第1話:ミキ、「部屋」へ向かう。
「続いてのニュースです。昨夜未明、世田谷区のあるマンションで女性の遺体が発見されました。第一発見者は「部屋」の管理人から通報を受けた警察官で、女性の首には紐で縛られた痕があったことから、警察は殺人事件として捜査を開始しました。被害者の女性は、このマンションに住む・・・・・・」
まぁた殺人事件かー。
「部屋」があるから発見が早いってことで、捕まる可能性も高くなって、「部屋」が出来てから数年は減ってたみたいだけど。
最近では気にしない人も増えたのか、殺人事件のニュースは毎日のように流れるなぁ・・・。
テレビのニュースを見て、そんなことを思いながら朝食のシリアルをバリボリと頬張る私。
3連休の最終日は、何にも予定がない。
「あー、何しよう。」
椅子に体を預けるように伸びをしながら言うと、一緒に朝食を食べてたお母さんが、
「ミキ、やることないなら隣行ってクッキー持ってってよ。昨日作り過ぎちゃってねぇ。」
と言ってきた。
隣には、幼馴染みのアラタが住んでる。
そういえば、この3連休顔を合わせていない。
「そういや、アラタの顔見てないや。」
「じゃあついでに見てきなさいよ。何だったらそのままデートしてくれば?」
お母さんがニヤニヤしながらそう言ってきた。
ホント、お母さんって人は・・・。
「アラタも、暇だったらどっか行くとかゲームするとかしてるよ・・・。まぁ、クッキーは届けてくるよ。」
「はい、じゃあこれ。よろしくー。」
そう言ってお母さんは、台所から持ってきた密封容器に入ったクッキーをテーブルに置いた。
皿に入ってる残りのシリアルを、一口二口と頬張ってから、
「ん。ご馳走さま。じゃ、行ってくる。」
テーブルに置かれたクッキーを手に取って、隣の家へと私は向かった。
ピンポーン・・・♪
アラタの家のチャイムを鳴らした。
暫くしておばさんの
「はい」
という声が聞こえたので、
「ミキです、おはようございます。」
と答えた。
玄関の扉がガチャッと開いた。
「おばさん、お母さんがクッキー作り過ぎたからお裾分けしに来たよー。」
とクッキーの入った容器を両手で差し出したら、おばさんは私の両手を自身の手で覆いながら、話した。
「ミキちゃん、丁度良かった。アラタが金曜の夜から「部屋」に行くって出てったっきり、帰ってこないのよ。電話しても出ないから、まだ「部屋」の中にいると思うの。」
「え?!金曜の夜からってことは・・・今日の夜には、アラタ記憶なくなっちゃうの?!」
「そう、そうなのよ。だから流石に心配で・・・。ミキちゃん、アラタの「部屋」に入れる?」
「小さい頃、1回だけ入ったことあるけど・・・。」
「じゃあ、「部屋」に入ってアラタを探して連れ出してきてくれない?」
「おばさんは、入れなかったの?」
「昨日の夜、「部屋」の前まで行って、扉のドアノブに手を掛けたんだけどね・・・バチってね、静電気来ちゃったの。」
「部屋」の持ち主が「部屋」に入ってほしくないと思う相手には、拒絶反応として静電気のような痛みが襲うのだ。
「そっか・・・。今も入れるか分からないけど、とにかく行ってみるね!」
「ありがとう、ミキちゃん。」
私が玄関の扉を開けて出ていこうとすると、
「ニャー。」
と一鳴きし、足元にアラタの家の飼い猫のニーナが寄ってきた。
ニーナは、グレーの毛色に満月のように吸い込まれそうな黄色い瞳を持つ子で、首には赤いリボンがついた首輪をしている。
とっても美人さんな猫ちゃんなのだ。
「何?ニーナも一緒に行く?」
「ニャー。」
こっちを見て一鳴きしてから、歩き出すニーナ。
ニーナもついてきてくれるみたい。
アラタのことが大好きなニーナだから、寂しいのかもしれない。
そうして私とニーナは、アラタの「部屋」があるビルへと向かったのだった。
(つづく)




