激突 異端者vs喰鬼
機械魔人と異端者は同じ物です。
わかりにくくてすみません。
物語が進むにつれ統一させていくのでよろしくお願いします。
この僕が、あの部屋で見た機械魔人に・・・
周りを確認しても変化しているのは僕のみ。
目の前には、急に現れた巨大な獲物を威嚇するかのような強烈な視線を送っている喰鬼
そして僕の後方には機械魔人となった僕を何が起こったか信じられないような目で見上げている柊さん
『アガガガアアアアアアアア!!!!!』
そして事の判断をしていると突如として動き出す喰鬼。
やつが咆哮をあげながら腕を振り上げる。
攻撃態勢に入ったのだ。
(やばい!)
反射的に逃げではなく、腕を交差させガードの体勢をとる。
喰鬼の一撃だ耐えられるはずがない。
そう判断した時には時すでに遅く喰鬼はすでに振り下ろしの動作へと入っていった。
両腕に走る激痛を覚悟して歯をくいしばる。
そしてぶつかり合う鬼の拳と機械魔人となった僕の腕。
激しい音を立てながら衝撃を生む。
普通の人間の腕であったら骨折どころか腕が消し飛んでいたであろうが・・・
(あれ、あんま痛くないな。)
実際に攻撃を受けた部分が少し痺れただけだった。
どういう原理か痛みの刺激はかなり緩和されて実際の神経へ伝達されるようだ。
(それにあいつの怪力に耐えられてる。)
実際に攻撃を受け止めている部分の鎧は傷一つない。
喰鬼の破壊力でさえも、もろともしない凄まじい防御力を誇る鎧だと理解するのに時間はかからなかった。
(でも、これなら・・・)
喰鬼は追撃とばかりに反対側の腕の拳を振り上げ、僕に拳撃を食らわせようとする。
しかしそれに素早く反応して見せ、交差させていたガードを解き、喰鬼の拳に鋼の拳を重ね合わせる。
(僕も戦える!)
拳撃と拳撃。
正面衝突した互いの拳が地を震わせるほどの破壊衝撃を生み出す。
『アガガ‥・・ギャガアアアアアアア!!!』
一見して互角の力量に見えたが、離れた喰鬼の拳は表面の肉がえぐれており、対してこちらは傷一つつけられていない。
加えて痛覚も殆ど無いのだ。
単純に腕力という分野のみでなら力関係は互角であるが、肉体の頑丈さ、戦闘においての持久力という点も加味すると圧倒的にこちらが有利である。
それを理解すると同時に追撃の開始を始める。
先ほどの拳激の衝突で仰け反り無謀部になった喰鬼の頭を鋼鉄の右手で鷲掴みし、宙にあげる。
『アガ・・・ガガ・・』
凄まじい握力から逃れることもできず、地についてない足をジタバタさせ機械魔人の胴体に幾度も蹴りの攻撃を試みてるようだ。
しかし痛みを全く感じないため決して力を緩めることはない。
(確かこいつを倒すには、心臓が頭を潰せばいいんだよな・・・!)
柊さんから言われたその言葉を思い出し、喰鬼の頭を掴んでいる右手により一層の力を入れる。
『ヴァガ・・ヴァア・・ヴァアアア・・・!!!!!』
苦悶の声を漏らしていた喰鬼。
このまま微弱な抵抗をするこいつの頭を握りつぶしてしまおうと考えていたが、喰鬼の腹から巨大な口が開き始める。
(・・・まずい!)
もう幾度も見たこの恐怖を掻き立てられるようなおぞましい見た目の口。
そのため次に何が起こるかはすぐに理解できた。
圧縮された空気の放出だ。
凄まじい破壊力を持つ攻撃、そいつに何度も苦しめられた。
僕自身は一度殺され、作戦も失敗し、柊さんも負傷を負った。
喰鬼の怪力を無傷で受け止められたこの鎧なら一撃死ということはないだろうが、すぐ後ろには柊さんがいる。
僕は無事でもその破壊衝撃が柊さんのいるところまで及ばないとも限らないので、こいつにこの攻撃をさせるわけにはいかない。
その判断と同時に、掴んでいた頭を起点に喰鬼を投げ飛ばす。
喰鬼の体は風街高校校舎に激突し、圧縮された空気も全く別の方向に飛んで行く。
そして校舎と衝突した喰鬼はしばらく動作をとめた。
気絶したのだろうか。
確信は持てないが喰鬼と僕との距離が開いた今のうちだ。
僕は後方にいる柊さんを見下ろし
ここから出来るだけ離れて!
