてるね。このまえなんか「この絵画には化け猫が住み着いてるぅ!呼び出さなくては!」っていいながら猫の絵の前で七輪でさんま焼いてたんだぜ」
「ぷっ・・・」
え!そこツボなの柊さん!
庄司の言葉に噴き出す柊さん。
そして僕のほうを見てくすくすと笑いながら
「それ彩斗くんもやってるの?」
「やってないです。」
「いーや。守屋はやってるね。あたしみたもん。あの先輩と体育館裏で変なダンス踊ってるところ。あれ見て家の女バスの子ないちゃったんだからね。」
あれはたしか・・・体育館裏には何かが住み着いてるみたいなことを言われて、お昼おごってもらう代わりにやったやつだな。
あの時はお財布家に忘れてしょうがなくやったなぁ・・・
って見られてたのかよ!
その話を聞き柊さんはその光景を想像したのかお腹を押えて涙目になってる。
これは笑いを我慢してるな。
柊さんはこういうシュールな行動がツボなのか。
・・・
そういえば僕が鬼の巣で必死に死をばらまいている姿をみて笑ってたな。
「彩斗くんって面白い部活は言ってるんだね。今度見に行ってもいい?」
目元の涙をぬぐいながら僕にそう語りかける。
「えぇ!?いや、いいけど・・・柊さんって結構変わったものが好きなんだね。」
「そうなのかな?でも面白そう。楽しみ。」
そう言ってニッコリと僕に笑顔を見せてくれる。
「かわいいわぁ・・・」
「こりゃ男共も落ちるわ・・・」
と庄司と木村さんが言葉を漏らす。
同感だ。
「じゃあ先輩にも言っておくよ。いつでもおいで。」
「うん!わかった。」
こうして部活動の話は終わりを終えた。
その後も木村さん、庄司、柊さんとの会話は昼休憩の間、止まることなく盛り上がった。
登場人物が増え、会話も増えたので書くことが楽しいです。