黄金の公爵と夜の約束を
※この話には近親相姦のシーンが含まれます。
世界なんて、ロクでもないものだ。
「あ、あうッ!」
家族がいない、家族に愛されていないって言う人がいるけど、そんなことで悩む必要も苦しむ必要もない。家族なんて、いくらでもお金で買えるものなんだから。
「エドワード」
お父様が舌なめずりをする。背筋がぞっとした。でも逃げられない。逃げちゃいけない。
「んっ、んふ……っ」
だって、僕がエドワードだから。お父様の息子の、エドワードだから。皆もいってるじゃないか。息子だって、エドワードだって。
僕は、ただそれだけの存在。お父様を愛して、愛される。たったそれっぽっちの存在。誰かが、僕からお父様を奪ってしまったら、掻き消える、醜い存在。
「お、とうさまぁ!」
だから、抱きつく。抱きしめ返してくれるのを待って。
「愛してる!」
だから、言う。言い返してくれるのを待って。僕は貴方のためだけに存在している。だから、貴方も僕だけのために存在してほしい。
いくらでも、愛してあげる。いくらでも、愛してるって、言ってあげるから。悪くないでしょ。好き、なんでしょう。
「ああッ!」
いくらでも、こんなことにも付き合ってあげるよ。嬉しいでしょ。好きなんだから。
「お父様ぁ!」
ぎゅっと強く抱きついた。その時、
「だ、駄目ですっ、いけません!」
硬質な靴の音と一緒に、使用人の声が近くにした。二人ともおかしい程にかたまっちゃって。
「なに?」
って、僕が言った途端だった。
「エンパイア公、失礼します!」
勝手に人が、僕とお父様だけの部屋を侵してきた。
「これは……」
その誰かが引きつった声を出した。
「ねえ、失礼だよ。さっさとここから出てってよ」
僕とお父様を邪魔してくれう奴に手を振る。…どうして、お父様は何も言わないの?出てけって命令しなよ。僕らは偉いんだ。下で潰れてるような汚い奴らなんかとは違うんだ!
「邪魔をしてしまい申し訳ありません。ですが、今は出て行くべき時ではないのですよ」
なに、コイツ。意味わかんない。どうしてこの僕が出て行けって言ってるのに出て行かないの?
「ふざけないで!」
お父様とシーツをふりはらって、下りる。
「……わあっ!?」
ばさっと頭から何かを被せられた。
「なにっ、シャ、シャツ?」
「ええ、これはお貸しします」
ソイツが被っている黒いマントのフードから、キラキラ光るものが見えた。
「う、そ!」
それを必死になってつかむ。マントから頭を出させる。
「兄様」
氷よりも冷たい、鋭い刃の色を放つのは、美しい人間だった。
「キリガネさんが寝室でお待ちです。エドワードさんは早くお休みになってください」
僕に、こんなに簡単に命令をする。
「寝室までは人払いをしています。……一人でも行けるでしょう?」
ギッと唇を噛む。
「いい夢を。エドワードさん」
兄様は僕を抱きしめた後、僕のおでこにキスをくれた。優しい優しいキスだった。
「早く、お行きなさい」
とんっと肩を押してくれる。
「……お休みなさい」
そう言うと、兄様は微笑んでくれた。お父様は僕から目を逸らしている。それが、凄く、すごぉく嫌で、僕は逃げ出した。