そう言おうとしたのだがこの機械魔人には声帯がないのか全く声が出せない。
これでは柊さんにこの機械魔人が僕だと伝えて安心させることができない。
どうしたものかと頭を悩ませていると
「さ、彩斗くん・・・なの?」
勘が鋭いのか向こうから聞いて来てくれた。
そしてどうやら聴覚は生きているらしい。
つまり周りの情報は取り込むことができてもこちらから情報を出すことができない構造のようだ。
なので柊さんの言葉をどう肯定しようかものか。
とりあえず機械の軋む音と共に首を縦に振る。
「ほ、本当にさ、彩斗くんなんだ・・・」
なんとか肯定の意は伝えられたらしい。
そうだよ。僕は彩斗だよ。
本当はそう言って安心させたかった。
「なんか・・・すっごい大きくなったね。」
いや、そこじゃないだろう。
確かに全長としては倍以上に増えたがもっと見た目が変わっただろう。
青色の仰々しい鎧は纏ってるし、関節に至っては機械仕掛けだぞ。
この柊さん、案外ずれてるところもあるようだ。
だがなんだろう。それがまた可愛いなぁ
なんて頬を緩める。
まぁ実際の見た目の僕の顔は緩まりそうな頬なんて無いのだが。
それはさておき、そんな柊さんを見ていると突如として金髪の髪が逆立ち、狐の耳と尻尾も空を向くように逆立つ。
「彩斗くんうしろ!!!!」
(え?)
どうやら警戒体制のものだったようだ。
言われた通りすぐに後ろを振り返る。
そして振り向きざまに見た光景は喰鬼の腹の口が大きく開いている姿
『ヴァアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
しまった!
あいつはまだ意識を失ってなかったらしい。
加えてこの甲高い咆哮・・・またあの攻撃が来る!
しかしもうすでに攻撃体制が始まっている。
もはや柊さんを抱えて逃げる猶予はない。
(出来るか分からないけど、この身体で受け止めるしか無いか・・・!)
その判断と共に腕を交差させガードの体勢をとる。
そして放たれる高圧の空気砲。
(なんとかこれを止めないと、後ろの柊さんが!!)
全神経を目の前に集中させ決して目を逸らさない。
絶対に耐えきってみせる。
微かな破壊衝撃も後ろに漏らさない。
そう体に言い聞かせ集中力を高めが、
その意思に呼応するかのようにサファイア色の光が交差させた腕の前に広がり一瞬にして光の壁のような物を形作る。
(え!?なにこれ!?)
そう思ったのもつかの間
地面を破壊しながら音速で向かって来る圧縮された空気砲と目の前に形成された光の壁が激突する。
結果は悠然たるものだった。
光の壁は衝撃を受けても悠然にそびえ、対する空気砲は光の壁を起点に両側の斜め後ろへと分散されて行き、僕も柊さんも無傷であの攻撃を乗り越えられた。
今の光の壁を僕が作ったものかどうか、むしろつくり方すら分からなかったが、喰鬼の1番の破壊力を持つあの圧縮された空気砲を諸共せず防ぎきったのだ。
ここにいる僕、柊さん、そして喰鬼でさえも理解できたであろう。
機械魔人の完全勝利を。
* * *
喰鬼と向かい合う事数分。
お互いがお互いの出方を見る。
奴の最大の技を破った以上、奴には奇策以外に僕を倒せる術はない。
そのため全神経を集中させ喰鬼の一挙手一投足を見逃さんとする。
(もうお前の好き勝手にはさせないぞ)
そう意気込み拳に力を込める。
それを察知したのか、後ずさりする喰鬼。
完全に追う者と追われる者が逆転した瞬間だった。
そしてそれを認めんと最初に動き始めたのは喰鬼。
『アガアアガガアアアアアアアアア!!!!!』
天に向かって咆哮を放つ。
すぐさま臨戦体制をとりなにが来ても対処可能なようにするが、起こった事は予想斜め上を行く事だった。
喰鬼ちょうど真上あたりの天にヒビが入り、それを中心にヒビが広がって行く。
やがてヒビは空全体に浸透し、ガラスの割れるような音と共に空は決壊する。
(え?)
空が決壊した事により、おぞましい数の怪しい雲と血色の三日月はその姿を消し、代わりに目を奪われるほどの美しい朝焼けの空が広がる。
これって、鬼の巣が・・・
その考えが頭を過ぎった瞬間、先ほどまで喰鬼がいた方角を見るが。
(!・・・いない?)
周りを見渡しても姿ひとつ見えない。
あの巨体が一瞬で消えるなんて事はまず無いだろう。
続けてあたり見回していると引きづり足で近づいて来る柊さんの姿を見つけた。
狐の耳と尻尾はすでに消え、最初の頃に見た妖狐の妖しい雰囲気は感じられない。
その代わりに両目にはいっぱいの涙をため、笑みを浮かべながら。
「約束・・・守ってくれてありがとう。」
そう僕に向かって言ったのだ。
(そっか・・・)
それを理解するのには時間がかからなかった。
(元の世界に・・・)
時間は深夜から早朝にかけての数時間程度のものだった。
それでも人生の半分をつぎ込んだような達成感。
僕たちは約束通り"鬼の巣"から帰還を果たした。
異端者ーレイアルファ
奏者: 守谷彩斗
能力:光の壁の形成